子虐待
児童虐待の件数 過去最悪に
出典:NHKニュース 平成23年7月20日
昨年度、全国の児童相談所が対応した児童虐待の件数は、前の年度から1万件余り増えておよそ5万5000件と、これまでで最も多くなりました。厚生労働省は「相次ぐ児童虐待事件によって国民の関心が高まり、通報の件数が増加したことが大きな要因だ」と分析しています。
これは20日、東京で開かれた全国の児童相談所の所長会議で厚生労働省が報告したものです。それによりますと、昨年度、全国の児童相談所が子どもの保護や家庭への調査などに当たった児童虐待の件数は、東日本大震災の影響で集計できなかった宮城と福島を除いても、前の年度より1万件余り増えて5万5152件と、統計を取り始めた平成2年度以降で最も多くなりました。児童虐待の件数は10年ほど前から急増し、昨年度は児童虐待防止法が施行された平成12年度のおよそ3倍に増加しています。都道府県別では、大阪が7646件で最も多く、次いで神奈川が7466件、東京が4450件、埼玉が3493件、千葉が2958件などと、ほとんどの自治体で前の年度を上回っています。一方、3年前の平成20年4月から、調査を拒否する家庭に対して児童相談所の職員が裁判所の許可を得たうえで強制的に立ち入ることができるようになりましたが、昨年度、立ち入りによって子どもを保護したケースは2件にとどまりました。厚生労働省は「相次ぐ児童虐待事件によって国民の関心が高まり、通報の件数が増加したことが大きな要因だ」と分析したうえで、「育児不安や経済的な問題を抱えた家庭での虐待も増えていると考えられるので、学校や自治体などと連携して虐待を防止していきたい」と話しています。
橋下府知事、共同親権制度に法改正すべきとの見解を示す
平成22年8月24日の嘉田滋賀県知事の会見発言に続き、橋下府知事が平成22年10月20日に府議会委員会で離婚後の親権制度を共同親権制度に法改正すべきとの見解を示しました。大阪府議会委員会での答弁は、大阪府議会Webサイトから動画を見ることができます。
Webサイト→http://www.gikai-web.jp/dvl-osakahu/
知事発言:[9月本会議]-[健康福祉常任委員会]をクリックし、[10月20日浦野靖人(維新)]をクリック
浦野議員事前質問:[9月本会議]-[健康福祉常任委員会]をクリックし、[10月14日浦野靖人(維新)]をクリック
浦野議員は、児童虐待防止の観点からも共同親権にすべきではないかと知事に質問されました。
共同親権について「国会が真剣に議論すべき」と橋下知事答弁/大阪府議会
橋下知事の答弁概略
- この問題は弁護士の時から大問題になっていた。
- これこそ国会議員が真剣に取組むべき問題であり、役所に任せていてはだめである。
- 役所は“子育で離婚した元夫婦が意見対立する”などと“出来ない理由” を何時も持ち出し、法改正に否定的。円満な夫婦でも意見が対立する ことはある訳で、単に“やらない理由”を探しているだけである。
- 原則は『共同親権』で子育てをすべきである。
- 女性団体は共同親権となった場合の弊害を訴えているようだが、そのようなケースがあるなら、それこそ裁判所がその様に対応すればよいだけの事である。
- 国に対する(法改正の)働きかけだが、知事の立場上、国会に乗り込んで行く事は出来ない。ただ、大阪府としては『共同親権意見書』も採択され府の立場としては、『共同親権』を前提とした各働きかけをしたい。
- 千葉法務大臣のこの問題に対する国会答弁はひどいものだ。 『面接交渉・・必要であればやるが、今は・・』これは役人が作った書面をそのまま読み上げたものである。(法改正を)やりたくない役人の思惑どおりだ。
- 海外では『共同親権』は当たり前である。
- 『共同親権』は政治がやらなければならない。
橋下知事の府議会での答弁が毎日新聞に掲載されました。
出典:平成22年10月21日 毎日新聞(朝刊)
単独親権制度:子どもの親権は離婚後も共同で 知事、法改正へ見解 /大阪
離婚後、一方の親しか親権を持てない日本の単独親権制度について、橋下徹知事は20日の府議会健康福祉常任委員会で、「(離婚後も)原則、共同親権で、子どもはしっかりと両親が育てる(べきだ)」と述べ、海外で広がっている共同親権制に法改正すべきとの見解を示した。浦野靖人議員(維新の会)の質問に答えた。橋下知事が離婚後の親権問題について言及したのは初めて。
近年、離婚した元夫婦間で子どもとの面会交流や学校行事の参加をめぐって争いが多発。子どもに会えない親たちが全国で団体をつくり、民法改正を求めている。橋下知事は「海外では共同親権は当たり前」としたうえで、「国会議員が真剣に議論して解決しなければならない」と注文を付けた。
滋賀県嘉田知事、会見で離婚後単独親権を問題視する
嘉田由紀子滋賀県知事が平成22年8月24日の会見で「児童虐待と親権について」述べられました。県内の虐待の実態と今後の対策、虐待の根本解決のために"両親親権"を含めての仕組み作りが必要だと指摘されました。嘉田知事が実態データと現状を考察した上で述べられた大変重い発言です。
発言の一部を下記に紹介します。詳細は、知事定例記者会見(8月24日)を参照ください。
知事定例記者会見(8月24日)リンク:http://www.pref.shiga.jp/chiji/kaiken/files/20100824.html
- 特に親族地域から孤立している若いお父さん、お母さん、何の支援もないまま、言わば子どもを育てることが孤立の子育てになってしまっているということで、こういう状態の中で行政としてはこの加害者側を確実に支援できる仕組みが必要だろうと思っております。
この間の大阪の事例でも、離婚の後、子どもさん二人をお母さん一人が養育をするという状態に追い込まれているわけです。これは、離婚の中での親権の問題なども陰にはあるんだろうと思っております。 - 加害者を単に加害者として糾弾するのではなくて、なぜ、手を出してしまったのかというところをきちんと、押さえて欲しいということで、これからより深い調査研究を指示をいたしました。
今すぐデータは出ないんですけれども、ここのところをしっかり押さえながらですね、私自身は少し大げさな言い方かもしれませんが、日本の離婚法の中に、加害者の中に離婚経験者が多いと、そして、民法の中に片親親権というのが規定されているんですけれども、これを子どもの福祉のために両親親権にするとか、あるいは確実に離婚の後、子どもがどういう状態にあるかということをですね、家庭裁判所など含めてフォローできる、そういう仕組み作りまで踏み込まないと、なかなか根本解決にはならないんじゃないのかと思っております。そのもう一つ背景には女性だけに子育ての責任を負わせてしまうという男女役割認識の文化もあると思いますけれども、そういうところまで踏み込んでですね、より深い対策が取れるようにということは指示を出しております。 - 加害の構造をより詳しく見て、そこに政策ということも大事だろうということは先ほど申し上げたようなところです。県の圏域をかなり超えてしまうところもあると思うんですが、特に離婚法であるとか、そういうところになりますとですね。ただ、やはりいろいろなケースを見ていると、根っこはかなりそういうところにあるなと、だんだん社会的理解は深まっていくと思います。
これって虐待… 母親3割に自覚
asahi.com 2010年9月13日
http://mytown.asahi.com/fukuoka/news.php?k_id=41000001009130001
■福岡の育児情報誌アンケート しつけとの境目に悩む
してはいけないと分かっていても、手が出てしまう――。育児情報誌「リトル・ママ」(福岡市)が8月、子育て中の女性に実施したアンケートで、回答した女性の3割以上が「子どもを虐待をした」と感じていたことがわかった。各地で児童虐待の事件が起きるなか、「しつけと虐待の境目が難しい」「ひとごとではない」といった母親たちの悩みや不安がうかがわれる。
以下は、厚生労働省や関係機関、最近の虐待ニュースと専門家の発言を当会が独自に集約・考察したうえで、子どもの虐待と離婚増加・単独親権制度の関係、虐待問題は社会構造的問題であることの主張です。
(1)離婚の増加と子どもの虐待
厚生労働省の平成22年1月の発表(「離婚件数及び離婚率の年次推移」)によると、平成3年頃から増加傾向にあった離婚件数が、平成9年頃から加速度的に増大し、現在、毎年約24~29万組の高位で推移しています。また、厚生労働省の「子ども虐待による死亡事例等の検証結果報告」(第5次報告)によると、全国の児童相談所における児童虐待に関する相談件数は、児童虐待防止法施行前の平成11年度に比べ、平成20年度は3.7倍に増加しており、離婚の増加と児童虐待の相談件数の増加に比例の相関関係があります(資料参照 )。
平成19年の厚生労働省の人口動態統計によると、離婚後の親権者の81.1%が母親、15.2%が父親となっています。裁判所も、離婚に際して、親権者としての個々の適格性を判断せず、母親が親権者となるよう勧めています。両親が離婚している子どもの毎年約24~29万人のうち、約20~24万人の子どもの親権者は母親となっていることになります。
厚生労働省のまとめによる平成21年度の児童相談所における児童虐待相談の統計における虐待者別の構成割合は、「実母」が60.5%と最も多く、次いで「実父」が24.9%、「実父以外の父親(継父など)」が6.6%で、平成16年度以降の推移を見てもこの割合に大きな変化はありません(資料参照 )。
(2)子ども虐待の背後に潜む構造
平成22年7月に発生した大阪市西区の養育放棄による2児死亡事件(資料参照 )を始め、ひとり親家庭または再婚家庭における子ども虐待の衝撃的ニュースは添付しているマスコミ報道の記事(資料参照 )のとおり広がりを見せています。子ども虐待は、単純に個々の虐待家庭の問題でしょうか。
どのような行政的組織を設置しても、財政的な措置をしたとしても防ぐことができないような、子ども虐待を助長する根本的な社会構造的問題があるのではないでしょうか。
神奈川県内の児童相談所の嘱託医を20年以上務める小児科医の指摘は、最近の傾向として貧困と虐待の悪しき関係(資料参照 )があることを指摘しています。「生活保護を受けている母子家庭には保護費をねらって男が群がる。母親は男と遊び回り、子どもが邪魔になってネグレクトする。男が同居すると男の子ならけ飛ばされ、女の子なら性的虐待が始まる。親の貧困は解消されるが虐待は複合してひどくなる。こうしたケースが今、ものすごく増えている。」。
「子どもの虹情報研修センター」の研究部長が、平成18年に全国で虐待により死亡した52件を分析したところ内縁の夫や継父ら血縁関係のない男性が殴るける外傷性の暴行により死亡させた例が10件あったとの結果となっています。
年間の子どもの虐待死の2割が内縁の夫や継父ら血縁関係のない男性だったということです。また、大阪市西区の2児死亡事件などのように母子家庭での虐待を含めると、子ども虐待の相当な割合が離婚家庭、再婚家庭で起きていると言えるのではないでしょうか。
(3)虐待による子どもへの影響
大正大学の臨床心理学の教授は「交通事故やいじめ、大災害などさまざまなトラウマ(心的外傷)の中でも、虐待は最も深い傷を残す」、「虐待と一口に言っても身体的虐待とネグレクト(育児放棄)、心理的虐待、性的虐待では影響は異なり、一人の子どもの中で複合している。回復は時間を要し、また個別性が非常に高いため一人一人に適切な対応が求められる。」と指摘しています。
愛知県の県立子ども病院の診療科医師は、「深刻な虐待を受けた子どもは複数の診断名がつくことが多い。それは虐待による慢性的なトラウマ(心的外傷)が脳とその発達に影響を与えるからです。」、「現実には虐待を受けた子どもの8割に何らかの医療的ケアが必要だ。現在、虐待の対応は児童相談所や福祉機関が中心で、医療体制は遅れている。」と述べています。
また、虐待された子どもが親になったとき、わが子を虐待してしまう虐待の世代間伝達(世代間連鎖)は、さまざまな研究から、虐待する親の3割に当てはまると言われています。虐待を受けてきた子どもたちが親になり、「虐待は子どもの心に取り返しのつかない傷を作る。親の愛情を最も求める時期に虐待が長い間続くことが、どんなに子どもの成長を妨げるか。自分と同じような子どもを作りたくない。私だけで終わりにしたい。」と発言しています。(資料参照 )
私達は、無抵抗な子どもたちに対するこのような悲劇を繰り返してはいけない、このような社会のしくみを変えなければいけないと非常に危惧しています。
(4)虐待を生む社会構造問題と虐待を防止するシステムの欠如
これまで述べたように、また添付しているマスコミ報道の記事のとおり、子ども虐待の相当な割合が母子家庭、再婚家庭で行われていることは明白です。
そして現行制度の中で、いくら行政組織を設置しても、財政的な措置をしても母子家庭、再婚家庭の虐待が増え続けてきたことが実態なのです。子どもにとって、見ず知らずの児童相談所の職員が虐待家庭を訪問し、子どもの心の中に入り、虐待の事実を聞くことができるでしょうか。また、虐待親から、虐待の事実を聞くことができるでしょうか。虐待している親は、たいていは虐待の事実を否定すると言われています。
このような中で、子どもたちの生活状況、生命の安全確認、子どもたちの心からの相談者となり、虐待の兆候を監視し、子どもたちのセーフティネットとなる役割を唯一、別居親が果たせるのではないでしょうか。
両親は、子どもたちが安心して、無事に、健康的に成長できるように最大限の努力をする義務があります。しかし、今の日本は、離婚後は単独親権制度のため、別居親は親権喪失理由なく親権を剥奪され、愛する子どもたちとの人間的なつながりや接触を絶たれているのが現実です。別居親は子どもたちを見守ることすら許されないのが日本の社会構造なのです。別居親は、子どもたちが虐待に会っていても、その事実を知ることができず、最悪の場合、虐待死後にその事実を知ることとなるのです。
私達、別居親の当事者団体が、先進国の世界標準である共同親権・共同監護(共同養育)の早期法制化を求めている理由は、子どもたちが虐待環境に置かれないように、子どもたちのセーフティネットになりたいという強い願いからなのです。行政組織の充実や、子ども手当ての支給を始めとした財政的な措置だけでは、子どもたちの安全の確保が図られないことは明瞭です。自分の子どもの安全は自分で守りたいと願うのは、当然ではないでしょうか。その自然な情愛を、今の日本の制度、法律がことごとく奪ってしまっていることが現実です。
子どもが安心して成長でき、「子どもの最大の福祉」が尊重される社会再生を!
裁判所は、日本の前近代的家族意識を根強く持ち、「子どもの福祉のためには別れた親に会わせない方が子どもは混乱しなくてすむ」、「子どもが自発的に会いに来るまで親は待つべきだ」、「別れた親は子どもを影からそっと見守るのか最も良い選択だ」、「別居親の面会交流は、養父らの監護権を侵害しないように、面会交流は最低限にすべきだ」という審判や決定が一般的です。
これらの意識が裁判所にあるかぎり、子ども虐待問題に対する本質的解決を図ることは困難と言えます。子ども虐待問題は、社会全体で解決を図るべき問題と言えますが、両親が、子どもが虐待されているかどうか、死んでいるかどうかも分からない、知ることができない社会構造で果たして、子どもたちに繰り返される悲劇は解決できるのでしょうか。
更新 2011-07-24 (日) 22:54:30
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