毎日新聞社への抗議・質問書
中部 共同親権法制化運動の会
平成29年5月30日
毎日新聞社「開かれた新聞」委員会御中
記事の妥当性の審査申し立て
私たちの会は、一方の親による別居時の違法な子の連れ去りとその後の別居親子の引き離し問題の解決に取り組む別居親団体です。
毎日新聞の下記の記事は、同居親側の言い分だけを取り上げた一方的かつ偏向的な記事で、別居親側の取材、記事化を怠るなど公平・公正な扱いがありませんでした。また、出典が示されないデータなどを用いて、別居親の人権を侵害するとともに、別居親に対する差別を著しく助長しています。さらに、面会交流の機会拡大で親子の絆を守ろうとする別居親の尊厳を踏みにじっています。よって、貴委員会を通じて抗議し、疑義のある記述について質問するとともに、記事の妥当性の審査を申し立ていたします。
①平成29年5月23日付東京本社版朝刊社会面
「別居の父 4歳娘殺し自殺か 面会交流に盲点」
②平成29年2月17日付東京本社版朝刊
「記者の目 親子の面会促進法を考える」
1.①の記事の問題部分について
4月に発生した事件の1か月後に出稿された続報ですが、事件発生直後の一報ではないにもかかわらず、犠牲となった松本侑莉ちゃんの母親側のみの取材で、心中を図った父親側関係者の声が記事化されていません。記事によると、神戸家裁伊丹支部で養育費についての調停、審判を申し立てたとあります。審判に移行したということは裁判と同じです。記者は母親=同居親側のみの意見を掲載しました。記者は、父親側関係者を取材・記事化しておらず、母親の主張のウラを取っていません。意見が対立する裁判マターで片方だけの声を取材し、掲載したことになります。裁判取材の基本を無視した稚拙な記事と言わざるを得ません。1か月後の続報ですから、父親側の親族、関係者からも取材する時間はあったはずです。公平・公正な扱いとは言えず、父親=別居親側を不当に貶めています。
また、「識者」として取り上げた「家事事件に詳しい」斉藤秀樹弁護士は、同居親側の声を代弁する弁護士として知られています。事実、『週刊金曜日』2017年5月19日号で、別居親=DV加害者、同居親=DV被害者と短絡的に結びつける記事を寄稿しています。
さらに斉藤弁護士によるとして記載された「米国では、裁判所が監護権、面会交流権を認めた親が子を殺害する事件が09年6月以降の7年間で475件報道されている」という箇所について、「監護親(=同居親)及び別居親の子の殺害報道は、7年間で475件」と読み取れますが、475件が全て別居親による殺害ではありません。この数値の出典と推定されるウェブサイトを閲覧したところ、むしろ監護親による子の殺害の件数のほうが、面会交流時の別居親による子の殺害の件数よりも多いと思われます。長崎県諫早市の面会交流事件を併記することにより、別居親による面会交流時の子の殺人を誇張し、面会交流は危険だとする誤った認識を読者に与えています。
厚生労働省が昨年9月16日に公表した「子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について(第12次報告)」によると、平成26年度に心中により死亡した子は27人、心中以外で虐待死した子は44人と合わせて71人の子が虐待により犠牲となりました。心中による27人の虐待死の主たる加害者は、「実母」が23人(85.2%)、次いで「母方祖父」が1人(3.7%)です。この統計では心中による27人の虐待死の内、面会交流時の件数は集計されてはいませんが、日本では離婚時に母親が親権者となる割合は8割以上となっている事を考慮すると、①の記事の「別居親による面会交流時の子との心中が多いから面会交流は危険」という前提は矛盾するのではないでしょうか。記事は、国内の実情と違う認識を恣意的に読者に作出しようとする「世論操作」に明らかに該当するのではないでしょうか。実母による子の虐待死が多くの割合を占める中、面会交流は、同居親による虐待死を防ぐセーフティネットになり得ると私たちは考えます。
なお、早稲田大学の棚村政行教授のコメントは面会交流を否定する内容で公平・公正な識者とは言い難いものです。面会交流に積極的な別居親側の意見を代弁できる識者の声も掲載しバランスをとる必要があったのではないでしょうか。そもそも、『週刊女性PRIME』(5月17日11時半の記事)によると、母親側はこのような惨事にも関わらず、面会交流を否定していません。毎日新聞の記事は面会交流の機会拡大を妨害するだけでなく、面会交流そのものを否定し、別居親の人権を侵害するとともに、別居親という「人間ひとりひとりの尊厳」を踏みにじる悪質な内容です。
※『週刊女性PRIME』5月17日11時半の記事の該当箇所:
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170517-00009681-jprime-soci
「子どもが会いたいと言うのなら父親には会わせるつもりでしたし、その気持ちを酌むのが親の役割。子どもに会えないのは寂しいでしょうし、子どもにとっても面会交流は必要です。私がお話をすることで、2度と同じような事件が起きないように、何かが変わればと思っています」
2.②の記事の問題点
この記事も別居親=DV加害者と貶める内容です。記者が取材・掲載した「識者」は岐阜大学の立石直子准教授で法成立に「慎重になるべきだ」と明言しています。さらに、早稲田大学の棚村教授の曖昧なコメントを掲載していますが、いずれにしても慎重派、反対派のみの意見で、推進派の識者の声が欠落し、公平・公正に欠けた「記者の目」となっています。意見が対立する問題は多角的な視点で取材し、論点を明らかにする記事が求められるのは言うまでもありません。
3.結論
記事は①、②とも「法案」の反対派の意見を代弁するものと言わざるを得ません。反対派の依頼を受けて、別居親=DV加害者とするストーリーを組み立てているのではないでしょうか。その内容は別居親をDV加害者と短絡視するもので、別居親の人権を侵害し、別居親に対する差別を助長しているものです。
日本は先進国では稀な離婚後の単独親権制度を採用しています。単独親権制度では、離婚に伴い別居親は、親権を放棄する意思がなくても裁判所などの国家権力により強制的に親権をはく奪されます。これこそ家庭を舞台にした人権侵害ですが、毎日新聞はこうした実態を取材、記事化しないで、別居親に対し「独善的に陥り人権侵害を行った」状態となっています。北村正任・元毎日新聞社主筆は、「開かれた新聞」委員会発足にあたっての中で、「毎日新聞は自らが犯しかねない人権侵害を自律的に、しかも独善的にならずに防止する方策を考えつづけてきました。」と記しています。今回の①、②の記事は、この理念と相反し、「独善的に陥り別居親に対し人権侵害を行っている」と言っても過言ではありません。
単独親権制度のもとで、そもそも別居親は同居親と対等でない関係で存在し、面会交流など関連する法制度が未整備の中、同居親の一方的な意思により別居親子の交流が差配され、著しく人権が侵害されています。その結果、最愛の子に会えない親が絶望し、人生の希望を失うことによる自殺者も相次いでいるのです。毎日新聞では、こうした自殺を詳しく取材した記事は皆無です。
4月の伊丹市の事件後、別居親の間では、「この父親、知っているか。なぜ、支えてやれなかったのか」という意見が飛び交いました。我々、別居親は毎日新聞や社会から差別的扱いをされているので、別居親同士で支えあっています。そして、別居親は父親ばかりではありません。子どもを奪われた母親も少なくありません。こうした母親の存在は、別居親=凶暴なDV加害者の父親という「法案」反対派のレッテルと矛盾することを指摘させて頂きます。
「人間ひとりひとりの尊厳とふれあいを重んじます」という毎日新聞の基本理念を私達は素晴らしいものと考えています。親が子ども愛し育てる権利は基本的な人権の一つであります。この基本的な権利を剥奪するには、然るべきエビデンスが必要とされるのであり、別居親というだけでDV加害者であると印象づける記事は、罪のない別居親の人間としての尊厳を毀損するものであります。①と②の記事は、貴社の理念を忘れてしまったずさんで偏向した記事と指摘せざるを得ません。
さらに、我々は、記事に対し以下の疑義を持っており、
「親が子を殺害する事件が09年6月以降の7年間で475件報道されている」というデータの出典及び根拠を明らかにし、同居親(監護親)、別居親による殺害の件数を併記したうえで、正しい情報を読者に伝えるべく訂正、謝罪を求めます。
回答につきましては、委員会での審議を終え次第、下記連絡先に書面で郵送をお願いします。
以上
【連絡先】
中部 共同親権法制化運動の会
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