民法819条(単独親権制度)改正を求め共同親権・共同監護制度の導入・ハーグ条約締結の推進と活動を行っています

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プレゼントを捨てられる〜単独親権の悲劇

出典:令和2年2月11日 Yahoo!ニュース

プレゼントを捨てられる〜単独親権の悲劇

田中俊英 一般社団法人officeドーナツトーク代表

■離婚に伴う「別居親」の悲劇
DVや児童虐待が注目されるため、離婚に伴う「別居親」の悲劇はそこに回収され見えにくくなる。我が国の年間の離婚件数は3組に1組で20万組強、そのなかでどれだけの「悲劇」が隠されているかはわからないが、DVや児童虐待よりは確実に多いはずだ。
こういきなり一般化してもなかなか想像できないが、DV・虐待等の特殊事例以外の、多くの離婚カップルに見られる「連れ去り別居」に伴う悲劇は、メディアではほぼ報じられていない。
それは、DV・虐待のハードな事例の影響もあるのだが、「離婚過程ではたいていは女性が弱者」という固定観念や、それとほぼ同じだが「離婚に至る原因はほぼ夫側が悪い」といったこれも固定観念が背景にあると思う。
現実は、妻側が泥沼離婚を避けるため一歩引いたのだが、日本の単独親権制度のリジッドな壁に阻まれ、日々涙するというパターンもある。また、妻側の祖父母と結託して元夫を排除し、妻-妻の父母という三角形が子を取り込んでいくパターンも珍しくない。
メディアでは報じられない+「離婚したのは別居された側が悪い」という根拠のない批判から、いわゆる別居親は社会的ポジションを失い、鬱に追い込まれる。
■自死を選んでしまった別居親
また、少数のDV等事例を根拠に発信していくNPOの存在感にそれら別居親は追い込まれている。そうしたNPOは、DV支援をする立場から目立ちにくい事例(DVはないが排斥された別居親)を「ないもの」として処理していく。
DV被害者たちを守るためにそれらNPOは極端な議論に走る。DV被害者を守れ、そして加害者を糾弾せよ。
そうした単純な議論が、多数の「潜在化される別居親」の声を隠していく。
僕はそうした別居親たちへの面談支援を時々行なうが、テレビや新聞という「オールドメディア」ではなかなか報じられない悲劇が面談中には溢れている。
別居親たちは涙している。それを具体的に書くとかなりの個人情報に触れるため表現が難しいのだが、とにかく泣いている。
そのことを、僕は知ってほしいと思う。
極端な事例では、送ったプレゼント(多くは誕生日プレゼント)を、義理の祖父母が子の目の前で破壊したり捨てる場合がある。
そこまでいかずとも、別居親から届けられたプレゼントを、問答無用で送り返すことはよくある行為だ。
こうした行為の積み重ねに衝撃を受け、自死を選んでしまったであろう別居親も少なからず存在するだろうが、メディアでは伝えられない。
■思い切って子にプレゼント(アナユキグッズとか)を送ってみたけれども、送り返されてしまった
こうなると、DVや虐待といった「派手な」事例にのみ着目するNPOは、それら派手な事例に引っ張られてしまう罪作りな存在なのかもしれない。
DVや虐待は当然防止する必要があり、そのためのそれらNPOの存在なのだろう。
けれども、それらの影に隠れて日々泣いている別居親たちが存在する。
自分は、DVも虐待も関係ない。けれども、離婚の理由にそれらを相手方に持ってこられ、真偽を確定されないうちに子を連れ去られてしまった。
そして、想像もしていなかった長期間、我が子と会うことができない。
この事態は何なのだろうか。
思い切って子にプレゼント(アナユキグッズとか)を送ってみたけれども、送り返されてしまった。
最悪の場合は、目の前で捨てられることもある。「紙」のプレゼントであれば、別居親の目の前で(そして子の目の前で)そのプレゼントは破棄あるいは破り捨てられる。
そんな権利は誰にある?
「連れ去ったもの」がその権利を持つのだろうか?

離婚後共同親権の導入検討=福岡大教授・小川富之氏

出典:令和2年2月11日 毎日新聞

離婚後共同親権の導入検討=福岡大教授・小川富之氏

 法務省が離婚後の子育てに関する法制度を検討する研究会を設置した。論点の一つが親権=1=制度だ。日本は父母が離婚した場合、一方が親権を持つ「単独親権」制度だが、離婚後共同親権の導入に向けた国会議員の活動が活発化し、肯定的な報道も相次いでいる。問題はないのか。欧米の家族法制に詳しい福岡大・小川富之教授(家族法)に聞いた。【聞き手・中川聡子】
※以下、紙面参照

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大きく後れを取る日本の養育費制度、海外では給与から天引き徴収も

出典:令和2年2月9日 マネーポストWEB

大きく後れを取る日本の養育費制度、海外では給与から天引き徴収も

「こんなひどい国は先進国で日本だけ」――これは、養育費の未払い問題に関する兵庫県明石市の泉房穂市長の発言だ。日本では母子家庭で養育費を受け取っている割合は24.3%に過ぎない現実がある(厚生労働省『平成28年度全国ひとり親世帯等調査』より)。
 だが、16年ぶりに最高裁判所が養育費算定表を改定、新算定表では増額傾向となり、また、自治体が回収代行や公文書作成費用補償などの支援開始を準備始めた例もある。明石市もそうだ。はたして日本は「ひどい」のか。確かにOECD(経済協力開発機構)の調べによると、日本のひとり親世帯の相対性貧困率は54.6%と、先進国の中では群を抜いて高い。
 アメリカイギリスオーストラリアでは養育費を給与から天引きして強制的に徴収するほか、フランススウェーデンでは国が立て替えている。韓国では、受取率が17%くらいしかなかったのが、2015年3月からアジア初の養育費確保の支援機関ができて、養育費回収率が33%程度にまで上がった。
 滞納した場合は、不払い者の運転免許の停止やパスポートの停止など、厳しいペナルティーが待っている。なかでもアメリカでは不払いの親がピザを注文した場合、宅配されたピザの箱に顔写真付きで「養育費を払いなさい」と書かれた紙が貼られることもあり、韓国では「バッドファーザーズ」として、不払いの親の身元をネット公開することが“公益のため”とされているほど。

「養育費も面会交流も子供の権利だという意識が徹底されています。義務教育と同じ扱いで、国は無償で保障しなければならない。だからそこに税金を使ってもいいという国民の同意があるんです。面会交流施設も身近にあって、元夫婦が顔を合わせなくても安全に面会できます。
 日本は、まだまだ離婚は当事者が悪い、という個人責任論が多い。養育費を支払うのは親の義務という教育と、それをサポートする国の体制づくりが必要だと思います」(離婚問題に詳しい榊原富士子弁護士)
 ただ、諸外国と比較すると、離婚後も父母両方が子供に対する親権を持つ「共同親権」が導入されている点が、「単独親権」をとる日本とは大きく異なる。2019年11月22日には、親権を失った親が子供との交流を絶たれるのは違憲だとし、別居親らが東京地裁に集団訴訟を行った。
 子の養育に必要なことは何か──少しずつではあるが、潮目は変わり始めている。
※女性セブン2020年2月13日号

子の連れ去り規制、「国は未整備」 当事者ら集団提訴へ

出典:令和2年2月9日 朝日新聞

子の連れ去り規制、「国は未整備」 当事者ら集団提訴へ

 国は子の連れ去りを規制する法を整備せず、立法義務を怠っている――。配偶者らに子を連れ去られたと訴える男女14人が近く、国に国家賠償を求める集団訴訟を東京地裁に起こす。国境を越えた連れ去りについて定めたハーグ条約に加盟しているのに、国内の連れ去りを「放置」しているのは違憲・違法だとし、国の責任を問うという。

 ハーグ条約の定めでは、片方の親が一方的に16歳未満の子を国外に連れ去った場合、残された親の求めに応じ、原則として元の居住国へ引き渡す。ただ、国内の連れ去りについては条約の対象ではない。
 原告は配偶者との間に未成年の子がいる日本籍や外国籍の14人。配偶者に子を連れ去られ、親権や監護権が侵害されていると主張。国内での一方的な連れ去りを禁止する法規定がなく、「子を産み育てる幸福追求権を保障した憲法13条に違反し、連れ去られた子の人権も侵害している」として、原告1人あたり11万円の支払いを求める。
※以下、紙面を参照ください。
20200209朝日新聞

円満離婚へADR助成 港区「子どもの健全な成長のため」

出典:令和2年2月1日 東京新聞

円満離婚へADR助成 港区「子どもの健全な成長のため」 [#v323e3ed]

 港区は三十一日、親の離婚によって子どもの生活が不安定にならないよう、離婚前後の弁護士への相談費用や、裁判でなく第三者が関与して話し合いで解決する「裁判外紛争解決手続き(ADR)」を利用する際の費用の一部を助成する。
 区によると、区内の離婚率は2・32%と二十三区では中央区に次いで二位。区に寄せられる家庭相談でも「約束した養育費を払ってくれない」などといった相談が目立つという。
 離婚に際して夫婦が取り決めをする子どもの親権や養育費、面会などについて弁護士や、都内四カ所ある民間のADRを利用する際に費用の一部を補助。そのほか民間の保証会社を利用して養育費の保証契約を結ぶ際にも補助する。区役所で行う弁護士への相談は無料、ADRは初期費用と一回目までの相談費用の一部を助成する。
 子どもの心理面での負担を最小限にするためにも、別居した親との定期的な面会も支援する。民間の支援機関が面会交流を支えており、初回相談料と十二回分の費用を支援する。
 区の担当者は「子どもの健全な成長のため、ひとり親支援ネットワークを構築し情報提供したい」と話した。 (市川千晴)

東京都港区、離婚トラブルのADR費用を助成 20年度

出典:令和2年1月31日 日本経済新聞

東京都港区、離婚トラブルのADR費用を助成 20年度

東京都港区は31日、養育費不払いなどの離婚トラブルの解決を支援する事業を2020年度に始めると発表した。裁判外紛争解決手続き(ADR)の費用を一部助成するほか、中学生以下の子どもと別居する親との面会も手助けする。養育費の不払いなどが原因でひとり親世帯が経済困窮するのを防ぐとともに、子どもへの心理・経済的な負担をやわらげる。
ADRは裁判ではなく第三者を交えての話し合いで問題を解決する仕組み。申し立てと1回目の相談の費用を5万円まで助成する。同区によるとADRの費用助成は全国で初めてだ。
離婚の際には養育費の支払いや子どもとの面会などについて、夫婦間できちんと取り決めがされないまま別れるケースがある。ADRを通じて解決を促す。
ADRを使わず、養育費の不払い分の立て替えと離婚相手から回収する契約を保証会社と結ぶ場合にも、5万円を上限に助成する。
また、離婚後に別居している子どもとの面会のルールを決めている親を対象に、面会のコーディネートをする。親同士で取り決めをしていても何らかの事情で会えない場合があり、円滑な面会を支援する。
離婚を考えている人が弁護士に相談できる体制もつくる。同区は離婚に関する支援事業に20年度予算案で367万円を計上した。

「離婚国家」の親権は?

出典:令和2年1月26日 Yahoo!ニュース

「離婚国家」の親権は?

田中俊英 一般社団法人officeドーナツトーク代表

■変な国
日本はやはり変な国で、その変な国をリードする霞が関も変な行政組織だ。
それは、ここ数日報道されている「養育費を行政予算で」という政治家や民間からの要望に前向きな法務省の姿を見てもわかる(離婚後の養育費不払い 国が立て替える制度導入を要望)。
当欄でも度々触れているように、養育費等の離婚後の補償問題を考える時、その「離婚」のかたちがポイントになる。
日本はそのかたちが「単独親権」であり、離婚後はどちらかの親に親権が偏ってしまう。
この単独親権国家は世界でも珍しく、「北朝鮮と日本だけ」はオーバーにしろ、G20のなかでの単独親権国家は、日本・インド・サウジアラビア・トルコ程度なのだそうだ(法務省も研究会立ち上げへ!離婚後の親権制度、日本ではどうあるべき?単独親権派と共同親権派が討論)。
養育費を考える時、離婚後の親のあり方をまずは考え尽くす、という態度が僕には当たり前のように思える。
夫婦は、その夫婦なりの理由があるとはいえ、とにかく離婚することになった。そうなった時、日本は「単独親権」に移行し、親権を奪われた親(父親が大半)は親としてのすべての権利を剥奪される。
この離婚に至るエピソードに、不倫やDV、児童虐待も含まれるため、我が国ではなんとなく「離婚したのなら親権がなくなってもしかたないだろう」という風潮が蔓延している。そうした風潮をもとに、離婚後単独親権のシステムは我が国にでは明治以来変わらない。
■『離婚国家」
離婚した方ならわかるだろうが(ちなみに僕もバツイチ)、その原因はなかなか一つに絞り込むことは難しい。法律情報サイトの調査によると、心理的暴力(ことばの暴力)も含んだ暴力に関する離婚原因は半数近くに及ぶ(妻からの離婚理由離婚原因ランキングと裁判で認められやすい離婚原因)。
けれどもこの調査は重複原因も認めているので、やはり離婚原因をひとつに絞り込むのは難しい。日本はすでに 3組のうち1組が離婚する「離婚国家」になっており、それが30%にまで登ってしまうと、もはや「結婚とはそもそも破綻するもの」といってよく、その原因に関して細かく分析しても仕方ないのかもしれない。
とにかく、結婚すると、その1/3は別れる。その原因はさまざまにしろ、別れる。中には激しいDVや虐待も含まれるが、それは福祉+警察案件だ。そのなかには事件化してしまう場合もあるだろうが、年間20万件の離婚数と比較すると少数案件だと思われる。
その場合は、他の事件と同じように警察案件化するしかない。親権云々を語るのとは別のレベルで、逮捕・送検・裁判というコースを辿るしかない。こうした特殊事例を元にして、「親権」問題(単独親権か共同親権か)を語るのは、議論のレベルが異なる(ちなみに僕は虐待犯罪も熟考している→ことばの苦しさ〜児童虐待死が迫ってくる)。
■カントと「親権」
だから、まずは「親権」問題が先にある。単独親権派は、上に書いた警察案件をまずは心配している。DVや虐待の支援を行なうNPOや弁護士からすると当たり前かもしれない。
けれどもそれは、親権という「基礎的レベル」を議論する場所とは別の次元にある。暴力と警察案件は、親権という基礎的レベルと同じレベルで語ることはできない。
親権という「基礎」「土台」は、まずはそれ自体で語り考え結論づける必要がある。それは、その土台の「上」で生じるであろうさまざまな出来事に影響されてはいけない。
それはまるで、カントが『純粋理性批判』や『実践理性批判』で基礎づけした理性や道徳と同じだ。時間と空間や絶対道徳は、すべての問題の「先」にある。すべてのものを基礎付けるものとしてそれらは存在している。家族関係・問題における「親権」とは、カントの時空や道徳と同じ位置にある。
だから、「養育費」は、そうした基礎的問題を位置づけたあとに現れる事柄なのだ。家族や親権問題でいうと、親権を「共同親権」か「単独親権」か、その土台と基礎を位置づけたあとにやっと現れる問題である。
この「順番」が、弁護士やNPOたちにはわからない。目先の訴えに気軽に飛びつく。その訴えをしている人々も看過はできないが、その訴えの影に隠れた何十倍もの「(離婚)当事者たち」をスルーする。離婚し、親権を奪われ、現在話題の「子どもの連れ去り(誘拐)」の被害に遭い、日々泣いている別居親たちがそこにいる。
別居親たちの「涙」を救済するには、養育費の問題の前に、「親権」をどう位置づけるか、という重要問題がある。まずは、他のG20なみに共同親権にする時がいまやってきている。

子どもを訪ねて有罪に…在日豪州人サッカー記者が逮捕。問われるべき日本の重大な人権問題

出典:令和2年1月26日 Yahoo!ニュース(フットボールチャンネル)

子どもを訪ねて有罪に…在日豪州人サッカー記者が逮捕。問われるべき日本の重大な人権問題

 日本を拠点に活動するオーストラリア人のフットボールジャーナリスト、スコット・マッキンタイア氏のことを知る者は少ないだろう。彼は自分の子どもに会おうとした行動を咎められ逮捕されたうえ、45日間の勾留の末、先ごろ裁判で有罪判決を下された。なぜそのような事態に至ったのだろうか。キーワードは「片親誘拐」。スポーツ界にとどまらず、スコットが身を以て問いかけるのは日本社会が黙認、そして放置してきた重大な人権問題だ。(取材・文:植松久隆【オーストラリア】)

スコット・マッキンタイア氏のツイッターでの最後の投稿は昨年11月24日のものだ【写真:Twitter(@mcintinhos)】

●「片親誘拐」と書かれたTシャツを着て

 1月16日、某英字紙のウェブニュースに上がった一枚の写真に心を揺さぶられた。

「こんな彼の姿を見ても、何も行動しないままでいいのか…」

 そんな自問が浮かび、消えなかった。

 当稿でこれから語る事件の発生を知ってから約1ヶ月、ようやく今「自分のやれることで彼の力になろう」と意を決して、この原稿の筆を起こすことができた。

 その写真に写った男は、誰の目にも明らかなくらいに憔悴している。いくら暖冬とは言えども、真冬の日本には似つかわしくないカーキ色のロングTシャツ。その胸には「片親誘拐」と手書きで書かれている。その表情には、ただやつれているだけではない、内に秘めた闘志と諦めない強い意志が強い眼光と併せて、しっかりと見て取れる。

 ところで、この記事をここまで読み進めた読者のどれだけが、この写真の人物にどんな災禍が降り掛かったかを知っているのだろうか……その答えは、残念ながら極々わずかに留まる。

 というのも、この写真の人物に関わる記事が、日本の日本語メディアで活字になるのは、おそらく、今読み進めているこの記事が初めてで、日本のメインストリームのメディアは一切関心を示さずスルーしているからだ。

 男の名は、スコット・マッキンタイア。46歳のオーストラリア人で、フリーランスのジャーナリストを生業としている。その専門はフットボールで、本国や英字メディア業界ではアジアのフットボール通としてとみに知られた存在だ。

 母国・豪州の準国営放送『SBS』勤務時には、同国で長く愛されるフットボール情報番組『ザ・ワールド・ゲーム』に出演していたので、それで彼を知る豪州滞在経験者も多少はいるだろうか。ちなみに、筆者と彼は、かつて同じ豪州をベースにしていた同業者として良く知る仲だ。

●突然の逮捕。そして45日間におよんだ勾留

 そんなスコットにまつわる予期せぬニュースが飛び込んできたのは、昨年12月19日。英字紙『ガーディアン』の日本特派員ジャスティン・マッカーリーによる記事だった。そこには、スコットが2015年から活動のベースとしていた東京で11月28日に逮捕され、およそ3週間が経ってもまだ勾留されているという衝撃の事実が綴ってあった。

 その罪状は「住居侵入罪」、いわゆる不法侵入。昨年5月、日本人の妻が突然どこかへと連れ去って以来、行方が分からない2人の子どもたちの所在を確認するために、都内に住む義理の両親のマンションの共用スペースに入ったことを咎められたものだ。

 本来であれば、逮捕すらしないような状況で通報を受けた警察が具体的に動いたのは、不可解なことに実際のマンション“訪問”から、およそ1ヶ月後。スコットは、突然自宅にやってきた警察に逮捕拘引された。

 この経緯を踏まえても、この逮捕には作為的なものを感じずにはいられない。仮に、同じ状況が日本人男性によって引き起こされたとして、その日本人男性は1ヶ月後に突然、拘引されたりするだろうか。さらには、後述するような長きに渡る勾留を強いられるだろうか。

 筆者は、スコットの今回の事件がどうしても他人事には思えなかった。それはニュースになった当の本人をよく知っているからという“同情心”だけでは決してない。筆者とスコットには、共通点が多くある。まずは、同い年。そして、共に日豪ハーフの2人の子どもの父親で、フットボールを愛し、上述したようにフットボールをメインに執筆する書き手としての同業のよしみもある。

 スコットに起きたことは、立場を変えれば筆者にだって起こりうる。関係がうまくいかなくなった国際結婚のカップル間で大きな問題になる、いわゆる「片親による子どもの連れ去り」は、どの国際結婚カップルにとっても決して「対岸の火事」たり得ない。筆者の知る範囲でも、離婚・別居後の子どもの養育をめぐって鋭く対立する破綻した国際結婚カップル、そこからエスカレートしての連れ去りというケースは決して少なくない。

●国際社会から非難を浴びる日本のロジック

 国際結婚カップルの破綻後の子どもの庇護養育に関する問題は、過去最高ともいわれる日豪関係で捕鯨問題と共に数少ない対立項として存在する。日豪両国の子どもの連れ去りに関しての法的な解釈の違いをここで詳述する必要はないが、現実問題として、日本はハーグ条約(国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約)締結国ながら、日本人の親(そのほとんどが母親が日本人というケース)による「連れ去り」が後を絶たないという現実を直視しなければならない。

 そういった日本人の親の国内での連れ去りが犯罪とならないのには、からくりがある。日本でも「国内で子である未成年者を略取、誘拐」すれば犯罪(刑法224条)なのだが、「母親が子を連れて実家に帰る、どこかへ逃げる」といったケースが犯罪にならないのは、普通はその行為が暴力を用いて連れ去る「略取」にも、嘘や甘言を用いて連れ去る「誘拐」にも該当しないからというロジックがある。

 それがゆえに、日本はハーグ条約の締結国でありながら、実際的には条約の不履行が横行しているとの批判を、連れ去られた側の親の出身国を中心とした各国から浴び続けている。そして今回のスコットのケースも、まさにその最新事例の1つということになる。

 今回のケースで、スコットの妻子は突然、姿を消した。夫婦間での婚姻関係のあり方に関わる話し合いは始まっていたとは言えど、彼の立場からすれば、突然の失踪だけに妻が子どもを「誘拐」したという認識になる。

 これに関しては、妻側の主張が聞こえてこないのでバランスを欠くと言われる可能性はある。ただ、姿を消してからは、妻の携帯電話、メールなどの連絡先はすべて変えられ、妻からの連絡もすべて代理人である弁護士を通じてに限られるところに、妻の意志が透けて見える。

●日本は真の意味で「近代的国家」なのか?

 2015年に日本に居を移してからのスコットは、本業以上に2人の子どもの養育に力を入れていたと共通の知人づてに聞いていた。そんな彼が子どもを心から愛していることに疑いの余地はない。それでも、1月15日の公判では、「禁錮6ヶ月、執行猶予3年」の執行猶予付きの有罪判決が下された。連れ去られた我が子の行方を知りたかっただけのスコットは「犯罪者」になってしまった。

 執行猶予がついてようやく自由の身になれたものの、実に45日間にも渡った勾留期間でスコットが心身ともに受けた大きなダメージは測り知れない。まずは、その回復こそが先決だ。しかも、彼は勾留期間中に家族で住んでいた住居の退去を余儀なくされて、住むところもなく、今は、支援者である友人の家で居候の身。収入の道も断たれ、今後の子どもたちを取り戻すための活動の資金も友人たちが立ち上げたファンド・レイジングや豪州の家族頼みとならざるを得ない。その前途は決して楽観できるものではない。

 それでも、スコットは諦めない。そのシャツの胸に書かれていた「片親誘拐」の文字に彼の不退転の決意が透けて見える。8ヶ月以上会うことも許されない子どもたちの居場所を突き止めて、何とか自分の元に取り戻すという強い気持ち。そして、自分だけではなく同じ苦しみを持つ多くの人々のために決して諦めないという強い意志、さらには、どこかでその写真を見るであろう妻への牽制の意味も込められているのかも知れない。

 近しい友人で、豪州から支援を続ける同じフットボール・ジャーナリストのポール・ウィリアムスは、スコットのこれからの動きの展望を以下のように語ってくれた。

「今回の問題は、もうスコット個人の問題というレベルでは収まらない。というのも、世界では何千人もの親たちが同じような状況下に置かれていて、そのこと自体がとても心を裂かれるようなことなのに、近代的国家であるはずの日本では、そういう事実がまったく反映されていない。(中略)スコットは、まずは自分の生活を取り戻しつつ、引き続き子どもたちを取り戻すために闘い続けると同時に、多くの親たちがその子どもと再び一緒になれるように働きかけていくだろう。そして、私や彼の世界中の友人の全ては彼のその闘いを心からサポートしていくことになる」

●「時間的空白」を埋め、幸せを取り戻すために

 今回、この記事を書くにあたって、スコット本人にメールで報告するとすぐに丁寧な返事が戻ってきた。

 私信ではあるが、一部をここで公開しよう。

「タカ、温かいメッセージをありがとう。日本語で、どんなものでも書いてもらいたい。というのも、多くの一般の日本人はこの問題(筆者注:片親による子どもの連れ去り)についてまったく知らないし、それを知ったときにはショックを受けるはず。だから、日本に(この件に関しての)どんな関心でも惹き起こすことは、僕らの子どもたちすべてにとって歓迎すべきことなんだ。(中略)まずは、住むところを見つけて、しっかりと落ち着かなきゃだけど、なんとかすぐにそれらの心配が片付くように願っている。そうしたら、またゆっくり話そう」

 この原稿を書いている間に、スコットのツイッター・アカウント(@mcintinhos)を久々に覗いてみた。これまでは日本をはじめとしたアジアのフットボールネタが頻繁に更新されていたアカウントの最後の更新は、2019年11月24日。彼の突然の逮捕のわずか4日前だ。

 その後、45日間も勾留されていたので、当然ながら、その間のツイッターの更新はない。この時間的空白が彼の苦難が続いていることを示す1つの指標となるのかも知れない。彼が、ツイッターでまた愛するフットボールのことを気楽につぶやけるような日は訪れるのだろうか……。

 スコット自身の名誉回復と、父親としての権利回復への長い闘いは始まったばかりだ。彼は、その闘いの有り様を、フットボールに替わる彼自身のほとばしるジャーナリズムの情熱の対象として、書き記していくことでアピールしていくのだろうか。なるべく近い将来、彼が求めるものを手に入れたその時、誇らしげなツイートがまた投稿されると信じて待つことにしよう。

 Never give up, mate. We football family are always with you.

<追記>
公判で、検察側はスコット・マッキンタイアの家庭内暴力を主張。なお、マッキンタイア氏は、公判後の日本外国特派員協会での会見で記者の質問に答えるかたちでも、そのことを明確に否定している。

(取材・文:植松久隆【オーストラリア】)

子供訪ね住居侵入で起訴の豪男性、日本で有罪 共同親権訴え

出典:令和2年1月23日 BBC NEWS JAPAN

子供訪ね住居侵入で起訴の豪男性、日本で有罪 共同親権訴え

子供を訪ねて、義理の両親が住むマンション共用部分に侵入したとして、住居侵入罪に問われた日本在住のオーストラリア人男性が15日、東京地裁で懲役6カ月、執行猶予3年の有罪判決を受けた。
豪民放SBSのサッカー・ジャーナリストだったスコット・マッキンタイヤ氏は昨年11月、義理の両親が暮らすマンションの共用スペースに侵入したとして逮捕された。
家族との関係が破綻した5月以降、子供に会っていなかったという。
日本は先進国としては珍しく、父母が婚姻していないと、共同親権が認められない。

「文明社会の一員になってほしい」
マッキンタイヤ氏は、不法侵入について謝罪。10月に日本を襲った台風19号「ハギビス」の後、子供たちが無事だったかを確かめたかったと話した。
妻について、現在11歳と8歳の子供を誘拐し、連絡を取れなくしたと非難している。
一方、マッキンタイヤ氏の元パートナーは、同氏に暴力を振るわれたとしている。同氏はこれを否定している。
同氏は逮捕から裁判まで1カ月以上勾留された。照明がついたままの部屋に閉じ込められ、風呂は不定期にしか入れなかったという。

判決の言い渡しで、東京地裁の多田裕一裁判官は、「この刑は軽いものではない」と述べた。
一方、「侵入場所は共用スペースで、無理やり押し入ったわけでもない。前科もなく、二度と同じことはしないと法廷で誓った」として、情状を酌量した。
判決後、マッキンタイヤ氏は「私や他の親たちは、日本が文明社会の一員となり、共同親権のシステムを導入してほしいと願っている」と語った。
「私は、声を上げられない誘拐された子供たちに代わってここにいる。現代社会はこうあるべきではない。子供には2人の親が必要だ」
(英語記事 Man freed after arrest in Japan child custody row

日本のシステムはクレイジー」海外メディア 我が子の安否確認に行き有罪 豪男性はもう1人のゴーンか?

出典:令和2年1月21日 Yahoo!ニュース

日本のシステムはクレイジー」海外メディア 我が子の安否確認に行き有罪 豪男性はもう1人のゴーンか?

飯塚真紀子(在米ジャーナリスト)

 日本の司法制度の問題が世界に露呈されてしまったカルロス・ゴーン氏の逃亡劇。
 ゴーン氏は会見で、日本の司法制度を痛烈に批判し、自分は日本の司法制度の犠牲者だと主張したが、同様の思いを抱いているのは同氏だけではないようだ。
 オーストラリアのSBSネットワークの元スポーツ・ジャーナリスト、スコット・マッキンタイヤ氏もまた、日本の司法制度の問題を訴え、同氏の声は米紙ニューヨーク・タイムズや英BBCニュースなど欧米のメディアで報じられた。

我が子の無事を確認に行ったら、不法侵入に
 マッキンタイヤ氏は、昨年10月末、大型の台風19号が東京を襲った後、妻に連れ去られたという子供たち(11歳の娘と7歳の息子)の無事を確認に、子供たちが住むアパートの共有エリアに入った。しかし、それから約1ヶ月経った昨年11月28日、不法侵入の容疑で逮捕され、44日間拘留されてしまったのだ。
 1月10日、マッキンタイヤ氏は保釈金を払って釈放された。1月15日に東京地裁で行われた裁判で、検察側は同氏が娘に暴力をふるったと主張したが、同氏はそれを否定。結局、同氏には懲役6ヶ月、執行猶予3年の有罪判決が言い渡された。
 裁判所から出てきた同氏は、共同親権制度がない日本の問題を強く訴えた。
「子供たちにはもう250日間会えていない。何の説明もなく、妻に“誘拐”された。家庭裁判所は親による子供の連れ去りを調査しようとしない。僕の場合、警察に何度も行き、調査するように頼んだが、警察は何もしなかった。日本の親権法は子供の“誘拐”を助長している。連れ去られたのは日本に共同親権制度がないからだ。共同親権は基本的人権だ。僕は、子供が連れ去られたフランスやイタリア、ドイツアメリカ、カナダ、アジア、アフリカなどの国々の親たちのために立ち上がっている。何より、日本の親たちのために立ち上がっている。日本は文明社会の一員となって、共同親権制度を導入してほしい」
 なぜ、同氏が不法侵入から1ヶ月以上も経ってから逮捕され、長期間拘留されたのかは不明だ。また、最初に同氏が保釈金による釈放を求めた時は、証拠隠滅や国外逃亡の恐れがあるという理由で、釈放が認められなかったという。
 この事件について、米紙ワシントン・ポストは「日本、子供たちに会おうとしたオーストラリア人を有罪に」というタイトルで、US News and World Reportは「オーストラリア人男性、日本で、子供を探すために侵入、逮捕された後、釈放される」というタイトルで、日本の司法制度や共同親権制度がない問題を報じている。
 マッキンタイヤ氏は昨年5月まで妻や子供たちと一緒に暮らしていた。しかし、妻が両親と一緒に住みたいという理由で子供たちを連れ去り、それ以来、妻とコンタクトが取れず、子供たちに会うことができない状況だ。警察や妻の弁護士(同氏と妻は離婚調停中だった)に子供たちの無事を教えてほしいとリクエストしたが、拒否されてしまったという。
 同氏は拘留中の体験をこう語っている。
「24時間、灯りがつけられた。弁護士が同席することなく、尋問された」
 これは、ゴーン氏が記者会見でした主張と重なる。

日本の司法制度はクレイジー
 このマッキンタイヤ氏の逮捕・拘留について、オーストラリアのABCニュースは「日本の司法制度はクレイジーだ」と非難する同氏の両親のコメントを伝えた。
「第一、アパートに入っただけで拘留されるなんて信じられません。オーストラリアなら、これは軽犯罪で、100ドル払えば釈放されます。日本では、事情を説明する機会さえ与えられず、何ヶ月も拘留されます。クレイジーなシステムです」
 また、同ニュースは「先進国とは違い、日本には共同親権制度(離婚後も父母の両方が親権を持つ権利)がなく、裁判所が命じた面会権(離婚した親が、他方の親の元にいる子どもに会う権利)はしばしば無視され、それにより処罰を受けることもない」と司法制度における日本の後進国ぶりを批判している。

安倍首相に問題提起
 片方の親が、もう片方の親の同意なく、子供を連れ去った場合、国際的にそれは“誘拐”あるいは“拉致”と見なされる。日本にはそのようなケースが多数あり、子供を連れ去られた親の方は子供に会えない状況となる。昨年11月には、子どもの養育に関われなくなった親たちが、単独親権制度は違憲であるとして、国家賠償訴訟も起こした。
「日本には親権を擁護しようという意思がなく、このことは国際的に批判されています。日本の法律は非常に旧態然としている。アメリカドイツなど他の国々もかつては片方の親が親権を持つ単独親権制度を採用していましたが、30年前に法律を変えたのです。日本は遅れを取らないようにする必要がある」
と共同親権導入に取り組む串田誠一議員は前述のABCニュースで主張している。
 昨年、EU加盟国の大使20名以上が日本政府に文書を送り、子供が親に会う権利を尊重するよう日本側に求めた。フランスのマクロン大統領とイタリアのコンテ首相も、安倍首相にこの問題を提起したという。
 日本の司法制度の後進国ぶりは、ゴーン氏の逃亡劇を機に、マッキンタイヤ氏のように日本で人権無視のような拘留劇や親権問題を目の当たりにした外国人の声も加わって、これからも世界に露呈されて行くかもしれない。

豪男性、日本で45日間勾留執行猶予付きの実刑

出典:令和2年1月17日 NICHIGO PRESS

豪男性、日本で45日間勾留執行猶予付きの実刑

元妻のハーグ条約違反で拉致された子供を捜し

 2015年以来日本に住んでいるジャーナリストのオーストラリア人男性は、別離した妻が子供2人を祖父母のところに連れて行ったまま、二度と帰って来ず、連絡も絶ったため、面会権など父親としての権利を否定された男性は、妻の弁護士、警察などに被害を訴えた。しかし、何の進展もないため、妻の祖父母が住んでいるアパートの共有部分に入り、祖父母のドアをノックし、子供の安否を尋ねた。その後、1か月してから、「家宅不法侵入罪」で逮捕され、45日間勾留の上、弁護士の付き添いなしで取り調べを受けるなどした。日本人妻が子供を連れて日本に逃げ帰る事件は頻発しており、日本国内では連れ帰った女性側に有利な法的慣習があることとオーストラリアでは既に過去のものになったような日本の司法制度が再び先進諸国の関心を集めている。

 シドニー・モーニング・ヘラルド紙(SMH、電子版)が伝えた。

 この男性、スコット・マッキンタイア氏は、結局、裁判で禁固6か月、執行猶予3年の判決を受けた。国際結婚が破綻し、片親が子供を連れて出身国に帰ってしまう事例が大きな問題になっている。そのために、1980年に「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約」通称ハーグ条約が採択され、1983年に発効している。また、日本は長年抵抗していたが2013年に国会で条約承認、2014年発効に至っている。しかし、日本の条約承認は形ばかりであり、現実には条約違反が横行しているとの批判は以前から根強い。

 マッキンタイア氏は東京に本拠を置くスポーツ・ジャーナリストで、オーストラリアの弁護士や法律問題専門家は、「日本ではドメスティック・バイオレンスが関わっているかどうかと無関係に片親による拉致が司法によって大目に見られており、子供との面会の権利を奪われた側が子供に面会しようとしたり、元の状態に復帰させようとすると逮捕されることになる」と語っている。

 日本の司法制度は、元日産会長のカルロス・ゴーン氏の長期拘留で世界の先進国の注意を惹いたばかりで、日本の司法制度が再びネガティブな注目を浴びることになった。
■ソース
Australian father Scott McIntyre freed in Japan after arrest for seeking kids

国際結婚の破綻、国内で紛争に 豪男性、子に会おうと妻の実家に侵入

出典:令和2年1月11日 朝日新聞

国際結婚の破綻、国内で紛争に 豪男性、子に会おうと妻の実家に侵入

 国際結婚の破綻(はたん)が増える中、日本国内で、外国人と日本人の夫婦の子どもをめぐるトラブルが起きている。欧米と日本では家族をめぐる法制度や考え方の違いが大きいからだ。刑事事件に発展するケースもあり、海外メディアも注目し始めている。

 10日、別居した子ども2人に会おうとして、住居侵入の罪に問われたオーストラリア人のスポーツジャーナリストの男性(45)の初公判が東京地裁であった。
 男性は2007年にオーストラリアで日本人女性と結婚。15年に来日して日本で暮らし始めたが、昨年5月、妻が子ども2人を連れて別居し、居場所がわからなくなった。離婚は成立していない。
 同10月、子どもの安否を尋ねようと妻の両親が住む都内のマンションを訪問。オートロックを解錠した住民の後に続いて共用部分に入ったとして逮捕された。
 男性はこの日の法廷で、妻の実家を訪ねた理由について「大きな台風があったので、子どもたちが無事かどうか知りたかった」と語り、「子どもの連れ去りは誘拐だ」とも主張した。だが、検察側は長女に対し男性のDVがあったと主張。懲役6カ月を求刑した。
 離婚後も両親が共同で親権を持つことが主流の欧米では、片方の親が無断で子どもを連れて別居すると誘拐罪に問われることもある。さらに、日本も13年にハーグ条約=キーワード=を批准。国境を越えて子どもを連れ去られた場合は連れ戻せる仕組みができたのに、双方が日本国内にいると適用されないため、日本にいる外国人が不満をより強く感じる原因になっている。
 事件についてオーストラリアでは「日本は共同監護権を認めない世界でも数少ない先進国の一つ」などと報じられ、英仏の主要紙でも取り上げられている。
 奈良大の床谷文雄教授(家族法)は「結婚が国際化する中、今後、日本の法制度と条約をどう調和させていくのか議論が必要だ」と話す。(杉原里美)

 ◆キーワード
 <ハーグ条約> 一方の親が無断で16歳未満の子を国外に連れ去った場合、残された親の求めに応じて、原則として元の居住国へ返還することや、親子の面会交流を支援することなどを定めている。日本を含む101カ国が締約している。外国人が当事者でも、日本国内の紛争には適用されない。

世界から『日本は拉致国家』と非難を浴びている、国際的な子の連れ去り問題について

出典:令和2年1月6日 Yahoo!ニュース

世界から『日本は拉致国家』と非難を浴びている、国際的な子の連れ去り問題について

みなさんは日本人による国際的な子の連れ去りが、日本と諸外国の間で国際問題となっていることをご存知でしょうか。
1970年には年間5,000件程度だった日本人と外国人の国際結婚は、1980年代の後半から急増し、2005年には年間4万件を超えました。これに伴い国際離婚も増加し、結婚生活が破綻した際、一方の親がもう一方の親の同意を得ることなく、子を自分の母国へ連れ出し、もう一方の親に面会させないといった「子の連れ去り」が問題視されているのです。
つい先日、イタリア政府などは一方の親が日本人である場合、日本へ行くと子どもが誘拐されるかもしれないと、渡航に関する注意喚起をしました。イタリアなどでは一方の親による子どもの連れ去りは犯罪行為ですが、日本国内では容認されてしまっていることが原因のようです。

日本における国際的な子の連れ去り
日本における国際的な子の連れ去り(以下、拉致とも)とは、もともとの居住地から日本への違法な拉致を指すものであり、ほとんどの場合は元居住国裁判所が発行した面会交流または共同親権命令に反し、子を日本に連れて行くことです。
例外的な状況を除いて、児童拉致の影響は一般的に子の福祉への有害性が指摘されているにもかかわらず拉致は行われ、被害親とその親族の生活にも壊滅的な影響を与えているのです。
もともと日本の家庭裁判所は民事訴訟における強制的執行を好まない傾向にあり、両親による和解を強く推奨して面会交流や育児支援にはほとんど介入してきませんでした。そして、外国人親が自力救済として日本に連れてこられた子を取り戻そうとすると、本来、日本にいる事が「拉致拘禁状況」に該当しているにもかかわらず、日本の警察によって逮捕され、刑事訴追される可能性があります。
また、外国の父親が子どもを自国に連れ帰ろうとすれば、「所在国外移送目的略取及び誘拐」(刑法第226条第1項)も追加され、2年以上の懲役刑が科される可能性すらあるのです。刑法第226条は元来、中国等へ未成年者が性的奴隷として誘拐される事を防止するための特別法でしたが、現在は外国人親による子の連れ戻しを防止するための有力な手段として使用されています。

ハーグ条約」へ加盟した日本に集まる国際社会の非難
離婚などに伴う国境を越えた子どもの連れ去りを防止する「ハーグ条約」に日本は加盟していますが、条約の履行が不十分として国際社会から非難を集めています。
ハーグ条約では拉致された子どもたちは、拉致前に「本来居住していた家」に戻されることになっています。子どもの拉致を重罪と規定している国に対しては、監護親を拉致犯として通知することができ、拉致親は他国滞在中に逮捕される可能性もあります。条約は、当事国の家庭裁判所の判決を他の国が認めることを必要とせず、署名国が拉致された児童の所在を知覚した場合には、速やかに本来の居住地に戻すことを要求しています。
もともと日本の家族法はハーグ条約の各条項と整合性がなく、日本が署名するためには法律の抜本的な改正や新法導入が必要でした。日本の民法は、両親間の合意によって決定されない場合、子の最善の利益に基づいて問題を解決することが強調されていますが、家庭裁判所の判決に強い強制力はなく、遵守するかどうかは本質的に両親の自主性に任されていて、両親の合意がなければ判決を下すことも極めて困難なようです。

日本を拉致国家と呼ばせないためには
最大の障害となっているのは子どもの親権に対する法制度の変更です。日本の法曹関係者の多くは離婚後共同親権・共同監護の重要性を認識してきませんでした。日本はハーグ条約に先立ち「子どもの権利条約」に署名しており、同条約第9条に定められている通り、日本は非親権者の面会交流を子どもの権利として認めなければなりません。しかし、日本国最高裁判所は、非親権者は子どもと会う権利はなく、国家による面会交流の強制は、親や子どもの権利ではないと裁定しています。この裁定により、事実上、親権者の協力なしには、面会交流は不可能となっているのです。
フランスアメリカなどの一部の国では、子どもがいる夫婦の離婚の場合、両親の共同養育が法律で定められていますが、日本の法律ではこのような取り決めはありません。離婚後の子どもの親権を両親それぞれが維持するという考え方は、日本人の文化や歴史にはないため、日本法にそのような思想はほぼ皆無なのです。日本では結婚が合法的に解消されると、一方の親にのみ親権が与えられ、分離された「非監護親」は肉親であるにもかかわらず子どもから完全に分離されます。
ハーグ条約批准国82か国の間でも、親権に関する取扱は国によって異なります。日本においては、戦後高度成長期に母親が通常単独または主たる監護権を得る形が一般的でしたが、その間に他の先進国では共同養育および共同親権に移行する機運が高まっていきました。日本も世界から拉致国家と呼ばせないために、離婚後共同親権に関する議論を進める時期にきています。
参考文献:外務省HP

明智カイト氏:
『NPO法人 市民アドボカシー連盟』代表理事
定期的な勉強会の開催などを通して市民セクターのロビイングへの参加促進、ロビイストの認知拡大と地位向上、アドボカシーの体系化を目指して活動している。「いのち リスペクト。ホワイトリボン・キャンペーン」を立ち上げて、「いじめ対策」「自殺対策」などのロビー活動を行ってきた。著書に『誰でもできるロビイング入門 社会を変える技術』(光文社新書)。日本政策学校の講師、NPO法人「ストップいじめ!ナビ」メンバー、ホワイト企業の証しである「ホワイトマーク」を推進している安全衛生優良企業マーク推進機構の顧問などを務めている。

社会の「絶対的断絶」に泣けてくる~NPO代表や離婚弁護士や

出典:令和2年1月5日 BLOGOS

社会の「絶対的断絶」に泣けてくる~NPO代表や離婚弁護士や

■ 小さな我が子とともに微笑む
某有名NPO代表が小さな我が子とともに微笑む写真がある。その写真を中心として、「貧困支援」の意味についてその代表はエッセイを綴る。
自分の子どもは幸いにも、(自分たちという)両親が揃い2人とも働いており(ということはそこそこの収入もあり)住居も確保できている。
それに比べて、現代の貧困世帯の子どもには、これらが揃っていないことも珍しくない。だからこそ、子どもたちを支援しなければいけない。
その代表が言う「支援」の中身は、当欄でも僕が指摘した、袋菓子やレトルト食品だったりする(「ジャンク支援」~貧困層の主食のお菓子を「宅食」する意味)。それらは僕が書いたように、貧困世帯とは親和性がある。そうした袋菓子を子どもたちは日常的に食べ、カップ麺やレトルト食品を日々食べている。
貧困のリアルな食生活とはそんなものだ。
そうした袋菓子やレトルト食品が箱一杯に詰まった「食糧提供支援」を、収入も家もそれなりに揃うその代表の団体が行なう。代表は、赤ちゃんの我が子を抱きしめ、日本の貧困問題について怒り、問題提起する。

■ 当事者たちは、「違う」と明言しないままひっそりとその場を退場する
その代表の行ない自体、なんら悪くない。日本のソーシャルセクターをここ15年引っ張ってきた自負もあるだろうし、それだけの実績ももつ。
けれども、我が子を抱きしめた写真を顔出しで公開し、我が子は満たされているが満たされていない子どもたちがたくさんがおり、自分はそれら満たされていない子どもたちのために支援をしたいと意思表明するその文章や顔写真自体に拒否反応を示す人々がいる。
なんとなく「違うだろ?」と人々は拒否するのだ。そしてその中でも、「当事者」と呼ぶしかない貧困世帯当事者たちは、違うと明言しないままひっそりとその場を退場していく。
またたとえば、「連れ去り離婚」を手助けするいわゆる「離婚弁護士」のなかには、自分の子どもが習い事などに通う写真を意気揚々とSNSに掲げる人がいる。
そんな写真を見て、我が子を連れ去られた「別居親」たちは、複雑な感情を抱く。
Twitterにはこんな叫びが満ち溢れる。
『時々、親子引き離しで有名な弁護士先生が自身の子どもの発表会(ピアノ等)の様子を楽しげにSNSで書いていたりします。悔しくて、悔しくて。涙が出ました。』

この「悔しくて悔しくて」に、僕は打たれる。自分たちは子を連れ去られ、多くても月に2時間程度しか子どもと「面会」できない。その苦難さを打開するために、「共同親権」の確立に向けて動いている。
その一方で、連れ去りのベースにある「単独親権」に乗り、その仕組みの中で弁護し収入を得、子どもとの習い事の写真をSNSに投稿する弁護士がいる。
なんという落差だろう。

■ 自分の体臭が自分では嗅ぎとれないように
話はNPOに戻るが、いまだ「起業」をすすめるNPO代表がいる。自分たちの「夢」を起業することで叶えようというわけだが、現実の起業のほとんどは失敗する。
また、そんな競争の中でもたまたま生き残ったNPOに就職しそのNPO内で出世したいと夢見る学生もいる。
が、NPO内の20代スタッフの年収は概ね低く(社会保険等を合わせた総額でも250万程度)、30代からの昇給カーブも緩いところも珍しくはない。
起業は困難であり、年収も低い。つまりは「やりがい搾取」の代表が現在のNPOなわけだが、起業をすすめる代表たちは決してそうした事実は語らない。あくまでも、「夢」を語る。
これらは一部の例であり、また本当に社会の役に立っている場合もあるだろう。
けれども、何か「断絶」してしまっている。生活保護や困窮層の子どもや若者、子を連れ去られた孤独な別居親が毎日感じているその感覚とは何かが決定的に引き離れズレまくっている。
そのズレは、社会の困った人たちからのニーズに「本気で」答えようとしているそうした偽善的な人々には感じることができない。また、自分たちの振る舞いや考え方から「当事者たち」が逃げていくことの意味もよくわからないのかもしれない。
階級社会や単独親権社会の「勝ち組」サイドからものごとを見て判断して行動するとはそういうことかもしれない。
ここではたまたまTwitterなどで目についた代表や弁護士を例にとったが、こうした勝ち組、マジョリティが無意識的に醸し出すその立ち振る舞いは、勝った者にはわからないのかもしれない。自分の体臭が自分では嗅ぎとれないように。
そこには「絶対的断絶」がある。僕は朝っぱらからTwitterを見てこの断絶を叩きつけられ、不覚にもうっすらと泣いてしまった。

養育費の算定基準改定への疑問、特に養育費を支払う方の女性には地獄となる。家族解体という思想を隠して離婚後のバラ色の生活の誤解による離婚への誘導から、あなたと家族を守らなくてはならないということ。

出典:令和元年12月23日 土井法律事務所ブログ

養育費の算定基準改定への疑問、特に養育費を支払う方の女性には地獄となる。家族解体という思想を隠して離婚後のバラ色の生活の誤解による離婚への誘導から、あなたと家族を守らなくてはならないということ。

最高裁は、令和元年12月23日、
養育費の算定基準を見直した。

多くのケースで養育費が増額されるらしい。

その目的は、新聞報道によると
「最新の家庭の支出動向を反映させた結果、全体的に月額で数万円程度、増額される傾向となった。子どもの貧困対策の必要性が指摘される中、ひとり親家庭を支援する見直しになりそうだ。」
とされている。

ちなみに、離婚前は、婚姻費用(婚費)分担と言い、子どもの費用と相手方の費用も含まれて金額が決まるが離婚後は、相手方の生活に対する費用分担は原則なく文字通り、子どもを養育する費用ということになる。

このような基準を変えることは、常にメリットデメリットがある。今回の養育費等の増額についても、それによってなるほど一方で、シングルマザーの生活が幾分向上するかもしれないが当然のことながら支払者の負担も増額する。

最高裁は、税制の変更などを理由に挙げるがどの税制の変更が、どのように考量されたのかの説明がない。給与所得者などの税制が軽減されたということはないだろう。説明になっていない。

また、スマートフォン使用の低年齢化等子どもの費用が高額になったということが挙げられているが、それは、別居親だけが負担することなのだろうか。それではまるで、携帯電話会社の収益を上げるために支払額を増やそうとしているだけではないかと疑いをもってしまう。

私は様々な理由から中学生までは原則としてスマートフォンは与えるべきではないと考えている。これは別の論点なので詳述はしない。

そして、極めつけなのは最高裁は認めていないと思うが、今回の基準改定が子どもの貧困対策だと報道しているが、そのことについては疑問も大きい。

実務的観点からいくつかの疑問を述べたい。

1 離婚、別居は、必然的に貧困に向かう

人権相談には、離婚後に子どもを抱えた母親から相談が入る。「役所に言われた通り離婚をしたが、生活は楽にならず、とても苦しい
話が違う。
離婚しなければ良かったと役所に問い合わせたら、『離婚はあなたが決めたことです。』と言われて電話を切られてしまった。」ということが典型的な相談である。

確かに見通しが甘く離婚に踏み切ってしまった本人にも落ち度はあるだろう。
しかし、どうやら、「離婚調停を申し立てれば慰謝料はもらえるし、養育費ももらえる。今夫から渡されている生活費で生活するよりよっぽど経済的にも楽な、もちろん精神的にも楽な生活ができるようになる。」という未来を示されて離婚に踏み切った人が多いようなのだ。

何人かの「こんなはずはなかった」ということから逆算して考えると浮かび上がってくるのはそういうことだ。

そしてその支援者たちが間違ったことを言う原因も少しずつ分かってきている。

第1に、個別事情を無視した画一的なマニュアルアドバイスだ。

妻が悩んでいると本当は、自分の精神的な問題、体調の問題なのに、「それはあなたは悪くない。夫のDVだ。」と決めつけてアドバイスがなされることが多すぎる。

言われた通り、保護命令を申し立て、離婚調停を申し立てても、保護命令事由がないとして却下され、離婚理由がないということで離婚が認められなかったり慰謝料が認められないことが多い。妻に嘘をつかれて窮地に追い込まれた夫は妻を許さないし精神的に破たんして就労不能になる場合もある。

理由のない離婚請求なので当然夫は抵抗する。おそらく妻は2,3月で離婚後の明るい生活が始まると思っているようで、調停がそれ以上続くことで、疑問がわき、焦りがでてくる。

暴行などの事実がないので離婚原因を立証できないし、主張もできない。無理に暴力をでっちあげるから嘘がばれる裁判所の心象も悪くなる。

画一的なアドバイスをした支援者は、離婚が成立して、わずかな養育費での生活となっても、責任をとることはない。

第2に、経済的問題で言えば、例えば「夫から月3万円しか生活費が渡されていない。」と聞くとそれは経済的DVだとアドバイスをする支援者が多いようだ。

よくよく話を聞いてみると、光熱費、子どもの学費等の必要経費は夫の通帳から引き落とされており、食料もほとんどが夫の実家から送られてくる。その他の食材や生活に必要な物は週末夫と買い出しに行って夫が支払う。3万円は妻の小遣いみたいなものだった。

そして、夫の収入が手取りで20万円にも満たないで、夫は毎日500円くらいを持たされて昼食を食べているということが明らかになっていく。

見通しが甘いのは妻ではなく妻に対するアドバイスをした者のことが実に多い。

このような経済状態で別居してしまうと夫も妻子も生活が成り立たなくなってしまう。そういうケースが実に多い。

ちなみに、このような見通しの甘い妻は家計簿をつけていない。

こういうケースは少なくない。少ない夫の収入の中からどんなに割合を大きくしても養育費が必要な額に達することはない。

本質的な問題は労働者の低賃金の蔓延化なのである。あるいは離婚後の女性の不平等な低賃金なのである。そのことを離婚のセールスマンたちは絶対に言わない。全てを夫の責任にしようとする。

いずれにしても、少ない収入の中で、別居して経費が二倍になれば当然貧困に向かっていく。

それでも妻を誤解させて離婚に向かわせているのが国や自治体ならば、労働者の低賃金、女性の低賃金の不具合は国や自治体が補填することが筋であろうと思われる。

調停も一回で終了して裁判に進められて離婚させられるわけがわかならないまま離婚となり、子どもにも会えないのに養育費だけを払わなければならないそんな中でメンタルをやられてしまっているそんな夫だけに責任を負わせることは、あまりにも過酷で不合理だ。

離婚は必然的に貧困に向かうのだから、離婚を進めておいて養育費の割合を増やしても解決はしない。

2 一方的な離婚を後押しする婚費の制度

婚費の決め方は税込みの年収額だけの突合せだけで決まる。

住宅ローンがあって夫が支払っていてもそれは月々の金額に考慮されない。妻が使用する自動車のローンを夫が支払っていても妻がその自動車を使用しなくなるのであればやはり考慮はされない。

その他、今後も共同生活を続けるという前提で様々な月払いが行われているのが現実の夫婦だ。しかし、それらは考慮されない。現実の生活が無視されて婚費や養育費は定められる。

そういうことをここで持ち出すには理由がある。子連れ別居から離婚に向かう事案の少なくない割合で新居を建築し、住宅ローンが発生した直後という事情があるからだ。

子連れ別居のケースでよくあるのは、第1に妻の体調からの精神状態、第2に子どもに障害がある場合、第3に住宅ローンである。

新居移転を目前にして、あるいは引っ越しのさなか子連れ別居は起きている。

別居して離婚することが確定なら住宅は手放すことも合理的かもしれない。しかし、突然理由も告げず子どもを連れて家から去り、わけがわからないうちに裁判所に呼び出されて、住宅ローンの支払いなど関係なく月額の支払いが定められるもう離婚しか選択肢がないように思わされる。

現実問題として住宅を手放さなければならなくなる。

子どもたちの生活も待ったなしだが住宅ローンも待ったなしである。

しかし、住宅を手放しても住宅ローンはなくならない。中には、住宅ローンを支払いながら思い出の詰まった家に住み続けるしかない夫たちもいる。住宅ローンと家賃の二重払いこそ無理だからである。極めて精神状態に悪い。

これが婚姻費用分担や養育費の支払いが住宅ローンの存在を無視して行われる結果である。

この住宅ローンの支払いは本当に無視されてよいのだろうか。夫が一方的に住宅の新築をしたというならともかく、多くの事例では妻が新築を希望して無理して住宅ローンを組んで家が建てられているのである。

住宅ローンはマイナス財産として財産分与では考慮されるが、実際には住宅ローンを支払わなければならないから養育費などのねん出が難しいということなのである。

第三者から見ると婚姻費用や養育費の算定方法はこういう事情で無理を強いる場合が多い。

今回の基準の見直しでさらに金額が上がってしまうとさらに無理が大きくなることは間違いない。

婚姻費用の分担は特に住宅ローンがある場合はこのように、今後同居しないということが前提となっているように感じられる。

離婚をするかしないか、やり直すとしたらどうすればよいかやり直さないとしてもどのように子どもの共同養育をしていくかそういうことを話し合うために、離婚は訴訟から行うことができず、
話し合いの手続きである調停から行わなければならないとしている。現行の婚姻費用の決め方は一部その制度と矛盾し、一方が離婚を求めていることを後押しをする制度になっていると感じる。

3 養育費を支払っている女性を無視している。

今回の基準改定で一番影響があるのは養育費を支払っている女性の負担が大きくなるということである。

女性は、婚家から追い出される形で子どもと会えなくなる。私から言わせればそれが普通の人間だと思う範囲のヒステリーだったり、ワガママだったり、要領の悪さだったりということで主として姑から嫌われて追い出されてしまう。

夫から受けた暴力が影響してあるいは出産後のホルモンバランスの変化によってうつ病やパニック障害等になった結果の場合もある。

多くの事例で子どもとの面会を拒否されている。自分が命を懸けて産んだ我が子と会えないという不合理が実際に起きているのである。

まさに女性の権利の侵害である。

それにも関わらず、子どもに会えない母親たちに養育費の支払い義務を課せられる。

子どもに会えない母親たちの多くは非正規労働者であり介護職だったり、事務職だったりの低賃金という事情に加えて、いつ労働契約が終了するかもわからない。今年の源泉徴収票が原則5年後は通用しない社会なのである。それでも養育費の金額は放っておけば継続される。

元妻が元夫に養育費を支払うケースは元妻が追い出されて子どもと一緒に住めなくなったが夫が妻よりも収入が少ない場合である。

極端な話、夫が精神疾患などで就労できず、収入がないという場合もある。このようなケースでは福祉の手続きもとらないから、裁判所では源泉徴収票の額面で元妻の元夫に対して支払う養育費の額が決定されてしまう。

子どもに会えない母親は今でも子どものためにと言い聞かせて少ない賃金の中から自分の生活費を削って養育費を支払っている。その上、今回の改定で、さらに大きな金額の支払いを余儀なくされてしまうと裁判所由来の絶対的貧困が生まれてしまう恐れが出てくる。それだけ、母親は、子どもに会えなくても、自分が食べられなくても子どもには食べさせたいと行動してしまうのである。

シングルマザー保護の活動家などが今回の基準では生ぬるいから別居親にもっと大きな支出をさせろと声高に叫んでいる場合、実際に元夫に対して養育費を払っている女性は活動家の仲間である「女性」の中から排除されているのだ。活動家が憐みを授ける対象となる女性の中から排除されているのだ。

私は、女性の権利擁護の立場から今回の養育費改正には反対するが、男女平等を叫ぶ活動かなんて自分たちの都合の良い現実しか相手にしないという印象がある。目をつぶれば世界が無くなると言わんばかりである。

その人たちの一定部分の活動の目的は家族制度の解体なのだそうだ。家族制度とは、父親と母親と子どもと生活する家族のことである。家族制度こそが、女性を不当に拘束する元凶だというのだ。「あなたは悪くない。」
という言葉も、このような思想によって言われていることが多いかもしれない。「あなたは悪くない 家族制度とそれにあぐらをかく夫が悪いのだ」という意味だとすれば極めて単純明快ではある。

そういう人たちから見れば離婚後あなたがどのように経済的に、精神的に追い詰められようと気にならない。離婚を一件成立させることができれば、自分たちの理想である「家族のない世の中」に近づくのである。

活動家の中には一定割合の人間がこういうことを本気で考えている。しかし自分の本音を真正面から主張することは少ないのでわからないだけである。

子どもの貧困の多くは、そもそも労働者の低賃金が原因であり、離婚後は女性の低賃金が原因である。その上、無理やり需要を掘り起こされている。社会から取り残されるという脅迫観念の植え付けが原因である。

子どもや家族が豊かに生きていくための費用である賃金を支払うそういう職場が絶対的に足りないのである。離婚や別居は子どもの貧困を確実に助長する。

このような社会、特に大企業の問題は不問に付して全てを夫の責任として、負担を夫だけに押し付けるという現代のフェミニズムの姿が浮かび上がってくるコメントだった。

低賃金の企業に対して一切文句を言わずその上、スマホ代金などを男性から搾り取って大企業に差し出させようとするのである。

家族制度解体の活動家が既に離婚を成立させて、養育費を支払っている女性を無視できるということもわかりやすい。既に離婚をして家族解体を進めているのだからこれ以上保護を与える意味がないというのであれば実にわかりやすい。

子どもの利益よりも家族解体の促進に価値をおくのであれば離婚の影響で子どもの健全な成長が阻害されること等必要経費のようなものだから、無視できる。そもそも離婚が子どもに悪影響を与えないと頑張っているのかもしれない。

対人関係学は家族という最小の単位を充実させることによって複雑化して、利害対立が多発する現代社会の仲間でも幸せを感じて生きていくことを目指す学問なので、家族解体思想という非科学的な思い付きとは全く相いれないということが今日の考察でつくづく分かった。

4 これから離婚をしようと考えている女性の皆さんへ

以上、今回の養育費の改定のニュースに関する疑問を述べた。これから離婚を考えている女性たちには特に知識を増やしてほしい。

養育費の算定基準が改定されて養育費が上がったところで、そもそもない所からは取れない。女性の賃金の改定の方は一向に着手される気配はない。同一労働、同一賃金に過度の期待をするわけにはいかない。別居や離婚をすれば、確実に経済力は低下する。

バラ色の離婚後の人生はないと思うべきだ。この文章を書いているまさにその時、事務所の電話が鳴り、養育費地獄にあえぐ元夫の悲鳴を聞かされている。「これ以上養育費が上がれば生きていくことができない」という悲鳴だ。現実に支払えないので、賃金の差し押さえをされてしまうだろう差し押さえがなされたら会社から解雇されるだろうというのだ。極めて深刻なメンタル状態であり、自死の危険も否定できない。しかし、解雇されたり、自死されたりすれば養育費は入らないのだ。

都合の良い話ほど真に受けてはならない。あなたにとって都合の良いことを言っている人たちの一定割合は家族制度を解体しようという思想が何よりも優先されている。その思想を実現するためにあなたが離婚させようとしているのだ。

自分や家族の利益を第一に考えて行動するべきだと思う。

できることなら、現状に不満があっても、第三者機関を利用する等して夫をコントロールすることを考えるべきだ。現状を前提として少しでも快適な生活に進んで行こうとすることが最善の策かもしれないという選択肢を頭の片隅に必ず入れてほしい。

「離婚したけれど、こんなはずではなかった。」という電話は本当に悲しすぎる。

養育費、やっと拡充 算定表16年ぶり見直し ひとり親家庭を支援

出典:令和元年12月23日 毎日新聞

養育費、やっと拡充 算定表16年ぶり見直し ひとり親家庭を支援

 離婚した親の子が自立するまでの生活費として欠かせない養育費の算定表が16年ぶりに見直された。ひとり親家庭の貧困問題を受け、世相の変化を反映させた結果、増額傾向となった。一方、取り決められた養育費が支払われない例も多く、行政や弁護士が強制的な回収の手立てを模索している。【服部陽】
 離婚して別居しても、親は子の生活を保障し、成長する環境を確保する責任を負う。民法は養育費の額の算定に当たり、「子の利益を最も優先して考慮しなければならない」と定める。

※以下、紙面参照。

最高裁が養育費の算定表を公表しましたが、幼児、高等教育の無償化が進んでいるにもかかわらず増額されています。最高裁が密室で策定し、その算定根拠も明確にしておらず、別居親への逆差別を助長する内容で算定の信頼性が疑われます。養育費を支払ってもその使途が明確でなく本当に子どものために使われているのかも確認できない制度不備の中、別居親の不信感は募るばかりでないでしょうか。また、養育費支払いだけ強制性を持たせていますが、子どもが両親の愛情を受け、自己肯定感を高め、健全な成長に重要な親子交流(面会交流)を置き去りにする最高裁は、子どもの最善の利益を軽視しており、子どもの権利条約を守ろうとする姿勢は全く感じられません。

離婚後の別居親と子 面会交流で両親に変化

出典:令和元年12月22日 東京新聞

離婚後の別居親と子 面会交流で両親に変化

 離婚しても子どもにとっては親は二人。そう分かっていても子どもと一緒に暮らす親にとって、別居する親が子どもと定期的に会う(面会交流)となれば複雑な思いもわいてくる。そんな葛藤を乗り越え、面会交流を続ける離婚経験者たちがいる。別居親と子どもの面会交流にはどんな意義があるのか。(佐藤直子)

「子どもと私は別人格。『お父さんはこんな人』という見方を、私から押しつけたくはなかった」。

※以下、紙面参照。

「共同親権」の導入 是非は?

出典:令和元年12月20日 日本経済新聞

「共同親権」の導入 是非は?

法務省は11月中旬、離婚した親と子の関係について検討する研究会を設置した。未成年の子を育てる親の権利や義務である「親権」がテーマだ。いまの民法は父と母が離婚すると、どちらか一方の親が子の親権を持つ「単独親権」を規定している。米欧諸国のように離婚後も父母の両方が子の親権を持つ「共同親権」が必要かどうかを議論する。
共同親権を扱うのは、国内外から現行制度の見直しを求める声が出ているからだ。
「子供は両親から愛される権利も自由も奪われてしまいます」。今年11月、離婚などで親権を持てず子に会えなくなったと主張する男女12人が集団訴訟を起こした。「共同親権を認めない現行法は養育権の侵害にあたり、違憲だ」と国に損害賠償を求めた。
2月には国連の「子どもの権利委員会」が離婚後の共同養育を認める法改正を日本に勧告した。国際結婚が増え、日本人女性が離婚後に海外から無断で子を連れて帰る事例が起き、共同親権の米欧諸国が問題視してきた。日本は米国などに迫られ、国境を越える子の扱いを定めたハーグ条約に加盟し、2014年に同条約は発効した。19年5月には改正ハーグ条約実施法も整備したが米欧には「問題は単独親権だ」との見方も残る。
日本の民法では、親権は父母が共同で行使するのが原則だ。だが離婚した場合は父母の一方しか親権者になれないとも定めている。同居して世話や養育をする身上監護のほか、教育や財産管理が親権の主な内容になる。
民法766条は「子の利益を優先して監護・面会交流の方法を協議で定める」と記している。親権を持たない親が子と会う「面会交流」に関しては、その頻度などの具体的な規定が法律には記されていない。父母の話し合いで決めることが前提になる。

■面会交流の調停増える
衝突が起きるのはこの「協議で定める」ところだ。父母の協議で決着しなければ家庭裁判所(家裁)に調停を申し立てる。家裁が家庭に関する事件を調停する「家事調停」の統計をみると、06年度から面会交流に関する調停の申立件数が急増している。06年度の約7千件から18年は3倍近い約2万件になった。20歳未満の子を持つ夫婦の離婚件数は同時期に減少傾向だったにもかかわらず増えていた。

離婚後に母親が親権を持つ事例は85%に上る。離婚事件を多く扱う弁護士は「日本の司法は『母親に監護させることが子の利益になる』と判断することが多い」と話す。親権を得られなかった父親が母親から子との面会を制限される例もある。
近年は共働き世帯が増え、父親の育児参画が進んでいる。この弁護士は「昔より父親が『子育てに参画したい』と思うようになってきた。母親を親権者とする司法判断に納得できないのだろう」と分析する。面会交流の協議がなかなか決着しないことへの不満が、いまの民法の単独親権の制度への不信につながっていると指摘する声もある。

■父母対立で子に不利益も
とはいっても共同親権を導入すれば様々な問題が解決する、というわけでもない。政府は12月17日、共同親権をもし導入した場合について答弁書を閣議決定した。
「父母が離婚後も子の養育に積極的に関わるようになることが期待される一方、子の養育について適時に適切な合意を形成することができないときは子の利益を害するおそれがある」。共同親権への懸念に答弁書は言及している。
法務省幹部は「民法を改正して共同親権に変えても、父母の合意がなければ面会交流は増えない」と話す。単独親権か共同親権かにかかわらず、面会交流の実施や頻度などは最終的には父母が協議して決めるからだ。「子と離れて暮らす親が『子に会う』という目的は、現行の単独親権の下での協議の枠組みで対応できる」とも強調する。
家庭内暴力や虐待で離婚した父母が共同親権になったとき、子の養育に関する話し合いをどこまでできるのかという指摘もある。子と同居する親が海外に移住したり、子の財産の扱いや進学などを決めたりする際にはその都度、もう片方の親の合意が必要になる。父母の関係が悪ければ、片方の親が幾度も拒否権を行使して様々な決定が滞る可能性も出てくる。

■各国研究から開始
法務省は外務省を通じて海外の親権の実態を調査している。担当者は「まずは論点を整理することが重要だ」と語る。設置した研究会も共同親権の導入を前提に議論を進めていくわけではない。
例えば共同親権を採用する米欧には日本が単独親権のままでも参考にできそうな事例がある。米国では面会交流を民間の第三者が支援する体制が整っており、フランスでは民法典に「面会場」を明記している。片方の親による暴力や虐待を防ぐためのインフラをつくっている。面会交流の実務に携わる弁護士からは、家裁で家事調停の内容を調べる調査官の人員増や、民間の支援施設の整備を求める声もある。共同親権を導入するか否かとは別に、まず米欧諸国を参考に面会交流の支援策を考えるべきだという意見だ。
研究会の議論は20年に本格化する。結論を出す時期は未定だが、民法改正が必要な共同親権を導入するか否かの判断はその後になる。立場によって利害が大きく食い違う問題だ。親が主張する権利で子が不利益を被らないよう、子の視点を意識した慎重な検討が必要になる。

離婚と親権

出典:令和元年12月12日 宮崎日日新聞

離婚と親権

◆子ども本位で制度見直しを◆

 離婚後も父母が共に子どもの親権を持つ「共同親権」の導入を求める声が広がり、法務省は民法学者や弁護士、最高裁と関係省庁の担当者らから成る「家族法研究会」を発足させ、議論を進めている。面会交流を促進したり、養育費の支払いを確実にしたりする方策も検討する。

 親権は親が子どもを監護・教育し、しつけのために戒める、住む場所を指定する、財産を管理する―などの義務と権利で、民法に規定が置かれる。欧米を中心に離婚後の共同親権を認めている国は多いが、日本では離婚したら、どちらか一方を親権者とする「単独親権」だ。

 単独親権は進学など子育ての意思決定がしやすいといわれるが、離婚の際に面会交流を決めても、親権者の意思次第で親権を失った親が養育に関われないこともある。一方で共同親権では、離婚の背景に児童虐待やドメスティックバイオレンス(DV)があると、子どもに望ましくない影響が及ぶ懸念がある。

 年間20万組以上が離婚し、子どもの奪い合いは絶えない。単独か共同か。どちらかを選択できるか。課題は多いが、研究会には、親の事情で争いに巻き込まれた子ども本位で制度見直しに取り組むことが求められる。

 40~60代の男女12人が先月下旬、単独親権制度は法の下の平等や幸福追求権を保障する憲法に反し、子育ての権利を侵害されたとして国に損害賠償を求め東京地裁に提訴。国に共同親権制度の立法を怠った責任があると主張する。離婚協議などで面会交流の内容が決められるが、原告で最も頻度の高い人は「月2回程度、2時間」。幼いころ会えなくなり、成人後の行方すら分からないケースもある。

 司法統計によると、離婚や別居をした父母が子どもの監護を巡って対立し、家庭裁判所に申し立てられた調停・審判は2018年に4万4千件余りに達し09年と比べて約1万1千件増えた。また厚生労働省の16年度全国ひとり親世帯等調査では、養育費について離婚した父親から「現在も受けている」は24・3%、母親からは3・2%。面会交流については「現在も行っている」が母子世帯で29・8%、父子世帯で45・5%だった。

 いずれも低調で、離婚時に子どもの養育計画策定を父母に義務付ける案もあるが、DVの被害者が加害者から離れるのを難しくする恐れも指摘される。共同親権でも、全てが解決するわけではない。DVや虐待、父母の対立が持ち越され、離婚後の子育てが不安定になることも考えられる。

 それぞれの制度の問題点の相談・支援体制の拡充で、どこまで対応できるかが今後の議論の焦点となろう。

「単独親権は違憲」 国を提訴 欧米は共同親権主流

出典:令和元年12月7日 中日新聞

「単独親権は違憲」 国を提訴 欧米は共同親権主流

離婚しても親なのに

 民法は離婚後、父母どちらか一方にしか子どもの親権を認めない。この「単独親権制度」を憲法違反として、親権を奪われた親たちが国を相手に集団訴訟を起こした。子を見守り、育てるという基本的人権(養育権)を侵害され、「一緒に過ごせたはずの時間を奪われた苦しみ」を訴える。離婚を親子の断絶につなげてしまう制度を温存してきたとして、国の姿勢を問うこの訴訟。見据えるのは、両親がともに子育てにかかわれる共同親権制度の実現だ。

※以下、紙面参照。

離婚後の子、どう守る

出典:令和元年12月2日 朝日新聞

離婚後の子、どう守る

 夫婦の3組に1組が離婚する時代。親が離婚した子は20万人を超え、1950年の約2.7倍に増えた。母親が引き取ることが多いが、母子家庭の7割超は養育費を受け取れず、立て替え払いを検討する自治体も出てきた。一方、父親の約半数は離別した子と交流したことがなく、面会を求める訴訟が相次ぐ。離婚後の子の養育を社会はどう支えるべきか。

 ■養育費不払い多発、個人の対応に限界 大阪社会部・長富由希子
 元夫の不倫が原因で3歳と7歳の子を連れ、約5年前に離婚した神奈川県の会社員女性(36)は嘆く。「出来ることは全てしたが、元夫が養育費を払わない。このままでは子どもを大学に行かせられない」
 2人で計月14万円。裁判所の調停で離婚した際、会社社長の元夫の収入などから養育費の額は決まったが、約1年で不払いになった。裁判所から「不払いになっても相手の財産を差し押さえる強制執行がある」との説明を受けていたが、手続きの大変さに驚いた。
 法律を調べ、裁判所が元夫に支払いを促す「履行勧告」をしたが、強制力がなく反応がない。元夫の預貯金の差し押さえを考えたが、口座がある銀行の支店名まで自分で探す必要がある。夫の行動範囲の銀行を探し、法務局などで銀行の代表者事項証明書などを取り、裁判所に強制執行を申し立てた。
 弁護士への依頼も考えたが、15万円と言われた着手金が払えない。自力で手続きを進めて三つの口座を差し押さえたが、離婚時に相当額あった残高は、10万円以下に激減していた。女性は「養育費から逃げるマニュアルがネットにあふれている。元夫が強制執行を恐れ、貯金を移したと思う」と肩を落とす。元夫は再婚した相手とも離婚し、今は新しい彼女がいて、海外旅行も楽しんでいると知人に聞いた。
 来春からは手続きが少し楽になる。改正民事執行法が施行され、不払いの親の勤務先や預貯金の情報提供を裁判所が市町村や銀行などに命じられる。養育費に詳しい榊原富士子弁護士は「前進だが、調停調書などの公の文書で養育費を決めた人だけが対象。手続きの時間や精神的余裕がない親が多い。そもそも、養育費を決めていない母子家庭が過半数。根本解決からほど遠い」と話す。
 労働政策研究・研修機構の調査では、子と別居する父の年収が500万円以上の74%もが不払いだ。養育費を受け取る母子家庭は厚生労働省の2016年度調査でわずか24%。OECDによると、子がいる大人が1人の現役世帯の相対的貧困率は先進国で最悪水準だ。小川富之福岡大教授(家族法)は「政策決定の場に女性が少なく、困窮した母子の政治的影響力も小さい中、国が放置してきた」と指摘する。
 この事態にしびれを切らしたのが兵庫県明石市だ。市が養育費を立て替えた上、親に市が請求する独自条例案の検討を始めた。子が市民の場合に限られる見込みで、泉房穂市長は「国が動いて」と訴える。
 子どもの権利条約は、扶養料の確保策をとるよう締約国に求め、欧米や韓国は不払いへの罰則や立て替え払いで積極介入する。「私人間の紛争に行政は介入すべきでない」との考えもあるが、同志社大の横田光平教授(行政法)は「建設工事の請負契約の紛争解決など、私人間の紛争への行政の関与はあり、ハードルではない」とみる。
 小川教授によると、豪州も1988年調査の「養育費支払率」は34%だが、「子の貧困の撲滅」をめざして養育費対策法を80年代後半に制定し、徴収する行政機関をつくった。父母の課税所得の情報を国税局から受けて額を毎年自動調整し、不払いには給与の強制的な天引きや出国禁止も実施。近年の徴収率は養育費支払総額の97%にのぼる。
 「離婚相手と関わりたくない」「相手からDVを受けていた」――。不払いには多様な事情もあり、元夫婦だけで解決するのは限界がある。その中で「離れて暮らす親は経済力があるのに、自分の食費や教育費を払ってくれず、生活が苦しい」という子どもたちがいる。安倍晋三首相は4年近く前の16年1月の参院決算委員会で「子どもの貧困対策は未来への投資であり、国を挙げて推進していく」と述べている。政府は、いつまで、多発する養育費の不払いから目をそらすのか。

 ■面会に強制力なし、共同親権求める声 専門記者(家族担当)・杉原里美
 11月の週末、都内のコンビニの駐車場で、NPO法人ウィーズの職員が40代の母親から小学生の男の子2人を預かり、父親が待つ近くの施設へ向かった。子どもたちは父親と2時間ボール投げなどをして遊び、別の場所で母親に返された。
 ウィーズは離婚や別居した親子の面会交流を支援する団体だ。顔を合わせたくない父母の間に入り、仲介する。
 母親は面会に消極的だったが、離婚への疑問が消えない子どもたちを見て「自分の目で判断してほしい」と父親に会わせている。「元夫に子どもを連れ去られないか不安だったので、第三者が見守ってくれるのはありがたい」
 ウィーズ理事の羽賀晃さん(47)は「親と会えば似ているところが分かったり、話を聞いて離婚を納得できたりする。子の自己肯定感を育てるためにも、面会交流は重要だ」と話す。
 だが、日本では離婚後も両親と子どもが交流を続けるケースは少ない。
 日本は離婚すると父母の片方しか親権を持てない「単独親権」を採用しており、母親が子を引き取るケースが約9割と圧倒的だ。「夫婦の離婚」が「親子の絶縁」につながっている。
 民法では、離婚時に親子の面会交流や養育費を取り決めると定めているが、強制力はない。厚生労働省の2016年度調査では、母子家庭の46%は父と子の面会交流の経験がなかった。
 一方、欧米では離婚後も子どもが双方の親から養育を受けられるよう、「共同親権」が主流だ。アジアにも広がっており、韓国は08年から、子がいる夫婦の離婚では、面会交流の日程や養育費の受取口座などを記した協議書の提出を義務づけた。家庭法院(家裁)で最長1年間、面会交流の支援を無料で受けられるところもある。
 日本への視線は厳しさを増す。今年2月には、国連子どもの権利委員会が離婚後も子どもの共同養育を認めるよう日本に法改正を勧告した。
 法務省は11月、家族法研究会を設け、ようやく共同親権の是非を含めた議論を始めた。ただ、「方向性は定めない」(発表当時の河井克行法相)としており、親権や面会交流のあり方が変わるかは不透明だ。
 政府の腰は重いが、現状を変えようとする動きは強まっている。
 離婚などで子に会えなくなった父母14人が18年、面会交流制度の不備を訴えて集団提訴。11月22日の東京地裁判決は「面会交流は憲法上保障された権利とはいえない」と退けたが、同じ日には離婚後の共同親権を求める集団訴訟も新たに東京地裁に起こされた。
 ただ、面会交流や共同親権を進めることに慎重な意見もある。ひとり親支援団体でつくる「シングルマザーサポート団体全国協議会」は、共同親権の導入に否定的だ。離婚訴訟で精神的なDVが認められにくいため、「DVから母子が逃げた後も夫による支配が続く」という懸念が念頭にある。
 DV防止は重要だが、親権を失い、子どもに会えなくなっているのはDV加害者ばかりではない。これまで取材で会った人たちの中には、育児に積極的に関わっていた父親や、DV加害者の夫に子どもを奪い取られた母親もいる。子どもの立場からみても、一方の親に急に会えなくなった経験を持つ子は、親密な人間関係を築くのが苦手になるという調査結果もある。
 離婚で子どもの親権をめぐって争いになるのを防ぎ、子どもの人格を尊重するためにも、養育費や面会交流の取り決めを義務化し、問題なければ共同親権も選べる制度が必要ではないか。
 韓国では、離婚制度改正時に民間のDVシェルターへの予算を増やし、加害者の処罰と被害者保護を強化した。米国・カリフォルニア州では、面会交流の部屋に危険があれば警察に通報できるボタンがあった。海外の事例も参考に、法整備を急いでほしい。

「単独親権は違憲」提訴 離婚後、親子断絶  面会の約束ほご

出典:令和元年12月1日 東京新聞

「単独親権は違憲」提訴 離婚後、親子断絶  面会の約束ほご

 民法は離婚後、父母のどちらか一方にしか子どもの親権を認めない。この「単独親権制度」を憲法違反として、親権を奪われた親たちが国を相手に集団訴訟を起こした。子を見守り、育てるという基本的人権(養育権)を侵害され、「一緒に過ごせたはずの時間を奪われた苦しみ」を訴える。離婚を親子の断絶にまでつなげてしまう制度を温存してきた国の姿勢を問うこの訴訟が見据えるのは、両親がともに子育てにかかわれる共同親権制度の実現だ。 (佐藤直子)

以下、記事参照。

子どもの人権尊重 欧州議会が決議 日本の現状には触れず

出典:令和元年11月28日 東京新聞

子どもの人権尊重 欧州議会が決議 日本の現状には触れず

 国連の「子どもの権利条約(CRC)」(1989年11月20日採択)の30周年を記念し、欧州議会は26日、フランス東部ストラスブールで本会議を開き、子どもの人権に関する決議を採択した。
世界中の子どもたちを守り、権利を推進するとするCRCの理念の尊重を確認する一方で、欧州連合(EU)が長く問題視する「日本の実子連れ去り問題」については明記されなかった。
 記念演説で、イタリア選出の議員は「(94年にCRCを批准した)日本では毎年、推定15万人もの子が一方の親に連れ去られている。裁判所の判決を無視しても制裁は科せられない」と批判し、日本在住のイタリア人とフランス人の被害ケースを実名で紹介した。決議の「対外的方針」では、離婚後単独親権制度を規定する日本の現状には触れなかった。
 CRCの締約国・地域は200近くに上る。日本は94年に批准、2014年には国際的な連れ去りに対処する「ハーグ条約」も批准している。(早川昌幸)

【記念演説の動画】

https://www.youtube.com/watch?v=-etEa_OJZMY

「海外では共同親権が主流、それなのに…」単独親権違憲訴訟提訴

出典:令和元年11月22日 毎日新聞

「海外では共同親権が主流、それなのに…」単独親権違憲訴訟提訴

単独親権制度は憲法に違反するとして、子どもの養育に関われなくなった親たちが22日に国家賠償訴訟を起こした。海外では共同親権が主流で、国内でも法務省が離婚後の養育の在り方の研究会を発足させた。子どもとの交流を断たれた親からは制度改正への期待が高まるが、慎重論も根強い。

※以下、紙面参照

「共同親権」求め、別居親ら初の集団提訴 東京地裁

出典:令和元年11月22日 産経新聞

「共同親権」求め、別居親ら初の集団提訴 東京地裁

 離婚すると父母の一方しか子供の親権を持てない「単独親権」制度は法の下の平等や幸福追求権を保障する憲法の規定に反し、子育てをする権利が侵害されて精神的苦痛を受けたとして、8都道府県の40~60代の男女12人が22日、国に計1200万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に提起した。
 原告側によると、単独親権制度を違憲だと主張する集団訴訟は初めて。これとは別に都内の男性1人が今年3月に同様の訴訟を起こし、東京地裁で係争中。

 訴状によると、原告らは離婚で親権を失うなどして子供と別居し、子育ての意思があるのに「司法に救済を求めてもわずかな面会交流しか認められない」などと主張。国には「共同親権」制度の立法を怠った責任があるとしている。
 中学2年の娘と月に1度しか会えないという原告でフリーライターの宗像(むなかた)充さん(44)は、提訴後に会見し「子供に会えないのは親の個人的な問題だといわれるが、社会や制度の問題だと訴えたい。親と会えない子供たちは、会えないことをあきらめないでほしいと伝えたい」と話した。
 法務省は「訴状を受け取っていないのでコメントできない」としている。

離婚後「子に関わりたい」 親権のあり方、議論広がる

出典:令和元年11月22日 日本経済新聞

離婚後「子に関わりたい」 親権のあり方、議論広がる

 離婚後に父母の一方しか子の親権を持てない「単独親権」の見直しを求める声が強まっている。親権を持たないため子どもに自由に会えなくなったという父母らが22日、現行制度は違憲として集団提訴した。単独親権を採用する国は先進国では珍しく、離婚後も子育てに関わり続けたいという人は増えるなか、共同親権導入の是非を巡る議論も進んでいる。

「離婚や別居をすると、なぜ愛する子どもと会えないのか」。離婚などで子の養育に関わるのが難しくなった8都道府県の男女12人が22日、国に計1200万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こし、都内で記者会見した。弁護団によると、単独親権制度を違憲として国に賠償を求める集団訴訟は初めてという。

訴状によると、12人は離婚や別居などを機に子と自由に会うことができなくなった。子を養育する権利は憲法が保障する基本的人権にあたり、離婚後の共同親権制度を整備しない国の対応は違法と訴えている。
原告の一人は子どもが1歳半の時に離婚し約11年がたつが「年3回の面会交流が一度も守られたことがない」と訴えた。
親権は親が子を保護・監督し、教育を受けさせたり財産を管理したりする義務と権利を指す。民法は婚姻中は父母が共同で親権を持ち、離婚の際はどちらか一方が持つと規定している。年間約20万組の夫婦が離婚するが、日常的に子の面倒を見ていることが重視され、母親が親権を持つケースが多い。
単独親権は、子育てで進学や医療などに関する意思決定がしやすい一方、親権を失った親は養育に関与しにくくなる面がある。調停や審判を通じて面会の頻度や時間を決めても、守られずに子との交流が絶たれるケースも少なくない。
離婚に際して子どもを巡る争いは増えている。司法統計などによると、子の監護を巡って父母が対立し、申し立てられた調停・審判は2018年に約4万4300件に上り、09年と比べ約1万1千件増加。別居する親が子との面会を求める調停申し立ては18年に約1万3千件あった。
専門家は背景として、共働き世帯や育児参加する父親の増加、少子化などを背景に、子と親の結びつきが強くなっていることを指摘する。
こうした状況を受け大学教授や裁判官らによる研究会が11月、離婚後の共同親権導入の是非について議論を始めた。虐待やドメスティックバイオレンス(DV)を理由に離婚するケースもあるため、導入を前提とした場合、どのようなケースで共同親権を認めるかや、父母がどのように養育に伴う決定に関わるかを整理する。そのうえで、導入が必要と法相が判断すれば、法制審議会に諮問することになる。
早稲田大の棚村政行教授(家族法)は「共同親権は世界的な流れだが、導入であらゆる問題が解決するわけではない」と指摘。「親権の見直しにあたっては子の権利を最優先に考え、虐待やDV被害への支援体制をどう整えるかといった包括的な議論が必要だ」と話している。

■「共同親権」欧米で主流
 法務省の委託調査などによると、米国や英国など離婚後の共同親権を認める国は多い。親との面会交流は「子の権利」として位置づけられ、子の意見を聴いた上で積極的に交流を認める傾向が強いという。
 家制度を色濃く反映した明治民法では、父の単独親権が原則で、母が親権者になるのは父の死亡など例外的な場合に限られていた。戦後の民法改正で現在の制度に改められたが、当時は欧米諸国も単独親権が主流だったため、大きく問題視されることはなかった。
 米カリフォルニア州では1970年代に「共同監護」の制度を導入。離婚後も親子が継続的に面会することが州の基本政策とされ、80年代以降に全米に広がった。監護権を持つ親が面会交流を妨害すれば、制裁金や拘禁などの処罰が科される。
 このほか、韓国は離婚後の親権について父を優先する原則があったが、90年の民法改正で単独親権か共同親権かを選択できるようになった。

「離婚後の親権、片方のみの制度は違憲」 国を集団提訴

出典:令和元年11月22日 朝日新聞

「離婚後の親権、片方のみの制度は違憲」 国を集団提訴

 離婚したら父母のどちらかしか子の親権を持てない民法の単独親権制度は、親の養育権を侵害し、法の下の平等などを定めた憲法に違反しているとして、東京、長野、兵庫など8都道府県の男女12人が22日、国を相手取り1人あたり100万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴した。

 民法では、婚姻中は父母が共同で親権を持つが、離婚後は片方を親権者と定めなければならない。
 原告は離婚して親権を失ったり、離婚協議中で別居したりしている40代から60代の男女。訴状などによると、親が子を監護・養育する権利は憲法13条で保障される基本的人権であり、単独親権制度は、親権を失う親の養育権を侵害し、婚姻の有無で差別していると主張している。
 原告で長野県に住む小畑ちさほさん(57)は、元夫が親権を持っており、学校から子どもの様子を知らせてもらえなかった。「子どもを養育するということは、日常の喜びや悲しみを共有することであり、月に1、2回程度の面会交流では不十分だ。単独親権は問題だということを知ってほしい」と話した。(杉原里美)

離婚と子ども 法整備を、「面会交流」や「共同親権」

出典:令和元年11月22日 TBSニュース

離婚と子ども 法整備を、「面会交流」や「共同親権」

 離婚後の親と子どもの関係をめぐって、法制度の整備を求める裁判が相次いでいます。
 娘の写真を見て涙を流すのは、関東地方に住む30代の女性です。元夫のもとにいる2人の娘と思うように会えないつらさを訴えます。

 「いや、つらかったですね」(原告の30代女性)

 5年前、2人の娘は元夫が連れ去るように引き取りましたが、裁判の末、親権は元夫に認められました。次女は本人も望んでいるとして一定の制限のもとで面会ができてはいますが、長女は・・・
 「『きょうはパパといるから行かない』と言いだして。『どうしたの』と聞くと、泣いて答えられなくなったり、板挟みになったり」(原告の30代女性)

 会って確めることもできないまま、子どもが望んでいないとされ、およそ4年間、面会できていません。女性はこう訴えます。
 「夫婦としてうまくいかなくても、子どものために協力して、子育てできるのが一番いいのかなと」(原告の30代女性)

 そもそも離婚した親と子の「面会交流がきちんと行えるよう、法整備をしていないこと自体がおかしい」。女性は他の13人と、国に対し、あわせて900万円の損害賠償を求める裁判を去年3月に起こしました。

 しかし、22日、東京地裁は「立法措置が必要不可欠だとは認められない」として、女性らの請求を退ける判決を言い渡しました。

 一方、22日、もうひとつの裁判が起こされました。離婚した親のどちらかしか親権を持てないのは憲法違反だとして、「共同親権制度」を求めて男女12人が国を相手取り、初めて集団提訴をしたのです。

 「夫婦の別れが親子の別れにもつながっています。子ども目線で見ても単独親権は何のメリットもありません。子どもならば両方の親に甘えたいし、一緒に過ごしたいと思うのは当然です」(「共同親権制度」求めて提訴 原告の男性)

 3組に1組が離婚している現在の日本。法制度はどうあるべきか、裁判が続いています。

「単独親権は違憲」と集団提訴 子育ての権利侵害、国を相手に―東京地裁

出典:令和元年11月22日 時事通信

「単独親権は違憲」と集団提訴 子育ての権利侵害、国を相手に―東京地裁

 子どもの親権を父母一方に限る単独親権は親の権利侵害として東京地裁に提訴する原告団=22日午後、東京地裁
 離婚後は父母のどちらか一方にしか子どもの親権を認めない民法の「単独親権規定」は法の下の平等に反し違憲だなどとして、男女12人が22日、国に総額1200万円の賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。原告代理人によると、単独親権をめぐる集団訴訟は初。

 訴えたのは、東京、長野、兵庫など8都道府県の男女。訴状で、離婚や別居で子どもと自由に面会できなくなり、「通常の親子関係を奪われ、精神的苦痛を受けた」などとしている。
 提訴後、記者会見した原告らは「離婚を親子関係の断絶につなげてしまう制度は不合理だ」と主張。「親権を持つ親が拒めば子どもに会う手段がなくなる。愛する子を見守れる制度を整えてほしい」などと訴えた。

「面会交流」立法不作為訴訟 原告の請求棄却 東京地裁

出典:令和元年11月22日 毎日新聞

「面会交流」立法不作為訴訟 原告の請求棄却 東京地裁

 離婚や別居で面会交流の機会を確保するための立法措置が講じられていないのは違憲として、子どもと会えなくなった親が計900万円の国家賠償を求めた訴訟で、東京地裁は22日、請求を棄却した。

 原告は父母ら14人。離婚や別居した際に、家族間で子どもと面会する約束を交わしていたが、実現していないと訴えていた。前沢達朗裁判長は「別居している親の面会交流権が憲法上保障された権利であるということはできない」などと述べた。
 国は「主張が認められたと理解している」とのコメントした。【巽賢司】

続「共同親権の展望」(下)海外の厳しい目

出典:令和元年10月13日 中日新聞

続「共同親権の展望」(下)海外の厳しい目 早川昌幸(読者センター)

 フランスの人権派弁護士ジェシカ・フィナーリさんの法律事務所(パリ)は今年八月、国連の人権理事会(HRC)に対し、「日本の“実子誘拐”が重大な人権侵害に当たる」と申し立て、受理された、と発表した。
◆実子連れ去りを非難
 フィナーリ弁護士らは、NPO法人「絆・チャイルド・ペアレント・リユニオン」(東京)の推計データを基に「毎年十五万人の子どもたちが、片方の親によって不法に連れ去られ、子どもの最善の利益という基本的人権が尊重されていない」と非難した。九月二十日には、同じ事務所のフランソワ・ジムレ弁護士(元人権担当フランス大使)が、フランス人で当事者の一人、ビンセント・フィショーさんとともに参院法務委員会のメンバーを訪ね、連れ去りの“被害”を訴えた。
 フィショーさんは一年前、東京・世田谷の自宅に帰ってくると、日本人の妻と三歳の息子、十一カ月の娘が姿を消していた。フィショーさんによると、「離婚の示唆」はしたが、具体的な話し合いは何も進んでいなかった、という。
 ことし六月、来日中のマクロン大統領がフランス大使館で日本国内の当事者と面会。親としての悲痛な思いを共有し、後日、夕食を共にした安倍晋三首相にこの問題について述べた。今回の一行の国会訪問は、それを踏まえての行動という。
 欧米で主流の「共同親権」は、離婚後も父母の双方が養育・監護に責任を持つことが、子どもの利益につながるとの考えに基づく。日本は二〇一四年、国際結婚の破綻時に子どもの連れ去りを防ぐハーグ条約に加盟したが、面会交流の実情は先進国の標準とはほど遠い。その元凶が「単独親権」とみられているのだ。自らの意見を表明できない幼子の場合、誰かが代弁しなければならないという「世界の常識」をあらためて国内でも共有する必要があるだろう。
 愛知県内の大手メーカー社員の男性(43)は「試行的面会交流」でたった三十分間、四歳の長女と〇歳の長男と触れ合ったきり、会えない状況が続く。
 父親側の弁護士によると、家裁調査官から裁判官あてに「父子交流の機会を設けることが相当と考える」との調査報告書が出たが、妻側の代理人弁護士は裁判所で「面会交流はしない。離婚したら会わせる」との一点張りだった。その主張に裁判官も疑問を投げ掛けているという。男性にとって救いになった娘からの手紙には、こうつづられている。「みんなでいたいよ」「かくれて ごめんね」「パパ だいすきだよう」
 米国の事情に詳しい棚瀬孝雄弁護士(76)によると、カリフォルニア州では「離婚または別居後も、両方の親が子育ての責任と権限を共有することが州の公共政策である」と宣言。面会交流について「頻回かつ定期的」と踏み込んだ内容を規定している。改正民法七六六条は面会交流の取り決めを定めたが、明示的な指針は与えられていない。
 一六年三月、千葉家裁松戸支部が夫を親権者とした「松戸判決」。後に、高裁で同居親を重視する従来の「継続性の原則」を踏襲し、妻が逆転勝訴し、最高裁も夫の上告を受理しなかったが、面会交流を相手方に幅広く認めた方を親権者とする「寛容性の原則」を適用した一審は、日本では「異例」と注目を集めた。
 一審家裁支部は「(親権者になった場合)妻に娘を年間百日会わせる」「その約束を破った場合は親権者変更に応じる」との夫の提案を評価し、夫を親権者とする判決を下したのに対し、二審東京高裁は「面会の重要性は高くない。年間百日の面会は近所の友達との交流などに支障が生ずる恐れがあり、子の利益になるとは限らない。子は妻との同居で順調に成長しており、妻が親権者として適当」と判示した。その後、妻は娘を夫に面会させることもなく、娘は父親と九年以上会えないでいるという。
 離婚後単独親権違憲訴訟の原告代理人・作花知志(さっかともし)弁護士は、再婚相手からの児童虐待事件を例に「親権者が一人に減ることで、侵害される子どもたちの基本的人権をどう守っていくのか」と問題提起し、「共同親権の導入後を見据え、子どもを守る諸施策の議論は、もう始めていなければならない」と訴える。
◆両方の親で見守りを
 外国特派員協会での会見をきっかけに、関心を持ったという米有力紙ワシントン・ポストのサイモン・デニヤ東京支局長は、日本の現状をこう危惧する。「子どもには両方の親に見守られる権利があるし、(危険な状態が生じないという前提で)片方の親がそれを拒む権利はないと思う。すべての西洋人の考えを代弁することは、もちろんできないが、多くの人が日本の問題点を同じように感じているのではないか」

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「娘が車のトランクに」日本で横行する実子誘拐 「連れ去り勝ち」にEU各国が抗議

出典:令和元年10月10日 PRESIDENT Online

「娘が車のトランクに」日本で横行する実子誘拐 「連れ去り勝ち」にEU各国が抗議

日本は離婚すると親権が父か母のどちらかにうつる。だが、こうした「単独親権」を採るのは、G20の中で日本とインド、トルコだけだ。ほかの国では離婚後も父母ともに親権がある「共同親権」のため、国際結婚ではトラブルが起きやすい。なかでも深刻なのが相手の了解なしに子どもを連れ去る「実子誘拐」だ——。

娘は車のトランクに入れられて「誘拐」された
2018年8月、東京・世田谷に住むフランス出身のヴィンセント・フィショ氏は、仕事から帰ると自宅が空っぽになっていたことに愕然とした。妻と3歳の息子、11カ月の娘が、忽然
こつぜんと姿を消していた。一体何があったのか……。
両親の離婚後、子どもの親権について父親か母親かのどちらかに帰属する「単独親権制度」を採る日本。「相手方に取られる前に子どもの親権を自分のものにしたい」と、ある日突然、実子を連れ去る「実子誘拐」が横行し、外交問題にまで発展しようとしている。
フィショ氏の場合、妻側の弁護士から後日「今後のご連絡等はすべて当職までいただきたい」とする紙切れ一枚が届き、以来、子どもと会うことはおろか、連絡を取ることもできず、何をしているのかもわからない状態だ。
後で防犯カメラの映像を確認すると、彼の娘は自宅のガレージから車のトランクに入れられて実の母親によって「誘拐」されたという。「実子誘拐は児童虐待で、深刻な人権侵害だ。日本はなぜこのようなことがまかり通るのか」と彼は憤る。

「子どもたちの権利のために闘いたい」
イタリア出身で東京在住のトッマーソ・ペリーナ氏は、妻が休暇で2人の子どもを連れて実家に帰った際、その数日後に妻から「離婚したい」と告げられたという。ペリーナ氏は、2017年8月から息子と娘に会えていない。
仙台家庭裁判所は、彼に子どもと会うことができる「面会交流権」を審判で認めたが、彼の妻はその命令の受け入れを拒否し、住所も変えてしまった。日本の警察は、彼の子どもたちの居場所を把握しているが、イタリア大使館が警察や外務省に問い合わせても回答はない。
ペリーナ氏は、子どもに会うために、さらに同家裁に「調停」を申立てることになる。このような家裁の手続きの慣習により、連れ去られてから再び会えるまで、さらに長い時間を要することになる。子どもに会えないまま、すでに2年がたっている。
「子どもたちには、父親、母親の両方と一緒にいるための権利がある。自分の権利のためではなく、子どもたちの権利のために自分は闘いたい」と彼は「宣戦布告」する。

世界でも珍しい「単独親権制度」の日本
フィショ氏もペリーナ氏も、それぞれの大使館を通して子どもたちの身の安全を確認するよう要請しており、各国大使は日本に滞在している本国の未成年者の住所や健康事情などを把握する責任があるが、これに対する協力を別居親自身も日本政府も、拒否している状況だ。これについての大使の権限はウィーン条約の取り決めのため、この条約を日本は守っていないことになる。
単独親権制度は、世界でも珍しくG20の中では日本とインド、トルコのみだ。ほかの国は離婚後も両親ともに親権がある「共同親権」制度となっている。
フィショ、トッマーソ両氏のようなケースは、日本人同士の夫婦においても横行しており、これまでに数十万人の子どもたちが一方の親から引き離されている。
近年の国際結婚の増加により、外国人がこうした「連れ去り」の被害者となり、日本政府や国連への抗議活動を行い、こうした問題を指摘し始めた。それによって、今、深刻な外交問題となりつつある。

26人のEU加盟国大使が日本に文書を提出
子どもたちが日本で誘拐されて以降、日本に住み続けているフィショ、ペリーナ両氏は、ヨーロッパで、この問題への関心を向ける政治的な働きかけも行う。昨年、26人のEU加盟国大使が親に会う子どもの権利を尊重するよう日本に訴えかける文書を出したが、その動きを後押ししたのも彼らだ。
今年6月には、フランスのエマニュエル・マクロン大統領が、フィショ氏やほかのフランス人の父親と会談。安倍晋三首相に彼らの状況について問題提起した上で、「容認できない」と言及した。
イタリアのジュゼッペ・コンテ首相もまた、6月に大阪で開催されたG20のグループ会議でイタリアの両親の権利について安倍首相と話した。以来、フランスとイタリアのメディアは頻繁にこの問題を取り上げている。
8月、フィショとペリーナ両氏は、ほかの7人の父親と1人の母親とともに、米国、カナダ、フランス、イタリア、日本にいる14人の子どもの代理として、国連人権理事会に正式に告訴を申立てた。今の状況が、「子どもの権利条約」および「国際的な子の奪取に関するハーグ条約」に大きく違反しているためだ。

国連は法律の改正を日本政府に勧告した
日本は1994年に子どもの権利条約に批准しているが、「児童がその父母の意思に反してその父母から分離されないことを確保する(9条1項)」などとする条約内容に明確に違反する状態となっている。
このため、国連の子どもの権利委員会は今年2月、共同親権を認めるために離婚後の親子関係に関する法律を改正することを日本政府に勧告した。日本が「単独親権」の状態のまま問題を放置していることを、国際社会から公然と非難されているということだ。
この問題に取り組む上野晃弁護士は、日本人同士の夫婦で同じように事実上誘拐され、もう一方の親との接触を断たれる子どもたちは「年間数万人に上る」と話す。多くの場合、父親が連れ去りの「被害者」となるが、彼らが子どもに会おうとしても、政府や裁判所は助けてはくれない。
裁判所は、これまでの子どもの生活拠点を優先する「継続性の原則」を適用して、一方の親(たいていは母親)に親権を与える。また、刑法の未成年者誘拐の規定は「実の親はのぞく」といった規定は設けられていないにもかかわらず、実の親が子どもを連れ去った場合は、誘拐には当たらない慣習となっている。時間がたって子どもが新しい環境に馴染
なじめば、「誘拐」の事実はなかったことになり、連れ去った側のみに親権が与えられることになる。

「DVがあった」と主張すれば親権が奪える
上野弁護士は、「問題は日本文化に深く根差している」と言う。伝統的に、子どもは一人の人格を持った人間というより、「家の所有」と考えられている。子どもが新しい家に移されると、引き離された側の親は、新しい家に介入する権利のない「部外者」にされてしまう。「数え切れないほどの数の子どもを奪われた日本の親たちが沈黙を強いられている」と語ります。
また、日本では、ドメスティックバイオレンス(DV)の申立ての真偽を評価する仕組みがなく、その結果、DVの申立ては離婚の際に当たり前のようになされる。DVの申立てをすることで、相手方と子どもとの交流を拒否する根拠となり、「確実に親権を奪える」ことになる。
フィショとペリーナ両氏はどちらもDVの申立てがなされ、その主張を覆すことができた。フィショ氏は、妻が「家に閉じ込められていた」と主張した2週間の間に買い物と外食をしていたことを、領収書や銀行取引明細書、写真などで証明し、ペリーナ氏に対する申し立てについては、裁判所は「虚偽である」と判断した。

裁判所はフィショ氏の親権の主張を退けた
今年7月、DVの認定はされなかったものの、裁判所はフィショ氏の親権の主張を退けた。裁判官は、「妻は1年以上子どもの世話をしており、子どもたちの教育により深く関わり、より多くの愛情を持っていた」と判断したのだ。車のトランクに子どもを入れて連れ去ったことについては、「本人かどうか特定できない」。フィショ氏は、「家のガレージから連れ去られて、母親ではないなら誰なの? それこそ大事件でしょ」とその判断のおかしさを指摘する。もっともだ。
こうしている間にも、単純計算で数十人の子どもたちが国内で一方の親から引き離されているかもしれない。フィショ、ペリーナ両氏は、今後も国内外で訴えを強めていくという。
国内の政治家、行政、裁判所も、海外からの声にようやく、重い腰を上げる時が来た。実子誘拐が犯罪となり、子どもたちが親から引き離されなくなる制度が実現する日が、もう目の前に来ている

DV被害、追い出し離婚…、共同親権を望む母親たちの声

出典:令和元年10月8日 Yahooニュース

DV被害、追い出し離婚…、共同親権を望む母親たちの声

これまで日本における子どもの連れ去り被害や、共同親権を望む当事者の声は父親がほとんどでした。しかし、実際には母親の側も共同親権を望んでいるのです。特にDVの被害に遭い、しかも親権をとれなかった別居母親たちの声は全く社会には届いていません。
共同親権の説明についてはこちらの記事をご覧ください。
日本でも離婚後の「共同親権」導入を(親子が親子であることを当たり前の社会へ)
今回は、追い出し離婚によって子どもたちと引き離された母親と、DVの被害に遭い子どもたちと一緒に逃げ出した母親について取材しました。

現代にも残る「追い出し離婚」の実態
ジブリさん(仮名・40代)は「追い出し離婚」の被害者です。長男と長女の2人と無理矢理に引き離された後、元夫側から子どもたちに会いたいなら離婚届に署名しろと脅迫を受けました。今現在、子どもたちは徳島県の山間部に住んでいますが、限界集落での生活を余儀なくされています。子どもたちにはアレルギー疾患が判明していましたが、治療も受けられず医療虐待の疑いがあります。今年7月には子どもたちをジブリさんが引き取ることになっていましたが、元義父に妨害され音信不通です。警察にも介入してもらっていますが、向こうの元義父母から跡継ぎが出来たのでジブリさんはもう用済みだと言われています。
ジブリさんは「子どもたちに会えるという期待や希望が踏みにじられてからは、日常生活もまともに送れず涙が止まらない日々が続いています。何とかアレルギー疾患で命を落とす事が無いよう回避して欲しいと願っています。そして、必ず時間が掛かったとしても会えたときには二人の子どもたちを思いきり抱きしめたいです。共同親権であれば子どもたちの意志も尊重されるようになると思いますし、そう願っています。」と涙声で語っていました。

DV被害者が共同親権を望む理由
岡田 茜さん(仮名・40代)はDV被害者で二児の母親です。元夫によるDV被害から逃れるため子どもたちと一緒に警察に保護を求めてシェルターへ避難しました。保護命令1回目の期間中に元夫からの接触(脅迫行為)があり、2回目(延長)を申請して受理されています。判決では面会交流は「無し」となりましたが、離婚成立後に岡田さんの一存で数回子どもたちと面会させていました。
共同親権のことを岡田さんが知ったきっかけは児童福祉施設でのボランティア活動だったといいます。離れて暮らす実両親を恋しがる子どもたちに触れ、子どもの気持ち、親権の在り方について考えたのが始まりでした。あるお子さんに「新しいお家、嫌だ。本当のお父さんの所がいい。先生お願い、連れてって」と言われたときは本当に辛かったし、今でも思い出すと涙が出てくるそうです。
岡田さんは「子どもの連れ去り、虚偽DVという言葉はTwitterの書き込みを見て知りました。まさかこんな悲しみが潜んでいたのかと、かなり衝撃を受けましたね。子どもと引き離された親の悲しみと、親を求めた施設の子どもたちが重なって一気に引き込まれていきました。」と、そのときの想いを語ってくれました。

同じDV被害者からも理解されない悩み
岡田さんはDV被害者の中で「単独親権=同居親=DV被害者」と、「共同親権=別居親=連れ去り被害者」の構図があることに衝撃を受けたと言います。なぜなら、子どもの連れ去り被害者の中にもDVの被害に遭っている母親がいることを知っていたからです。親権を失ったDV被害者や、DVを立証できない被害者を救える手立ては共同親権しかないと考えていました。
「子どもと引き離された親の中にDV被害者がいるのに、なぜ共同親権に反対をしているのか?」と、いつしか岡田さんは共同親権に反対しているDV被害者へ理解を求めるようになりました。しかし、ようやく得た平穏な生活を脅かされる危惧があるのか、なかなか理解は得られない状況が続いています。Twitter上では「DV被害者のくせに」と共同親権を推進している岡田さんを批判する人たちまであらわれました。
共同親権に反対しているDV被害者のほとんどは親権を有する同居親です。係争中の方もいるかもしれませんが、深刻な事態からは脱し、救済された形となっています。その上で共同親権に反対するのはなぜか。岡田さんの目には、自分たちの安全・安心のために親権を失った別居親、DV被害者の犠牲から目を背けているように映っていました。

DVの被害に遭い、しかも親権をとれなかった別居母親たちを救いたい
諸外国の運用を見ると、離婚後共同親権制度には単独親権が含まれています。加害性があるなど、子どもに悪い影響を与える親には監護権は認められず、面会も制限されます。また、親権停止・剥奪と組み合わせれば完全に単独親権状態となります。共同親権が導入されてもDV支援の運用が見直されない限り虚偽DVでの連れ去りは後をたちません。虚偽DVが大きな問題となればシェルター運営に支障をきたし、真正のDV被害者までいわれのない疑いをうける可能性があります。そして付け焼き刃のような運用見直しが行われれば避難・保護の妨げになる可能性もあります。
岡田さんは最後に「同居DV被害者の皆さんも過去のトラウマなどで苦しんでおられると思います。ケアサポートが不十分ですからね。でも優先すべきは今現在、苦しんでおられる方々です。DV被害者を含む別居親のみなさんを救いたし、子どもたちの尊厳を守りたいと思っています。」と、強い決意を語ってくれました。
法務省は離婚後も父母の両方が親権を持つ「共同親権」の導入の是非について検討する研究会を年内に設置すると発表しました。結論を受けて導入が必要と判断すれば、法相が民法改正を法制審議会(法相の諮問機関)に諮問する見通しです。ぜひとも、共同親権が実現し、被害者と子どもたちが断絶させられている今の日本の社会を変えて欲しいと願っています。

離婚後の共同親権は制度改定だけでは不十分

出典:令和元年10月8日 Newsweek

離婚後の共同親権は制度改定だけでは不十分

<両親の離婚後も、子どもが双方の家族から愛情を受けられるよう、制度とカルチャーの両面を変えていくことが必要>
日本の法務省は9月27日、離婚後も父母双方が子供の親権を待つ「共同親権」制度の是非をめぐる研究会を立ち上げ、議論を開始すると発表しました。河井克行法相は同日午前の記者会見で、この共同親権の問題について、「一定の方向性をあらかじめ定めているわけではない。実り多い議論が行われることを期待する」と述べたそうです。

この制度ですが、このコラムでも再三にわたって取り上げた「ハーグ条約」、つまり国際離婚における子どもの一方的な連れ去りを禁止し、連れ去りが発生した場合は子どもを元の居住国に戻すことなどを定めた条約を日本が批准したことで、改めて必要になってきた制度であると言えます。
現在の日本の民法では、この共同親権制度がありません。そのために、国際結婚が破綻した場合に、日本で離婚裁判を行うと単独親権という判決が出ることから、欧米圏出身の配偶者の場合は、そもそも日本での裁判に応じないという実情があります。その結果として、外国人の側の親は自分の国における離婚裁判を強硬に主張して、日本人の親に不利な結果を引き出す傾向があります。
共同親権制度が導入されれば、離婚後に母親が単独親権を獲得した場合に、父親の面会権が十分に保障されないとか、反対に父親が養育費の支払い義務を怠るといった問題が、改善されるケースも増える可能性があります。

制度への社会的な理解が必要
ですが、この問題、制度だけを用意してもダメだと思います。離婚と親権、面会権などを取り巻く、社会的な理解を変えていかなければ、制度だけを変えてもうまくいかないからです。
1つは、共同親権という制度への社会的理解をどう進めるかという問題です。共同親権というのは、離婚後の子どもについて、例えば平日は母親で、週末は父親であるとか、通常は父親だが夏休みは母親といった取り決めをして、子どもは双方の親の間を行き来するという制度です。
社会的理解というのは、ある子どもの家庭が、そのような選択をした場合に、学校や子どもの友人の家庭などが、そのことにしっかり理解を示すことが必要だということです。共同親権の下で育てられている子どもが差別されたり、誤解を受けたりするようなことがあってはなりません。

2つ目は、ルールを厳格に決めるということです。共同親権というのは、すでに夫婦ではなくなった、そして離婚の過程で利害衝突を調整してきた当事者達によって公正に運用されなくてはなりません。反対に、ルール違反が起きた際には厳格に対処する規定も必要です。例えば、自分が担当でない日に子供を連れ去るような問題には、厳重な罰則を設定しつつ、そのような事態を防止するために周囲の理解を進める仕掛けが必要です。

3つ目は、離婚後の新しい配偶者の問題です。日本でも、もちろん血の繋がらない親子関係を立派に築いてお子さんに愛情を注いでいる親御さんもたくさんいます。ですが、社会として「血の繋がりがない」場合に、愛情が注げないことへの「許容」がまだ残っているように見られます。

極端な例は、近年問題になっている「再婚カップルにおける連れ子への虐待」です。もちろん、明るみに出れば厳しいペナルティを課すようになっていますが、社会として防止策は十分とは言えないように思います。

連れ子に対して「冷淡な」カルチャー
例えば、現在の離婚後の運用においては、親権のない親に面会権があったとしても、「その親が再婚したら面会権を遠慮する」とか「再婚相手が、前の婚姻における子供と面会することに対して不快感を表明してもいい」あるいは「再婚相手の前の婚姻による子供については、自分は血の繋がりがないので親としての責任を尽くさないでいい」といったカルチャーが、まだまだ残っているようです。
共同親権がうまく機能しているケースでは、ほぼ100%「自分のところに子供が来る日には、再婚した新しい配偶者も一緒にその子に愛情を注ぐ」ということが実行されています。社会的にそのように誘導するようなカルチャーが必要ではないでしょうか。
いずれにしても、共同親権というのは、その制度を取り巻くカルチャーについても、アップデートを要求します。子どもを1つの家族に囲い込むのではなく、2つの家族を行き来する中で、それぞれの家族が愛情を注ぐ、そしてそれができないというウォーニングが出た時には、制度的に子どもが救済される仕掛けを、制度とカルチャーの両面で用意することが必要です。

続「共同親権の展望」(上)解けない対立

出典:令和元年10月6日 中日新聞

続「共同親権の展望」(上)解けない対立 早川昌幸(読者センター)

 「報道していただき、心から感謝しています。苦しんでいる人たちの実情を社会が認識し、支える土壌が出来上がっていくのではないか、と期待しています」
 「私も当事者で、いろいろな被害者と会い、苦しみを耐え抜いてきました。仲間たちも、この記事を見て涙しております」
 前回の特集(本欄七月七、十四日付)に、男女の当事者らからさまざまな意見が寄せられた。

◆世界の潮流に遅れ
 離婚後共同親権を認めていないのは、先進七カ国(G7)では日本だけであり、国連の子どもの権利委員会が今年、日本に「児童の共同親権を認めるため」の法改正を求める勧告を出した。国全体として、この問題に正面から取り組む必要がある。そんな流れの中で、一石を投じたつもりだ。
 一方で、主に子どもと同居する側の立場を代弁する複数の弁護士から「共同親権賛成に偏り一方的だ」という批判もあった。
 DV(家庭内暴力)問題を中心に実績のある弁護士は「裁判所で親権者や子どもの面会が否定される背景には、DVや児童虐待が存在しているケースも多い。DV、児童虐待は立証が難しく、安易に共同親権が適用されることにならないか懸念がある」と指摘。「共同親権制度でないから、親権や面会が認められないと訴えるのは、理論のすり替えに他ならない」と主張する。
 前回の特集では、メイン見出しに「子ども第一の目線で臨め」(上)「心のケア体制整備急げ」(下)とあるように、視点はあくまで子どもが最優先だという点にあることを、まずは確認しておきたいと思う。
 どちらか一方の側に立つのではなく、子どもの利益を優先すべきなのは言うまでもない。この国の現状が、最優先されるべき子どもの利益がないがしろにされているのではないか、という世界からの非難にさらされていることを忘れてはなるまい。
 離婚後のスムーズな面会交流が実現しない理由の一つは、激しい感情的な対立が続いているケースだ。
 調停に限界があれば、子どもへの影響を緩和する第三者機関などの対処手段が必要だろう。夫婦間の激しい対立やDVに共通するのは、当事者だけで解決するのが難しい、ということだ。家庭裁判所がその機能を十分に果たし切れているとは言いがたい。
 すでに社会人になっている遼さん(32)は子どものころ、父親の勤務先の会社の経営が傾いたことをきっかけに父親が母親に暴力を振るうようになり、それがトラウマ(心的外傷)になった。
 「あのころはどうしたらいいか分からず、パニックになった」
 引きこもり生活が続き、福祉系の大学を卒業して介護職に就いたものの、仕事上のトラブルで心の病に。利用者として通い始めた就労支援会社の女性経営者の励ましと、自らと同じような境遇の主人公を描いた映画「ママかパパか」を見たことが救いになったという。
 利用者から正社員である「職業指導員」に採用され、あるとき「昼食作りを手伝って」と、幼いころに親の離婚を経験した十七歳の利用者の少年に包丁を渡すと、少年は手際良く野菜を切ってみせた。「会いたい」と慕う父親は腕利きの板前だった、と聞かされた。遼さんの父親への思いと重なり「嫌いだった自分を肯定できるようになった」。
 最近、母親に内緒で父親に「どうしてる」と手紙を書いた。返事はまだ届かないが「僕にとって、たった一人の父親。今も会いたい」と思いを語る。
 十組の離婚には十のパターンがあり、一律に判断できる物差しはない。だが、子どもの「会いたい」と願う思いに寄り添う必要がある。現状では、裁判所が公平に仲裁したり、事実の真偽を判断したりできないまま、結論を下すケースが少なくない。時代に合っていないのではないか。

◆科学的知見も必要
 立命館大の二宮周平教授(家族法)は、子どもが別居親からも見守られていると確信できるとして「面会交流」の意義を認めた上で、こう指摘する。
 「DVが原因で離婚した場合、加害者には治療を含む更生プログラム、被害者にはエンパワーメント(励ましによる力づけ)のためのプログラムが必要。そういった仕組みやルールが日本では不十分だ。法曹界にも心理学など科学的知見が求められる」
 時代に合った調停・審判のシステムを確立しなければ、夫婦間の対立が激しいケースで子どもの利益を最優先にした解決への糸口は見えてこないだろう。

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離婚後の「共同親権」導入の是非を検討へ 法務省

出典:令和元年9月27日 NHK

離婚後の「共同親権」導入の是非を検討へ 法務省

離婚したあとも父親と母親の双方が子どもの親権を持つ「共同親権」について、法務省は、新たに研究会を設け、導入の是非を検討することになりました。
離婚したあとの親権は、日本では父親か母親のどちらか一方しか持つことができない「単独親権」が民法で規定されていますが、海外の先進国では、両親がともに持つ「共同親権」が主流となっていて、法務省は、海外の制度や運用状況の調査を進めています。

こうした中、法務省は、離婚したあとの子どもの養育の在り方や、「普通養子縁組」の制度の見直しなどを議論するため、有識者や裁判官などからなる新たな研究会を年内をめどに設け、「共同親権」の導入の是非について検討することになりました。
河井法務大臣は記者会見で、「共同親権については、家族法の専門家や関係者、当事者からさまざまな意見があることは承知している。社会全体のいろいろな立場からぜひ丁寧に議論してほしい」と述べました。

「共同親権」導入の是非検討 法務省、研究会立ち上げ

出典:令和元年9月27日 日本経済新聞

「共同親権」導入の是非検討 法務省、研究会立ち上げ

法務省は27日、離婚した後も父母の双方に親権が残る「共同親権」導入の是非を議論する研究会を立ち上げると発表した。年内に研究者や裁判官、弁護士を中心に議論を始める。法制審議会(法相の諮問機関)への諮問も検討する。
河井克行法相は同日の閣議後の記者会見で「家族法制に見直しを求める様々な声がある。論点を整理する」と述べた。
現在の民法では父母のいずれか一方が離婚後の親権を持つ「単独親権」を規定している。法務省は共同親権によって、別居親と子どもとの面会交流を積極的に実現し、子どもの養育環境を整えることに資するかどうか議論する方針だ。
研究会では離婚要件の見直しに関しても話し合う。離婚後の子どもの養育計画づくりを義務化するかが論点となる。現行法では協議離婚について裁判所が関与していないため、養育計画の提出は義務付けられていない。
研究会では少なくても1年以上をかけて議論する見通しだ。

離婚後の子どもの「共同親権」 法務省が導入検討へ

出典:令和元年9月27日 テレビ朝日

離婚後の子どもの「共同親権」 法務省が導入検討へ

 離婚後の子どもの「共同親権」について、日本でも検討が始まります。

 法務省は夫婦が離婚した後の子どもの養育の在り方について、年内にも専門家による検討を始めることを明らかにしました。離婚した後も両親が親権をともに持つ共同親権の導入について、議論するとしています。現在、離婚後の親権は父親か母親のどちらかが持つことになっていますが、離婚の増加に伴うひとり親世帯の貧困などが問題となっています。法務省は離婚の要件の見直しや離婚後の面会交流の促進についても議論するとしています。

離婚後の「共同親権」是非を議論 法務省、年内に研究会

出典:令和元年9月27日 朝日新聞

離婚後の「共同親権」是非を議論 法務省、年内に研究会

 法務省は27日、離婚後も父母の両方が親権を持つ「共同親権」の導入の是非などを検討する研究会を年内に設置すると発表した。数年かけて議論する見通し。結論を受けて導入が必要と判断すれば、法相が民法改正を法制審議会(法相の諮問機関)に諮問することになる。
 研究会は公益社団法人「商事法務研究会」が主催し、裁判官や弁護士、有識者、法務省幹部がメンバーとなる。
 現在の民法は、離婚後は父母のどちらかを親権者とする「単独親権」を採用している。子育ての意思決定はしやすいが、親権を失った親が養育に関わりにくくなり、子と交流を絶たれるなどの問題点が指摘されてきた。研究会では、別居中の親と子の面会をどう促進するかや、離婚時にその後の子の養育計画を作ることを義務化すべきかなどについても検討する。
 河井克行法相は27日の会見で「家族法制の見直しを求める様々な声がある。議論の方向性は定めず論点を整理する」と述べた。

共同親権、年内に研究会設置=導入の是非を議論へ-法務省

出典:令和元年9月27日 時事通信

共同親権、年内に研究会設置=導入の是非を議論へ-法務省

 法務省は27日、離婚後も父母双方に子の親権が残る「共同親権」の導入の是非をめぐり、年内に研究会を立ち上げ、議論を開始すると発表した。現行の民法は、離婚した場合には父母の一方を親権者とする「単独親権」を定めている。研究会の議論は少なくとも1年以上を要する見通しだ。
 河井克行法相は同日午前の記者会見で、共同親権について、「一定の方向性をあらかじめ定めているわけではない。実り多い議論が行われることを期待する」と述べた。
 現行法の「単独親権」では、親権を持たない親は子との交流が少なくなるとの問題点が指摘されている。研究会が法改正の必要性を判断すれば、法相は法制審議会(法相の諮問機関)に諮問することになる。

司法は「家族」を取り戻せるか

出典:令和元年9月16日 産経新聞

司法は「家族」を取り戻せるか 日本大学教授・先崎彰容

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     筆者は現在、ワシントンDCに短期滞在している。自由と民主主義の理念が完全に崩壊し分断社会と化したアメリカで、筆者は強い衝撃を受けた。アメリカに対してではない。8月23日付のヤフージャパンのトップニュースが、わが日本が抱える病理を、鮮やかにえぐっていたからである。
     ≪「妻に子を連れ去られた」事件≫
     タイトルは「妻に子を連れ去られた夫の叫び」。夫を残して2人の子供を連れ出し、別居状態にある妻との確執を取材した記事である。筆者を刺激したのは、このインタビューが私たちにとって「家族とは何か」「男女平等とは何なのか」を深く考える格好の事例だったからだ。真実は細部に宿る。市井の事件を洞察すれば、わが国を脅かす生活文化の崩壊を指摘できる、そう直感したのである。
     ※続きは紙面を参照ください。

【子と親の離別~揺らぐ親権制度】(下)子に会えぬ、海外から批判 制度に隔たり 離婚後トラブル増加

出典:令和元年9月3日 産経新聞

【子と親の離別~揺らぐ親権制度】(下)子に会えぬ、海外から批判 制度に隔たり 離婚後トラブル増加

 欧州連合(EU)26カ国の駐日大使は昨年3月、日本で離婚した加盟国出身の親が子供と面会できないケースがあるとして、子供の権利に注意を払うよう求める書面を当時の上川陽子法相に出した。米国務省は同年5月、国際結婚破綻(はたん)時の子供の連れ去りに関する年次報告で、日本を、離婚などで国境を越えて連れ去られた子供の取り扱いを定めたハーグ条約の「不履行国」に認定。今年は撤回したものの、「引き続き強く懸念する」とした。
 離婚後の親子関係をめぐり、日本へ働きかけをしたのはEUや米国だけではない。
 国連の「子どもの権利委員会」は今年2月、日本政府に対し、外国籍の親も含め離婚後の共同養育を認める法改正や別居親との接触を続ける方策を実現するよう求めた。
 日本で生活中に子供を連れ去られたイタリア人とフランス人の父親は昨年12月、海外からの批判が高まっているのは「裁判官の責任」とする公開質問状を最高裁長官に提出。ハーグ条約などよりも、同居親を優先する「監護の継続性」を重視して連れ去りを実行した親に親権を与える判決は不当だと訴えた。

 国際結婚の増加に伴い、どちらかが外国籍を持つ父母間のトラブルも増加している。両親の離婚後、「単独親権」をとるのは先進国では日本のみで、「共同親権」を前提とする外国籍の親が子供に会えなくなった際の困惑が、近年こうした形で表面化してきている。
 米ワシントン州に住む米国人男性(52)は、2008年に日本人の元妻と米国で離婚。州の裁判所で、男性が当時4歳の息子と同居する監護者となることや、合意しない限り転居しないことなどを明記した養育計画を定めた。

 ところが元妻は10年、領事事務所に息子の旅券を紛失したとする虚偽の申請を行い、不正に旅券を取得して息子と日本に帰国。富山家裁に、息子が既に日本の生活になじんでいるとして自身を監護者に指定するよう求める審判を起こした。
 男性は突然の事態に驚き、息子の引き渡しを求める審判を家裁に提起。家裁は、元妻を監護者に認めなかったが、同時に「(息子の)現在の平穏な生活を奪う」などとして男性に引き渡すことも認めなかった。
 男性は「決定は、元妻の違法行為を支持していると言わざるを得ない」として名古屋高裁金沢支部に抗告したが、棄却された。
 息子に会えないままワシントンに暮らす男性は「日本の制度は子の発達よりも同居親の希望を最優先している」と嘆く。

 国境を越えた子供をめぐるトラブルが複雑化するのは日本人同士でも同様だ。
 元夫の仕事の都合で家族でタイで暮らしていた女性(39)は、離婚した15年に家を出るよう元夫に迫られ、2人の子供と引き離された。女性が養育するとの約束だったが、「親権者は便宜上、僕にする」などと言われて元夫にしていた。激高しがちな元夫に逆らえず、ひとりで日本に帰った。その時はまだ、子供と会う機会は設けてもらえるはずだと考えていた。

 しかし相手の住所が国内にない限り、日本の裁判所に救済を求めることはできない。弁護士を通じて交渉したり、タイの裁判所に調停を申し立てたりしても親権を変更することはできなかった。夫が帰国したのを受けて女性は日本で調停に踏み切ったが、既に子供との別居から約4年。親権はあきらめ、今は調停で得た年に2回の面会と電話での間接的面会交流の決定に自身を納得させている。

 女性が最後に子供と面会できたのは昨年末。幼かった2人は大人びていた。なぜ別居しているかは「大人同士の争いに巻き込みたくない」ため説明できていない。女性は「健康に成長していることが確認できて最低限よかったと思うようになった。これから『ママは2人を見捨てたんじゃない。ずっと愛していたよ』と伝えていきたい」と話す。
 単独親権制度の見直しを検討している法務省は現在、世界24カ国の親権制度の実態を調査している。担当者は「単独親権か共同親権かという形式だけでなく、制度の運用や制裁、それらのメリット・デメリットなどを幅広く調べたい」としており、日本での課題に、どのような制度が有効か検討する方針だ。
 離婚後の子供をめぐるトラブルは後を絶たない。子供の養育環境を最優先に、新たな制度の実現が求められている。

ハーグ条約 一方の親がもう一方の親の同意を得ることなく、子を国外へ連れ出すケースに対応するため1980年に制定された国際ルール。国際結婚の増加に伴う子供の連れ去り問題に対応するため日本も締結し、2014年4月に発効。16歳未満の子が対象で、原則として元の居住国へ返還するとしている。

【子と親の離別~揺らぐ親権制度】(中)父「何かできなかったか」別居の娘救えず 死後も親権の壁

出典:令和元年9月1日 産経新聞

【子と親の離別~揺らぐ親権制度】(中)父「何かできなかったか」別居の娘救えず 死後も親権の壁

 「もっとやれたのにね。バカだった。悪かった」
 広島市の公務員、江邑(えむら)幸一さん(46)は、離れて暮らしていた長女の命を守れなかったことを悔やみ続けている。長女は平成26年11月、自宅で首をつり自殺した。16歳だった。
 元妻が突然、長女と次女を連れて家を出た約半年後の18年3月、江邑さんは娘たちの親権を失い、元妻との離婚が決まった。以来、元妻と娘たちは山口県で暮らしていた。
 江邑さんによると、長女は家庭内で孤立。児童相談所の支援を受け、児童養護施設を経て一時保護所の入退所を繰り返した。県が開示した児相の記録によると、「自宅の生活は限界」などと訴えていたが、児相が親元に返す「家庭引き取り」を決定した。自殺はその2カ月後だった。
 江邑さんに全く予感がなかったわけではない。「お父さん、死にたい」。生前、長女から何度か電話があった。誰にも言わずに家出し、夜、広島に来たこともあった。長女を捜索する警察に「娘がこちらにいたいと言っているので、いさせてもいいか」と聞くと、「連れてこないと逮捕します。母親が悲しんでいる」と言われた。
 長女の死後、仕事が手につかなくなった。「何かできなかったか」と自分を責める一方、「親権を持つのは母親側。親権者や児相がなぜちゃんと娘と向き合えなかったのか」との疑問がくすぶる。

 離婚後、親権を持つ親の下で子供が虐待を受けるなどして事件に発展するケースも少なくない。
 東京都目黒区で昨年3月、船戸結愛(ゆあ)ちゃん=当時(5)=が死亡した事件では、結愛ちゃんは親権を持つ実母や再婚相手の父親から虐待を受け、「前のパパがいい」と訴えていた。23年の民法改正では、虐待した親の親権を一時停止できる制度が新設されたが、悲惨な事件は後を絶たない。実父との関係を続けられる道があれば、SOSを生かせた可能性はある。
 その一つが、法務省が導入を検討している離婚後も父母で親権を持つ「共同親権」制度だ。現行の父母いずれかを親権者と定める「単独親権」制度では、親権のない親と子供との関係性は親権を持つ親の意向に強く影響されるからだ。親権のない親と子供の面会交流も、親権者が拒否した場合はほとんど制限される。厚生労働省の28年度の調査では面会交流をしているのは母子家庭で3割、父子家庭で4割強。最悪、生き別れとなるケースもある。
 これに対し、共同親権が主流の欧米では、子供の利益のため離婚後も面会交流や養育費負担などのルールを決め、父母が共同で子育てを担う。

 日本の民法でも面会交流は子供の利益を優先すると定められており、重要なのは子供の意向だ。親の離婚に悩む子供を支援するNPO法人ウィーズ(千葉県船橋市)理事長の光本歩(あゆみ)さんは、共同親権について「『離婚しても父と母、両方の子供』というメッセージになる」と歓迎する一方、面会交流に関しては「基本的に実施した方がいいが、子供にとって負担になる場合もあるので成長に合わせて柔軟に検討すべきだ」とする。「子供は父母間の負の感情を敏感に感じ取る。父母の争いを低減させることや、子供が抱く不安や戸惑いをサポートすることも必要」と話した。
 《たぶん期待してたんだ。だれかが家にかえらなくていいなにかを提案してくれることを》。長女の26年の日記からは、自宅以外での生活を強く望む気持ちが読み取れる。《消えたい。児相だって母さんの味方やんか》《(母親と)まじで上手(うま)くいかない。いしそつうもはかれない》。言葉に葛藤(かっとう)がにじんでいた。
 江邑さんは長女の死後、自殺直前の時期に何があったか知りたいと考え、山口県に児相記録の開示を請求した。しかし県は「親権者ではない」などとして開示を拒否。娘の死後すら親権が壁になった。
 その後、開示を求めて提訴。山口地裁は昨年10月、県の非開示決定を取り消す判決を出した。県は部分開示に応じたが、江邑さんは家庭引き取りの決定の理由など重要部分が黒塗りだったとして今年7月、全部開示を求める訴えを改めて地裁に起こした。
 「僕にも親権があれば自殺するほど娘は追い詰められなかっただろうし、死後に県に対応を隠されることもなかった。そもそも共同親権の選択肢があれば親権争いの調停も必要なかったのではないか」。悲劇を繰り返さないため、江邑さんは制度のあり方にも考えをめぐらせている。
 親権の一時停止 児童虐待の深刻化を受け、平成23年の民法改正で新設された。親権が適切に行使されない場合、2年以内の期間に限って親権を止めることができる。子供自身や親族、検察官、児童相談所長などの申し立てに基づき、家庭裁判所が判断する。

【子と親の離別~揺らぐ親権制度】(上)まかり通る「連れ去り勝ち」 離婚後の単独親権、相次ぐトラブル

出典:令和元年9月1日 産経新聞

【子と親の離別~揺らぐ親権制度】(上)まかり通る「連れ去り勝ち」 離婚後の単独親権、相次ぐトラブル

 突然の出来事だった。
 「あなたとはもう一緒に住めません。しばらく別居します」。2年前、当時地方勤務だった東京都の会社員男性(47)は仕事中、妻から受けた電話に耳を疑った。それまで何の相談もなかった。当時7歳と4歳の息子と家族4人で幸せに暮らしていると思っていた。慌てて自宅に戻ると、妻と義父が引っ越しの荷出しをしていた。子供たちは義母がどこかに連れ出したようだった。
 「こんなやり方、ひどいじゃないですか」。義父に訴えたが、「娘が決めたことだから」と取り付く島もない。その後、子供との面会を求めると、妻側は「子供の精神状態が不安定」として弁護士を通じ拒否。役所や子供たちの学校に問い合わせても、転居先や転校先を教えてもらえない。住民票には、妻から閲覧制限が申請されていた。これは家庭内暴力(DV)が理由とされるケースが多いという。男性は妻や子供に手を上げたことは一度もない。
 子供たちとの面会を望む男性は嘆息まじりに吐露する。「妻や義父母はこんな卑劣な手段を使うような人たちではなかった。それがまかり通る今の法制度に問題があるのではないか」
            □ □ □
 近年、夫婦の一方が相手に黙って子供と家を出る「連れ去り」が頻発している。離婚や親権の問題に詳しい上野晃弁護士によれば、離婚時の親権争いで、家庭裁判所は育成環境が一変するのは子供に不利益になるとの考えから、同居している親を優先する「監護の継続性」を重視するため、連れ去りが親権を勝ち取るテクニックとして定着しているのだという。

 「連れ去った側は『DV被害を受けた』『夫婦不仲で子供の成長に悪影響』といった理由を主張すれば、裁判所は安易に容認してしまう。『連れ去った者勝ち』の状況だ」(上野弁護士)
 平成28年3月に千葉家裁松戸支部で判決が言い渡された親権訴訟は、こうした司法判断に一石を投じるものとして注目された。長女を不当に連れ去られたとする男性側と、男性からDV被害を受けたとする元妻側との訴訟で、男性側は「親権を得たら長女と元妻を年間100日程度、面会交流させる」、元妻側は「面会交流は月1回程度」と主張。判決は妻のDV主張を認めず、男性側の提案を「長女が両親の愛情を受け、健全に成長できる」と評価して男性側を勝訴とした。
 だが控訴審の東京高裁は29年1月、「面会交流が他の事情よりも重要度が高いとはいえない」として、監護の継続性などを重視し男性側を逆転敗訴とした。最高裁もこれを支持した。
 こうした現状に歯がゆさを覚え、連れ去りを犯罪だとして刑事告訴に踏み切る当事者も出てきた。連れ去られた側の関係者によると、昨年ごろから少なくとも全国約20カ所の警察署や地検に告訴状が出され、受理された。

 兵庫県の自営業男性(48)は、28年に当時5歳の長男と3歳の長女を連れ去ったとして営利目的略取誘拐罪で元妻と元妻の代理人弁護士を県警に告訴した。受理されたものの、後に不起訴となった。元妻は連れ去り時にDV被害を県警に訴えたが、これも不起訴に。それでも監護者争いでは元妻が勝訴した。男性は「虚偽のDV申告を盾にした連れ去りは誘拐だ」と憤る。
 司法統計によると、子供の引き渡しを求め、家裁に審判や調停を申し立てるケースは年々増加。昨年は約3700件で、この10年間で倍以上に増えている。
 親権争いが起きる背景には、日本の民法が離婚後の「単独親権」制度をとっていることがある。一方、欧米では離婚後も両親が親権を持つ「共同親権」制度を採用している国が多い。
 日本では親権のない親はほとんど子育てに関わることができず、面会交流も親権者の意向で制限される。親権者の再婚相手などによる児童虐待にもつながっているとの指摘もある。法務省は選択制などでの共同親権導入を含めた制度見直しの検討に乗り出している。
 上野弁護士は「昔と違って今は父親も育児に参加する。これからの時代に合った法制度や裁判所の運用が必要だ」と強調する。

 一方で慎重な意見もある。東北大の水野紀子教授(民法)は指摘する。「日本は他国と異なり、DVや虐待に対する支援が貧弱で、被害者に残されているのは逃げて別居する自由だけ。支援が整わないうちに共同親権を導入するのは危険だ」
            ◇
 親権制度が大きく揺らいでいる。親権をめぐるトラブルや訴訟が相次ぎ、親権を失った親が子供と会えず生き別れとなるケースも少なくない。傷ついた当事者の声をたどり、制度のあり方を考える。
            ◇
親権 未成年の子供に対して父母が持つ権利や義務。民法では、日常の世話をする監護や教育のほか財産管理などが定められている。結婚していれば原則、2人が親権者となるが、離婚した場合、日本は一方を親権者に定める「単独親権」をとっている。 

日本の公的機関が実子誘拐に役立つようなセミナーをしたというのは本当なのか?

出典:令和元年8月31日 YAHOOニュース

日本の公的機関が実子誘拐に役立つようなセミナーをしたというのは本当なのか?
プラド夏樹(パリ在住ライター)

前回、日本人パートナーによる実子連れ去りが、ハーグ条約に反していると大きな国際問題になっていることについて書いた。
(注)ハーグ条約:国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約。一人の親が、もう一方の親の同意なしに16歳未満の子どもを連れて加盟国間の国境を超えた場合、子どもは元の国に戻すということを定めた条約。日本については2014年から、フランスは1983年から発効
その中で、パリの弁護士事務所Zimeray-Finelleのジェシカ・フィネル弁護士が国際連合人権理事会に、日本に連れ去られた子どもの保護に介入するよう訴え出たことに関して言及した。同弁護士の発表を元にもう少し深く掘り下げてみたい。
日本では、両親の別離によって年間約15万人の子ども(日本国籍および日本と他国の二重国籍。子どもの人権保護に努めるNPO団体、絆・チャイルド・ペアレント・ユニオンの発表による数字)が片方の親によって連れ去られていることを挙げ、「日本政府は『児童の最善の利益』について明記している国連児童の権利条約第3条(注)を遵守していない。東京国際大学の小田切紀子教授が強調するように、このような子どもたちは酷いトラウマにさらされ、長期的には学校教育で落ちこぼれてしまったり、ハイパーセクシャリティーやそのほかの自己破壊的な行為など、自らを危険にさらすような行動をするようになることがある」としている。
(注)国連児童の権利条約第3条:「児童に関するすべての措置をとるに当たっては、公的若しく は私的な社会福祉施設、裁判所、行政当局又は立法機関のいずれによって行われるものであっても、児童の最善の利益が主として考慮されるものとする」

日本政府の責任は重大
続いて、日本政府は実子誘拐(注:フィネル弁護士の発表内では連れ去りではなく誘拐と言う言葉が使用されている)を容認しているとその責任を厳しく追求している。本文第3、4段落では、「日本では、実子誘拐は民事とみなされているため、被害届を出そうとしても、日本の警察は受理しない。それどころか、子どもを取り返しに行こうとすると、かえって刑事訴訟されることになると脅すことさえする。そして、家庭裁判所は子どもの精神安定のためと称して、実子を誘拐した親に親権を与える。もう一方の親が、裁判所が定めた場所で月に2時間から4時間というごくわずかな面会交流権利を得たとしても、親権をもつ親が了承しなければ、裁判所は何もしない。日本政府はこのような犯罪行為に対して見て見ぬ振りをし、最悪の場合でも奨励しているようなものだ。問題が起きていることを知りながら、実子誘拐を優遇するようなシステムを続け、子どもの権利、特に日本も署名した国連児童の権利条約第9条にある「児童が父母との接触を維持する権利」を侵害し続けている」としている。
日本の外交および文化公的機関が実子誘拐に役立つようなセミナーをしたのか?
また、第5段落では、2018年5月15日にパリ日本文化会館で外務省と日本弁護士連合会が共催して開いた日仏離婚・親権制度ハーグ条約の仕組みと内容に関するセミナーについても言及している。このセミナーの中で、フランスで生まれた実子の誘拐をして日本に連れ去るテクニックを暗に示唆したというのだ。
フランスで日本人パートナーが実子を誘拐し日本に連れ去るという事件が数件起きているにも関わらず、パリ日本文化会館は2018年5月、『国際結婚に伴う親権(監護権)とハーグ条約セミナー』開いた。アメリカのNPO団体Bac Homeは、このセミナー中に、どのようにしたらもう一方の親の同意なしに日本に子どもを連れ帰り、その後、子どもがフランスに送り返されるのを回避することができるか、より簡潔に言えば、どうすれば問題なく子どもを誘拐することができるかについての説明がなされたと発表している。これは、1980年に採択されたハーグ条約の侵害にあたる。」とし、フィネル弁護士は、「日本の外交および文化公的機関が実子誘拐に役立つようなセミナーをしたのが真実であるならば、非常に重大なスキャンダルだ。私たちは在仏日本大使館に説明を求める」と言っているということだ。
最後に、フィネル弁護士は、2005年から子どもに会うことができないでいる母親1人と、片方の親に会うことが全くできない、あるいはかなり限られた時間しか会うことができない子どもたち9人の名を挙げている。そして、このような状態に置かれている子どもたちのために、国際連合人権理事会に、次のような手段で介入することを求めている。
1. 国際連合人権理事会に上記のような状態について報告する独立した専門家、国連特別報告者の任命。
2. 日本政府に対して度重なる子どもの権利の侵害をやめるように勧告する決議の採択

子どもを連れ去る親のケーススタディーで学ぶスタイルのセミナー
ところで、アメリカのNPO団体Bac Homeは、上記のパリ日本文化会館で2018年5月に開かれた『国際結婚に伴う親権(監護権)とハーグ条約セミナー』の内容を録音したBac Home 音声資料をネット上で公開しているので、これを聞いてみた。子どもを連れ去る親のケーススタディーで学ぶスタイルのセミナーだ。
以下、講師の弁護士が次のようなことを言っている部分が問題視されているように思われる。
40分目:(フランスから日本に連れ去られた)子どもの意思が(フランスへの)返還拒否事由になることもあることを説明し、その上で「学校で例えば差別を受けているとか、そんな場合には子どもの異議って通るんです。あくまで子どもがフランスに返還されることを望んでいないことってところがポイントです」と言っている。
44分目:「(連れ去られた子どもをフランスに返還しなくてもいいということも例外的にはあるが、認められにくい。だから、日本に)戻って来る前にキチンとできることを、このフランスでできることをやってから戻ってくる」。そしてその「できること」とはDVの証拠を警察への被害届、病院の診断書、シェルター収滞在証明、パートナーの薬物・アルコール依存の証拠ですよと説明している。

外国で暮らす悩める日本人妻たち
子どもの連れ去りは国境を越えてであれ、日本国内でありしてはいけないことであることは確実だ。しかし、上記のセミナーには多くの日本人が集まったとの(70名が登録)こと、日本文化会館館長がはじめに「このハーグ条約関係、あとお子さんのですね問題ですね、あとDV、まぁその 辺の話の相談は非常に受けます」と6分目あたりで話していることを聞くと、国際結婚をして悩んでいる日本人がいかに多いことかと思い、胸が痛むのも事実だ。
外国で暮らすのはやはり難しいのだ。言葉の問題はもちろん、日本では後ろ盾となる実家などないし、そのうえパートナーとうまくいかなければ辛いものがある。男女平等は日本より浸透しているが、それゆえ「君は稼ぎが少なすぎるよ。いったいなんだって僕が君を養わなきゃいけないんだい?」と言って離婚に持ち込む男性など珍しくもない。夫婦でも銀行口座はそれぞれ個人口座というのが普通だ。男女の給料差は歴然として残る(男性の方が18.5%高い)うえ、おまけにこちらは外国人でどんな仕事にでもアクセスできる訳ではないのに「そこまで言うか?」と思うが……。
私自身がフランス人と結婚しているので、「うちの娘にもフランス人と結婚してほしいわー。そしたら私もパリに行けるし」などと冗談交じりに言う人もいるが、そういう人には「慎重にね」といつも答えることにしている。

◇プラド夏樹(パリ在住ライター)
慶応大学文学部卒業後、渡仏。在仏30年。共同通信デジタルEYE、駐日欧州連合代表部公式マガジンEUMAGなどに寄稿。著書に「フランス人の性 なぜ#MeTooへの反対が起きたのか」(光文社新書)。ご連絡はtwitterのDMへお願いします。

日本人パートナーによる実子連れ去りが国際問題に

出典:令和元年8月24日 YAHOOニュース

日本人パートナーによる実子連れ去りが国際問題に
プラド夏樹(パリ在住ライター)

子ども連れ去りイコール誘拐か?
この8月、実子を日本人パートナーに連れ去られた母親1人と父親9人(そのうち3人はフランス人)が、パリの弁護士事務所Zimeray-Finelleのジェシカ・フィネル弁護士を通して、日本において子どもの権利が侵害されているので介入するよう、国際連合人権理事会に申し立てた。
同弁護士が発表したところによると、日本では年間約15万人(子どもの人権保護に努めるNPO団体、絆・チャイルド・ペアレント・ユニオン発表の数字)の日本国籍および日本と他国の二重国籍の子どもが片方の親によって連れ去られている。もう一人の親は、時には何年間も子どもと会うことができない状況にあり、これは「子どもの権利に対する侵害」にあたるというのがその理由だ。
日本人妻に子どもを連れ去られたフランス人パパたち
フランスで日本での子どもの連れ去りが大きく報道されたのは、今年3月、国営テレビ局・フランス2の番組「日本、誘拐された子どもたち」によってだった。

日本人妻に子どもを連れ去られたフランス人男性2人(一人は日本在住、もう一人はフランス在住)が、日本で子どもを探す様子を追ったフィルムだ。
そのうちの一人であるステファンさんが、子どもにプレゼントを持って元妻の実家を訪れるが面会を許されず、権利を強く主張した挙句、警察に連行されてしまうシーンもあった。この番組のナレーションでは、「フランス人男性約100人近くが、日本人パートナーに子どもを誘拐された」、「2010年以来、子どもを誘拐されたフランス人男性2人が自殺した」などと語られている。
日本では子どもの教育はどちらかというと母親の役割と考えられており、夫婦仲が悪くなると、妻が子どもを連れて実家に帰るというのは珍しくないのかもしれない。連れ去りに関して警察や裁判所は「プライバシーだから」と介入しないし、単独親権制なので、結局は妻が親権を得る場合が多いらしい。
しかし、今、それは日本国内だけの問題ではなくなってきている。近年、国際結婚が増えており、フランスのように共同親権制の国では、子どもの「連れ去り」イコール「誘拐」とみなされる。もう一人の親が子どもと会うことを阻止するのも、「子どもに対する虐待」と判断されかねない。「国連子どもの権利条約9条」で、すべての子どもには親と引き離されない権利が、また何らかの理由で引き離されても会ったり連絡する権利が保障されているからだ。つまり、「日本では実子の誘拐と虐待が容認されている」と解釈されてしまう。

日本の単独親権制ゆえに子どもに会えなくなる外国人の親たち
8月17日のLe Parisien 紙には「日仏ダブルの子どもをもつ母マリーン、親権を得るための戦い」というタイトルの記事が出た。マリーンさんは日本人男性と結婚し日本で暮らしていた。最初はラブラブだったが、その後は夫からちょっとした言葉の暴力を受けるようになり、そしてルイ君(現在4歳)が生まれると、夫婦仲はさらに悪化。夫は身体的な暴力もふるうようになった。
2014年、マリーンさんは夫と話し合い、しばらく距離を取ることに決め、フランスに3ヶ月の予定でルイ君を連れて帰国した。ところが、フランスで医師の診療を受けた際に夫の暴力について話すと、「日本には戻らないほうがいい」と言われ離婚を決意。マリーンさんは離婚手続きを始めた。
しかし、夫も黙ってはいない。「子どもの誘拐」という理由でマリーンさんを訴えた。日本もフランスハーグ条約(注)に批准しているからだ。
(注)ハーグ条約:一人の親が、もう一方の親の同意なしに16歳未満の子どもを連れて加盟国間の国境を越えた場合、子どもは元の国に戻すということを定めた条約
そのため、マリーンさんの訴えに対して、フランスの裁判所では2度にわたって「子どもは日本に返すこと」との判決を下した。その後、最高裁はその判決を無効とし、再審されることに。そして今年の7月に、控訴院で再び「子どもは日本に返すこと」という判決を受けた。
しかし、日本は単独親権制なので、ルイ君が日本の父親の元に帰れば親権は父親のものになり、マリーンさんは2度と子どもに会うことができなくなる可能性もある。面会するにしても、日本に長期滞在するのにはビザが必要だ。取得できなかったらどうする? 以来、マリーンさんと友人たちは署名運動を始め、フランスの下院、上院、大統領官邸にも手紙を送った。マリーンさんは、今後、欧州連合司法裁判所に訴えることになるかもしれないと語っている。
2018年3月には、欧州連合加盟国26カ国の在日大使が日本の法務大臣に子どもの権利保護のために早急な措置を求めた。また、6月26日、G20大阪サミットに参加するために日本を訪れたフランスのマクロン大統領は安倍晋三首相に、日本人パートナーに子どもを連れ去られて苦しむフランス人の親たちの置かれた状況について語り、「受け入れがたいことだ」と話した。
もちろん、 子どもを連れ去る側には、パートナーとの不仲や暴力などそれなりの理由もあるのかもしれない。しかしそれでも、単独親権制は、人の移動が増えるこれからの国際社会には適応しないように思える。 親同士のパートナー関係は終わっても親子の関係は続く、そのように考えることはできないだろうか?

◇プラド夏樹(パリ在住ライター)
慶応大学文学部卒業後、渡仏。在仏30年。共同通信デジタルEYE、駐日欧州連合代表部公式マガジンEUMAGなどに寄稿。著書に「フランス人の性 なぜ#MeTooへの反対が起きたのか」(光文社新書)。ご連絡はtwitterのDMへお願いします。

離婚後も子育ては元配偶者と オンライン講座公開 欧米流「共同養育」への関心高まる

出典:令和元年8月23日 毎日新聞

離婚後も子育ては元配偶者と オンライン講座公開 欧米流「共同養育」への関心高まる

 離婚した後も、子育ては元配偶者と協力していきたい――。そうした人向けのオンライン教育プログラムが国内で公開され、約1年で300人超が受講した。日本では離婚すると子の親権は母か父のどちらかが持つことになるが、関係を絶たずに双方が子育てに関わる欧米流の「共同養育」への関心の高まりがうかがえる。
 <祝日は交代で娘と過ごす取り決めだったが、成長した娘が「両親と3人で会いたい」と言い出した。どう解決するか>
 これは、離婚家庭の子どもの支援に関わる東京国際大の小田切紀子教授(臨床心理学)が、ウェブサイト「リ…
※以下、紙面参照

5歳と3歳の子供を妻に連れ去られた父親の叫び

出典:令和元年8月23日 PRESIDENT Online

5歳と3歳の子供を妻に連れ去られた父親の叫び

■海外からみれば「日本は連れ去りを容認している国」

 子育て中心の人生を送っていた男性が去年12月、妻から5歳と3歳の子どもを連れ去られた。男性は子どもを連れ去られる理由はないとして、共同監護などを求める審判を申したてたものの、現在も子どもとの生活は戻っていない。今年6月には妻から単独親権を求める離婚裁判を起こされ、現在係争中だ。

 この男性のように、妻や元妻から子どもを連れ去られて、事実上の生き別れになってしまう父親は、日本では珍しくない。逆に、夫から子どもを連れ去られる母親もいる。その背景には、日本が「単独親権」を原則としている点がある。裁判所は「単独親権」を前提にしながら、多くは連れ去った親に有利な運用をしているのだ。

 しかし、「単独親権」を採用している国は先進国にはない。子どものために「共同親権」を認めるのが一般的で、日本は連れ去りを容認している国として国際的に非難されている。国連子どもの権利委員会は今年2月、「共同親権を認めるために、離婚後の親子関係に関する法律を改正する」ことなどを日本政府に勧告した。

 それでも法整備に向けた議論は、国内ではまだまだだ。「単独親権」の制度の下で、理不尽な苦しみを受けている男性に話を聞いた。
■同意なく子どもを連れて消えた妻

 「去年12月、妻に当時5歳の長男と当時3歳の長女を連れ去られました。子どもたちがどこにいるのか伝えるように求めても、知らされることはありません。子どもたちに私を会わせるかどうかは、妻の一存で決まります。

 私はDVや不倫をしたわけでもなく、子育ての大半も担ってきました。にもかかわらず、裁判所は連れ去りから8カ月以上がたっても、子どもたちと私が日常生活を過ごすことを認めないのです。このまま生き別れになるのかと思うと、胸が引き裂かれる思いです」

 こう話すのは、東京都港区在住で、パイロットとして航空会社に勤務しているAさん(47)だ。Aさんは同じ年齢の妻と8年前に結婚し、長男と長女が生まれた。

 しかし、去年12月、妻が2人の子どもを連れて出ていった。子どもたちの居場所は、Aさんにはわからなかった。これは夫婦生活の破綻によって起きる、いわゆる「子どもの連れ去り」だ。

■5年半、子育ての大部分を担ってきたのに

 Aさんはもともと別の航空会社のパイロットだったが、約15年前、空港に向かうバスにクルーの荷物を積む手伝いをした際に、椎間板を割る大けがをした。労災が認められたが、回復して仕事に戻るまで2年半かかった。このけがが理由で、のちに解雇されている。

 当時、前の妻と結婚生活を送っていたが、この大けがが原因で離婚。8年前に裁判が終わり、その直後に同じ高校の同級生だった現在の妻と知り合った。お互いバツイチで、交際が始まると、まもなく再婚した。

 再婚後、Aさんは最初は主夫として妻を支えた。約2年がたって長男を授かり、Aさんは子育てを担いながら、可能な時間で保育ルームの仕事をしていた。

 長男が2歳になると、今度は長女が生まれた。生活費も必要だったため、以前勤めていた会社の同僚の紹介で別の航空会社にパイロットとして復帰した。子育ての時間が必要だと会社に相談すると、会社は理解を示し、フライトを調整してくれた。

 「平日や週末を問わず、家を不在にしていた妻よりも、5年半もの間、子育ての大部分を担っていました」

 Aさんは子育てに重点を置いた生活を送っていたと話す。

■病院は「警察と児童相談所に通告する」と告げた

 問題が起きたのは去年6月だった。長男、長女ともに体調が悪く、病院に連れて行く必要があり、Aさんは妻に相談した。すると妻は仕事に行かなければならないという口ぶりだったが、実際は知人と旅行にいくつもりでいたことがわかった。

 Aさんが「いくらなんでもそれはないよ」ととがめると、妻は激怒し、子どもたちが見ている前でAさんの口のあたりをつかんだ。爪が食い込み、Aさんは流血したが、妻はそのまま家を出た。Aさんはそのまま港区内にある病院に子どもたちを連れていくと、「虐待対応チーム」を持つ病院は傷を負っていたAさんに事情を聞き、次のように告げたと言う。

 「夫婦であっても子どもの前で暴力を振るうことは、お子さんの心に傷を残します。面前暴力という子どもへの虐待にあたり、児童虐待防止法違反になります。私たちは警察と児童相談所に通告しなければなりません」

■妻の遊びをとがめると暴力、突然子どもを連れ去られる

 通告されれば妻はもっと怒るだろう、と思ったAさんは、何とか穏便にすませるように病院にお願いした。その結果、今後もAさんと病院が連絡を取り続けることを前提に、児童相談所への「報告」という処置が取られた。この時に病院は「虐待対応記録」の書面を発行している。

 Aさんはしばらく時間がたったあと、病院が児童相談所に「報告」したことを妻に話し、反省を求めようとした。すると妻は、「あなたに言われる筋合いはない」「出ていけ」と言い、離婚に向けて弁護士と相談していることを明かした。

 その後、妻の希望で双方の母親が同席して、話し合いの場がもたれた。妻はAさんに家から出ていくよう求めたが、Aさんは「子どもと離れて暮らすことは受け入れられない」と主張した。話し合いはまとまらず、妻は同居のまま離婚に向けて調停や裁判を進めることAさんに伝えた。

 しかし、同居のままという前提は約1カ月後に破られた。去年12月中旬の午後3時ごろ、Aさんが保育園に迎えに行くと、子どもたちはいなかった。妻がすでに迎えに来たという。普段、妻が迎えに来る時間は、仕事が終わった後の午後6時から8時の間だった。妻と子どもたちがどこにいるのか、Aさんには分からなくなった。子どもたちは妻に連れ去られてしまったのだ。

■警察は「民事不介入」、家裁は「問題なし」

 妻は事前に弁護士と相談し、子どもたちと暮らす場所を確保していたことをAさんは悟った。連れ去られる3日前に、義父の命日のため家族全員で妻の実家を訪れていたが、その時には何の話もなかった。子どもたちを連れ去ることを、義母も知っていた可能性がある。

 Aさんはすぐに警察署に届け出た。警察官は妻に電話して安否の確認をしたが、妻が弁護士を雇っていることが分かると、警察は「民事不介入」の旨をAさんに告げた。妻や子どもたちがいる住所を教えることはできない、ということだった。

 Aさんは司法の力を借りようと、今度は家庭裁判所に共同監護などを求める審判を申し立てた。自分は不倫もDVもしていないし、子育ての大半をやってきたとして、子どもたちを連れ去られる理由はないと主張した。

 しかし審判では、発端となった妻の暴力はまったく取り上げられず、病院やAさんへの聞き取りも行われなかった。その上で今年2月に出た調査結果は「妻と子どもたちが一緒に暮らすのは問題ない」というものだった。この結論により、連れ去りから8カ月がたった現在も、Aさんの元に子どもたちは戻っていない。

 Aさんが裁判所によって子どもと引き離されるのは、今回が初めてではなかった。前妻との離婚裁判でも、子どもの親権は前妻が持つことになり、結果的に子どもと8年以上会えない状態になっている。Aさんは2度も、子どもと引き裂かれる目に遭っているのだ。

■日本の「単独親権」制度は国際社会から批判

 Aさんが2度にわたり子どもと引き離された原因は、日本は離婚後の「共同親権」を民法で認めず、「単独親権」だけを認めている点にある。「単独親権」制度の下では、子どもの親権や監護権をめぐる裁判では、連れ去った側に有利な判決が出るケースが圧倒的に多いという。

 実は、「単独親権」しか認めていない国は、先進国では日本しかない。日本人女性と国際結婚した場合に、妻が子どもを日本に連れていき、父親が子どもと会えなくなるケースが問題となって、日本の「連れ去り」の実情が国際的に広く知られるようになった。

 「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約」、いわゆるハーグ条約は、国際結婚が破綻した際の子どもの扱いについて、親権や面会権を確定しないまま、無断で16歳未満の子どもを国外に連れ出す行為を不当とし、元の居住国への帰還を求めている。

 ハーグ条約は1980年に作成され、日本は2013年にようやく締結した。今年5月現在、100カ国が締結している。しかし、日本はハーグ条約を締結しながら「単独親権」の制度を変えていないため、状況が改善されているとは言えない。

 さらに日本は1994年に「子どもの権利条約」も批准しているが、条約が求める父母の共同養育責任も、「単独親権」制度によって果たすことができない状態だ。

 このため、国連の子どもの権利委員会は今年2月、共同親権を認めるために離婚後の親子関係に関する法律を改正することを日本政府に勧告した。日本が「単独親権」しか認めないことは、国際社会から公然と非難されているのだ。

■「単独親権」は虐待受けた子どもを守る制度ではない

 日本で離婚後の「共同親権」の法整備が進まないのは、根強い反対があるからでもある。その代表的な理由として挙げられるのが、「共同親権」だと引き続き夫と連絡を取らなければならず、夫から妻への暴力や、夫から子どもへの虐待があった場合に、妻や子どもを守ることができないというものだ。

 しかしAさんの場合は、子どもの面前で妻がAさんに暴力を振るったことで、妻による子どもへの虐待が病院によって指摘されている。「単独親権」だからといって、虐待を受けた子どもを守ることにはならないケースもあるのだ。

 「虐待から子どもを守るのは、親権とは別の機能です。共同親権であれば、私の妻も子どもを連れ去る必要はなかったでしょう。子どもを連れ去られることを望んでいる人などいません。むしろ単独親権制度によって、苦しむ人が生まれているのです」

■子どもたちと以前のように暮らせる可能性は限りなく低い

 Aさんは昨年末に共同監護などを求めて審判を申し立てたあと、妻が申し立てた離婚調停が不調に終わり、現在は離婚裁判で争っている。しかしAさんは、過去の経験からも、現状からも、裁判に勝訴して子どもたちと以前のように暮らせる可能性は限りなく低いと感じている。

 「私にとって子どもたちと一緒に暮らすことは、人生のすべてです。子育て以上に人生で大切なことはないと思って生きてきましたから、子どもたちとの日常生活が失われた状況は、自分の体が引き裂かれたような苦しみです。共同親権の実現について、もっと多くの方に考えていただきたいと思っています」

 海外では、親と切り離された子どもたちの心理を研究した結果、共同親権が普及していったという。Aさんは自分のケースを多くの人に知ってもらうとともに、日本で共同親権の法整備が実現するよう訴えていきたいと話している。


田中 圭太郎(たなか・けいたろう)
ジャーナリスト
1973年生まれ。早稲田大学第一文学部東洋哲学専修卒。大分放送を経て2016年4月からフリーランス。警察不祥事、労働問題、教育、政治、経済、パラリンピックなど幅広いテーマで執筆。

血縁を重視する中国人にとって理解し難い! 日本では離婚すると子に会えなくなるらしい=中国

出典:令和元年7月29日 サーチナ

血縁を重視する中国人にとって理解し難い! 日本では離婚すると子に会えなくなるらしい=中国

 日本では離婚した場合、母親が子どもの親権を持つことになるケースが多いと言われている。こうした現状について、中国メディアの今日頭条は25日、中国人から見た日本の親権、特に「離婚や別居をすると親であっても我が子に会うことが制限される」ことについて、「一方の親がまるで子供を誘拐しているかのようだ」と驚きを示す記事を掲載した。

 記事は、「日本では離婚の際に親権を巡って裁判が行われ、結果によっては親権を持つことができなかった親は我が子に全く会えないという事もある」と指摘。これは中国人からすると、親が子を平等に監護する権利がなく、「警察や司法が子の誘拐を容認している状態」ではないかと衝撃を受けた様子だ。

 誘拐というと犯罪のニュアンスが強く含まれるが、親双方が同意している状況であるため実際には誘拐ではなく、民法の条文にあるように「子どもの利益のため」に離婚後の親権が話し合われている事を伝えた。また、日本の伝統的な家庭の概念は「母親が子の世話をし、父親が働いて収入を得ると分担が別れているケースが多い」と紹介し、中国と違って離婚後に共同して子の監護をするという考え方はない」と説明した。

 続けて、日本ではたとえ親であっても、親権を持たない側の親が子どもを連れ去れば「警察が介入する」と伝えたほか、離れて住む親が「養育費を請求されても、我が子に会える時間はひと月に数時間しかない」という事例があることを紹介し、血縁を重視する中国人にとって理解し難い状況であることを強調した。(編集担当:村山健二)

親による「誘拐」が容認されている日本の異常~なぜ離婚後の共同親権が認められないのか

出典:令和元年7月22日 東洋経済ONLINE

親による「誘拐」が容認されている日本の異常~なぜ離婚後の共同親権が認められないのか

レジス・アルノー : 『フランス・ジャポン・エコー』編集長、仏フィガロ東京特派員

隠れた誘拐大国ニッポン――。近年、夫婦が別離した際などに、片方の親が子どもを連れ去り、もう片親が会えないという問題がメディアなどで取り上げられるようになっている。実際、配偶者と別れることを考えている相談者から、子どもの親権を確実に取るにはどうしたらよいかと聞かれたら、「日本では子どもを連れて家を出るのがいちばんだとアドバイスせざるをえない」とある弁護士は明かす。
日本の伝統的家族観は、母親が子どもの面倒を見て、父親が働いてお金を持ってくるというものだ。そのため、日本には両親の別離後も両親が子どもを共同で監護するという発想がなく、日本の警察や司法は片方の親による子どもの「連れ去り」を事実上容認している状態にある。その表向きの理由は、連れ去りを罰することは、それを容認するよりも、子どもに悪影響を与えるから、というものだ。
■妻との口論後に子どもを連れ去られた
日本で言うところの連れ去りは、英語では「abduction」といい、通常、誘拐、拉致と訳される。ところが、日本ではこの行為を誘拐や拉致とは別のことのように捉えている。「片親が他方の親の同意なく子どもを連れ去ることは『誘拐」と表現するべきです」と児童精神分析に詳しい東京国際大学教授の小田切紀子氏はいう。
片方の親が子どもを連れ去った場合、裁判所や警察は介入しない。しかし、連れ去られた側が子どもを取り戻した場合、介入が起こる。このシステムでは、子どもを最初に連れ去った親が有利となる。連れ去った期間が長ければ長いほど、連れ去られた側の立場は弱くなる。
馬場満氏は昨年11月5日、妻との口論後に2人の子どもが連れ去られたと主張する。それ以来、彼が子どもに会えたのは30分間だ。子どもたちは彼の家から2キロもない場所に住んでいるが、会うことは許されていない。
子どものうちの1人は慢性的な病気で、離れて以来、馬場氏の知らないうちに2度入院。不眠症に苦しむ馬場氏は仕事を辞め、現在は夜タクシー運転手の仕事をしている。目下、さいたま家庭裁判所に子どもを取り返す訴えを起こしているが、子どもに会える可能性についてはあまり楽観視していない。実は、馬場氏自身15歳のときに父親に連れ去られ、父親から母親を嫌うように教えられた。「母親に再会できるまでに36年かかった」と、彼は話す。

別の日本人の父親は5年前に妻がふさぎ込み、生後6カ月の子どもを連れて実家に帰ったという。彼は急いでそこへ向かったが、息子に会うことが許されたのはたったの4時間。そしてその後は1年7カ月もの間、息子に会うことができなかった。
父親は養育費を支払っているが、父親が子どもに会えるのは月に1回、2時間。父親は裁判所で親権を求めたが、裁判官は、母親の行った連れ去りは違法ではなく、母親に引き続き監護養育を継続させることが子の福祉に合致するとして、彼の求めを拒否した。妻が再婚した場合、彼女の新しい夫は、子の父親の同意なしに子の親権者となることができる。
この2人の父親のケースは、日本で何千件と生じていることの一例にすぎない。

■マクロン大統領に窮状を訴えたフランス
こうした連れ去りでは、多くの場合、別居を通じ、子どもを連れ去られた親は子へのアクセスを失う。連れ去った親は事実上、残された親への訪問をどの程度許可するか、あるいは、訪問を認めないかなども決めることができる。連れ去った親が面会を拒否した場合、残された親が面会権を得られたとしても、1カ月2、3時間、場合によっては連れ去った親の監視下など、とんでもなく厳しい条件下での面会となる。親権や面会をめぐって係争中の場合は、面会はさらに制限的にしか認められないことが多い。
一方、日本で事実上容認されている連れ去りは、海外でも大きな問題となっている。6月26日、G20に先駆けて東京のフランス大使館でスピーチを行ったフランスのエマニュエル・マクロン大統領は、フランス人男性3人と面会した。いずれも、子どもが日本人妻に連れ去られたと主張している父親だ。1人は、元妻から送られてきた子どもの写真を持ってきていた。写真では子どもが両手を高くあげ、父親から送られた誕生日プレゼントを持っている。ただし、プレゼントの封は開けられていないままだ。
別の父親はマクロン大統領に、去年の夏のある夜に帰宅すると、家にはベッドと洗濯機、そして自分のパスポートしか残っていなかった、と話した。2人の子どもは妻に連れ去られてしまっていた。妻は家庭内暴力を訴えてシェルターに数週間避難していたのだ。もっとも父親はこれを否定している。
その父親は子どもたちが連れ去られたことを警察に報告した。そこで警察官に告げられたのは、それは「プライベート」な対立であり、警察の管轄外だということだった。だが仮に彼が子どもを取り戻そうと連れ去った場合、彼は誘拐で逮捕される。つまり彼はもう2度と子どもに会えないかもしれないということだ。
妻が昼間にひっそりと家に帰っていることに気づいた彼は、家とその周辺にくまなくカメラを仕掛けた。彼は録画された映像で、妻が7カ月の娘を車のトランクに閉じ込めているのを確認。だが、児童保護センターはそのビデオを受理するのを断った。

彼は子どもの連れ去りに関して、現在までに弁護士費用などに多額の費用を費やしてきた。家に帰る途中で妻と子どもに出くわして迷惑行為で訴えられないよう、子どもたちに会わないように迂回している。彼の件は現在、裁判中だ。
国際間の連れ去りの被害者はまだラッキーかもしれない。国境を越えた子どもの誘拐に対応する「ハーグ条約」があるからだ。同条約は子どもが国境を越えて連れ去られた場合、子どもを元の居住国に直ちに返還することを原則としている。もちろん母親による連れ去りも対象だ。日本もアメリカやヨーロッパ諸国からの圧力を受け、2014年に91番目の国として同条約に署名している。2014年以降多くのケースがこの条約のおかげで解決してきた。

■子どもから親を奪っていいのか
外務省が最近、ハーグ条約についてのシンポジウムを開催した際、参加者によれば、登壇した最高裁判所の家庭局の澤村智子課長は、日本のハーグ条約の実施状況に自信を見せていたという。とはいえ、ハーグ条約では日本国内で起こっている誘拐は解決できない。
「確かに連れ去りのほとんどは、母親が父親との関係で深刻な問題に直面しているときに起こる。だからといって、必ずしも子どもから親を奪ってよいことにはならない。国内でも、連れ去りは原則として違法であることが明確にされるべきだ」と、ある弁護士は言う。
こうした連れ去りが頻繁に起こる背景には、日本では離婚後の共同親権は認められていないことがあるだろう。そのため、子どもの養育に2人とも深くかかわってきたカップルでさえ、片方だけが100%親権を得るという以外の選択肢はない。
「日本では毎年、約20万件の離婚が起こっており、両親が離婚する子どもの数は離婚の数とほぼ同数です。その3分の2は、もう連れ去られた側の親と会うことはありません。これは、子どもにとって、このうえなくつらいことです」と、小田切教授は言う。
多くの日本人の父親は今でもこうした状況をしかたがないと思っている。しかし、多くの女性が働くようになり、3分の1のカップルが離婚している中で、単独親権制度は正当化されがたくなっている。家庭内暴力の被害者である親や子どもを守るためには単独親権が必要な場合もあるだろうが、子どもの両親が共同親権に同意しても認められないというのは、どう考えてもおかしくないだろうか。

片親が家庭内暴力を主張するケースもある。アーティストのミナコさんも元パートナーのそうした主張に苦しんできた1人だ。「前夫は、私が子どもたちに薬を与えすぎる、と言って私を子どもたちから引き離しました。彼はそう主張して医者からの証明を取ってきたのです。日本は家庭内暴力の虚偽の主張について適切に対応ができていません」と、彼女は話す。
民法第766条では、離婚後の監護を「子の利益」に基づいて決めることが要請されているが、「子どもの立場から見れば、共同親権が最良のシステムだ」と、専修大学の早川眞一郎教授は話す。ウェストミンスター大学のマリリン・フリーマン教授が、子どもの時に片親を奪われた成人34人を調べたところ、多くが「消えない不安感」や「生きているというよりも生き残っている」という気持ち、「繰り返される自殺未遂」といったトラウマを抱えていることがわかった。こうした研究は日本ではなされていない。

■マクロン大統領も連れ去りを嫌悪している
だが、変化は海外からの圧力によってもたらされるかもしれない。国籍や背景が異なる人々の離婚の増加によって単独親権システムが世界中の激しい非難にさらされている。日本と海外の父親が提携し、7月末には、国際連合人権理事会にこのシステムが子どもの権利条約に違反していると訴える予定だ。
6月末のG20でも、イタリアのジュゼッペ・コンテ首相が安倍晋三首相に子の連れ去りを巡る状況について不満を述べた。同首相は6月半ば、6歳の息子と4歳の娘を日本人妻によって連れ去られたイタリア人のトッマーソ・ペリーナ氏と電話で16分間話した。彼は2人の子どもたちに面会できない状態だ。「首相の私すら問題を解決できない」と、コンテ首相も頭を抱えている。

マクロン大統領も連れ去り問題には嫌悪感を持っている。6月26日に3人のフランス人の父親と対面した後、大統領は同日の夕食で安倍晋三・昭恵夫妻にこの問題を持ち掛けた。「到底受け入れられない、嘆かわしい状況がある。この状況に立たされているフランス人がいるのを放っておけない。彼らの子どもの基本的な権利と彼らの親としての権利は守られなければならない」とマクロン大統領は翌日、明らかに心を動かされた様子で語った。
日本の外交上の課題の1つは、北朝鮮による日本人の子どもの誘拐だ。それは確かに“普通の”誘拐よりおぞましい。「だが、フランスの子どもたちが日本で誘拐され、それが罰せられないままで、どうやって日本はわれわれのサポートを得ようというのか」と、あるフランス人外交官は話す。
「私は日本を守るためにここにいる。ドナルド・トランプ大統領が日本とアメリカの関係は一方的だと言っているけれど、それは正しい」と、米軍基地で働くマイク・ブレザー氏は言う。彼は妻との離婚手続き中で、14歳の息子に面会することができない。8歳の娘とは、かなり限られた形でまだ面会できるものの、離婚が成立してしまえば娘との面会も打ち切られるのではないかと不安に思っている。
アメリカには、昔は奴隷制度があった。でも日本の単独親権システムはある意味でそれよりも悪い。親と子という、最も基本的な人間関係を壊すことを許しているからだ」

「自己肯定感が低く、死にたいと言う子も多い」親が離婚した子どもたちの喪失感

出典:令和元年7月21日(2019年7月30日号) 週刊女性

「自己肯定感が低く、死にたいと言う子も多い」親が離婚した子どもたちの喪失感

 「離婚するなら、どうして結婚したの?」「何で私を産んだんだ」「私はもう生きている意味がない」
 親が離婚した子どもたちから「ウィーズ」に寄せられた声だ。ウィーズは親の離婚を経験した子どもをサポートするNPO法人で、理事長の光本歩さんが2009年に個人事業としてスタート、'16年に創設した団体だ。

■親の離婚は一種の喪失体験
「相談も受けていますが、メールで“死にたい”と書いてくる子が多いです。“アンタさえいなければ”と親から暴言を吐かれたりして、愛されている実感が持てない。自己肯定感が低い子が多いと感じます。ただ、個人差がすごくあって、例えばDVをしている親を殺してやりたいと憎む子もいれば、そんな親でも好きだという子もいる。本当にケースバイケースですね」
 相談を寄せるのは中学生から大学生まで幅広い。リストカットを繰り返し自傷行為に走るなど、年に4、5人は大変なケースがある。光本さんは頻繁にメールやLINEでやりとりを続けて信頼関係を築き、夜中でも対応しているそうだ。
「両親がケンカする姿をずっと見続けたり、離婚後も片方の親の悪口を延々と聞かされたりして結婚願望を持てなくなって“こんな自分はおかしいですか”と聞く子もいます。一方で親の離婚を機に、しっかりしなきゃと精神的に自立。親を反面教師にして早く結婚する子もいますし、どちらも半々くらいですかね」
 ウィーズのスタッフは、ボランティアの大学生を含めて42人。ほぼ全員が親の離婚を経験している。
 光本さん自身、13歳のときに両親が離婚している。借金をした母親から離れ、父と妹と3人で夜逃げしたため、経済的にも困窮し進学に苦労した。その経験から、10年前にひとり親家庭の子どもの学習支援塾を立ち上げたことが、今の活動につながった。
「子どもにとって、親の離婚は一種の喪失体験なんですよね。片方の親に会えない寂しさがあるけど、自分の家庭は普通じゃないから、周りの人にはわかってもらえないと思っている。胸の内を吐ける場所もないので、喪失感を埋めることができないまま大人になる。私の場合、高校の担任が親の離婚を経験していて、話を聞いてもらえたので、運がよかったんです」
 '12年からは面会交流の支援も始めた。離婚後に離れて暮らす親と子どもを面会させるため間に入って調整。1歳から高校生までの子どもに付き添ったり、送迎したりしている。昨年度は延べ630件の利用があった。
 面会をして等身大の親を知ることは、子どもにとって大事だと考えているからだ。

 光本さんの父は借金をした母を憎んでいたので、「お母さんに会いたい」とは口が裂けても言えなかった。だが、そのぶん思いは募った。高校に入り、会いたい一心で貯金をし、母のもとを訪ねると、母は悪びれもせず彼氏を伴って現れた。
「ごめんね、のひと言もなく“エー!”って思ったけど、母はこういう人間なんだ、だから離婚したんだ、と納得できた。現実の母を知ったから次に進めたんです」

■離婚の裏で傷ついている子どももいる
 '11年度からは年に1度、2泊3日でキャンプを行っている。対象はひとり親の小学4年生から中学3年生。みんなでカレー作りなどの自炊をし、親の離婚について話し合うワーク活動も行う。
「あの先生、変な顔だね」「ほんと、キモイ~」
 初対面の子ども同士が顔を合わせると、まず悪口で盛り上がることが多い。
「自己肯定感の低い子は、褒められるとか認めてもらった経験が少ないから、最初に否定から入る。両親が否定しあう様子を見てきたことも大きいと思います。
 でも、それは健全じゃない。ポジティブな言い方に変えるため、小さなことでも褒めるようにします。ボランティアの大学生たちも子どもたちを見ていて、自分もそうだったと気がつく。親の離婚に傷ついた自分を客観的に見られるようになるんですね」
 毎回20~30人が集まるキャンプの参加費用は無料。面会交流支援も、今年3月から遠方を除き無料にした。費用は助成金や寄付でまかなっている。光本さんが何年もかけて行政や民間団体にアプローチした成果だ。
「私もこの支援を通じて救われたし、自己肯定感を育ませてもらった。親が離婚して大変だった経験も、いま困っている子どもを助ける役に立っていると思えば、プラスに感じられますから」
 設立以来、ウィーズの活動は忙しくなる一方だ。軽い気持ちで離婚する最近の風潮について、光本さんはどう見ているのか。
「離婚がダメではない。でも、その裏で傷ついている子どもがいることを忘れないでほしい。子どもの目線に立って考えることを忘れている親御さんが多いので、もう少し冷静に考えてもらいたいです」

光本歩 ◎NPO法人「ウィーズ」代表理事。第三次静岡県ひとり親家庭自立促進計画策定委員。1988年生まれ。13歳で親が離婚。東京福祉大学教育学部中退後、離婚した子どもたちのトータルサポートをスタート。テレビ、新聞、ラジオなどメディア出演多数

「共同親権」の展望(下)出遅れた研究 早川昌幸(新城通信局)

出典:令和元年7月14日 中日新聞

「共同親権」の展望(下)出遅れた研究 早川昌幸(新城通信局)

「共同親権」問題を含む親子の心理の追跡研究は、欧米で古くから進む。子どもの「人格発展権」を尊重するドイツでは、連邦憲法裁判所が一九八二年に「離婚後の例外なき単独親権は違憲」と判示した。
 米国の研究では、離婚は子どもに心理的不適応を引き起こし「重大なリスクになる」との報告がある一方で、共同監護で世話をした子どもと親の離婚を経験しなかった子どもとの間で、精神疾患の割合に大きな差異はない、とも報告されている。

 棚瀬一代さん(二〇一四年、七十一歳で死去)は、大学教授、臨床心理士として米国カリフォルニア州などで共同監護の実態に接し、傷ついた子どもの心の深層をつぶさに見てきた。その経験を日本に戻って実践した。「心のよりどころだった」と振り返る当事者も多い。

◆子に与える傷を浅く
 「離婚そのものが、子どもに心的外傷(トラウマ)を与えるわけではない。その後に両親がわが子のために賢明な選択をしていけば、子に与える傷を小さくできる」
 一代さんと十代で出会った夫の孝雄弁護士(76)も、「共同親権」実現をライフワークにした。「日本は欧米に比べ、この問題で完全に出遅れた。取り組みを進める人材を育成し、少しでもグローバルスタンダードに近づけなければ」という亡き妻の主張を代弁する。幾多の反対意見をものともせず活動を続けた二人の存在は国内では希少だという。
 東京都港区に住む国際・国内線パイロットの男性(47)も当事者の一人。妻は昨年暮れ、保育園児の長男(5つ)と長女(3つ)を連れて家を出て行き、現在は共同監護などを求め、東京家裁で審判中。離婚訴訟も近く始まる。男性は勤め先の理解もあり、フライトを減らして子育てや園への送迎、通院に積極的に関わってきた。そのためか二人の父親への愛着は強い。録音とともに家庭裁判所に提出した陳述書に目を通すと、男性の切ない思いが伝わってくる。
 四月の夕刻、同居していたころに遊ばせていた公園で母子と出くわした際の記録だ。駆け寄ってきた子どもたちは「パパの家に帰って一緒に過ごしたい、一緒に泊まりたい、朝はパパと保育園へ行きたい」と、母親である男性の妻に泣き叫びながら、必死に訴え続けたという。妻の激しい文句が始まった。
 妻「こんな強行するような!」
 男性「強行なんかしない、強行したのは、あなたでしょ」
 妻「違う」
 男性「連れ去ったんでしょ」
 妻「今一緒に暮らしてるのは私でしょ」
 男性「連れ去ってね」
 妻「どうしたらいいの、じゃ!」
 子煩悩な男性は「週三日でも面倒をみたい。子どもを元の環境に戻したい」と願い、「子どもと人生を過ごすために生きている」と話す。子どもが通う区立保育園が保護者への行事案内を男性に送ってこなくなり、園内での接触も制限されたため、「妻と同等に扱われていない」と区に訴え、ある程度改善された。
 代理人弁護士は「これほど父親を慕うのはレアなケース」と驚く。同じ立場の男性の知人は「子煩悩な親ほど心のバランスを崩すことが多い。家裁に抗議して自殺を図ったケースも聞く」と気遣う。

◆腰が重い政治、行政
 男性による支配・差別が問題視された「家父長制」を乗り越えて女性の社会進出が当たり前になったことで、子どもの監護を巡る紛争が激増したのは、時代の流れかもしれない。上川陽子前法相は「家族の在り方が変化している」として共同親権の導入に一定の理解を示した。各国から批判が相次いでも事態が進展しない背景には、反対意見やしがらみへの配慮、行政事務の作業が煩雑になることへの警戒など、政治や行政の消極姿勢があるのではないか。
 一方で、司法の世界でも日本の後進性を危惧する声があった。最高裁家庭局の元調査員は、論文で「困難な事件の解決について、米国の実践から学ぶ点は少なくない」と指摘。夫婦の対立が激しいケースでこそ、第三者が子どもの立場に立って共同監護に導く必要性を説くが、日本の家裁はそんな先進国の標準にほど遠いのが実情だ。
 孝雄弁護士が「私のバイブルです」と語る国連の「子どもの権利条約」(一九八九年十一月二十日署名、九〇年九月二日効力発生)の九条三項に、こうある。
 「締約国は、児童の最善の利益に反する場合を除くほか、父母の一方又は双方から分離されている児童が定期的に父母のいずれとも人的な関係及び直接の接触を維持する権利を尊重する」
 子どもの立場になれば当たり前のこと。これ以上、放置すべきではない。

<当会からのお願い>
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「離婚をしても親はふたり」子どもを私物化しない共同養育のススメ

出典:令和元年7月13日 AERA

「離婚をしても親はふたり」子どもを私物化しない共同養育のススメ

 ひとり親という言葉があるが、亡くなったのではなく離婚をした場合の表現としては、実はおかしい。離婚をしても、子どもにとって親はふたり。子どもはどちらの親からも愛されて育つ権利があるはずだ。

 しかし、現状では両親の離婚後、一緒に暮らしていないほうの親と子どもが定期的に面会をしているのは、母子家庭で約3割、父子家庭で約4.5割(厚生労働省 平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果報告より)。面会交流をしていない理由は様々だが、母子家庭の場合はとくに「相手とかかわりたくない」という答えが目立つ。そう、多くの子どもたちが、親同士の感情のもつれから、片親との交流を奪われているのである。

 しばはし聡子さんも、以前は「元夫とかかわりたくない」ために、子どもと父親との面会交流に消極的な親だった。

「4年前に離婚したとき、息子は10歳。息子から父親を奪うつもりはありませんでしたが、まだ小学生だったので、親同士が連絡を取り合わないと会わせることができません。でも私は、離婚時に揉めたトラウマから元夫とかかわるのが苦痛で、あまり積極的にはなれませんでした。息子に『パパに会いたい?』と聞き、いま思えば私に気を使って『別に』と答えたのをいいことに、『とくに会いたくないみたいですけど』と、元夫に伝えたりもしていました」

 しかし、離婚という辛い経験を無駄にしたくないと始めた勉強会で、離婚後の子どもの面会交流についての知識を深めるうちに、離婚をしても子どもは両親のどちらともかかわるべきだと考えるようになった。「両親のどちらからも愛されている」と実感できることが、子どもの気持ちを安定させる。そこで振り返ってわが子を見てみると、父親に会いたいと言えない子どもにしてしまっていた。

「このままではいけないと思い、自分から元夫に『来週、息子をごはんに連れて行ってあげてください』とメールしました。何をいまさらと言われることも覚悟しましたが、元夫は『喜んで!』と返してくれました。そこからするすると気持ちがほぐれ、息子をはさんだ親同士として元夫と連絡を取り合うことに、まったく抵抗がなくなりました」

 そんな親の変化を感じてか、息子は父親に会いたいという気持ちを隠さなくなった。会った後は「こんなものを食べたよ」「こんな話をしたよ」などと、うれしそうに父親の話をしてくれるようにもなった。

「私との間で父親の存在がタブーではなくなり、家の中が明るくなりました」
  
 中学生になってからは、自分が会いたいときに自由に父親に会いに行くようになり、泊まってくることも増えた。しばはしさんももちろん、快く送り出している。男親ならではのかかわりは、思春期真っ只中の子育てにはむしろありがたい。

「離婚をしても親はふたり。離婚後も両親が子育てにかかわる『共同養育』は、息子にとってはもちろん、私にとっても元夫にとっても、よいことだと実感しました」

 この経験を踏まえ、しばはしさんは「共同養育」普及を目指し、一般社団法人りむすびを設立。離婚相談や面会交流支援などを行なっている。

■離婚によるダメージを最低限にできる「共同養育」

「私が考える共同養育とは、子どもが両親の顔色を見ずに素直な気持ちで『お父さんに会いたい』『お母さんに会いたい』と言えたり、自由に行き来したりできる環境を、親同士が協力し合ってつくっていくことです。その環境さえあれば、たとえ親同士が直接顔を会わせることができなくても、共同で養育していると言えると思います」

 共同養育のメリットは、子どもがどちらの親からの愛情も変わらず受けられることで、離婚によるダメージを最低限にできることだ。

 子どもがいるならできれば離婚は避けたいけれど、夫婦が破綻してしまったのなら仕方がない。離婚をしても共同養育者として子どもをはさんで新しい関係を築き、子どもが両親のどちらからも愛されていると感じられるようにできるなら、仲が悪い夫婦の姿を見せるよりむしろよいだろう。

「なかには、離婚は自分のせいだと思って苦しむ子どももいます。共同養育を行うことで、離婚はあなたのせいじゃないよ、と伝えることにもなるんです」

 共同養育は、子どもだけではなく親にもメリットがある。子どもと同居している側の親にとっては、ワンオペ育児からの解放。子どもが元夫(妻)と会っている間、自由な時間がもてるし、何か買ってもらったり食べさせてもらったりすれば、家計も助かる。

「離婚をしたからといって一人で子育てを背負おうとはせず、相手のマンパワーも活用することで、時間にもお金にも精神的にも余裕が生まれます」

 自分に万が一のことがあったときの、リスクマネジメントとしても有効だ。いざというとき、これまでほとんど会っていなかった元夫(妻)に子どもを託すのは不安でしかないが、交流していたのであれば少しは気が楽だ。

「子どもと別居している側の親にとっても、血のつながった子どもとかかわれることはうれしいはず。また、会っている、会っていないに関係なく養育費は当然の義務ですが、子どもの成長を目にしていれば、責任感は高まるでしょう」

 さらに「共同養育」は、社会的な課題を解決する糸口にもなる。最近、親のパートナーによる連れ子に対する虐待などの事件が頻発しているが、それを避けるためにも子どもの実親というもう一つの目が入ることは大切だ。

■「共同養育」があたりまえの社会に

 しばはしさんの願いは、「共同養育」があたりまえのこととして広まることだ。

「『離婚をしても親はふたり』と伝えると、たいていの人は『そりゃあそうだよね』って言うんです。でも、自分が当事者になった途端に忘れてしまう。相手に対する嫌悪感や憎悪感から『私の子どもをなんであんな奴に会わせないといけないの』と」

 しかし、そうして子どもを私物化し、ひとりで抱え込むことには弊害しかない。「ひどい親だから」と会わせなければ、子どもはひどい親だと思い込んで育つ。ひどい親かどうかを判断するチャンスも与えられないのは、子どもにとってどうなのか。子どもに対する暴力などの場合を除いては、どんな親でも子どもにかかわり続けていくべきだ。

「どうしても離婚が避けられないなら、子どもが不幸にならないようにしてほしい。そのためにも『共同養育』があたりまえの社会になってほしいと思っています」

(文/上條まゆみ)

「共同親権」の展望(上)迷走する議論 早川昌幸(新城通信局)

出典:令和元年7月7日 中日新聞

「共同親権」の展望(上)迷走する議論 早川昌幸(新城通信局)

離婚したことで、わが子と会えない親が「面会交流」を求め、家庭裁判所に調停や審判を申し立てる件数が、増加の一途をたどっている。日本は離婚後、両親のどちらかが子どもの親権者となる、先進国で数少ない「単独親権」制度。子どもの利益を優先する観点で「共同親権」制度を立法化する動きはあるが、なかなか進まない。
 妻による子の「連れ去り」の当事者で、「共同親権」実現を目指す市民団体「チルドレン・ファースト」の会社員の男性(53)は「一番の被害者は子ども。これまでの議論には“子ども目線”が欠けていた」と訴える。「会えないことで愛情を受けられないと情緒が安定せず、その子どもだけでなく、次の世代にも負の連鎖をもたらしかねない」と、他のメンバーと警鐘を鳴らし続けてきた。

◆「単独親権」は少数派
 東アジアの中で、現時点で単独親権を規定し、父母双方でケアする共同親権を選択できないのは、モンゴル、北朝鮮、日本の三カ国だけ。今年は、親子不分離などを定めた国連の「子どもの権利条約」が生まれて三十年、日本が批准して二十五年の節目。結婚の破綻で子どもを国外へ連れ去った場合のルールを定めた「ハーグ条約」を、日本は二〇一三年にようやく批准し、関連法も翌年から施行されたが、共同親権の導入はいまだに実現していない。
 今年二月に国連から再度、法改正を勧告され、昨年三月には欧州連合(EU)の二十六カ国からも書面で抗議を受けた。海外メディアは、片方の親による子の「連れ去り」や「引き離し」に対し、「日本は拉致大国」と報道してきた。馳浩衆院議員(自民)らを中心とする超党派の国会議員連盟が共同親権の立法化を目指してきたが「親子断絶防止法案」「共同養育支援法案」など、法案の名称の段階で迷走し、法制化のめどが立っていない。
 家裁で子どもとの面会が取り決められたのに、回数が制限されたり、守られなかったりするケースは多いが、法的な罰則はない。別居する子どもが面会を拒むケースも少なくない。
 愛知県三河地方で和食店を営む男性(40)は、家裁の調停員に「面会は月一回程度。会い方は双方で話し合って」と促された。ところが、現在は中学二年の長女と小学二年の長男に会えたのは、入学式直後の一回だけ。元妻の言い分は「二人とも新生活が始まったばかりなので、そっとしておいて」だった。養育費を支払い、連絡を取りたいと長女にスマートフォンを買い与えたが発信に全く出ず、会員制交流サイト(SNS)はブロックされた。
 子どもが同居して世話をする親の影響を受けて顔色をうかがい、片方の別居親との交流を拒絶する状態を「片親疎外」という。正当な理由なく、片方の別居親との交流を拒絶するケースもこれと同じだ。児童心理学の専門家は「子どもの思いへの共感力の欠如から、親が子どもを自分の思いで支配し、服従させてしまう行為で、心理的虐待に該当する」と指摘する。
 子ども自身の考えのように見える面会拒否も、実際には同居親に気を使っていることも少なくない。「月一回だけでも会って元気であることを確かめたいし、店の料理を食べさせたい。とにかく親権が欲しい」。男性だけでなく、子の祖父母らも面会を望んでいるという。
 法務省は、安倍晋三首相の指示を受け、共同親権の導入可否の検討に入った。依然として異論も根強いが、外務省を通じて七月末までに二十四カ国の制度を調査し、問題点を整理する。
 二月の衆院予算委員会での論戦で、安倍首相は「もっともだという気もする。子どもはお父さん、お母さんに会いたい気持ちだろうと理解できる」と述べた。首相としては初めての見解。その談話を引き出した串田誠一議員(日本維新の会)は「超党派連盟は全く応援してくれなかったが、ターニングポイント(転換点)になる」と確信する。

◆面会交流で元気戻る
 長年、夫婦でこの問題に取り組んできた棚瀬孝雄弁護士(75)は、五年前に七十一歳で他界した臨床心理士の妻一代さんが「ほとんどの子は離婚してほしくなかったと思う。別れて住む親への思慕の念を抱き続けている」と語った言葉を心に刻む。一代さんは、東京・新宿に開設したカウンセリングルームで、悲しみと無力感にうちひしがれていた子どもが、面会と面接を組み合わせるセラピーで元気になり、子どもらしさを取り戻していく様子を見守った。
 家族法の専門家は「別居後の継続的な面会交流が子どものために必要という認識を社会が共有し、面会実現を義務付けるルールが求められる」と話す。もともと他人同士である夫婦の問題と、血のつながった親子の問題は切り離して考えなければいけないのは、当然のことだ。子どもの将来を最優先にした社会に一日も早く、と願う。

注目集める共同親権 親権求める父親増加 共同なら離婚後も交流続く G7、「単独」日本だけ”

出典:令和元年6月24日 東京新聞

注目集める共同親権 親権求める父親増加 共同なら離婚後も交流続く G7、「単独」日本だけ”

※本文は記事を参照ください。

共同親権 生き別れ防げ 国際的には「単独」が例外

出典:令和元年6月23日 東京新聞

共同親権 生き別れ防げ 国際的には「単独」が例外” [#t6aaf62a]

年間二十一万人余の子が親の離婚を経験する日本。未成年の子を巡る両親の親権争いはしばしばドラマなどになってきた。そんな状況が変わるかもしれない。離婚後も父母で親権を持つ「共同親権」の導入を法務省が検討し始めた。離婚後に親の一方が親権を失う現行の制度は、離れて暮らす親と子が生き別れる原因になっているからだ。配偶者から家庭内暴力(DV)を受けた被害者を支援する人などから異論はあるものの、見直しを求める声は強い。 (佐藤直子)

※以下、記事を参照ください。

秋田女児殺人事件 娘を母親に殺害された父親が行政を訴えた理由 「助けられたのではないか…」

出典:令和元年6月10日 TABLO

秋田女児殺人事件 娘を母親に殺害された父親が行政を訴えた理由 「助けられたのではないか…」”

愛実ちゃんが小学校に入学したとき

2016年6月秋田市で9歳の女の子、千葉愛実ちゃんが母親の祐子(43)によって首を絞められて殺害された。
児童養護施設から母親の住むアパートに一時帰宅していたときのことだ。2泊後の夕方、愛実ちゃんが施設に戻るはずだった。しかし確認が遅れ、警察ががアパートに踏み込んだとき、祐子は意識不明、愛実ちゃんはすでに息絶えていた。2018年3月に最高裁で祐子は、殺人の罪で懲役四年の判決が確定。現在、服役中である。

この事件に関して父親である阿部康祐さん(46)は、6月7日、秋田県や秋田市を相手取り、損害賠償を求め、秋田地裁に提訴した。
母親が娘を巻き添えにして心中しようとしたことで、なぜ父親が行政側を提訴したのか。養育能力に欠ける母親に代わってなぜ父親が子供を引き取らなかったのか。母親に養育能力がなければ子供を引き渡さないのではないか。
この事件を取材し、今も阿部さんと連絡を取り合っている筆者、西牟田靖が、事件の概要や提訴の意味について、記してみたい。

わが子に会えずじまい

阿部康祐さんと祐子は、今から10年前の2009年、愛実ちゃんが2歳のときに離婚している。それから亡くなるまでの7年間、阿部さんと愛実ちゃんはほぼ会えずじまいであった。
離婚前のことだ。夫婦関係が破綻し、一人となった阿部さんが離婚調停を起こした。もめたのは愛実ちゃんの親権だった。というのも日本では諸外国のスタンダードである離婚後も共同親権ではなく、離婚後単独親権となるからだ。
調停の場で阿部さんは主張した。
「(精神疾患があり、家族との縁をほぼ絶って暮らす)妻に愛実は育てられないだろう。こちらには面倒を見る人はたくさんいる。それに私自身、回復次第働ける』と」
しかし親権は祐子側に認められてしまう。というのも日本の調停や裁判では、一緒に暮らしている方が有利という「継続性の原則」があったり、「母性優先」という考えがとても強かったりするのだ。
親権を諦めざるを得なかった阿部さんは、祐子側が提案してきた「月一回の面会交流」を呑んで調停を泣く泣く決着させる。
ところがその後、その取り決めは完全に反故にされた。「インフルエンザが流行っているから」などと、その都度もっともらしい理由を出され、会わせてもらえなかったのだ。
3人で住んでいた家に荷物を取りに行く名目で訪ねるも、祐子に警戒され、引っ越しされてしまう。心配した彼は元義父に頼んで新しい住所を教えてもらい、手段を講じる。
引っ越し先である大仙市役所へ行ったり、探偵社へ捜索をお願いしたり、幼稚園や地域の民生委員に見守りをお願いして回ったり……。さらには元義父にお願いして教えてもらった住所に「面会させて欲しい」と記した手紙を送ったりもした。

手紙を出したことが祐子の被害妄想を刺激したのか、対抗措置をとられてしまう。「家庭内で暴力を受けていた」という虚偽の申出を大仙市役所に出され、住所にブロックがかけられてしまう(DV等支援措置)。さらには「ストーカー被害に悩まされている」と警察に被害届を出されてしまう。こうしたことにより、阿部さんは愛実ちゃんとの縁を完全に絶たれてしまった。
一方、祐子は精神疾患を悪化させたことから、当時移転していた秋田市の児童相談所に「娘を預かって欲しい」と連絡。その結果、愛実ちゃんが4歳のとき、児童養護施設に預けられることになった。
このとき児童相談所は祐子の「夫はDV加害者でストーカーなのでくれぐれも連絡しないで」という話を精査せず鵜呑みにした。
施設の人たちは愛実ちゃんを大切に育てたようだ。入所した当時はコミュニケーションが下手で感情をあらわにすることがあったが、次第に落ち着き、女の子らしいかわいい少女へと成長していきつつあった。
ところが愛実ちゃんが9歳になった2016年の6月の一時帰宅の際、愛実ちゃんの人生はそこで終わりを迎えてしまう。事件が起こってしまったからだ。

失われなかった命ではないか

愛実ちゃんが亡くなってしまった原因はもちろん祐子が殺してしまったからだ。ただその途中で歯止めがきいていれば、失われなかった命だったのではないか。
もし日本がほかの大多数の国のように、離婚後単独親権で離婚しても共同で子育てをすることが当たり前の国ならば、事件は起こらなかったかも知れない。

とはいえ制度は簡単には変えられない。しかしそれでも途中で行政側の取り扱いがもう少し丁寧ならば、、、と思えてならない。
もし、面会交流が無事に行われていれば、
もし、大仙市役所が住所のブロックに慎重になっていれば、
もし、大仙市と秋田市の児童相談所が連携できていれば、
もし、秋田市の児童相談所が父親に話を聞き、児童養護施設に事情を伝えていれば、もし、一時帰宅の際、施設へ帰らなかった後、翌日の夕方ではなく、すぐに安全を確認できていれば、
いくつもの「もし」が頭に浮かぶ。
しかし実際のところは、本来もっとも弱い子どもたちを守るべき、児童福祉法やDV防止法、DV等支援措置といった仕組みが行政側をがんじがらめにしてしまい、愛実ちゃんの命を奪う遠因となってしまった。こんな皮肉なことはない。
「児童相談所が母親に養育能力が欠けていたと認識しながら、親権の停止を申し立てず、月1回の愛実さんとの面会をさせなかったなどとしている。阿部さんは、7日児童相談所を所管する県と秋田市、それに大仙市を相手取り8000万円余りの損害賠償を求め、秋田地裁に提訴した」(秋田テレビ)https://www.akt.co.jp/news?sel=20190607-00000005-AKT-1
阿部さんは話す。
「娘が殺されてしまって私にはもう失うものは何もありません。しかし私は世の中を変えたいんです。会わせてもらえずに辛い思いをしている人を一人でも減らしたいですし、みなさんには私のようになってほしくないんです。このままでいいのかということを裁判を起こすことで世の中に問いかけたいと思っているんです」

千葉愛実ちゃんが父親である阿部康祐さんとの縁を絶ち切られていなかったらこんなことは起こらなかったに違いない。嘘のDV主張を鵜呑みにし、阿部さんを遠ざけた行政側によってこの殺人は引き起こされてしまったとも言える。
この事件に関わってきた私も、この裁判が、制度が変わるきっかけになればと強く思っている。何の非もない女の子が無残にも殺されてしまう。それを助長するような法律は変えるべきだし制度も変えるべきだ。(写真・文◎西牟田靖)

妻のDVに苦しむ夫は意外と多い。殴られて救急搬送された夫が語った“恐怖”

出典:令和元年5月31日 女子SPA¡

妻のDVに苦しむ夫は意外と多い。殴られて救急搬送された夫が語った“恐怖”

 昨年、“エリート銀行員が妻を殺害し、母親が死体遺棄を手伝った事件”が前代未聞だと話題になったのを覚えているでしょうか?

 この事件の裁判での夫に対する被告人質問で語られたのは、妻からの家庭内暴力です。「顔面殴られたり、髪をつかまれたり、引きずり回されたり、100回以上ありました。土下座するわたしの頭を蹴りました。もう限界だと思いました」と証言した夫。

 もちろん夫側だけの証言だし、それで殺人が許されるわけはないのですが…。

 男女関係や不倫事情を長年取材し著書多数のライター・亀山早苗さんが、妻によるDV事例についてレポートします。(以下、亀山さんの寄稿)

妻の暴力に苦しむ男は少なくない?

 千葉県柏市で妻を殺害し、遺体を母親とともに実家の庭に埋めた罪に問われている元銀行員の男が、29日の裁判で「家庭内での妻の暴力や暴言がひどかった」と証言している。

 離婚を切り出したら、幼い娘とともにマンションの屋上へ駆け上がり、飛び降りて死ぬと脅したりもしたようだ。強迫神経症を患っていたらしいが、妻も夫も追いつめられていたのだろう。

 平成29年度の内閣府「男女間における暴力に関する調査」によれば、配偶者から身体的暴行、心理的攻撃、経済的圧迫、性的強要の4つのうち、ひとつでも受けたことがあると答えたのは女性で4割強、男性はほぼ2割(*)。

 あまり問題視されないが、女性から男性への暴力も決して少なくないのだ。

(*)配偶者からの身体的暴行、心理的攻撃、経済的圧迫、性的強要のいずれかの被害

参考 内閣府男女共同参画局「男女間における暴力に関する調査 配偶者からの暴力の被害経験」(平成29年度調査)

 実際に、妻からの暴力がひどくて離婚したと語ってくれた男性がいる。サトシさん(47歳)は、調停や裁判を経て4年前、ようやく離婚できた。結婚前から神経質な女性ではあったが、妊娠をめぐってそれが加速した。

「私が30歳、妻が28歳で結婚しました。なかなか子どもができず、妻は思い悩んでいました。私は子どもがいなければいないでもいいと思っていたんですが、どうしても子どもがほしい、と。

 ようやく妊娠したのは4年後。今思えば、あのころから彼女はかなり神経過敏になっていましたね。流産するのではないかと恐怖にかられ、家の中のことはほとんどしなかった」

 サトシさんは外資系企業に勤めていて海外とのやりとりが多く、帰宅が遅くなることもあった。なるべく早く帰って家事をやるよう心がけていたが、どうにもならないときは妻の母に応援を頼んだ。

「ある日、どうしても仕事で会社に泊まらなくてはならないことがあったんです。疲れ果てて、朝やっと家の玄関を開けたらいきなりグーパンチが飛んできた。脳しんとうを起こして救急搬送されました」

 妻はどうやら浮気を疑っていたらしい。一晩、悶々とした結果がグーパンチだった。妻の不安はわかるが、いくらなんでもやりすぎだろうとサトシさんは将来に不安を覚えたという。

子どもが生まれた後も妻は神経過敏

 息子が生まれてからも妻の神経過敏は続いた。もちろん病院に連れていったこともあるが、結局は、「子育てのストレスですから、手伝ってあげてください」と言われるだけ。

 サトシさんは自分ができることは何でもやった。たとえ睡眠不足になっても子どものことに関しては手を抜かなかったという。

「妻の母親もよくうちに来て手伝ってくれていましたから、今でいうワンオペではなかった。それでも妻にとってはストレスがあったんでしょう」

 家に帰ると、出前でとった鮨桶(すしおけ)や取り寄せたらしい高級メロンの箱などがよく台所にあった。

 サトシさんはまったく食べていない。おそらく妻が母親と食べたのだろう。だがそれで少しでもリラックスできるならそれでもいいかと思い、彼は言及しなかった。

子どもの身体にアザを見つけた

 時間があればサトシさんは息子と遊ぶようにしていた。だが、平日はなかなか早くは帰れない。

 週末、彼が息子を風呂に入れようとすると、「今日は風邪気味だから入れないで」とか、「さっきあなたがちょっと出かけているときにもう入れた」などと言う。

 おかしいなと思い、ある日、早く帰れたので妻の制止を振り切って息子を風呂に入れた。背中に生々しいアザがあった。息子が2歳のころだ。

「ママにぶたれたの?と聞いたら、息子の表情が固まったんです。あんなに小さいのに言っていいかどうか考えている様子なんですよね。不憫(ふびん)でたまらなかった」

 妻に尋ねると、「昨日、外で遊んでいて背中から転んだ」という。背中から転ぶ状況を説明してもらったが彼には納得できなかった。

何もかもがおかしくなっていた

 その間も、何か気にくわないことがあると妻はサトシさんに暴力をふるった。多くは彼が妻の手をつかんでやめさせたが、そうすると今度は大声で怒鳴り続ける。息子はおびえて泣いた。

「家に帰る時間が5分遅れると、妻は『死んでやる』と脅す。謝ると土下座しろという。息子のためにも平穏な時間がほしいから、土下座するしかなかった」

 もちろん、話し合おうとしたことも何度もある。

「何が不満があったら言ってほしいと何度も言いましたが、妻はとにかくすべてがイヤだと。こんな生活はしたくないというから、じゃあ離婚しようというと『あなたは私を捨てるのね』と号泣する。

 お義母さんとも話しましたが、お義母さんはまったく彼女のおかしさに気づいていない」

 あとからわかったことだが、義母は娘からお金をもらって妙な新興宗教に貢いでいたらしい。何もかもがおかしくなっていた。

家の中に隠しカメラをつけて

 その後、サトシさんは家の中に隠しカメラをつけた。妻はやはり息子に暴力をふるっていた。

 彼は即座に3歳の息子を連れて家を出ることを決意した。妻に預けていた預金通帳を探し出すと、預金はほとんどなかったという。

「それなりに稼いでいたんですよ。だけどほぼゼロ。妻のクローゼットを見たらブランドもののバッグが使った様子もなく、値札がついたまま並んでいる。

 それを売り払うしかないと思って全部車に積んで、とりあえず友人宅に避難しました」

 翌日、妻が友人宅へやってきて、大騒動になったという。彼はすぐにマンションを借り、子どもは昼間、近くに住む妹宅に預けた。

 オートロックの妹宅のマンションに妻が入り込んで騒ぎになったこともある。

「妹夫婦が身体を張ってうちの息子を守ってくれた。それは感謝しています」

「いちばん怖かったのは、子どもを人質にとられていること」

 彼が息子を迎えに妹宅へ行ったとき、隠れて待っていた妻から襲撃を受けたこともある。それでも彼が警察沙汰にしなかったのは、「息子の母親を犯罪者にしたくなかったから」だという。

 彼は弁護士をつけ、離婚を模索したが話し合いは決裂。調停、裁判と進んで、ようやく親権をかちとって離婚した。

「妻が暴力をふるうと言っても、あまり周囲に信じてもらえないんですよね。精神科医の医者も頼りにならなかった。

 私がいちばん怖かったのは、子どもを人質にとられていること。だから妻を怒らせるようなことはしたくなかった」

 今は息子とふたり暮らし。忙しかった外資系企業を辞めて、友人と起業した。家でできる仕事も増えたが、12歳になった息子のほうが最近多忙だと笑う。

「でも時間があると息子とふたり旅をしています。この夏もふたりで自転車の旅をするつもり」

 サトシさんは、「過去のあの日々を思い返すだけで今も怖い」と最後にぼそっとつぶやいた。

<文/亀山早苗>

「友人にも妻にも話したことはない」離婚家庭の息子たちが明かす親子の関係

出典:令和元年5月30日 HUFFPOST

「友人にも妻にも話したことはない」離婚家庭の息子たちが明かす親子の関係

15万3600件。これは1988年、今から30年前の日本の離婚件数だ。婚姻件数が70万7716件なので、単純計算すると約21.7%の離婚率ということになる。
しかし、「親は二人」がまだまだ一般的な日本では、ひとり親家庭の親子関係はちょっと特殊とされる。もちろん、“親”なる存在がひとりきりだからである。
ひとり親家庭で育った子どもたちは、親とどんな関係を築くのだろうか。その当事者として、これまであまり語られることのなかった「母と子どもの関係」に注目し、女性編に続いて3人の男性に話を聞いた。
「こんなこと、友人にも妻にも話したことありませんよ。話したいことでもないし、話す機会もない」と、ある男性は語った。母との距離に人知れず悩む彼らの本音とはーー?

母との適切な距離は、最後までわからなかった

「結局、最後まで適切な距離感はわからないままでした」
7年前に亡くなった母親について、鈴本真二さん(仮名)はこう回顧する。
鈴本さんは、島根県生まれの41歳だ。両親が離婚したのは、小学校に上がる直前。母は、鈴本さんと3歳年上の姉きょうだいを連れて、実家に身を寄せた。
「よくある貧困母子家庭ですよ。母の帰宅は毎日夜中で、祖父母が親代わりでした」
「姉は中学に入って早々に非行の道へ走り、それを横目に見て育った僕は、小学校高学年からラジオや音楽、映画、雑誌、ゲームなどのカルチャーにどっぷりハマっていきました。放課後や休日は自宅に友だちを呼んで、自分にあてがわれていた家(母屋)の離れでたむろしていました」
中学時代は、街にある5軒のレンタル屋をめぐって映画のビデオをどっさり借り、それらを観て過ごすのが週末の楽しみだった。
「土曜日はもう一つ、大切にしていた時間がありました。深夜の12時半とか1時まで起きていて、仕事から帰宅した母親と、録画した『平成教育委員会』を観るんですよ。それが唯一の母との時間でしたね」
母は深夜まで働き、姉は不良仲間と外で遊び、鈴本さんは友人と濃密な時間を過ごす。それぞれが異なる世界で生きる鈴本さん家族が共有するのは、週に1度、1時間の『平成教育委員会』を一緒に観る時間だけだった。
しかし、そのつながりはあまりに危うく頼りなかった。鈴本さんは、ある些細なきっかけで家族との距離感を見失ってしまったのだ。
「ある夜、離れから母屋に戻ろうとしたときに、カギが締められていたんです。なぜだかすごくショックで、それから家族には心を閉ざすようになりました。誰がどんな意図でそうしたのかはわかりませんが、あの瞬間に家族とのつながりが切れてしまった」
暗闇でひとり立ち尽くした鈴本さんは同時に、「僕たち3人はやっぱりそれぞれが別々の人生を歩むんだな」と悟ったという。
「家族との関係をどうにかしなきゃとは思っていませんでした。当時はもう、血縁関係が嫌になっていて、友だちとの関係のほうがよっぽど濃いと考えてもいました」
高校卒業後は、18歳で上京。母親のことを憎いと思ったことはないが、母親とどう接するのがいいのか、何を話せばいいのかは、ずっとわからなかったと明かす。
「いつも『これをやっとけば喜ぶんだろうな』って他人事みたいな理由しか見つけられないんですよ。30歳で今の勤務先に入社したときも、『母でも知っている大手企業だし、息子が就職したら喜ぶだろうな』と思って報告しましたし」
事実、母は喜んでいた。とはいえ、鈴本さんが直接言葉をかけられたのではない。母の死後に、元同僚からそう聞かされたのだ。
「母にステージ4のすい臓がんが見つかったのは、僕が34歳のとき。当時は2週間に1回、田舎に帰っていました。それでも、僕はゆがんでいるんです。『顔を見せることがいいんじゃないか』と思ってきたくせに、弱った母の姿を見たくないから『行ったって仕方ないし』と地元の友だちと遊んでみたりしましたね」
母の闘病中は、『ワクチン治療に一縷の望みを託すべきだ』と母を説得し、治療費を出したりしたという。当時の彼女を連れて、結婚相手として紹介したりもした。すべては、そうしたいと望んだからだ。
「それでも、どこかで『息子だったらそうすべきなんじゃないか』『結婚という一般的な幸せを見せたらいいんじゃないか』と考える自分がいました」
一つひとつの言動は、彼を孝行息子に見せただろう。しかし内実は、彼は母との距離を最後まではかりかねていたのだ。
現在は、妻と二人で暮らしている鈴本さん。妻との関係は「家族というより個と個のつながり」だと話す。
鈴本さんは故郷を離れた地で、「血縁よりも濃い関係」が結べるかけがえのない相手を見つけた。

思春期、母親を「おばさん」と呼び始めた

田端弘さん(仮名)は、福岡県出身の44歳。両親が小学校低学年で別居し、10歳のときに離婚。思春期、彼は母親を「おばさん」と呼びはじめた。
「母ひとり、子ひとりの母子家庭だったので、精神的な部分での母子密着がすごかったんでしょうね。離婚のドタバタもあって小六まで一緒に寝ていましたし、小学生の頃は母親に強く依存していたと思います。でも思春期になって、そんな自分がすごく嫌になって……」
結果、自分と母親とを引き剥がすかのように使い始めたのが、「おばさん」という呼称だった。一方で、母親を理解したいという気持ちも強かった。
「母は、大手電機メーカーの正社員として勤務しながらも、高卒の一般職ゆえに会社では嫌な思いをすることが多かったのでしょう。会社から帰宅して、『悔しい』と泣くこともありました」
「そんな様子を見ていたからか、中学生ながらに社会学やフェミニズムに目覚め、宮台真司や上野千鶴子を読むように。『なぜ女性は女性だというだけで差別されなければならないのか』と考えたかったんだと思います。母親の苦労を言語化したい気持ちがあったんでしょう」
中学、高校に上がっても、家庭内に二人きりの密接な関係は続く。そのため、十分に心の距離が取れないまま、田端さんは相反するアンビバレントな思いを抱き続けた。
「何かと干渉してくる母親をウザいと感じながらも、“母親は自分だけに奉仕するもの”みたいな感覚は、ずっと持ち続けていたような気がします」
それは、いまだに続いている。
「いまでも、母親に相対すると思春期男子に戻ってしまうんですよね。素直になれなくて、『なんだよウザいな』みたいな接し方しかできない。一方で甘えも断ち切れていなくて、親は自分のことを愛していて当然だというような感覚もあるんです」
田端さんは、大学進学と同時に上京。故郷を離れてから今まで、母親との微妙な距離感は変わらないままだ。
たびたび電話をして『振り込め詐欺に気をつけろ』と忠告する一方で、年に1〜2回、一緒に行くと決めている国内旅行では、旅行代金をかなり多めに出してもらえるようせがんだりもする。
「でも、けんかばっかりしてるんですよ。いまだに、福岡にいたころのお互いの態度の問題で言い合いになって、電話を切ったりして。たまにオレは40にもなって何をやっているのだと思ったりもしますね(苦笑)」
「父親もいる家庭に育っていたら、思春期にもう少し母親と距離が取れて、今の関係も変わっていたのかもしれませんね。妻の方が、ときに受け流して、ときにおだてて、よっぽど僕の母親とうまくやっていますよ」と田端さんは話す。
彼は、いまも母親を「おばさん」と呼ぶ。
「事情を知らない周りの人には引かれるけど、特別な意味はないんですよ。急に『お母さん』とか呼んだら、母親ですら『何ね、あんた気持ち悪い』みたいなことを言うと思う」
母親との距離を取ろうと使い始めた「おばさん」。その呼称は、二人が積み重ねてきた不器用な愛情を示すようにも映った。

言えない本音は、すべて姉に打ち明けていた

東郷大地さんが遅れた反抗期を迎えたのは、大学生のことだ。
「高校時代まで、母は“唯一神”でした。逆らうことはもちろんなかったし、母の考えに違和感を抱いても『母が正しいはずだ』と自分に言い聞かせていた。母との関係が変わったのは、大学時代です。家を出て距離を置いたことで初めて母を相対化でき、母も1人の人間なんだと気がついた」
東郷さんは、山口県出身の25歳。3歳で両親が離婚。10歳年上の姉とともに母親に引き取られ、三人暮らしに。中学進学のタイミングで姉が家を出たため、思春期は母との二人暮らしだったという。父の記憶はほとんどない。
「中学校までは、無理をしてでも“いい息子”であろうと努めていました。母に金銭的、時間的負担をかけないようにと、いつも気を遣っていましたね。『勉強だけはしておきなさい』と言われていたので、真面目に学校に通っていて、成績も上位をキープしていました」
周囲は塾に通ったり、流行りのゲームで遊んだりしていたが、それらを母にねだることはなかった。ときに、さみしい気持ちを抑えることもあった。
そんな東郷さんを支えたのは、姉の存在だ。
「人に言えない本音は、すべて姉に打ち明けていました。さみしい気持ちも全部。姉とは、ずっとお互いに何でも話す関係なんですよ。中学までは週末に勉強を見てもらったりもしましたし、今でも頭が上がりません」
高校に進学してからも、母に報いたい、母を喜ばせたいという思いは途絶えなかった。それゆえ、自己主張はせず周囲と波風立てずに協調することをよしとする母の性格を、東郷さんは知らず知らずのうちに内面化していた。
「きっかけは、大学のゼミやサークル活動のなかで、自分には考えを伝えて人を動かすスキルが欠けているなと感じはじめたことでした」。東郷さんは転機を振り返る。
「例えば、アカペラサークルでライブを仕切る担当になったとき、僕は人の顔色ばかりうかがっていたんです。こうしたいという思いはあったけれど、それをどう伝えて、どうやって人を動かせばいいのかがわからなかったんですよね」

なぜだろう? その理由を考えた結果、はっと思い当たる。
絶対視していた母の考えは、ここでは通用しない。母が間違うこともある一人の人間なのだとわかったとき、東郷さんはあまりのギャップに苦しんだ。
だって、大好きな母が間違っているなんて思いたくない。
「以来、母をロジカルに詰めるようになりました。母に逆らったのは人生で初めてでしたね。単純に母親が間違っていることを指摘したい気持ちもあったけれど、とにかく母親を好きでいたいという気持ちで……」
母親が大好きだから、正しくいてほしい、好きでいられる母親でいてほしい。だからこそ、熱がこもりすぎることもあった。
「顔を合わせたときは、特に熱を帯びて。母も頑固なので、二人で何時間も議論することになるんですよ。帰省の際に夜中の3時ぐらいまで延々と話して、結局、あんまり理解してもらえずに『もういい!』って二階に上がる、みたいなことがあったり……」
母と本音でぶつかり合うようになった東郷さんは、今度は正論で母を言い負かした罪悪感に陥ったり、母親をストレスのはけ口にしているのではと悩んだりするようになった。
そんなときの相談相手は、やはり姉だった。
東郷さんは、「悩みを打ち明け合える姉という存在がなく、母親とずっと一対一だったら、どこかのタイミングで”モヤつき”をため込んでいたと思います」と回想する。
「過去を振り返ると、自分でもこじれそうな生育環境だよなと思うんです。でも、僕自身はいい育ち方をしたなと感じている。それは、僕たちが三人だったからかもしれませんよね。僕も姉も、互いを巻き込むことで、うまくガス抜きができていたのかもしれません」
東郷さんは、家族三人で暮らしていた時代、姉と母が言い合いをしている場面をよく覚えている。
「二人が口論になると、よく『大地はどう思う?』って話を振られたんですよ。その繰り返しで、僕たちは関係を良好に保ってきたのかもしれない」
東郷さんは、姉という相談相手がいたからこそ、真正面から母親と向き合うことができた。
昨年、姉の結婚式では、パートナーとの幸せそうな姿を見て、誰より号泣したそうだ。また一方で、「父に会ってみたい」という長年思い描いていた希望も実現させている。もちろん、母を大切に思う気持ちは変わりない。
同じひとり親家庭の親子関係でも、親と子の関わり合いの深さ、きょうだいやコミットする親戚の有無などによって、その家族のかたちはさまざまだ。
ただし、緩衝材になりうる人物がいるかいないかで、一対一の親子関係の風通しはかなり変わってくるのかもしれない。

一般的に、男性は家族のことをあまり語りたがらない。今回、インタビューに答えてくれる離婚家庭育ちの男性にめぐりあうまでは、長い道のりだった。
「人と深い関係を築くのが苦手なんでしょうね。普通はそういうのを家庭の中で学ぶんでしょうけど……」
取材中、鈴本さんが何気なく漏らしたこの言葉を、たびたび思い出す。
事実、家庭とは人間関係のトライアルアンドエラーの場なのだろう。しかし、男性からこんな言葉を聞いたのは初めてのことだった。
どこか心が満たされない“欠け”のようなものは、どんな人にもある。ただ、寡黙に強くたくましくあることを強いられがちな男性にとって、自らの“欠け”を抱いたまま生きる痛みは、女性のそれとは少し違うのかもしれない。
取材に応じてくれた3人の話を聞き、彼らが人知れず抱えてきた過去に、もう少し耳を傾けてみたいと感じた。
(取材・文:有馬ゆえ、編集:笹川かおり)

「国際結婚の離婚」が「親子関係の破綻」となってしまった理由

出典:令和元年5月24日 現代ビジネス

「国際結婚の離婚」が「親子関係の破綻」となってしまった理由

 結婚や離婚の取材を長年続けているライターの上條まゆみさん。「子どもがいる」ことで離婚に踏み切れなかったり、つらさを抱えていたりする人の多さに直面し、そこからどうやったら光が見えるのかを探るために、具体的な例をルポしていく。

 今回はアメリカ人男性と数年前に離婚した赤沢奈央さん(仮名・50歳)。アメリカ人の夫との離婚のあと、子どもに会えなくなっている女性の体験をご紹介しよう。

国際結婚件数が桁違いに増えていることに比例して、国際離婚件数も増加している。

国際結婚は増加の一途
 グローバル化の流れのなかで、国際結婚が増加している。1960年代は年間4~5千件、婚姻数全体に占める割合は1%前後であったのが、1980年代後半から増え始め、現在は年間2~3万件、3%前後で推移している。

 愛の前に、国籍の違いなど関係ない。それはそのとおりだが、夫婦関係が破綻し、いざ離婚となった場合、国際結婚ならではの問題に直面することもある。その一つが、子どもをめぐる争いだ。

 どちらの親が親権をもつか、面会交流はどうするか。国内結婚でも揉めるケースは多いが、国際結婚の場合は、より深刻な事態になりかねない。親権を得た外国籍の親が、国外へ子どもを連れて行ってしまう恐れがあるからだ。そうすると、日本に残された親は、思うように子どもに会えなくなる。しかし、単独親権、共同親権の問題は簡単に「黒か白」と言い切れる話ではない。

アメリカ人の夫と3年前に離婚
 50歳の赤沢奈央さんは、まさにその問題の渦中にいる。3年前にアメリカ人の元夫と離婚した奈央さんには、中学生になる娘が2人いるが、その親権は父親だ。

 上の娘は、いまは奈央さんと会おうとしない。発達障害の診断を受けており、考えが白か黒かの極端に偏りがちな特性から、「片親疎外(注)」の状態にあるのではないかと奈央さんは推測している。

 一方、下の娘は週に数回、交流している。奈央さん宅にごはんを食べに来たり、買い物に出かけたりなど、関係は良好だ。
しかし、元夫はまもなく娘2人を連れて、アメリカへ引っ越す予定だという。

 「元夫は、アメリカでの仕事が見つかりしだい、娘を連れて日本から引き上げると言っています。親権をめぐる裁判中は、『高校を卒業するまでは日本にいる』と約束したのに、です。でも、親権をもたない私には、それを止める術がない。それがいつなのか、もしかしたら既に仕事は決まっていて、明日にでも日本を発ってしまうのか。私は、その恐怖と闘いながら毎日を過ごしているのです」

注)片親疎外:両親の別居・離婚などにより、子どもと暮らしているほうの親が、もう一方の親に対するマイナスなイメージを子どもに吹き込み、結果として正当な理由もなく片親に会えなくさせている状況

国際結婚とハーグ条約
 こうした切ない状況の裏には、日本の親権制度と国際結婚ならではの問題がある。
アメリカなど欧米諸国では、一方の親が不当に子どもを連れ去ることは犯罪である。また、離婚後の子どもの親権は双方の親がもつ「共同親権」が原則なので、一方の親の了解を得ずに国外に連れて出ることはできない。「ハーグ条約」によって禁止されている。

 たとえば、アメリカで国際結婚をした日本人の妻が、離婚して子どもを日本に連れ帰ろうと思っても、子どもの共同親権者である夫がNO! と言えば、それはかなわない。

 一方で、日本国内での子どもの連れ去りは、あまり問題視されていない。結婚が破綻した際、妻が子どもを連れて実家に帰ってしまうなどというケースはいくらでもある。子どもを連れ去った側の親が「監護の継続性」の名のもとに親権を得るケースが多いことから、裁判所によって半ば容認されているとすら言える。 

 実は、先進国において、離婚後の子どもの親権をどちらか一方の親だけがもつ「単独親権」なのは日本だけだ。欧米諸国をはじめ韓国、中国などでも、離婚後の子どもの親権は「共同親権」、あるいは「単独親権」との選択制を採用している。

 つまり、日本も欧米諸国同様、「共同親権」であったなら、奈央さんの元夫は娘を連れて海外移住できない。「ハーグ条約」に引っかかる。

 子どもの居住地を決めるのは親権者だから、日本国内においても遠く引っ越してしまう可能性はあるが、日本の法に基づいて居住先を探すこともできるし、その気になれば追いかけて近くに住むこともできる。しかし、国外となると、ハードルは格段に高くなる。実際、昨年子の親権を同様に片親疎外で奪われて、相手親と子の海外移住を止められなかったもう一人の女性は、現在その子との連絡が全くとれず、安否さえもわからない状態に陥っている。海外に探しに行く予定だが、そうしても見つかる保証もない。
正社員になる約束を守らなかった
 奈央さんが元夫と知り合ったのは、20代前半。エンジニアとして会社勤めをしていた。3つ年上の元夫は外資系金融会社の契約社員で、日本に働きに来ていた。3年間の交際後、日本で結婚、そのまま日本に住んだ。

 しばらくは、それぞれの仕事に没頭して過ごした。30代後半になり、「子どもを産むならタイムリミットだ」と子どもをつくった。2歳違いで、2人の娘に恵まれた。

 「保育園に預けても、子どもは熱を出したりしますよね。それで夫婦で話し合い、私が在宅勤務に切り替えて子どものケアをすること、彼は一家の大黒柱として正社員の職を探すことを約束しました」

 しかし、元夫はその約束を守らなかった。奈央さんは不満が募り、苛立ち、そして口論が増えた。2人の仲は、みるみる崩れていった。

 「私は地方出身で、まわりに男尊女卑的な考え方をする人が多かったので、男女平等に徹する元夫がはじめは新鮮でした。でも、それは裏を返せば、頼り甲斐がないということ。子どもが生まれたというのに、自分が家庭を支えるという意識がないと感じてしまったんです」

 ある日、何度目かの大げんかをきっかけに、元夫は1人で家を出ていった。それでもほぼ毎日、家に来て朝ごはんを食べ、娘たちを保育園に送って行った。 

 子どもを真ん中に、両親それぞれが子育てにかかわる。娘たちが小学生になっても、こうしたゆるやかな別居生活は続いた。奈央さんは、子育てが終わるまではこのままでいい、と思っていた。ところが。

 「夏休みに10日ほど娘を預けたら、それっきり返してくれなかったんです。娘たちによれば、『ママと住んだら、もうパパには会えなくなる』と言われたそうです。幼かった娘たちはその言葉を信じてしまい、『ママにもパパにも会い続けるために、パパの家に住む』と。そんなことはないよと説得しても聞かず、会っても夜には元夫の家に帰ってしまうようになりました。そのうち、上の娘は私を避けるようになりました」

 性格の不一致を理由に、離婚裁判をおこされた。奈央さんは、離婚まではしたくなかった。子どものために、なんとか修復したかった。しかし、元夫は離婚を譲らない。
原審では、「子の真の望みは両親との近居である」として、離婚判決とともに、奈央さんが親権を得た。しかし、親権を求めて控訴された。その時点で娘たちが父親とともに暮らしていることから「監護の継続性」を主張され、杓子定規の判決しか出さないことで有名な高裁で親権はあちらに渡ってしまった。

 元夫は、離婚成立から数カ月後に、海外在住の女性と再婚した。

会えるのは、近くに住んでいるからなのに
 「親権がどちらであっても、下の娘とはこうして会えている。上の娘とも、時間をかけて関係を紡いでいくつもり。でも、それができるのは、近くに住んでいるから。そもそも高裁の判決は、『子どもが高校を卒業するまでは日本にいる』ことを前提に出されたものなのですから、そこは子のために守るのが親としての務めであるはずです」

 そこで、奈央さんはいま、親権者変更調停を裁判所に申し立てている。しかし、いったん決まった親権者を裁判所が覆すことは、命の危険でもない限り難しい。

 ただ、覆る可能性があるとすれば、海外からの動きだ。2018年、EU各国から日本の法務大臣宛に、子どもの連れ去りに抗議する書簡が出された。それを受けて、日本でも子どもの連れ去りに対する目がきびしくなれば、もしかしたら奈央さんの判決にも影響があるかもしれない。

 実はいま、日本でも「共同親権」を取り入れるべきだとの動きがある。法務省では、共同親権の導入について、すでに本格的な検討を始めている。ただし、虐待親から子どもを守るにはどうするのかなど繊細な問題は多い。

「親権は子どもを守り育てるための権利であるはずだが、現在の単独親権では一人の親のエゴを行使する権利として濫用されかねない。子どもには両方の親の愛を受けて育つ権利がある。親の離婚によって、子どもが片方の親との関係を失うなどということがあってよいのでしょうか」 奈央さんの問いは、元夫との関係性を超えて、国の法制度に向けられている。

親の離婚後も、子どもが 日仏の文化を享受できるように。

出典:令和元年5月19日 Ovni

親の離婚後も、子どもが 日仏の文化を享受できるように。

リシャール・ユングさん
日仏間「夫婦間のこどもの連れ去り」に取り組むフランス上院議員

 今年3月、国営テレビ局・フランス2は「Japon, les enfants kidnappés/日本、誘拐された子どもたち」というドキュメンタリーを放映した。そこでは、フランスで一緒に暮らしていた日本人パートナーが娘と日本に行ったきり戻ってこなくなったため、日本へ赴くフランス人男性を追っていた。彼は日本で元パートナーに娘との面会を拒否される。フランス法廷では2週間に1回の面会とバカンス期間の半分を子と過ごすことが認められたのに、日本ではその判決が効力を持たず、なす術がない状態だ。
 もう一人のフランス人は日本在住だ。予告なしに日本人パートナーが息子といなくなった。息子の居場所はわからないが、誕生日には息子の祖母の家にプレゼントを届けに行く。しかし受け取ってもらえない。裁判では月に4時間の面会が認められているが、それさえ拒否され、玄関先で面会の権利を主張し続けた挙句、警察に連行されてしまう…。
 日本は2014年に「ハーグ条約」を批准した。これは、一方の親がもう片方の親の同意なしに加盟国間の国境を越えて16歳未満の子どもを連れ去った場合は、子どもが元いた国に戻すことを定めた条約だ。例えばフランスに住む日仏カップルの片親が、もう片方の親の同意なく日本に子どもを連れ去った場合、子はフランスに返されなければならない。ところが日本では、それが必ずしも実行されていないことが、長い間、外国から問題視されてきた。
 フランスでこの問題に取り組んでいるのが、リシャール・ユング上院議員だ。フランス国外に居住するフランス人の代表として議員に就任した2004年に「子どもの連れ去り」の被害者団体から手紙を受け取った。それから15年間、毎年日本の国会や外務省、法務省などに赴いている。
「日本文化に根ざした問題なので、解決には時間がかかります。例えば日本では母親が子どもを育て、父親は口を出さない慣習があります」。フランスでは家庭内暴力(DV)などの場合を除いては夫婦が別れた後も共同親権となるが、日本は単独親権制(母親に親権が与えられるケースが8割)をとってきたこともあり、一人の親がもう片方の親の同意なく子どもを連れて出て行っても罪の意識は薄い。しかしながらフランスでは「誘拐」とみなされるなど、認識にズレがある。さらに、連れ去った親でも時間稼ぎをすれば「継続性の原則」が認められることが多いという。つまり、母親が子どもを連れ去り、子どもがその生活に慣れたら、その生活から子どもを引き離さず「継続させる」ことが優先されるのだ。また偽装DVで相手を子どもに近付かせないケースも見られるという。
 現在、子どもを日本人のパートナーに連れ去られたフランス人は50~60人ほど。しかし、これは日仏間の連れ去りで、日本国内での連れ去りは数に入っていない。今後は、日本国内の実情も把握できるようにしたい、とユングさん。子どもの連れ去りに関して日仏の司法が協力しやすくなるよう、フランス大使館に司法官を配置したり、日仏諮問委員会を作ることなども、フランスの法務・外務大臣に提案している。連れ去りで子どもに会えないアメリカ人は400人という数字には程遠いが、連れ去りはフランス以外の欧州の国からも問題視されていたため、欧州26カ国の大使は、昨年、上川陽子前法務大臣に対して状況改善の誓願書を送っている。
 日本のハーグ条約批准5年を機に、3月8日、子を連れ去られた親数名、仏外務省、法務省、国会議員、プレスなどを上院に招いて会議を行なった。子どもを連れ去られた人たちの状況は5年前とさほど変わっていないが、仏司法関係者との対話の機会を作るために日本の民法の専門家をフランスに招請することに日本が好意的だったり、今月になって日本の法務省が共同親権制度の導入を検討する意向であると報じられるなど、進展もみられるようだ。
 「日仏ふたつの文化や言語に触れられるのは子どもにとって豊かな経験です。親は、相手との別れによる傷を乗り越えて、子どもたちが日仏ふたりの親と彼らの文化を享受できるようにしてほしい。自分の子に会えないでいる日本の父親たちが抗議するようになったら、状況は変わってゆくのではないでしょうか」。(六)
 

離婚後も父母双方が「共同親権」導入 時間かけ検討へ 法務省

出典:令和元年5月19日 NHK

離婚後も父母双方が「共同親権」導入 時間かけ検討へ 法務省

離婚したあとも父母の双方が子どもの親権を持つ「共同親権」について、法務省は夏以降、海外の制度を参考にして導入の是非を時間をかけて検討していく方針です。
離婚したあとの親権は、日本では父母のいずれかが持つ「単独親権」が民法に規定されている一方、海外の先進国では父母の双方が持つ「共同親権」が主流となっています。

法務省はアメリカフランスなど欧米を中心とした24か国を対象に、親権制度の仕組みや運用の状況などの調査を進めています。

調査は7月ごろまで行い、その後、結果を参考にして共同親権の導入の是非を検討していくことにしています。

共同親権をめぐっては、導入されれば親子間の完全な断絶を防いで養育環境を作ることで子どもの心理的な負担を減らすことができるという指摘や、養育費の支払いが円滑化されるといった期待があります。

一方で父母の関係が良好でない場合には進学先などを決める際に対立して合意が得られず、結果的に子どもの利益を害するおそれがあるなど、課題も少なくありません。

夏以降の検討でもこうした点が議論になることが予想され、法務省は時間をかけて検討を進める方針です。

「共同親権」導入の是非検討 米仏など海外での制度調査

出典:令和元年5月17日 NHK

「共同親権」導入の是非検討 米仏など海外での制度調査
離婚したあとも父母の双方が子どもの親権を持つ「共同親権」について、法務省は導入の是非を検討するため、アメリカフランスなど海外の親権制度の調査を始めました。
離婚したあとの親権について、日本では父母のいずれかが親権を持つ「単独親権」が民法に規定されている一方、海外の先進国では父母の双方が親権を持つ「共同親権」が主流になっています。

こうした中で、法務省はアメリカフランスドイツなど欧米を中心とした24か国を対象に、親権制度の調査を始めました。

調査は7月ごろまで行われ、各国の制度の仕組みや「共同親権」を導入している国でのメリットやデメリットなど、具体的な運用状況も調べて、「共同親権」の導入の是非を検討していくということです。

山下法務大臣は「調査で得られた海外の運用状況も参考にしながら、離婚後の親権制度の在り方について、引き続き検討していきたい」と述べました。

離婚での子引き渡し手続き明確に 改正民事執行法が成立

出典:令和元年5月10日 共同通信

離婚での子引き渡し手続き明確に 改正民事執行法が成立
 離婚に伴う子どもの引き渡し手続きを明確化した改正民事執行法が10日、参院本会議で全会一致により可決、成立した。裁判所に引き渡しを命じられた親が現場にいなくても、引き取る側の親がいれば、執行官が強制的に子どもを引き渡せるようになる。改正法は一部を除き、公布から1年以内に施行される。
 国境を越えて連れ去られた子どもの取り扱いを定めた「ハーグ条約」に基づく国内ルール、ハーグ条約実施法も同様に改正。一方の親が母国などに子どもを連れ帰った際の迅速な問題解決につながることが期待される。
 改正前は差し押さえなどの規定で運用し、子どもを物扱いしていると批判があった。
 

共同親権制度の導入可否検討へ 法務省、7月末までに各国調査

出典:令和元年5月9日 共同通信

共同親権制度の導入可否検討へ 法務省、7月末までに各国調査

 法務省が、離婚後も父母の双方が子どもの親権を持つ「共同親権制度」導入可否の検討に入ることが9日、同省への取材で分かった。現行民法の規定は父母の一方を親権者に定める「単独親権」だが、双方が養育に責任を持つ共同親権を選べるようにすべきだとの意見がある。ただ異論も根強く、検討に先立ち、法務省は外務省を通じて7月末までに24カ国の制度を調査し、問題点を整理する方針だ。
 民法は親権について「婚姻中は父母が共同して行う」と規定。協議離婚の場合は協議で、裁判を経た離婚では裁判所が、父母の一方を親権者と定めるとしている。

子の連れ戻し迅速化/親不在でも可能に ハーグ条約対応、法案が衆院通過 居場所特定なお課題

出典:平成31年4月17日 日経新聞

子の連れ戻し迅速化/親不在でも可能に ハーグ条約対応、法案が衆院通過 居場所特定なお課題

国際結婚の破綻で一方の親が母国に連れ帰った子供を元の国に迅速に連れ戻せるようにする民事執行法改正案が16日の衆院本会議で全会一致で可決、参院に送付された。今国会成立は確実な情勢だ。子供の所在地がわからなくなっている場合、どのように特定するかなどの課題も残る。

子供を連れ戻すルールは、日本が2014年に加盟したハーグ条約に「強制執行」の手続きが定められている。強制執行は裁判所が引き渡しを命じた場合、家庭裁判所の執行官が代わりに子を保護する仕組みだ。
今回の改正案はこの手続きを迅速にする。引き渡しに応じない親に制裁金などを科して促しても応じないとみられる場合、一定期間を待たずに連れ戻しを認める。
保護する際、引き渡しを命じられた親が立ち会わなくても、申し立てた親がいればできるようにする規定もつくる。
制裁金などを科す「間接強制」の手続きを経なくても強制執行できるようになることから、子供を連れ戻す手続きの実効性は高まるといえる。
ハーグ条約への対応をめぐっては、米国務省が昨年5月に日本を「効果的な執行策がとられていない」とし、同条約の「不履行国」と認定していた。
課題は残る。その一つが子供の所在が特定できない場合への対応だ。連れ戻すのは容易ではない。国際離婚などが専門の本田正幸弁護士は「(今回の法改正は)子の所在が特定されていることが前提になっている」と指摘する。英国など欧米では捜査機関と連携している例もあるという。「制度のさらなる整備が必要不可欠だ」と語る。
子供の心身への配慮も欠かせない。衆院法務委員会での法案審議で、法務省は児童心理専門家が執行補助者として保護する場に立ち会えるとの見解を示した。
家族法が専門の早稲田大の棚村政行教授は「子の返還が実現しないケースが残れば再び米国に指摘されるだろう」と話す。
改正案は成立から1年以内に施行される。詳細な運用ルールにあたる最高裁判所規則を定める手続きも必要になる。

離婚後親権の運用実態、24カ国調査へ 法務省

出典:平成31年4月17日 産経新聞

離婚後親権の運用実態、24カ国調査へ 法務省

 離婚後も両親ともに子供の親権を持つ「共同親権」に関し、法務省は17日の衆院法務委員会で、外務省を通じ世界24カ国での離婚後親権制度の運用実態を調査すると明らかにした。7月末までをメドに調査を行い、共同親権を取った場合の問題点などを整理する。
 日本維新の会の串田誠一氏への答弁。法務省は平成26年度にも外部委託で制度調査を行ったが対象は9カ国だった。今回は共同親権の多い欧米だけでなく、インドなど単独親権国も含め東南アジアや中東、南米まで広く調べ、父母が対立して裁判所が調整を行う事例や、調整の平均所要日数なども調査するとした。
 日本は民法で単独親権を取っており、父母対立が子供の養育に影響するおそれがあるため、政府は共同親権は「慎重に検討する必要がある」(安倍晋三首相)との姿勢を崩していない。
 ただ近年、国際結婚の増加で離婚後に国境をまたいでトラブルになるケースがあるほか、離婚しても父母双方が養育に責任を負うようにするべきだとの声もあり、昨年7月には当時の上川陽子法相が「親子法制の諸課題について、単独親権制度の見直しも含めて広く検討していきたい」と述べ、共同親権との選択制などの検討を示唆していた。

子どもの権利条約 批准25年

出典:平成31年4月16日 毎日新聞

子どもの権利条約 批准25年
今年は、子どもの人権を国際的に保障する「子どもの権利条約」=1=が国連で採択されて30年、日本が条約を批准して25年になる。しかし、国内では虐待事件やいじめ自殺、貧困など、子どもを巡る問題が後を絶たない。国連子どもの権利委員会=2=で委員を務める大谷美紀子弁護士(54)に、日本の現状と課題を聞いた。【聞き手・永山悦子、写真・根岸基弘】
 
以下、記事を参照ください。

「離婚後の単独親権は違憲」 共同親権導入求め、男性が国賠提訴

出典:平成31年3月26日 弁護士ドットコム

「離婚後の単独親権は違憲」 共同親権導入求め、男性が国賠提訴

日本では、子どものいる夫婦が裁判離婚した場合、父親か母親のうちどちらかが親権を持つ「単独親権」を裁判所が定める、と規定されている(民法819条2項)。しかし、こうした離婚後の単独親権のあり方は、夫婦であった親の間で合理的な理由なく差別的な取り扱いをすることであり、憲法に違反するとして、都内の会社員男性(40代)が3月26日、東京地裁で国を相手取り164万円の損害賠償を求める訴訟を提訴した。

男性は2人の子どもの親権を最高裁まで元妻と争っていたが、認められず、親権を失った。男性は提訴後の会見で、「親権を持つことに不適格な方もいると思うが、どちらの親も親権者として適格であるケースが多いと思います。裁判所も調査はありますが、判断することが難しいので、子どもと同居している親に親権を与えているのではないか」と現在の単独親権のあり方に疑問を持ったことが、提訴の理由の一つだと語った。

この裁判は、離婚後も婚姻時と同様に両親で共同親権を持てるよう求めるもので、国会による立法不作為を指摘している。男性の代理人である作花知志弁護士によると、立法不作為による国家賠償請求訴訟で、単独親権を憲法に問う裁判は全国で初めてという。

●法務省で共同親権導入を検討、「後押ししたい」

訴状によると、離婚後単独親権を定めた民法819条2項は、法の下の平等を定めた憲法14条1項や、「離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない」とする憲法24条2項に違反するとしている。

作花弁護士は会見で、共同親権の重要性を次のように語った。

「現在、法務省では離婚後も共同親権が持てるよう、法改正するべきではないかと動き始めています。この裁判では、その立法を後押ししたいと思っています。世界の国の中で、離婚後に単独親権をとっているのは日本と北朝鮮ぐらいです。他の国は共同親権が基本です。なぜなら、離婚は夫婦関係の解消であり、親子関係に関係するものではないという考え方です。

法務省のこうした動きの背景には、多発する児童虐待の問題があります。離婚して単独親権を持った親の新しい配偶者が子どもを虐待するケースが非常に多い。その場合、親権を失った親はその子どもを救う手段が持てない。共同親権によって児童虐待がすべてなくなるわけではありませんが、その手段の構築につながると思いました」

●「裁判所は子どもの味方になってほしい」

原告の男性は、元妻とは共働きで育児も積極的に行なっていたという。しかし、元妻と単独親権を裁判で争った際、子ども2人を連れて行った元妻に親権が与えられた。男性がその裁判を通じて感じたことは、子どもを現在監護している親が親権を取るケースが多いことだったという。その理由として、裁判所による調査には限界があることを指摘した。

また、男性は面会交流のあり方にも疑問を投げかけた。男性は月に2回、週末の場合は8時間、長期の休みには宿泊もするという条件で子どもたちと面会交流を続けている。「これが現在の裁判所で認めてくれる最大限だそうです。しかし、育児をしてきた自分にとって、頻度が少ないと感じています。また、面会交流は強制力がなく、親権がない自分にとって、確実に子どもと会えるという保障がない」という。

男性の子どもは、裁判所の調査官に対して『毎週、パパに会いたい』と訴えたといい、男性は「子どもが親に会いたいというのは、お腹がすいたとか、眠いとか、そういう基本的な欲求であり、かなえてあげるのが大人の役割ではないでしょうか」と訴えた。

「裁判所は、子どもの味方になってほしいと思います。単独親権は親同士の争いが生じやすい制度だと感じています。子どもが犠牲者になる可能性があります。そういうことを考えて判決を出してほしいです」

父親求める共同親権…国、法改正の検討始める

出典:平成31年3月19日 読売新聞

父親求める共同親権…国、法改正の検討始める

 離婚訴訟で父親側が、離婚後も子供の親権を父母双方に残す「共同親権」を求めるケースが相次いでいる。男性の育児参加が進んだことなどを背景に親権争いが増えているのが理由とみられるが、現行の民法は片方を親権者とする単独親権制度のため、裁判で認められた例はない。一方、欧米では共同親権が主流で、国は導入に向けて法改正の検討を始めている。
◆「成長に責任」
 「親として子供の成長に責任を持ちたい」
 神戸市に住む整備士の男性(34)は、別居中の妻のもとにいる長男(11)、長女(9)のきょうだいに2年以上会えていない。
 男性は2007年に結婚し、間もなく子供に恵まれたが、育児方針などで口論するようになり、夫婦関係が悪化。14年10月、妻は1人で自宅を飛び出し、8日後には男性に知らせないまま、小学校と保育園からきょうだいを連れ出した。
 妻は15年1月、離婚を求める調停を神戸家裁に申し立て、話し合いがまとまらず訴訟に発展。昨年8月の2審・大阪高裁判決は1審判決に続き、母子での生活が安定しているとして妻を親権者とする離婚を認めた。男性側は、離婚後に親権が片方にしか認められないのは憲法が保障する法の下の平等に反するとして、最高裁に上告している。
 男性が最後にきょうだいと会ったのは16年秋。その際、長女が描いた家族4人がほほ笑む絵をもらった。今も大切にしているという。
 同種訴訟は他にも複数あり、東京都の男性も共同親権を主張。しかし、最高裁は今年2月、憲法判断を示さないまま、男性側の上告を退けている。
◆「母親へ」多く
 厚生労働省の人口動態統計では、17年に離婚したのは約21万組。1990年代後半から3組に1組が離婚する流れが定着する中、親権争いが激化している。
 司法統計によると、どちらが子供を育てるかを争う「監護者の指定」の調停・審判申し立ては2007年の約1700件から増加を続け、17年は約4600件に上った。別居中や離婚後に、片方の親が子供との面会交流を求める申し立ても17年は約1万5000件に上り、10年前から倍増した。
 男性の育児休業取得率が1996年度の0・12%から2017年度は5・14%に上昇するなど育児を巡る環境も近年変化しつつある。
 家事事件に詳しい谷英樹弁護士(大阪弁護士会)によると、育児参加した男性は離婚後も親権を持って子育てに関与したいと考える傾向にあるが、裁判所が親権者と認めるのは、母親が圧倒的に多い。谷弁護士は「共働き世帯でも母親の方が子育てへの関わりが強く、親権者を母とする方が成育環境に適していると判断しやすい」と分析する。
◆両親の視点
 海外では欧米諸国に加え、中国、韓国なども共同親権を認めている。離婚後、親権を共同にするか単独にするか選べる国もある。ドイツでは、裁判所が共同親権を認めないのは違憲と判断し、1997年に法律化された。
 上川法相(当時)は昨年7月、共同親権を求める親らの意見を踏まえ、単独親権制度の見直しに言及。選択制とする方向性も示唆しており、法制審議会(法相の諮問機関)で議論される模様だ。
 共同親権は父母それぞれの視点を子供の発育に生かせる長所がある。一方で、育児方針などで父母が対立すると意思決定がしにくかったり、子供が両親の間を行き来して生活が不安定になったりとデメリットもある。また、父母のどちらかがDVや虐待の加害者の場合、もう片方の親による単独親権が望ましい。
親権 身の回りの世話や教育、財産管理、しつけなど、未成年の子供に対して親が持つ権利や義務。民法は「子の利益のためのもの」と定義する。離婚後の親権者の割合は戦後、男性が高かったが、1970年に逆転。2000年代から女性が約8割で推移し、17年は84%だった。

探偵が辿り着いた「児童虐待の方程式」

出典:平成31年3月16日 プレジデントオンライン

探偵が辿り着いた「児童虐待の方程式」

■なぜ児童相談所は動けないのか

 2018年3月、東京都目黒区で船戸結愛ちゃん(5歳)の虐待死事件が起きた。「もうおねがい ゆるして ゆるしてください」。結愛ちゃんが書いた反省文を読むたびに、何かしてあげられなかったのかとやるせない気持ちになる。

 私の探偵社では、児童虐待が確認された場合は、無償枠で対応をしている。依頼者の多くは、離婚で親権を失った実父や、実父側の祖父母だ。実父が会ったときに子供の体の不自然な痣に気づく、それを子や同居する母親に問い質した途端、子供と会えなくなるというパターンが多い。親権を持たない親が子と会う権利は、親権を持つ親に簡単に切られてしまう。転居すれば、居場所もわからなくなる。

 そこで我々が依頼を受けて調査するのだが、虐待の事実をつかんでも、そこから先が難しい。証拠を揃えて児童相談所(以下「児相」)に通報しても、動いてくれることは稀だからだ。

 児相はなぜ動けないのか。最大の原因は、親権の強さだ。児相の職員が通報を受けて現場に駆けつけても、親権を持つ親から逆に、「転んで怪我しただけだ」「どこに証拠がある」と責め立てられる。

 もちろん児相には、立ち入り調査したり、子供を一時保護したりする権限がある。しかし、親権者から「子を親から引き離すのか」と抵抗されると、手を出しにくい。

■日本独自の“制度”が、虐待をつくっている

 こうした状況を変えるには、児相の職員を増員する対策も必要だろう。しかし、高度なスキルが必要な職務であり、即効性は期待できない。

 個人的には、ほかにも打つべき手はあると思う。特に、離婚後に片方の親だけが親権を持つという、日本独特の仕組みについて、疑問に感じている。虐待親が単独親権という独裁的な権利を持つと、第三者が子供を救うことが難しくなるからだ。

 そのうえ、単独親権を持つ親が再婚・養子縁組をすると、血のつながらない親へ簡単に“空き”になっていた2つ目の親権が与えられる。その新たな親が虐待に加担するのは、現場を見る私からすればまさに「児童虐待の方程式」だ。

 夫婦間はこじれてダメになったとしても、実の子供は子供。子供が血のつながった両方の親と関係を続ければ、片方の親が他方の親の虐待を防げるかもしれない。しかし日本では、離婚で別居する親と子の縁を切り、法的な権利も切ってしまう。海外の探偵と情報交換する際など、そんな日本の現状を説明すると、「なぜそんな仕組みなんだ」と聞かれる。でも私は答えられないし、なぜだかわからない。

 諸外国のように、離婚後も、血のつながった2人の親が共同親権を持てば、虐待のリスクは減るだろう。私たち探偵も、共同親権者からの依頼というお墨付きがあれば、虐待阻止のために動きやすくなる。これ以上悲劇を繰り返さないために、離婚後の親権制度の早急な改革を望みたい。
ジャーナリスト 村上 敬 答えていただいた人=T.I.U.総合探偵社代表 阿部泰尚

「共同親権」最高裁は憲法判断せず 作花弁護士「残念だが、将来への大きな一歩」

出典:平成31年3月1日 弁護士ドットコム

「共同親権」最高裁は憲法判断せず 作花弁護士「残念だが、将来への大きな一歩」

離婚後は、子どもの親権を父親か母親のどちらかが持つ「単独親権」となることは、法の下の平等を定めた憲法14条に違反するなどとして、40代男性が子どもの共同親権を求めている訴訟の上告審で、最高裁第3小法廷(岡部喜代子裁判長)は2月28日、男性の上告を棄却する決定を出した。

男性の代理人である作花知志弁護士によると、最高裁は「上告理由に当たらない」として、憲法判断は示さなかったという。作花弁護士は「結果としてはとても残念なものでしたが、でも私個人としては、今回の訴訟は小さな一歩であったと同時に、将来の大きな一歩へとつながるものであったと感じています」と語った。

●作花弁護士「現在の単独親権制度が完全なものだとは思えない」

日本では、子どものいる夫婦が離婚した場合、父親か母親のうちどちらかが親権を持つ「単独親権」となることが、民法819条によって定められている。この裁判で、男性は2人の子どもの親権を求めて提訴するも、一審の東京家裁、二審の東京高裁で敗訴。二審からは、離婚後の共同親権を求めて争い、単独親権のあり方を違憲だとして、昨年10月、最高裁に上告していた。

最高裁の決定を受けて、作花弁護士は「結果は残念」として、「ちょうど訴訟が行われている際、全国各地で悲惨な児童虐待事件が続きました。今この瞬間でも、全国で泣いている子供たちがいることを考えると、現在の離婚後単独親権制度が完全なものだとは、私にはやはり思えないのです」とあらためてコメントした。

一方で、今回の訴訟で共同親権について社会的な議論が広がったという実感もあったといい、次のように語っている。

「1日も早く、子どもたちが両親と同じように触れ合いながら成長できることが確保される法制度が実現されてほしいと願っています。そしてそれはきっと、児童虐待事件などで辛い思いをされている子供たちを1人でも救えるような法制度となることを信じています。この度の訴訟には、多くの方々から大きな応援をいただきました。ありがとうございました」
弁護士ドットコムニュース編集部

「単独親権」憲法判断示さず  最高裁、夫側の上告棄却決定

出典:平成31年2月28日 毎日新聞

「単独親権」憲法判断示さず  最高裁、夫側の上告棄却決定

 離婚後に父母の一方しか子の親権者になれない民法の「単独親権制度」について、妻と子の親権を争う夫が「一方の親から子の親権を奪うのは法の下の平等を定めた憲法14条に違反する」と訴えた訴訟の上告審で、最高裁第3小法廷(岡部喜代子裁判長)は26日付で夫側の上告を棄却する決定を出した。決定は「上告理由に当たらない」とし、憲法判断は示さなかった。裁判官5人全員一致の意見。

 2審・東京高裁判決(2018年9月)などによると、夫は妻と2人の子と別居し、離婚訴訟で子の親権を争ったが、1、2審とも敗訴し上告していた。夫側は控訴審から、民法の単独親権制度は違憲で無効だとして「父母双方を共同親権者とすべきである」とも主張したが、高裁は「単純に共同親権ではないという理由で違憲とは言えない」と退けていた。

 小法廷は決定で「(夫の)上告理由は違憲を言うが、実質は事実誤認や法令違反を主張するもので、上告理由に該当しない」と結論付けた。【伊藤直孝】

親権を巡る子の連れ去り

出典:平成31年2月26日 Viewpoint

親権を巡る子の連れ去り

 今月19日、離婚した夫婦間の子供を親権者に引き渡す際のルールを明記した、民事執行法の改正案が閣議決定された。
 夫婦が離婚した場合、欧米では共同親権が一般的だが、日本は片方の親が親権を有する単独親権を取っている。基本的に夫婦間の話し合いで親権を決めるわけだが、親権を失った同居親が子供だけは渡したくないと、司法判断に従わないケースが少なくない。
 ハーグ条約では国境を越えた子の連れ去りは、子の利益に反する等の理由で、原則子を元の居住国に返還することを義務付けている。ハーグ条約締結以前には、海外で居住していた母親が日本に子供を連れ去るケースが頻発し、日本に批判の目が向けられてきた。
 もちろん虐待やDV(ドメスティックバイオレンス)等の恐れから、一時関係を断つというのは分かる。ただ親権をめぐって、妻が子供を連れて、家出したまま、一度も、わが子に会えない。あるいは父と子の関係が一方的に断絶されるといった、子供の意に反した親子引き離しも頻繁に起こっている。
 これは極端な事例だが、2013年に離婚調停中の父親が息子を巻き添えに小学校の校庭で焼身自殺を図った事件があった。17年に面会交流中の父親が自宅マンションで娘と無理心中を図るという痛ましい事件も起きている。こうした親権をめぐるトラブルに子供が巻き込まれるのは、子供に二重の精神的痛手を与える最悪の行為である。
 改正案では、同居親が不在でも親権親が立ち会えば引き渡しができるようになる。また養育費などの支払いに応じない親に対する財産開示制度も強化される。
 離婚したとしても、子供にとって親であることに変わりはない。子供の意思に反して、片方の親が、わが子を連れ去る、あるいは親との面会交流ができないといった状況は改善されなければならない。(光)

子どもの気持ち理解」 首相、共同親権めぐり

出典:平成31年2月25日 日本経済新聞

「子どもの気持ち理解」 首相、共同親権めぐり

安倍晋三首相は25日の衆院予算委員会で、現在の民法は認めていない離婚後に父母の双方に親権が残る「共同親権」について「もっともだという気もする。子どもはお父さんにもお母さんにも会いたい気持ちだろうと理解できる」と語った。「民法を所管する法務省で引き続き検討させたい」と述べた。日本維新の会の串田誠一氏への答弁。
共同親権を巡っては法務省が選択制による導入の可能性を検討している。現在の民法は父母のいずれか一方が離婚後の親権を持つ「単独親権」を規定している。
別居親と子どもの面会交流を積極的に実現して子どもの養育環境を整えるため、共同親権を選べるようにすべきだとの意見が出ている。

父母双方に親権 選択制を検討 法務省 離婚後、別居親も面会交流 子の養育環境整備

出典:平成31年2月17日 日本経済新聞

父母双方に親権 選択制を検討 法務省 離婚後、別居親も面会交流 子の養育環境整備

法務省は離婚後に父母の双方に親権が残る「共同親権」制度の導入の本格的な検討に入った。現在の民法は父母のいずれか一方が離婚後の親権を持つ「単独親権」を規定しているが、共同親権も選べるようにし、両方の親が子育てに関わりやすくするのが狙い。欧米の多くで採用している選択制による共同親権の導入を検討する方向だ。

欧米諸国が採用
日本は先進国でも例外的に単独親権を採用している。現行制度では親権を持たない親は戸籍上の他人となり、子どもとの面会交流が大きく制限される。ただ、近年の離婚の増加による親権争いで、子どもを相手親に知らせず連れ去ったり、相手親による虚偽のドメスティックバイオレンス(DV)を弁護士や行政機関に訴えるなどの事例が社会問題化している。
こうした問題を踏まえ、法務省は別居親と子どもとの面会交流を積極的に実現し、親子間の完全な断絶を防ぐことで子どもの養育環境を整えるため、共同親権の本格導入の検討に入った。
共同親権の考え方は、「子の利益」を重視する点にある。日本では養育費や面会交流の方法などを合意せずに離婚することができるため、「子どもの福祉に反する」との意見がある。離婚後も父母の双方が子どもの監護・教育の責任を追うべきだとの考えで、欧米などの国々ではこうした価値観に基づき、父母の双方が離婚後も共同で親権を持つのが主流だ。
日本では親権は「親の子どもに対する権利」と考えられがちだが、欧米では「子どもを監護・養育する義務」と捉えており、両親が親権を持つのは当然との考え方が支配的だ。離婚後も、一方の親が面会交流や養育費の支払いを拒むと違法行為に問われる。

裁判所どう関与
ただ父母の関係が良好でない場合、親権の行使をめぐって双方が激しく対立し、子どもの利益を害することもある。配偶者からの暴力から逃げるため「一刻も早く離婚したい」という深刻なケースもあり、両親の間を行き来することで、子供が逆に精神的に不安定になるなどの症例も報告されている。
このため、共同親権を導入した場合でも、養育環境を慎重に考慮し、ケースによっては単独親権を選択することもできるよう検討する。欧米では親権選択にあたり、裁判所などを介して子どもの養育環境を熟慮して決定する場合が多いという。
法務省によると、日本では協議離婚が中心で、親権の決定に裁判所が介入していないケースが大半だ。選択的な共同親権を導入するには、親権の決定に裁判所が深く関与する手続きをどう構築するかが課題となる。

国連 日本の虐待状況に懸念 政府に対応強化を勧告

出典:平成31年2月8日 テレビ朝日

国連 日本の虐待状況に懸念 政府に対応強化を勧告

 国連の子どもの権利委員会は日本で子どもへの虐待が頻発している状況に懸念を示し、日本政府に対応を強化するよう勧告しました。

 勧告では虐待への対応について、加害者に対する厳しい刑罰や子どもが虐待被害を訴えやすいシステムが必要だと指摘しました。子どもの権利委員会の委員の一人は記者会見で、千葉県野田市で10歳の女の子が死亡した事件について「残念な事件だった。子どもから助けを求める声が出ているなら誰か大人が反応するべきだ」と述べました。また、勧告は学校や家庭での体罰が十分に防ぎきれていないと指摘し、特にしつけにおいて暴力が一定程度、許容されていることを問題視しています。子どもの権利委員会で日本の状況が審査されたのは2010年以来で、勧告に法的な拘束力はありません。

国連が「日本は虐待後進国」 政府は緊急安全確認

出典:平成31年2月8日 FNN

国連が「日本は虐待後進国」 政府は緊急安全確認

相次ぐ子どもへの虐待事件。
国連は、日本政府に法改正を含む対策強化を勧告した。

「お父さんに暴力を受けています」

千葉・野田市で、小学4年生の栗原心愛(みあ)さんがSOSを発していたにもかかわらず、両親から虐待を受けたあとに死亡した事件。

これを受け、8日に開かれた児童虐待に関する関係閣僚会議では。

安倍首相
「子どもの命を守ることを最優先に、あらゆる手段を尽くし、やれることはすべてやるという強い決意で...」

安倍首相が、虐待事案に関する緊急の安全確認、また、通告した側や資料などの情報保護を徹底するよう、関係省庁に指示した。

大人に向けられた精いっぱいのSOSは、2018年も。

「ママ もうパパとママにいわれなくてもしっかりとじぶんから きょうよりか もっとあしたは できるようにするから もうおねがいゆるして ゆるしてください おねがいします」

2018年3月、東京・目黒区のアパートで虐待を受け、死亡した5歳の船戸結愛(ゆあ)ちゃんが残していたメモ。

この時も政府は、全国に配置されている児童福祉司を、2018年度からおよそ1,000人増員して体制を強化するなどの対策を決めていた。

しかし。

沖縄大学・山野良一教授
「日本は、実を言うと、虐待に対する対策というのは、世界各国から見ると非常に遅れてきた国なんです」

日本における児童虐待の通告数は、14年連続で増加。

2018年の1年間に児童相談所に通告があった子どもの数は8万人を超え、過去最多を更新した。

国連の子どもの権利委員会は7日、日本で子どもの虐待などの暴力が高い頻度で報告されていることに、懸念を表明。

日本政府に、法改正を含む対策強化を勧告した。

山野教授
「世界で50カ国以上が、何らかの形で体罰を禁止するような法律を制定。そういう意味では(体罰の禁止は)世界的な流れだと思う。日本でも考えていかないといけない時代に来ている気がする」

虐待の連鎖を断ち切り、同じ悲劇を繰り返さないために、さらなる取り組みが求められている。

子どもに会いたい…離婚や別居で親が求める面会調停、過去最多 背景に高まる父親の育児意識

出典:平成31年2月3日 沖縄タイムス

子どもに会いたい…離婚や別居で親が求める面会調停、過去最多 背景に高まる父親の育児意識

 離婚や別居などで子どもと離れて暮らす親が、子どもと定期的に会うことを求めて家庭裁判所に申し立てる面会交流の調停件数が県内で増えている。那覇家裁によると、2008年に78件だったのが、10年後の17年は約3・2倍の258件となり、過去最多となった。同家裁の担当者は、父親の育児意識の高まりなどから今後も増える可能性を指摘。「県内には面会交流を支援する第三者機関がなく、調停後の面会がスムーズにいかない場合も見受けられる」と課題を述べた。(社会部・下里潤)
 面会交流は、子どもと離れて暮らす親が、子どもと直接会う「直接的交流」のほか、電話や手紙などによる「間接的交流」もある。面会時間など具体的な内容や方法を父母が話し合って決めるが、まとまらない場合などに家庭裁判所が間に入り、調停で解決を目指す。
 調停が不調になれば審判手続きが開始され、裁判所が判断することになる。
 那覇家裁によると、県内の面会交流の調停は15~20年前はほとんどなかったが、男性の育児意識の高まりや調停制度の認知度向上などで申し立て件数が増加。全国的にも同様の傾向にあり、当事者間の対立も先鋭化しているという。
 同家裁の萱間(かやま)友道次席調査官は「どのような親でも子にとっては唯一無二の存在。健やかな成長のためにも面会交流は欠かせない」と意義を強調する。
 ただ、県内には父母間の連絡調整や子の受け渡しなどを担うNPOなどの第三者機関がないのが現状だ。
 萱間さんは「調停後、親同士が顔を合わせなかったり、決まり事を守らなかったりして、問題が振り出しに戻るケースがある。第三者の橋渡しさえあれば、円滑に進む可能性も高い」と強調。「子の視点に立ち、面会交流が当たり前になる社会が望ましい。地域で相互に支援していく体制が大切だ」と話した。

「我が子に会えない親」切望の「共同親権」

出典:平成30年12月27日 週刊新潮

「我が子に会えない親」切望の「共同親権」
 入管法の改正で大揺れとなったこの臨時国会。矢面に立ったのは所管官庁の法務省であるが、この冬、家族制度に興味のある向きは、これとは別の観点で、同省の”動き”に気を揉んでいる。
※以下、掲載誌面こちら参照。

<クリスマスの悲劇>隠れた課題、断絶された親子たちについて考える。

出典:平成30年12月25日 Yahooニュース

<クリスマスの悲劇>隠れた課題、断絶された親子たちについて考える。
明智カイト 『NPO法人 市民アドボカシー連盟』代表理事

クリスマスにも悲劇が起きました。今日、12月25日に母親とその交際相手などに虐待を受け続けていた可能性がある4歳の男の子が、その短い生涯を終えました。
https://this.kiji.is/317959034954876001?c=113147194022725109
被害にあった男児には心からご冥福をお祈り申し上げます。二度とこのような悲劇が起こらない取り組みが必要です。
ちょうど、このニュースが流れている頃に私は我が子を連れ去られ断絶されている父親と話をしていました。その父親は自分の息子と同じ歳の男の子が虐待で死亡したニュースを自宅で見たそうです。
日本にはクリスマスが苦手な親たちがいます。幸せそうな家庭の風景を直視できずに引き篭もったり、子どもの声を聞くと自然と涙がこぼれたりするそうです。それは誰かというと突然、我が子を連れ去られて断絶されている親たちのことです。
昔より日本では「追い出し離婚」、今は「連れ去り離婚」が有利に扱われ、子どもが片親を奪われる慣習が長く定着しているのです。
一時代前の「追い出し離婚」は家父長制の名残りであり、母親と子どもは泣く泣く引き離されました。現在の「連れ去り離婚」ではDV避難者を装って連れ去り、そこで片親と断絶すればDVや虐待の事実など無くても親子を引き離せるという司法行政の運用が発生しています。
その為、東京近郊の当事者団体だけでも毎月10件位の新規被害者が発生しているペースだといいます。DVや虐待と無縁の親たちまで加害者かのような扱いを受けて、愛する我が子と生き別れを強要されています。DV支援措置には何の証拠も要らず申請すればよいという問題点があるようです。
そして前述したように、我が子と似た年齢の子どもや幸せな家庭のクリスマスを直視できずに泣き暮らすような事態になっています。
引き離された親たちはDVや虐待が無くても、第三者機関の監視付きでなければ我が子と再会させてもらえないといいます。また今年には面会交流中に父親が子どもと無理心中をした事件があったことから、親子が自由に会うことは一層と困難になってしまったようです。
しかし、面会交流だけを危険視することは、DVや虐待とは無関係の片親に対する差別でしかありません。
昨年末には子どもを連れ去られた母親がセルフネグレクトによって自宅で変死していました。彼女の胸には子どもの写真が抱かれていたといいます。
昨日12月24日には、イタリアのメジャー報道誌ラ・スタンパにおいて日本で起きている子の連れ去り断絶問題が信じ難い野蛮な慣習であると報道されていました。国外ではこのように報道されていますが、国内ではあまりこのような悲劇が起きていることは報道されていません。
http://www.lastampa.it/2017/12/24/cultura/opinioni/larispostadelcuore/la-battaglia-di-pap-in-giappone-cancellati-i-nostri-diritti-sui-figli-wU0rcqTwRHIo7sUy7ymD8N/pagina.html
私はLGBTなど性的マイノリティの人権問題に関わってきた経緯から、さまざまな差別や偏見などを解決したいと考えています。子どもを連れていったほうの親が子どもを育てる資格があるとか、連れていかれたほうの親が悪者といった考え方を変えていく必要があると思います。
引き離された親たちも生き別れを強要される時代を終わらせようと頑張っているようです。来年のクリスマスには、そのような親たちが引き離された我が子と再び笑顔でクリスマスを過ごせるようになることを願っています。

目黒女児虐待死の衝撃 「連れ子」に対する虐待はなぜ起こるのか、専門家が実例で解説

出典:平成30年12月15日 ニュースパス

目黒女児虐待死の衝撃 「連れ子」に対する虐待はなぜ起こるのか、専門家が実例で解説

 元千葉県警上席少年補導専門員として青少年の非行問題に数多く携わってきた、少年問題アナリストの上條理恵さんが、犯罪に巻き込まれた子どもたちの事情や悩みなど、その実態を解説します。今回のテーマは「連れ子の虐待」です。
盾になれない母親、我慢する子ども
 東京都目黒区のアパートで今年3月、船戸結愛ちゃん(当時5歳)が、父親の船戸雄大被告の暴行により死亡しました。この事件では、結愛ちゃんが「パパ、ママ、もうおねがい ゆるして ゆるしてください」といった手書きの文章を残していたことがたびたび報道されたので、強く記憶に残っている方も多いのではないでしょうか。
 結愛ちゃんは母親の連れ子で、船戸雄大被告は継父でした。悲しいことですが、再婚家庭における「連れ子の虐待」は、統計的に多いというわけではありませんが、私も何度か扱ったことがありました。
 母親はどうしても「子どもがいる私と結婚してくれた」という負い目があることが多く、「また結婚に失敗したくない」「夫に嫌われたくない」という理由から、子どもの盾になれないことが多いのです。同時に、子どもは「母親を悲しませたくない」「母親が好きになった相手を悪く言ってはいけない」と我慢してしまうことが多いように感じます。
 捜査関係者によると、結愛ちゃんの部屋からは、「はをみがく/かおをあらう/べんきょうする」など、10項目以上の「決まり事」を書いた段ボール紙が見つかったようです。雄大被告は5歳の結愛ちゃんに、朝4時前に目覚ましをかけて、平仮名や算数などの勉強をするよう強制していたといいます。
 5歳児にその環境を強制させていることだけでも悲しすぎますが、雄大被告は結愛ちゃんにこうした厳しいしつけをする一方で、自分は無職の上、自宅で大麻を吸っていたのですから、あきれたものです。
 しかし、実は、雄大被告に限らず、継父は子どもへのしつけが厳しくなってしまう傾向があるように感じます。
 多くの場合、当初から子どもを憎らしく思っているわけではなく、「好きで一緒になった相手の子どもの父親としてしっかりしなければ」「一家と主としての威厳を見せなければ」「子どもになめられたらダメだ」という、「母親とは逆の気負い」がエスカレートしてしまうのかもしれません。
 虐待をした親からよく聞く、「しつけのつもりだ。何が悪い」という言葉も、子どもにとっては迷惑な話です。
「止めたくても止められなかった」
 マキ(13歳・仮名)も、母親の再婚相手から厳しい「しつけ」という名の虐待を受けていました。
 部活から帰宅し、疲れて居眠りしてしまうと、「勉強をサボるな!」とたたき起こされ、殴られていたといいます。
 勉強ではなく、友達とメールをしたり、漫画を読んだりしているところを見つかると、「言いつけを守らなかった」と、いつも以上に殴られたり蹴られたりしたそうです。
 顔を殴られ、傷だらけで登校してきたマキの姿を見た校長先生によって通報され、マキは児童相談所に保護されました。継父は「父親として認められたかった」「自分は家族のために頑張っているのに言うことを聞いてもらえず腹が立った」と話していました。
「同じ家の中にいる母親は何をしているのか」「なぜ自分の娘を守ってあげないのだ」と思う人も多いことでしょう。
 たいていの母親は、「止めたくても止められなかった」と泣いてしまいます。
 母親の負い目と継父の気負いに加え、「もう結婚に失敗したくない」という思いなども重なり合ってしまうと、夫に強く出ることができなくなってしまうのです。
 再婚後、血のつながっている母親の方が、積極的に虐待を行ってしまうケースもあります。
 タイガ(6歳・仮名)は、4歳の妹と一緒に深夜のコンビニで万引きをしようとしているところを保護されました。
 おなかを空かせ、薄汚れた洋服を着ていることなどからネグレクト(育児放棄)を受けていることは明らかでした。
 警察の取り調べに対し、母親が語った虐待の理由は、「子どもの顔が前の夫に似てきたから」。
 正直、私も同僚も「やっぱり」と感じました。
 再婚家庭で、実の母親が主導となって虐待を行っている場合、「新しい男性との生活で、元夫に似た子どもの存在が疎ましくなる」というパターンは珍しくないのです。
 タイガの母親は元夫にDVを受けていました。離婚後、新しい男性に出会い、幸せな家庭を築こうとしているところに、憎き元夫の面影を感じる子どもがご飯をこぼしたり、いたずらをしたりして、自分の手をわずらわせる…。そうすると、イライラして「子どもさえいなければ」という思いが募り、久しぶりに与えるご飯にせっけんの粉を振りかけて食べさせようとしたこともあったそうです。
 そんな母親のことも、タイガはかばい続けていました。
 私たちが「お母さんは?」「ご飯食べた?」などと問いかけても、「うん」と首を縦に振って、精いっぱいのうそをつこうとするのです。
 虐待されている子どもは、虐待されていることを自ら話そうとはしません。年齢のわりに妙に大人びたところがあり、警察や児童相談所の職員に、ピタッとくっついてきたり、話をとりなそうとしたり、ごまかそうとしたりします。
 幼いなりに、母親や新しい家庭を必死で守ろうとしているのです。その姿はけなげではありますが、とても哀れで痛ましく、涙が出てしまいます。
虐待を疑ったら、まず児相に通報を
 虐待の中でも、タイガが受けたようなネグレクトだけでなく、おなかを空かせた子どもが街を徘かいすることによって早期に発見し、保護できるケースもあります。
 しかし、ほとんどの虐待の場合、家庭という密室の中で起こっているため、発見が困難なのです。また、余計なことに関わりたくない、といった風潮があることも否めません。結愛ちゃんのように、取り返しのつかない事態に陥って、ようやく明るみに出るケースも後を絶ちません。
 虐待から子どもを救うために欠かせないのが、周囲の人の通報です。「近所の子どもが虐待されているかも?」と思ったら、迷わず「189」に通報してください。児童相談所につながり、専門家が対応します。また、緊急の場合は警察に通報してください。
 実は、最初に紹介したマキのケースでは、マキ本人が担任の先生に何度か相談しており、先生は「何かあったらいつでも連絡して」と自分の携帯番号を教えていました。
 しかし、実際にマキが父親から執拗(しつよう)な暴力を受け、何とか父親の目を盗んで携帯に電話をしたとき、電話はつながりませんでした。電源が切れていたのです。
 あのとき、先生が「電話が通じなかったら110番通報するんだぞ」とご指導くださっていたら、あんなに暴力は振るわれずに済んだのではないかと思うのです。
 今回は、再婚家庭の虐待についてでしたが、虐待は、一歩間違えばどこの家庭にも存在します。ただ、子どもは自分の口から「親にやられた」と言わないことがほとんどなので、第三者の介入がとても重要なのです。結愛ちゃんのケースのように、関係機関がその状況を認識していたのにうまく連携できなかった結果、死亡事例が発生してしまうケースもあります。
 平成16年に児童虐待防止法が改正され、地方公共団体の責務、児童虐待に係る通告義務、被虐待児童に対する支援などが整備され、関係機関の会議において、要保護児童の共通理解や対応についての話し合いが定期的に行われるようになりました。にもかかわらず、今回の事件が起きてしまったことは、子どもに携わる私としても残念でなりません。
文/構成・オトナンサー編集部

離婚後、離れて暮らす「もう1人の親に会いたい」 子ども自身にできることは

出典:平成30年10月17日 弁護士ドットコム

離婚後、離れて暮らす「もう1人の親に会いたい」 子ども自身にできることは

「親に会いたいんですが、どうしたらいいですか?」。離婚家庭の子どもたちから、支援団体にこんな相談が多数寄せられている。自分の親なら好きに会えばいいじゃないか、と思われるかもしれないが、そうはいかない事情があるようだ。
同居する親の希望で「会わせてもらえない」ケースもあれば、離れて暮らす親が「会いたくない」と考えているケースもある。「親に会いたくない」と思っている子どももいる。いずれの場合も、できる限り子どもの意志が尊重されるべきだ。私たち大人は、子どもが親に会いたいのに会えないような状況も、会いたくないのに無理に会わされるような状況も、どちらもない社会にしていく必要がある。
今回は、離れて暮らす親に会うことを望みながら、会えずにいる子どもたちの背景、そしてその解決策を探った。(ライター/大塚玲子)

●子どもから「離れて暮らす親に会いたい」
「『親に会いたい』という相談が、最近特に増えていますね。今年の夏は、ひと月に70、80件のメール相談が寄せられましたが、このうち約4割が『親に会いたい』というものでした。小学校高学年から高校生くらいの女の子がとても多いです」
NPO法人「ウィーズ」(千葉県習志野市)理事長・光本歩さん(30)の話だ。自身も親が離婚して父子家庭に育った光本さんは、2年半前に理事の羽賀晃さんとともにウィーズを立ち上げ、子どもたちの面会交流や学習支援などを行ってきた。
これまでも離婚した親からの相談を多数受けてきたが、最近は「子ども本人」からの相談も増えており、なかでも「離れて暮らす親に会いたい」という内容が目立つという。
寄せられた相談をいくつか見せてもらったので、抜粋して紹介しよう。
「3歳の時に両親が離婚し、しばらくの間、母と2人で暮らしていました。小学校の低学年くらいまでは毎週土曜か日曜に父親に会っていました。しかし高学年になると、母がほかの男の人と暮らすことになり、その後弟が2人生まれました。あれから数年間、父に会っていません。どこにいるかも分からないのですが、1度でいいので会いたいです」(愛知県・高3・Aさん)
「私が2歳の時に両親が離婚しました。私は、お父さんの方にひきとられたのですが、お父さんも仕事が忙しいため、ずっとおばあちゃんとおじいちゃんと暮らしてます。おばあちゃんに聞いたら、お母さんは好きな人ができて私を置いて出ていったとのこと。子どももいるみたいで、私が会いに行くと迷惑なんじゃないかって思います。でも、私は寂しいんです。怖いんです。お母さんは、私のことを忘れてるのでしょうか」(岡山県・中1・Cさん)
「親が5年前に離婚しました。離れた父に会いたいです。父は私に中3になったら会いにおいでと言いました。しかし、住所だけでなく連絡先もわからなくなってしまいました。母には何度も聞きましたが、今は忙しいと言われたり、探しとくねと言われたりして、何もしてくれません。どうしたらいいでしょうか」(中3・Dさん)
ほかにも、様々な相談が寄せられていた。

●同居する親への遠慮
なぜ離婚家庭の子どもたちは、自分の親に会えなくなるのか。会いたいなら、いっしょに暮らす親に相談して、連絡をとれば済む話ではないか、と思う人が多いだろう。
しかし、それが難しい現実がある。離れて暮らす側の親が、子どもとの面会を望まないことがあるほか、子どもが同居する親に遠慮して、もう1人の親に会いたいと言い出せないこともよくあるのだ。光本さんは「自分も同様だった」と振り返る。
「私も13歳のときに親が離婚して、その後は父のもとで育ちました。離れて暮らすことになった母に『会いたい』という気持ちはありましたが、子どもながらに気を遣って、父には言い出せなかった。子どもたちは、自分が『会いたい』と思っている(別居)親のことを、いっしょに暮らす親が嫌っていることを察しているので、『会いたい』とは言えないことが多いんです」

●離れて暮らす親の住所地を探す方法
では、どうしたら会うことができるのか? 別居親に会ってみたいが、居所や連絡先がわからず、且つ同居する親にも聞けない子どもは、どうしようもないのか。
そこで今回、戸籍を遡って別居親の居場所を探す方法を取材してきた。協力・アドバイスをしてくれたのは、千葉県市川市・市民部(市民課)の皆さんだ。
ただし先に言っておくと、手続きはなかなかややこしい(難易度はケースによる)。お金もある程度かかるし(戸籍を取る手数料や、役所に行く交通費など、金額はケースによる)、もし別居親が住所を正しく届け出ていなければ、実際には会えない可能性もある。
また、離れて暮らす親に連絡を取ってよかった、というケースばかりではないことも念のため添えておく。別居親が知らないうちに再婚しているなど、思いがけない事実を知る可能性もあり、ショックを受ける子どももいる。
だから、誰にでもおすすめするわけではないが、もしそれでも「やってみたい」と思う方は、以下を参考にしてほしい。

●STEP 1・自分の戸籍謄本を取り、別居親の離婚時の本籍地を知る
「戸籍謄本(全部事項証明書)」というのは、戸籍に入っている全員の情報を記載したものだ。戸籍謄本を取るためには、申請書に自分の本籍地を書かなければいけない。もし本籍地がわからない場合は、同居親に聞くか、または先に本籍地入りの住民票を取ろう。住民票を取ると、現在の本籍地を知ることができる。なお標準的な申請手数料は、戸籍謄本が450円、住民票が300円前後だ(窓口・郵送の場合)。
なお戸籍謄本を取る際は、「本人確認書類」が必要となる。もしあればパスポート、免許証、マイナンバーカード(※通知カードと間違えないこと)等の公的身分証明書か、ない場合は健康保険証と学生証(写真付き)などを持参しよう(詳細は自治体のホームページで確認)。
戸籍謄本が取れたら、どこかに親が離婚した時点の本籍地が記載されているはずなので、それを見つけよう。どの欄に記載があるかは、それぞれケースによって異なるが、必ずどこかには記載されているはずだ。

●STEP 2・離婚時の本籍地で、別居親の戸籍謄本を申請する
親が離婚したときの本籍地がわかったら、その住所地を管轄する自治体の窓口に直接行って、別居親の戸籍謄本を申請する(遠くて直接行けない場合については、最後に説明する)。もし別居親が現在も本籍地を変えていなければ、ここで戸籍謄本が取れる。(→STEP3へ)
しかし、もし別居親が本籍地を変更していた場合、戸籍謄本は存在しないので、代わりに「除籍謄本」というものを取ることになる。除籍謄本を取るのには、戸籍謄本より300円前後手数料が多くかかるので注意しよう。
除籍謄本には、本籍地がその後どこに移ったか記載されているので、今度はその移転先を管轄する自治体の窓口に行き、戸籍謄本を申請する。ここで戸籍謄本が取れれば、STEP 3に進めるが、もしここで再び除籍謄本が出た場合は、また移転先の窓口に行って、戸籍謄本を申請する。
めんどうだが、これを繰り返していけば、必ずどこかで現在の戸籍謄本を取ることができる(そういう仕組みになっている)。

●STEP 3・別居親の戸籍の「附票」を申請する
別居親の戸籍謄本をゲットできたら、今度は同じ窓口に「戸籍の附票」を申請しよう。手数料は300円程度だ。附票というのは、住所の移転履歴を記録したものだ。
附票には、別居親が現在届け出ている住所地も記載されているので、現地を訪れるか、手紙を送るかすれば、連絡を取れる可能性が高い。

●役所が遠くて直接取りに行けない場合は、郵送申請を
戸籍謄本や附票は、本籍地を管轄する役所の窓口でしか取ることができない。直接行くのが一番確実だが、遠くて行けない場合もあるのだろう。そのときは、郵送で取り寄せることもできる。詳しい方法は、該当する自治体のホームページなどで確認してほしい。おそらく、本人確認書類(STEP1参照)のコピーや、手数料分の「定額小為替」(郵便局で簡単に買える)を添えて郵送申請することになる。
ただし、STEP2でも触れたように、別居親の戸籍謄本を取る場合は、戸籍謄本か、除籍謄本になるかは、申請してみないとわからない。ここがややこしい。
だから別居親の戸籍謄本(または除籍謄本)を郵送で取り寄せる際は、先に一度自治体の窓口に電話をして、どのように申請すればいいか相談してみてほしい。除籍謄本の手数料(戸籍謄本より高い)分の定額小為替を同封のうえ請求するなど(もし余ったらその分は返送)、何か方法を教えてくれるはずだ。
戸籍をたどって別居親の居所を探す方法は、以上の通りだ。
なお、これはあくまで「子どもが自分の親を探す場合」のやり方だ。基本的に戸籍や附票を申請できるのは、配偶者や直系卑属(子どもや孫など)等であり、元配偶者は含まれない。
ただし例外もある。打越さく良弁護士は、「住民基本台帳法20条第3項に、自己の権利を行使、または自己の義務を履行するために必要があれば附票を取れるとあるので、養育費請求や面会交流調停の申立てなど正当な理由があれば、元配偶者も申請できるのでは」と話す。養育費の不払いに悩む同居親は、試してみる価値があるだろう。
この原稿では、面会交流を中心に書いた。しかし離婚後の養育をめぐっては、面会交流だけでなく、養育費の未払いという問題も指摘しなければいけない。
離婚家庭の子どもたちのなかには、養育費の受け取りや増額のために面会交流を望んでいるケースもある。親の離婚後も、子どもたちが健やかに成長するために何が必要なのか。離婚時はもちろんのこと、離婚後もずっと考えていかなければいけない課題だ。

【プロフィール】大塚玲子(おおつか・れいこ)
ライター・編集者。主なテーマは多様な家族、PTAや学校問題。著書は『オトナ婚です、わたしたち』『PTAをけっこうラクにたのしくする本』等。共著は『子どもの人権をまもるために』『ブラック校則』など。

「子供400人が94年以降、米国から日本に拉致された」共同親権でハーグ条約違反常習国の汚名返上を

出典:平成30年8月29日 Yahooニュース

「子供400人が94年以降、米国から日本に拉致された」共同親権でハーグ条約違反常習国の汚名返上を
木村正人 在英国際ジャーナリスト

米国務省が日本を名指しで非難
[ロンドン発]日経新聞が「ハーグ条約『日本は不履行』子供連れ去り対応迫る」と報じました。 背景にはドナルド・トランプ米政権からの強烈なプレッシャーがあります。ハーグ条約とは国境を越えて不法に連れ去られた子供の返還や面会交流を確保するための条約です。
今春、米共和党のクリス・スミス連邦下院議員は議会の証言で「1994年以降、国際結婚で生まれた300~400人の子供が米国から日本に連れ去られた。今なお日本にいる35人以上の子供が米国の親たちと再会できる日を今か今かと待っている」と訴えました。
5月には米国務省が「国際的な子供の拉致」年次報告書で、日本、中国、インド、ブラジル、アルゼンチン、バハマ、ドミニカ、エクアドル、ペルー、ヨルダン、モロッコ、アラブ首長国連邦(UAE)の12カ国を「ハーグ条約違反の常習国」と認定しました。先進7カ国(G7)の中では日本だけという不名誉です。
年次報告書によると、日本でハーグ条約が発効した2014年以降、連れ去り報告件数は年平均で44%ずつ減っていますが、それでも16年時点で「連れ去られた」と訴えのあった子供は計23人(うち14人が解決)にのぼり、17年では計14人(同4人)となっています。
日本でハーグ条約が発効する前の連れ去り21件について米国務省は日本政府に対し、解決するよう求めています。しかし、ハーグ条約に基づき返還命令が確定しても子供を連れ去った親が拒んだ場合、日本では有効な執行手段がないため、ハーグ条約違反が繰り返されていると報告書は指摘しています。

「連れ去り」は「拉致」と同じ
わが国では国際結婚が破綻したため母親が子供を嫁ぎ先の国から日本に連れ帰ることはそれほど珍しいことではありませんでした。しかし米国では「連れ去り」には、北朝鮮の日本人拉致と同じ「拉致(abduction)」という言葉が使われています。それだけ重大事案だということです。
ハーグ条約についてはご存知の方も多いと思いますが、簡単におさらいしておきましょう。「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約」は1980年にオランダ・ハーグで採択されたことから「ハーグ条約」と呼ばれています。加盟国は現在98カ国です。
片方の親が16歳未満の子供を無断で国外に連れ去った場合、子供をいったん元の居住国に戻して、その国の裁判で養育者(監護者)を決めるという国際的な取り決めです。
国際結婚の破綻に限らず、同じ国籍同士の結婚にも適用されます。ロシアを含めたG8では日本だけが未加盟だったため、欧米から強く加盟を迫られ、日本でも14年に発効しました。
外務省によると、条約発効後、180件の返還援助申請があり、うち158件の援助を決定。面会交流援助申請は127件で、うち援助が決定されたのは109件です。
日本から外国への返還援助申請は99件、援助が決定したのは85件。このうち解決したのは60件、子供の返還が確定したり実現したりしたのは32件でした。子供の返還がいかに困難を伴うかがうかがえます。
今年3月には、米国在住の夫が13歳の息子の返還命令を拒む妻に子供の引き渡しを求めていた裁判で、最高裁はハーグ条約に基づき確定した子供の返還命令に従わない場合、「違法な拘束にあたる」との初判断を示しました。
子供の引き渡しの強制執行については子供と債務者(多くの場合は母親)が一緒にいる場合でなければすることができないとされていますが、両親の板挟みになった子供に葛藤が生じる恐れがあることから、一定の要件下で子供と債務者が一緒でなくても強制執行を可能とする方向で議論が進められています。

「日本の家族法は『人さらい憲章だ』」
子供の連れ去りについて、日本に厳しいのは米国だけではありません。
英国の市民団体「チルドレン・アンド・ファミリーズ・アクロス・ボーダーズ(CFAB)」は、英国人男性と離婚した日本人女性が無断で子供を日本に連れ去った事案を取り扱ってきました。
責任者のアンディ・エルビン氏は10年、日本の政府と政治家にハーグ条約への加盟を説得するため日本を訪れたことがあります。日本でのハーグ条約発効時にエルビン氏にお話をうかがうと、厳しい言葉が返ってきました。
「以前は連れ去られた子供を英国に連れ戻す手段がなかった。英国人の親は日本の裁判所に提訴することもできなかった」「英国人の多くは日本の家族法を、夫婦間に葛藤が生じたとき連れ去りや面会拒否を促す悪名高き『人さらい憲章』とみなしてきた」
エルビン氏は日本でのハーグ条約発効について「とてもうれしい。両親が離婚したとしても、子供には両方の親と建設的な関係を保ちながら育つ権利がある。連れ去りや面会拒否は子供を含めた当事者全員を苦しめる」と語りました。
14年7月には、ハーグ条約は英国で母親と暮らす日本人の子供に初めて適用されました。日本人夫婦間の争いで、母親が子供を連れて渡英。日本で暮らす父親の申請に対して、英国の裁判所が子供を日本に戻すよう命じました。

米国では7億円の支払い命令、テロリスト扱いも
日本人と外国人の国際結婚は1970年には年間5000件程度でしたが、80年代後半から急増し、2005年には年間4万件を超えました。一方、日本国内での日本人と外国人夫婦の離婚は1992年に7716件(離婚全体の4.3%)でしたが、2010年には1万8968件(同7.5%)に膨らんでいます。
増加する国際結婚の破綻に伴って、日本人が外国から無断で子供を日本に連れ帰ったり、逆に外国人の親が日本から子供を国外に連れ去ったりする事例が増えました。
11年、米国のテネシー州では、離婚後に子供を無断で日本に連れ帰った日本人の元妻を相手に米国人男性が損害賠償を求めた裁判で、元妻は610万ドル(6億7800万円)という巨額の支払いを命じられました。
米連邦捜査局(FBI)の最重要指名手配犯リストでは、米国人の元夫に無断で子供を連れて日本に帰国した日本人女性の名前がテロリストと同様に扱われていました。海外で離婚した母親が子供と一緒に帰国しようとしても、連れ去り防止のため出国を許可されない事態も発生していました。

連れ去りはDV対策になり得るか
日本では「外国でのDV(家庭内暴力)被害や生活苦から避難するため、日本への連れ去りは最後の手段として必要」という反対論があります。しかしハーグ条約でも、DVが明らかであれば裁判所は子供を元の居住国に戻す必要はありません。
ハーグ条約で返還が拒否できる事例を見ておきましょう。
(1)連れ去りから1年以上経過した後に裁判所に申し立てられ、子供が新しい環境に適応している場合
(2)申請者が連れ去り時に現実に監護の権利を行使していない場合
(3)申請者が事前の同意または事後の黙認をしていた場合
(4)返還により子供が心身に害悪を受け、または他の耐え難い状態に置かれることとなる重大な危険がある場合
(5)子供が返還を拒み、かつ該当する子供が、その意見を考慮するに足る十分な年齢・成熟度に達している場合
(6)返還の要請を受けた国における人権および基本的自由の保護に関する基本原則により返還が認められない場合

日本にも共同親権を
子供には母親だけではなく父親の愛情も欠かせません。母親にとっても父親にとっても子供はかけがえのない存在です。国際結婚が破綻する理由は、性格の不一致、言葉や生活、文化、習慣の違い、家庭内暴力(DV)などさまざまです。
単独親権制度を採用している日本では、犯罪や禁治産宣告などの問題でもない限り、親権は母親に認められています。英国では離婚後も親権は両方の親にある共同親権を認めており、裁判で監護者や面会の条件などを決める仕組みになっています。
男女平等が徹底しているように見える英国でも、家庭裁判所の判断で父親の面会が制限されたり、母親が無断で子供を連れ去ったりする事例が少なくありません。
英市民団体「ファーザーズ・フォー・ジャスティス」はバットマンに扮装してバッキンガム宮殿に 登ったり、下院で首相に小麦粉を投げつけたりする過激パフォーマンスで離婚した父親の親権強化を訴えています。
日本でも上川陽子法相が単独親権制度の見直しを検討する考えを表明しました。何かの事情で離婚に至っても、子供を父親から取り上げるのは「拉致」と同じです。父親と母親の2人で子供を育てていく姿勢を示すことが大切だと思います。

<木村正人氏 在英国際ジャーナリスト>
在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。masakimu50@gmail.com

ハーグ条約「日本は不履行」 子供連れ去り対応迫る

出典:平成30年8月28日 日本経済新聞

ハーグ条約「日本は不履行」 子供連れ去り対応迫る

日本が「国際的な約束を守っていない」と批判されている。国境を越えて連れ去られた子どもの扱いを定めたハーグ条約への対応だ。人権に関わる問題で日本に瑕疵(かし)があるのだろうか。背景を調べると、日本と欧米の家族観の違いなどが浮き彫りになる。

米国務省のハーグ条約に関する2018年の報告書は初めて日本を不履行国に認定した
発端は米国務省が5月に発表したハーグ条約に関する年次報告書だ。中国、インド、ブラジル、アルゼンチンなど、アジア、中南米、中東の12カ国を名指しで「条約の不履行国」と批判した。
列挙したのはいずれも非欧米諸国だ。日本は主要7カ国(G7)で唯一、名前が挙がった。「親が裁判所の返還命令に従うのを拒んだ場合に、効果的な執行策がとられていない」と指摘された。
ハーグ条約は1983年に発効し98カ国が加盟する。一方の親が子を無断で国外に連れ去った場合に原則として元の居住国に戻す、と定める。
日本は長く未加盟だったが国際結婚が増えて状況が変わった。国際結婚した日本人女性が離婚後、海外から無断で子を連れて帰国する事態が増えたからだ。海外での離婚訴訟で親権をとられることを恐れ、日本に連れ帰るケースがある。米国などが問題視して条約加盟を迫り、日本は2014年にようやく発効した。
連れ去りがあるとハーグ条約ではまず当事国の当局(日本は外務省)間で話し合う。解決しなければ次は子が連れていかれた国の裁判所の判断だ。外務省関係者は「日本の裁判所は帰国後に子が不利益を被らないよう慎重に判断して返還命令を出している」と話す。米国務省が問題視したのは、返還命令が出ても執行に時間がかかる例だ。
なぜ命令が出ても執行できないことがあるのか。条約を実行に移す日本の国内法では、執行官が親から物理的に子を取り戻す強制執行で「子に威力を用いることはできない」と規定するためだ。日本の親や子が反対すれば執行は難しい。現行制度での子の返還には、日本側の親が同席して承認する必要がある。
こうした国内法には日本の家族観が反映されている。日本では離婚後も片方の親、特に母が子を育てるべきだとの考えが強い。民法は離婚後の親権は片方の親が持つ「単独親権」と規定している。欧米は違う。離婚後も両親が親権を持つ「共同親権」だ。外務省によると、米国が批判したブラジルやアルゼンチンも「離婚後は母が子を育てるべきだ」との慣習があるという。家族観の違いが条約を巡る対立を生む。
とはいえ「文化の違いだ」と放置はできない。ハーグ条約では子の「連れ去り」は“abduction"と表現するからだ。北朝鮮による日本人拉致問題で使う「拉致」の英訳と同じ単語だ。子の返還が滞れば、欧米は深刻な人権侵害と批判する。外務省関係者は「北朝鮮の拉致問題と全く性質が異なるが、国際社会での日本のイメージが傷つきかねない」と話す。
3月、注目される最高裁判決があった。ハーグ条約に基づく子の返還命令を拒否する母親に、米国在住の父親が引き渡しを求めた上告審だ。父親はハーグ条約の一般的な裁判プロセスと異なる手段をとった。より強制力がある人身保護請求だ。
最高裁第1小法廷(山口厚裁判長)は、子の返還命令に従わない場合は「違法な拘束にあたる」とし、子を父親に引き渡すよう母親に求めた。母親は7月、差し戻し審での上告を断念した。判決に従わなければ、2年以下の懲役や罰金を受ける可能性があった。返還命令を放置すれば重い人身保護請求に発展する先例が生まれた。政府内には「親が返還命令を受け入れる契機になる」との期待がある。
法務省も対応を急ぐ。強制執行の際に、連れ去った親がその場にいなければ子を取り戻せない規定を変える方針だ。申し立てをした親や代理人がいれば子を保護できる制度を検討する。連れ去った親が自宅以外に子をかくまい、連れ戻しに同意しないよう頼んだ場合も同様の措置をとれる。法制審議会(法相の諮問機関)で詰め、19年にも国内法を改正する予定だ。
上川陽子法相は離婚後に父母共に親権が残る「共同親権」の導入を検討することも表明した。グローバル化に伴い、昔からの日本の家族観も再考が迫られている。(地曳航也、白岩ひおな)

「共同親権持てないのは違憲」親権裁判で新たな動き、憲法訴訟手がける作花弁護士が支援

出典:平成30年8月24日 弁護士ドットコム

「共同親権持てないのは違憲」親権裁判で新たな動き、憲法訴訟手がける作花弁護士が支援

政府が共同親権の導入を検討していると報じられている。日本では、子どものいる夫婦が離婚した場合、夫か妻、どちらかが親権を持つ「単独親権」となることが、民法819条によって定められている。しかし、この親権をめぐって、離婚訴訟では「子どもの奪い合い」の修羅場に発展するケースも少なくない。離婚後に親権を持てなければ、子育てに関わる機会が多く失われるとの恐れからだ。

多くの親権をめぐる裁判がある中で、最近、注目すべき動きが出てきた。ある裁判で、単独親権が憲法違反だとして、離婚訴訟中の夫が共同親権を主張しているのだ。助言しているのは、2015年12月に最高裁で女性の再婚禁止期間の違憲判決を勝ち取った岡山市の作花知志弁護士。今年1月にはソフトウェア企業「サイボウズ」の社長、青野慶久氏らを原告に、東京地裁で夫婦別姓を求める訴訟を起こすなど、憲法に問う訴訟の数々を手がけていることで知られる。

作花弁護士は裁判を通じて、親権のあり方についても、新たな問題提起をしようとしている。 (弁護士ドットコムニュース編集部・猪谷千香)

●「離婚はあくまで夫婦間の問題なのに、いきなり子どもの親権も失う」

この裁判では、妻と離婚訴訟中の男性が、子ども2人の親権を主張して提訴するも、一審の東京家裁で敗訴。現在、東京高裁に控訴している。

男性が東京高裁に提出した控訴理由書では、「裁判離婚において、親の一方のみを親権者とし、もう一方の親の子に対する親権を失わせる民法819条2項は、法の下の平等を定めた憲法14条1項や憲法24条2項に違反し、無効である」と訴える。「親の子に対する親権は人権である」とした上で、「そもそも、裁判離婚で当事者の一方の親権を失わせる必要性は存在しない」としている。

かつて、明治憲法下では戸主である夫が親権者だったが、現行の家族法に改正された際に、男女平等の観点から「夫または妻が親権者となる」ことが定められた。しかし、親権を持てなかった側は、「離婚はあくまで夫婦間の問題であるのに、いきなり子どもについての親としての権利を全面的に失うことになる」と指摘した。

作花弁護士によると、参考になるのが、自身が手がけた女性の再婚禁止期間違憲判決だという。2015年に最高裁で下された判決では、再婚禁止期間を「子の福祉や保護のためのものであり、家族の迷惑を考慮して長くすることは許されない」とした。親権についても同様で、現在の単独親権は、離婚後の親の都合(離婚した元配偶者と関わることの不都合)を予防するための制度であるとして、親権を持たない親に会えなくなるなど、子どもに生じる不都合を考慮していないと主張している。

作花弁護士は、「東京都目黒区でも継父によって5歳児が虐待死する事件がありましたが、シングル家庭や継父、継母による児童虐待防止という面からも、共同親権は有効だと思います」と話す。実際に目黒区の事件を防げたかどうかはわからないが、少なくとも共同親権となることで、親による子どもへの関与が強化されることが想定され、子どもの孤立を防げるかもしれないという指摘がされている。

また、離婚裁判が親権争いによって長期化する傾向があり、共同親権が導入されれば、両親の離婚による子どもへの影響も減り、「子の福祉や保護にも資する」という。

「日本民法の母法たるドイツでも、かつて日本と同じように裁判離婚後は単独親権制度が採用されていましたが、1982年にこれを違憲とする判決が連邦憲法裁判所で出され、その後、1998年には共同親権が法制度化されました。また、欧米やアジアでも共同親権が導入され、先進国では日本だけが単独親権です」

●単独親権争い、「相手がいかに親として不適格か」不毛なバトルに展開

現在、離婚した夫婦のうち、単独親権を持つのは妻側が8割といわれている。共同親権導入に根強い反対があるのは、夫からのDVや児童虐待などがあるケースについての懸念が少なくないからだ。こうした意見に対し、作花弁護士はこう説明する。

「確かに共同親権による弊害は生じることがありますが、親権を持つ親がトラブルを起こした場合、現在では民法によって親権を一時的に停止する制度がありますし、再発する場合は、親権を喪失することになります。共同親権をケアする制度はあります」

また、親権の中には、大きく分けて、「財産管理権」(民法824条)と「子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う」と定めた「身上監護権」(民法820条)がある。これらを元夫と元妻で分けて持ちたいというケースもあるが、「現在の裁判所は、基本的に別々に持つことを認めておらず、現実的には監護権が機能していない」と作花弁護士は指摘する。

「実際に共同親権が導入されれば、両者の合意の上で、どちらの家に住むかを決定し、子どもと居住する方を監護者とする。監護者に問題が生じた場合は、一方の親権者がすぐに居住変更などの対応を取れるようにするなど、外国での事例を参考にしながら、運用していくことになると思います」

訴えを起こした男性も親権争いを「不毛なバトル」という。「これまで、妻と裁判で争ってきましたが、共同親権だったらここまでする必要はなかったはずです。単独親権の場合、裁判は相手がいかに親として不適格かの言い争いになり、子供は負けた親とは全く、あるいはわずかしか会えなくなるので、裁判の争いは激しくならざるを得ません。親権は子どもをもののように奪い合う権利ではなく、子どもが幸せになるように親が分かち合う共同責任にしなければならないと思います」

この訴訟は、9月27日に判決が出る予定だ。もしも、上告審に至るようなことがあれば、単独親権の違憲性をめぐって初の最高裁判断が下される可能性もある。
弁護士ドットコムニュース編集部

目黒5歳女児を継父と実母で虐待死 結愛ちゃんの実父が語った胸の内

出典:平成30年8月21日・28日号 週刊女性

目黒女児虐待死、実父の親族「雄大も優里も殺してやりたい」結愛ちゃんの遺骨は今

「自分でお腹を痛めて産んだ子なのに、なんで助けんかったんか。結愛もきっと最後の力を振り絞って書いたんや。
 私らも報道を見るたびに何もできんかった自分を恥じよる。優里ちゃんの実家を訪ねたり、ちゃんと面倒をみているのか、知る努力をするべきやった。結愛に謝っても謝りきれん」
 と、打ちひしがれるのは香川県内に住む結愛ちゃんの実父方の曾祖母(71)。曾祖父(72)も「報道で結愛が出るたびに泣いとった」と力なく話した。

「雄大も優里も殺してやりたい」
 東京都目黒区の船戸結愛ちゃん(5)に対する、保護責任者遺棄致死の疑いで、警視庁が継父の雄大容疑者(33)と実母の優里容疑者(25)を逮捕したのは6月6日のこと。
 3月に傷害で逮捕されていた雄大容疑者は2月末ごろ結愛ちゃんの顔面を殴るなどし、結愛ちゃんは寝たきりの状態に。嘔吐なども繰り返していたという。
 優里容疑者は結愛ちゃんを病院へ連れて行かなかった理由について「虐待がばれ、立場が危うくなると思った」などと供述したという。
 まだ外も暗い朝の4時。結愛ちゃんは毎朝その時間に起き、ひらがなの練習をさせられていたという。
《もっとあしたはできるようにするから もうおねがい ゆるしてください ゆるしてください お願いします》
 その小さな手で両親に許しを請う言葉を綴ったノートを残し、結愛ちゃんは3月2日に息を引き取った。
 この事件を受け、政府は7月20日、児童虐待の緊急総合対策をまとめた。社会が変わろうとしているが、
「政治家は票集めにもっともらしいことを言う。法律や制度ができたら虐待死が減るかもしれん。ただ、申し訳ないが、俺らからしたら終わったこと。結愛は帰ってこんきに」
 そう話すのは、結愛ちゃんの実父方の祖父(43)だ。
「児童相談所が強制的に結愛を確認していれば死ななかった。様子を見に行って確認できませんでしたと帰ってくることがおかしい。
 新聞の勧誘やないんやけ。新しく法律や制度が変わっても建前にしか思えん。すでに児相というシステムがあるのに、なんで助けられんかったんや」
 と祖父は吐き捨てる。さらに両容疑者について、
「雄大も優里も殺してやりたい。殺せるもんなら殺してやりたいよ。結愛が感じたのと同じか、それ以上の恐怖を与えてやりたい。どれだけ怖かったんやろうか。毎日そんな恐怖が続いていたなんて……」
 体格のいい祖父は、肩を震わせ、顔を真っ赤にし、詰まりながらも言葉を絞り出す。
 事件後に息子(結愛ちゃんの実父)と食事をしたという。
「息子はな、気を遣ってかなんも言いよらん。俺も思い出させるのはかわいそうやけ、あえて触れんようにしとる。ずっと抱えて生きるのはあまりにかわいそうやけ」(祖父)
 ただ、実父がずっと胸に秘める思いがあるのだという。
「離婚後にな、息子が小さい子どもの面倒を見よったときがあった。そしたら“オレ、別れてから(結愛のことを思い)涙が出よった”ってポツリと言ったんや。大事に思っていたし、会いたかったと思うよ。でも、優里に男ができたら会いにいけんやろう……」
 結愛ちゃんは“前のパパがよかった”ともこぼしていた。実父はどのような思いで報道を見ていたのか。
「もうそっとしておいてほしいんや。何をしたって結愛は帰ってこんきに」
 と祖父は涙をぬぐった。
 実母である優里容疑者の父親は、
「結愛を最後に見たのは東京へ送り出したときです。もしおかしなことがあれば止めていた。優里がどういう状況に置かれていたかわかりませんし、これ以上、お話しすることはありません。後は裁判で明らかになると思います」
 結愛ちゃんの遺骨が納められた墓石には、“行年7才”と刻まれていた。それはあまりにも短い生涯であり、同時につらく長い時間だった。

『共同親権』の導入で“親都合の離婚”に苦しむ子どもは救われる? 当事者の声を聞く

出典:平成30年8月14日号 週刊女性

『共同親権』の導入で“親都合の離婚”に苦しむ子どもは救われる? 当事者の声を聞く

《離婚後も双方に親権残る「共同親権」検討…法相》
 7月中旬、読売新聞の朝刊一面に、政府が共同親権の導入を検討していることが報じられた。
 離婚後、親権の奪い合いの裁判でもめたり、誘拐にも似た強引な引き離しが行われるなど、子どもが親の争いの犠牲になるケースが後を絶たない。政府は2019年にも、親権制度を見直す民法改正について法制審議会に諮問する見通しだ。
『共同親権』の導入で何が変わる?
『共同親権』について、離婚後の家族問題に詳しい大正大学の青木聡教授は、『親権』という言葉を『親責任』と置き換えるとわかりやすいとし、次のように説明する。
「『共同親責任』は、離婚しても父母が共同で親としての責任を果たしていきましょうという意味です。メリットは、離婚後も子どもが心理的・経済的に安定し、子どもに与えるさまざまな悪影響を減らせる点です。離婚しても父母が争わずに養育していれば、子どもは両親のそろった子どもと変わりなく育っていきます」
 現在の民法は、離婚後の親権はどちらかの親が持つ単独親権。そのため、強引な手法がとられることもあるという。
 都内在住の熊田南海子さん(34)は、強制的に子どもと引き離された経験がある。現在は、長男の有希くん(9)と次男の祥希くん(6)と暮らす熊田さんだが、離婚劇は夫側の一方的な手口で口火が切られた。
「'13年10月15日に、子ども2人を連れ去られたんです」という熊田さん。夫とその両親、兄夫婦が一緒に来て、義母と熊田さんが口論している間に、義兄夫婦が子どもを連れ去ったという。
「警察も呼んだのですが、義母と元夫が、3日後に子どもは帰る予定と説明して、警察が連れ去りを止めることはありませんでした。3日後には戻ってきませんでした。後からわかりましたが、連れ去りの翌日には別の幼稚園に通う手はずになっていました。
 夫の実家から、何度もお金を無心されたことなどが原因で離婚したいと伝えたとき、“有利な離婚の仕方を知っているから”と。何を言っているのかなと思っていたのですが……」
子どもの引き渡しを求めた審判を申し立て、熊田さんが2人の息子に面会できたのは、連れ去り後から3か月後のこと。
「裁判所の試行面会でやっと会えたのですが、私のことを警戒した様子でした」
 会えなかった間、父親は母親にまつわるエピソードを捏造し子どもに刷り込んだ。
 連れ去りから約1年後に離婚が確定し、親権は熊田さんのもとに。連れ去られた側に親権が認められるのは珍しいケースだ。
「共同親権になれば、私のように、子どもを連れ去って親権を獲得する“有利な離婚”ができなくなると思います」と法改正に期待する。同時に、
「面会交流権は親が子どもに会う権利だけではなく、子どもが親に会う権利でもあるんです。新しい家族を大切にしてほしいと思いますが、この子たちにも会ってほしいと思います」
 熊田さんがそう訴えるのは、離婚後、週に2~3回会いに来ていた元夫が再婚後、だんだんと子どもに会いに来なくなり、息子が送るLINEにも既読スルー……。
 2人の子どもは無邪気で「お父さん大好き!」と声をそろえる。昨年の11月、有希くんの誕生日のお祝い以来、会えていないという。
「パパに会いたいよ」
 遠慮がちに有希くんが伝えた言葉が切なかった。
 再婚後の親権選択について前出・青木教授が説明する。
「欧米では、共同親権を持つ父母が子どもの意見を聞きながら、再婚後の養育についてどうするかを話し合い、親権のあり方を再度、選択することになります」

親同士の関係構築が必須
 元夫への恐怖感、拒絶感が強く「離婚後も連絡をとる必要があるとは思いもしなかった」と話すのは一般社団法人『りむすび』の、しばはし聡子代表。別居・離婚後に子育てする親をサポートする共同養育コンサルタントを務めているが、ご自身も何の知識もなく離婚に踏み切り、憂うつな思いをしたことがあったという。
「離婚はできましたが、調停で面会交流が月に1~4回という取り決めがなされた。息子に会いに来るたび、頭を抱えていました。元夫に息子を会わせるのが嫌でした」
 と振り返る。
 離婚したのに元夫と関わりたくない。だが、息子は父親と会うことを喜んでいる……。
 そこで、しばはしさんは夫婦問題カウンセラーの資格を取ることを決意。面会交流を見学するなどした結果、自分自身が変わって、子どもの父親である元夫に向き合わなければいけないと思ったという。
「子どもの情報を夫に伝えようと連絡をとることにしたのです。劇的に関係は改善しました。元夫も憤りが静まり、“ありがとう”と言ってくれる。“ありがとう”ともっと言わせたいと思ったら、苦しかった気持ちがスッと楽になったんです」
 現在は月に2回、子どもは元夫の家に泊まりに行く。しばはしさんが仕事で忙しいときは預かってもらい、学校の保護者会に行けないときは出席してほしいと伝え、学校から子どものことを注意されたら、それを父親から伝えてもらうなど、
「育児のいいところだけでなく、たいへんなところも分担してもらうようにしています」
 共同親権には賛成の立場だ。
「共同養育するために離婚後の親同士の関係構築は必須です。公的な支援も、ひとり親支援は充実していますが、共同親権になれば支援体制も変わってくると考えています。
 子どもは離婚後も共同で育てていくのが当たり前だと認知され、社会に浸透すれば、離婚すると親はひとりという固定概念が払拭されていく」

「パパとママの離婚は私が原因でしょう」
 都内の出版社に勤める水戸耀司さん(仮名、50)は現在、小学6年生になった娘(11)と暮らすが、彼女が2歳半のときに、夫婦のいさかいは始まった。離婚裁判や面会交流調停など長い不毛な戦いを余儀なくされた水戸さんは、
「共同親権であれば、裁判をすることだってなかった。今まで裁判費用で500万円ほど使いました。バカげたお金ですよ」
 と精根使い果たした長期戦を回想。娘はのびのびと元気に過ごしているが、最近言われたことが心に刺さっている。
「“パパとママが離婚したのは、私の取り合いが原因なんでしょう”と自分を責めることを言うんです。違うよと伝えてはいるのですが……」
 2歳半の娘を連れ去った元妻は、夫からDV被害を受けていると警察に通報し、DVを理由に離婚裁判を申し立てた。結果、DVがでっち上げだと証明され、離婚は認められなかった。判決まで2年の月日を要した。水戸さんが、可愛い盛りの娘に会うことができたのは、娘が連れ去られてから1年2か月後だった。
「私と会わせて大丈夫か確認をする試行面会で会えました。最初、きょとんとした顔をしていました。肩車をすると、“パパ”って言ってくれたんです。娘は肩車が好きでいつもせがまれていましたから」
 面会交流も、“病気だ”“運動会がある”などと嘘の言い訳をでっち上げられ、8か月間も会えなかったことも。
 妻が申し立てた2度目の離婚裁判で、離婚が認められ、娘の親権は母親が持つことに。
「娘に対して、私の悪口をひどく吹き込んでいたようなのです。娘はそのたびに“パパはそんな人じゃない”と、嫌な気持ちになったと話していました。
 面会交流が終わり引き渡すときに娘は、毎回帰るのを渋るのです。泣きじゃくったこともありました」
 娘を妻に引き渡した際、妻の手を振り払い水戸さんの車に乗り込んできた。そして“パパ、早く車を動かして”と叫ぶ娘の声を聞き、水戸さんはとっさの判断で車を発進させ、娘を家に連れ帰った。
 それから1年以上、父親のもとで暮らしていたが、親権のある妻は引き渡しを求める。引き渡しをしない親が引き渡すまでの間、1日ごとに裁判所に定められた金額を支払わなければならなかった。
「子どもを返還しない場合は1日3万円の罰金が科せられるのです。致し方なく、娘を妻のもとへ連れて行きました」
 娘はその3日後、再び自分の意思で、父親と祖母が住む家に帰ってきたという。
 その後、元妻とは和解。そのかわり、子どもには会わせることを条件としていた。
「娘が母親に会いたくないと言っているんです。私としては母親を嫌いにならない方向にもっていきたいと思っています。子どもには、パパもママも大好きでいてほしいんです。パパとママは娘のことを愛している、宝物だと思っていることを知ってほしい」
 そう胸の内の葛藤を明かしてくれた。
夫婦と親子の関係は別もの
 青木教授によれば、ノルウェーでは離婚裁判になると子どもは父母から引き離され、里親委託養育になる。そのため、子どもと離れたくない父母は、裁判にならないように離婚を進めていくという。
 離婚経験があり、“離婚後子育て応援弁護士”として活動する稲坂将成法律事務所の古賀礼子弁護士も、元夫と元妻、元夫と子どもの関係は別ものと訴える。
 すでに元夫とは離婚が成立していたが、養育費の見直しの提案をすると“小学校は義務教育だからお金はかからない”と元夫は渋りはじめた。
「話が平行線だったため、元夫に養育費の支払いの調停を申し立て、調停の場に携わったのが、私の弁護士としての初仕事でした」
 息子は、“養育費はいらないからパパとの時間が大切”と訴え、古賀弁護士は板挟みに。
 結局、以前と変わらぬ金額で合意したが、調停では父母は今後一切、連絡をとらないこと、面会は父子が直接やりとりをする決まりに。
 父子の関係は良好で、
「私は見ていませんが、面会の別れ際には親子で熱い抱擁があったりと、血のつながった親子の絆というのは深いものなのだなと感じています」
 共同親権については、
「私のように父母は決して仲はよくないが、父子の仲は非常にいいケースがあることを知ってほしい。必ずしも離婚した夫婦が仲よく協力しなければならないわけではない。
 離婚後も親という意識を持つことで、適正な分担のもとで育児が行われ、社会の意識も変わり、男性の育児休暇取得率も上がると思います」
 前夫との間にできた妻の子を虐待死させた東京・目黒区女児虐待死についても、親権の問題が関係していると分析し、
「親権という重荷を背負わされ、本当の父親にとって代わって行動したのですが、それが間違った方向に向かってしまった」
 そのうえで、
「母になるための支援機関は多く存在するが、継父などへの支援はほとんどない。この点も問題かなと思っています」
 都内在住の40代女性は、成長した娘と父親を会わせようと元夫を訪ねたことがある。
「お前は母親として何をしたんだって、文句を言われましたからね。養育費は月2万円しか払っていない男にですよ! 月々2万円で子どもが育つかよ、って逆に腹が立ちました。娘には、父親のことは忘れなさいと伝えました」
 腹立たしい気持ちが、思い出すたび今も消えないそうだ。
 '16年度に厚生労働省が行った全国ひとり親世帯等調査では、母子家庭で父親から養育費の支払いを受けているのは約2割。共同親権の導入に期待がかかる。

子どもは一方のものじゃない――離婚親の「共同親権」への期待

出典:平成30年8月13日 Yahoo!ニュース

子どもは一方のものじゃない――離婚親の「共同親権」への期待

会いたいのに会えない──。離婚後、子どもと暮らしていない親の多くが口にする言葉だ。日本では結婚時は「共同親権」だが、離婚後は「単独親権」となる。親権を持てなかった親は自由に子どもに面会できず、苦しむ。苦悩する離婚後の当事者と親権の問題を追った。(ライター・すずきまゆみ/Yahoo!ニュース 特集編集部)

思うように長女と会えない
「結婚した時は、いまのような苦しみは想像もしていませんでした」
東京郊外に暮らす高地侑子さん(仮名・50)は涙ながらに振り返る。2000年、32歳でアメリカ人男性と結婚。2人の間にできた長女は、いま彼女の元にはいない。
高地さんの夫は3年前、当時10歳の長女を連れて強引に別居。今年3月、長女の親権を夫(父親)とする離婚訴訟の判決が下された。判決に納得できない高地さんは、現在控訴中である。

2005年、37歳で長女を出産。2011年に東日本大震災が起きた頃から、次第に夫婦関係が悪化する。放射能の影響を恐れての避難をめぐる考え方の違いや、震災の被害を目のあたりにした高地さんがキリスト教に傾倒したことなどがきっかけとなり、価値観の違いが浮き彫りとなったためだ。高地さんが以前からの夢を叶えるために、夫の反対を押し切って大学の夜学に通ったことも夫婦の溝を深くしたという。
高地さんに離婚の意思はなかったため、カウンセリングに通うなど夫婦関係修復の道を探っていた。しかし、夫は協力的ではなかった。
「夫婦でもめていた当時、相談していた弁護士さんには『このままお嬢さんを連れて逃げてください』と言われたんです。でも、私は娘と夫の仲を裂くようなこと、したくなかった。そうしたら2015年6月、私からしてみたら突然、彼が娘を連れて出ていってしまったのです。親権をめぐる司法の判断は『現状維持』を重んじる傾向があるため、連れ去った者勝ちだとよく言われますが、本当にそうだと思いました」

別居以降、娘との面会交流は月1回程度、許された。しかし、面会の日程や時間、場所などはすべて夫の意向に沿わなければ実現できなかった。「本当はもっとたくさん、もっと長い時間、一緒に過ごしたかった」。
そして今年6月、夫は長女を連れてハワイへと転居。面会の機会は遠のいた。結局、この3年間、高地さんは長女と思うように会えていない。

半数以上の別居親が子どもと日常的に交流できず
親権をめぐる離婚後の親たちの苦悩は深い。親権とは、未成年の子どもを育てるために認められた親の権利と義務である。日本においては、結婚時は共同親権、離婚後は単独親権となることが民法で定められている。
厚生労働省の調査によると、2016年の離婚件数21万6798組のうち、親権の対象となる未成年の子がいるのは約58%。そのうちの約84%が子どもの親権を母親がもつ。
一方で、子どもの親権や面会交流など、子どもをめぐる家事事件は増加している。最近は、父親側が子の親権・監護権(監督し保護する権利・義務)や面会交流を強く求めるケースが増えた。男性の子育てへの参加意識が高まってきたことによる流れだ。
しかし、現実には、子どもと離れて暮らす別居親が離婚後も面会交流を行っているのは、母子家庭で29.8%、父子家庭で45.5%にすぎない(2016年)。男女どちらにしても、半数以上の別居親が子どもとの日常的な交流ができていない現状がある。

子どもにとっては何が最善か
「離婚するほどの仲なのだから、面会交流がうまく実施できないのは当然です」
そう話すのは、千葉県の寺院の僧で、離婚後の親子の面会交流支援を行う一般社団法人びじっと代表・古市理奈さん(46)だ。
「たとえ面会交流について取り決めをしていても、両親の感情的な理由から反故にされることも多い。でも面会交流は、親ではなく子どもの権利。少しでも子どもが親に会いやすくするためには、第三者の介入が必要です」
びじっとは「子ども優先」をモットーに、親子の面会の「連絡調整」「受け渡し」「付き添い」などの支援を行っている。子どもが幼い場合、面会交流を行うには当然、親同士の協力が必要だが、「互いに顔を見たくもない相手との歩み寄りは無理」だと考え、面会支援団体を立ち上げた。親同士の感情のもつれによって面会がかなわず、交流のもてない親子を1組でも救いたいという思いからだ。
離婚後も、別居親が子どもに定期的にかかわることで、同居親の子育ての負担が軽減され、親子の孤立を防ぐ効果も期待できる。
「離婚して子どもの親権をもつ同居親は、別居親に会わせることによって『子どもが別居親のほうが好きだと言ったらどうしよう』などと考えて面会を躊躇しがちです。でも、子どもは親の所有物ではありません。子どもにとって何が最善か、ぜひ考えてほしい」

できれば定期的に会ってやってほしい
裁判離婚でない場合、細かい取り決めがなく面会交流が実現しないことが多い。親権を持つ親が、持たない親に面会交流を働きかけても、実現しないケースもある。
埼玉県草加市在住の安藤一浩さん(44)は、4歳11カ月の長女を育てるシングルファーザーだ。長女の母親である元妻は、当時生後2カ月の長女の親権を安藤さんに渡して家を出ていった。
「精神的に不安定だったのかもしれません。僕自身は父親になれたことが嬉しかったので、子育てを担うことに躊躇はありませんでした」
乳飲み子を託された安藤さんは、子育てがしやすいように、当時住んでいた静岡県から埼玉県の実家に引っ越した。同時に、勤めていた会社は退職し、定時に帰れる職に就いた。粉ミルクで育て、抱っこひもで連れ歩いた長女は2020年に小学生になる。
「元妻には毎年母の日に、娘の名前でメッセージを送っています。返事はあったり、なかったり……。面会交流が子にとって必要だと考え、離婚したときから面会交流を相手に勧めましたが、今のところ元妻が応じたことはありません」
一時期は元妻を憎む気持ちもあったが、この5年間でそうした気持ちは減ったという。
「子どもには父親、母親両方の存在が必要と思っているので、元妻が応じてくれたら子どもにとっていいのに、と思うことはあります。でも、相手を憎む気持ちはもうありません。子どもが幸せに育つことを優先に考えています」

日本だけが単独親権
子どもにとって、離婚した親との幸せな関係はどこにあるのか。
「離婚した父母両方が親としての責任を継続する『共同親権(共同監護)』が世界の潮流となっています。欧米はもちろん、アジアでもその選択が広がっています。しかし、日本の制度は、今でも『単独親権』以外の選択肢がない。その点でガラパゴス化しているとも言えそうです」
そう指摘するのは、家族社会学を専門とする明治学院大学社会学部の野沢慎司教授だ。
明治期に制定された旧民法下では、結婚している夫婦の場合でも子どもは父親の家に属していた(単独親権制)。それが、戦後、男女平等をうたう新憲法下となって、婚姻中の父母が共同で子どもの親権を行使できるようになった。ただし、離婚した場合には、父母のどちらかが親権を失う単独親権制が採用された。
この単独親権という制度が残されたことが、親側のさまざまな問題につながっているという見方もある。
「親権をめぐる苦悩や葛藤、養育費や面会交流をめぐる諍い。あるいは、親権をもつ親がひとりで責任を抱え込んで起こす虐待……。こうした問題の背景には、『単独親権制』の前提にある『離婚したら子どもは一方の親だけのもの』とみなす考え方がある」
そこには、子ども側に立った視点が不足している。親が離婚しようと再婚しようと、子どもにとってはふたりとも親であることに変わりはないからだ。
「そう考えると、子どもが父母のどちらかから切り離されやすい『単独親権制』には、大きな欠陥があることに気づくはずです」

「共同親権」を待ち望む人々
2018年7月15日、読売新聞東京本社版朝刊の1面に「離婚後も『共同親権』検討」という大見出しが躍った。記事によれば、政府は親権制度を見直す民法改正について、2019年にも法制審議会に諮問する見通しだという。
親子の面会交流を実現する全国ネットワーク「親子ネット」の会員が参加するSNSグループは、共同親権を待ち望む親たちの喜びの声で沸き立った。
「早く実現するといい」
「離婚している場合も、申し立てれば共同親権にできるようにしてほしい」
会員の多くは、離婚によって子どもと別れた親たちだ。同会では、離婚した父母が協力して子育てができるようにする「共同養育支援法」の制定を目指して活動している。政府による「共同親権」の検討は、それを「大きく後押しする」と会員たちは期待している。
ただ、DVや虐待がある場合に安易に面会交流を認めると、被害が深刻化するという指摘もある。今後の法整備には慎重な議論が求められている。

子どもにとって最善の選択を
「共同親権」の実現を前に現時点で、親権にこだわらず、共同で子育てをしている「元夫婦」はいる。
広島県在住の石田まりさん(仮名・45)は親権をもたない母親だ。
石田さんが離婚したのは2015年。長女は当時7歳だった。長女はそのまま地元の小学校に通い続けたいと希望。本人の意思を尊重し、親権は元夫がもち、石田さんが家を出た。
しばらく一人暮らしをしていたが、2017年3月、石田さんは離婚した状態のまま元夫と長女が住む家に同居することにした。子どものためには父母のどちらの存在も必要と考え、元夫婦で話し合ったうえでの選択だ。家計は別々。食事は交代で子どもと食べる。3人での外出はする。夫婦の時間はもたない。
籍を抜いて他人になったことで遠慮が生まれ、けんかはなくなったと石田さんは言う。
「娘は離婚したことを理解しており、『お母さんとお父さん、仲良しじゃないよね』などと言いますが、さっぱりしたこの関係に大きなストレスはないようです。先のことは分かりませんが、父母として協力し合って暮らすこのやり方は、いまの私たちには合っていると思います」

すずきまゆみ
1966年、東京都生まれ。大学卒業後、会社員を経てライターとして活動。教育・保育・女性のライフスタイルなど、幅広いテーマでインタビューやルポを手がける。

目黒5歳女児虐待事件に潜む、親子制度の問題

出典:平成30年7月27日 アゴラ

目黒5歳女児虐待事件に潜む、親子制度の問題

山本ひろこ 目黒区議会議員

 記憶に新しい目黒区の幼児虐待事件。その後、目黒区議会でも「虐待のない目黒区を目指す決議」が採択されました。結愛ちゃんの残したあまりにも切ないノートの内容が涙を誘い、社会問題化したこの事件ですが、本当に問題なのは行政対応だけなのでしょうか?児童相談所間や警察との連携不足が大きく問題視され、厚労省は児童相談所に警察との連携強化を求めました。
近年、東京都23区では児童相談所の都から区への移管が話題になっています。2016年6月の児童福祉法改正により、特別区に児童相談所を設置することが可能となりましたが、人材・財源・場所など様々な課題があることから、区によって設置予定時期が異なります。
1300万人を抱える東京都が、基礎自治体レベルの細やかな住民ケアができるわけがなく、東京都からすれば、「何町の何丁目」がリアルではありませんが、基礎自治体からすれば、リアルにその地域を把握しているわけです。
それゆえに、地域の子どものセンシティブな問題を取り扱う児童相談所などは基礎自治体が所管するのが妥当で、東京都からの移管は望ましいことだと考えます。目黒区では移管の具体的時期がまだ未確定の状態ですが、早期移管を求めて区議会からも決議文を出しました。
ただ、今回の事件で母親として一番気になるのは、連れ子にだけ虐待を行ったという点です。実父かそうでないかによって、子供へ対応レベルが異なりやすいというリスクについては、米国の研究などでも証明されています。
もちろん児童相談所対応が至らなかったのは致命的ですが、被疑者の父親には実子もいて、その子は虐待されることなく育てられており、連れ子の結愛ちゃんだけが虐待されていた今回のケースなどは、日本の親子制度のありかたそのものにも焦点があたるべきところを、幼児虐待に対する児童相談所対応だけの問題にすり替えられてしまっています。
連れ子も実子も同じように虐待をしているのであれば、幼児虐待だけが問題となりますし、もちろん、ハイリスクだと言っても、一般的には連れ子も実子も同様に接している円満ケースが大半です。一方で、今回のケースでは連れ子にだけ虐待を行っている点からして、虐待の原因として、実子かどうかが大きく影響していることがわかります。
現在の日本は、単独親権制度を採用しており、離婚して親権を失えば親の責任がなくなるどころか、懇願しても会えなという断絶状態が散見されています。共同親権制度により、実夫に離婚後も子供の養育の義務があれば、結愛ちゃんのSOSが伝わり、虐待死に至る前に救えたかもしれません。
欧米諸国では、共同親権が採用されています。もちろん、別れても住所が追跡されるなどのデメリットもありますが、子どもの権利や利益を中心に考えると、共同親権が妥当ではないでしょうか。日本でも共同親権化に向けて、動き出しました。
子どもにとって一番大切なことは、たくさんの選択肢があることです。親の都合で離婚したとしても、子どもには両方の親に世話をしてもらえる権利があります。幼いうちに、どちらかを選ぶことなんてできません。大きくなっても、どちらかを選ぶというのは、究極の選択にしか過ぎません。離婚により親権を失えば、子どもに対する義務も責任も無くなる、というのは大人都合のルールです。子どもは自立するまで両親に育ててもらう権利を持っているという、子ども中心のルール作りが必要ではないでしょうか。

親子を引き離し、関係をこじれさせることで儲ける“離婚ビジネス”の実態

出典:平成30年7月21日 ハーバー・ビジネス・オンライン

親子を引き離し、関係をこじれさせることで儲ける“離婚ビジネス”の実態

「親から子どもを引き離したほうが弁護士はカネになります」

 そう断言するのは「男の離婚相談」を掲げる五領田有信弁護士。受け持った事件の中で特に理不尽に感じるのは、妻が浮気して出ていった場合の妻側弁護士の対応だという。この場合、妻のほうに原因があるので、夫が拒否すれば普通は離婚できない。

「しかし『子どもの養育をともに担えるなら』と、妻に愛想をつかした夫も離婚に同意しようとします。その場合、養育を等分に分け合うなら養育費は当然発生しません」(五領田弁護士)

◆弁護士は、離婚時の養育費算定が多いほど利益を得られる

 政府は現在、日本以外では朝鮮(いわゆる「北朝鮮」)やイスラム諸国、アフリカ諸国に残存する単独親権制度を転換。離婚後も両親が養育にかかわる共同親権制度に向けて、民法改正の検討を始めた。共同親権の国では珍しくなく、単独親権の日本でも制度上は否定されているわけではない。しかし、子どもが手元にいる妻側の弁護士は「そんなことは聞いたことがない」と強く出る。

 そうなると、夫の側は子どもとの絆が断たれることを恐れて親権を手放さず、離婚に同意しない。

「関係を壊した妻側が、婚姻費用を請求してくる。離婚しないならカネを払え……と。妻側の弁護士はまるで暴力団です」(同)

 さらに五領田さんが疑問視するのは、法律サービスを身近なものにするために政府が設けた日本司法支援センター(「法テラス」)の成功報酬基準だ。

 離婚時に起こした養育費請求調停で、夫から毎月10万円の養育費を受け取る約束ができたとする。法テラスの算定基準では養育費の2年分が「受けた利益」として報酬算定される。たとえば月額養育費が10万円であれば、「10万円×24か月=240万円の10%+税」が報酬になる。

「子どものためのお金なのに、弁護士がやっていることはピンハネ。月々10万円をとれるクライアントを10人見つければ、月10万円が固定収入になる。顧問契約の2件分です。国が作った機関が、養育費から報酬を得られるようにするなんて、離婚を奨励しているようなものです」

◆弁護士が「事件を作っている」という批判も

 法テラスを利用すると、30分の相談が3回まで無料だ。一方、弁護士は1回の相談につき5000円を法テラスから受け取る。相談者が法テラスの弁護士に依頼すると事件の種類に応じて決まった額の着手金が弁護士に支払われ、依頼者は分割で法テラスに償還する。中でも扶養料や慰謝料の請求は成功報酬の対象になる。

 母親が主婦のまま子連れで別居して、生活保護を受けていれば法テラスへの支払いも免除される。「クライアントは金銭負担を感じることなく、弁護士をつけて調停・裁判を起こせる」と解説するのは、親子関係回復のための面会交流事件を多く手がける古賀礼子弁護士だ。

 例えば生活保護を15万円受けている母子家庭で、婚姻費用を請求して月々10万円を受け取ることができたとする。「実際は回収した婚姻費用は収入に認定され、生活保護費からの国庫への返還になるので、母親が得る生活費は変わりません」(古賀弁護士)。

 しかし父親からの婚姻費用の支払い先は母親側の弁護士の口座が指定され、そこで1万円が差し引かれ。残りの9万円分が生活保護費から返還されることになる。

「父親からしてみれば婚姻費用を支払っているのに、子どもには会えず、妻も子どもも全然生活水準が上がらないということになります」(同)

 それなのに、なぜ婚姻費用を申し立てるのだろうか。

「夫の側は、妻の扶養分を減額するために早く離婚しようと考える場合があるからです。本来婚姻費用の分担は、婚姻した夫婦がお互い協力しあうことが前提の制度なのに、離婚を促すために使われているのが現状です」(同)

 弁護士があえて「事件」を作り出し、売上を得る仕組みを「離婚ビジネス」と酷評するのは笹木孝一さん(仮名、50歳)。妻側の弁護士から、婚姻費用の支払い先を弁護士の口座に指定された。

 妻側の弁護士は家事事件について「国内トップレベル」を標榜する弁護士だった。笹木さんの場合、別居時に妻が5歳の息子名義の口座を持っていったので、婚姻費用はその口座に支払っていたのだ。

 笹木さん夫婦はもともと共働きで、生活に必要な諸経費は笹木さんが支払い、笹木さんの預金に余裕ができたら妻の口座に移動していた。摂食障害のある妻のために、食事も笹木さんが作っていたという。

 妻側に経済的な不満があるようには思えないが、「妻は精神的に不安定で離婚を口走り、子どもにも暴力を振るいました」という。困った笹木さんは円満調停を家庭裁判所に申し立てた。「有利な証拠を得るためか、妻はリビングに録音機を置きました」(笹木さん)。

◆子どもに会うために、毎回1万5000円を公益法人に払う

 2016年のある日、保育園に子どもを送り届けた後、妻と子どもがそのまま行方不明になった。すぐに妻側の代理人を名乗る弁護士から「妻子や親族に連絡を取ろうとするとあなたが不利になる」と連絡が入った。

 その後家庭裁判所で調停になり、担当の女性裁判官は「裁判所が関与すべきものではない」と事件性を否定。隔週で6時間という父子交流を取り決めた。ところが高裁では月に1回3時間の交流に短縮され、どちらかが望めば父子交流に付き添いを付けることが可能になった。「つきそいを望むのは母親しかいない。監視ですよね」と笹木さんが嘆息する。

 母親側が指定してきたのは、面会交流の支援を手がける家庭問題情報センター(FPIC=エフピック)だ。「FPICのスタッフには『私たちのところを利用するようにという審判書になったわね』と笑われました」。FPICは月に1回3時間までしか面会交流の支援をしない。

「妻側はエフピック以外では会わせないと言ってきましたから、選択の余地はありません。にもかかわらず、当初1回1万5000円の利用料は、相手方弁護士の主張で全額を私が払わされました」(笹木さん)

「子どもに会うのにその都度カネを払わないと会えないなんて屈辱そのもの」と憤るのは先の五領田弁護士。「司法によって利用が指示されるなら、それは裁判所や行政の仕事。なぜ公益社団法人がそれを肩代わりしているんでしょうか」

 FPICは家庭裁判所の調査官OBによる公益社団法人。2015年から3年間、養育費相談支援事業などに1億5400万円を国から得ている。「家庭裁判所職員の再雇用先確保のためのカモにされているとしか思えません」と笹木さんも指摘する。

 笹木さんとの交流場所はFPICが児童館を指定した。理由について笹木さんが聞くと、「子どもの安全のためという。これは私が危険だということですから、FPICに抗議したのです。そうすると『信頼関係がない』と援助を引きあげられました」。現在、笹木さんは息子さんに会えていない。離婚も裁判で決着した。

「営利目的で子どもを連れ去り、親同士の関係を壊して親子を引き離し、子どもの貧困を招く。そんな奴らが裁判所を闊歩しているなんて」

 共同親権は、離婚ビジネスが生み出す子どもの貧困を根絶できるだろうか。
<取材・文/宗像充>

ハーグ条約>子を返還するよう命じる判決 差し戻し審

出典:平成30年7月18日 毎日新聞

<ハーグ条約>子を返還するよう命じる判決 差し戻し審

 国境を越えた子の連れ去り防止を定めた「ハーグ条約」に基づく裁判所の返還命令に従わないのは違法として、米国在住の父親が息子(13)を連れて帰国した母親に息子の引き渡しを求めた人身保護請求の差し戻し審で、名古屋高裁は17日、父親の請求を認める判決を言い渡した。

 戸田久裁判長は、息子が「米国での生活に不安があり、日本に残りたい」と話しているとしつつも「来日以来、母親に大きく依存して生活せざるを得ない状況にあり、母親のもとにとどまるかどうか決めるための多面的な情報を十分に得るのは困難だった」と判断し、母親の不当な心理的影響も指摘した。

 その上で、母親が返還命令に従わず、息子を父親に引き渡さないのは明らかに違法と結論づけた。

 争っているのは米国で暮らしていた日本人夫婦。母親が2016年に息子を連れて帰国し、父親がハーグ条約の国内実施法に基づいて東京家裁に息子の返還を申し立てた。家裁は返還を命じたが母親は応じず、父親は息子の引き渡しを求め人身保護請求の裁判(2審制)を起こした。

 1審の名古屋高裁金沢支部は昨年11月、「息子は自らの意思で日本に残ることを選んだ」と請求を退けたが、最高裁は今年3月、母親の不当な心理的影響を受けていると言わざるを得ないとして破棄し、審理を名古屋高裁に差し戻した。

 ハーグ条約は、親の一方が断りなく16歳未満の子を国外に連れ出した場合、残された親の求めに応じ、原則として子を元の国に戻さなければならないとしている。【野村阿悠子】

「離婚で子供に会えない」を減らすための、ある弁護士の試み

出典:平成30年7月17日 週刊現代

「離婚で子供に会えない」を減らすための、ある弁護士の試み 新たな解決方法を模索して

 西牟田 靖

離婚を巡る夫婦の話し合い。円滑に進めばよいのだが、特に子供がいる場合は、親権を巡って夫と妻の間で激しい争いとなってしまうケースが多い。近年では、弁護士が依頼者に強く肩入れして、決して子供と夫婦のためにはならないような「助言」を行うこともあるのだという。
妻と離婚し、その後、子どもに会えなくなったというAさんの話と、「円満な離婚」を推進するため、新たな取り組みを行っている横粂勝仁弁護士の話から、いまの「離婚紛争の問題点」と改善策について考えてみたい。

■別れるつもりはなかったのに
「13年前、妻と息子二人と一緒に暮らしていたときのこと。ある日、妻が浮気をしているかもしれないことに気づきました。携帯を置いたまま外出した妻の携帯がチカチカ光っていて、画面には、知らない男の名前が表示されているんです。浮気じゃないかと疑った私は、本人に問いただしました。すると妻は男との一定の関係は認めたうえで、『一線は越えてない』と言い張りました。
同居している義父母を交えて話し合ったのですが、妻を叱ってくれるどころか逆にかばってしまい、なぜか私が悪者に……。結果、妻や義父母との仲がこじれてしまいました」
こう話すのは、離婚後、息子と会えなくなってしまったAさんだ。妻をかばう義父母らによって家に居づらくなったため、その日、Aさんはやむなく実家に泊まった。それ以来、妻の実家に戻ることはできず、別居状態となった。なんとか子供にだけは会いたいと、毎週末、妻の自宅へ戻ったが、そのうちわざと留守にされるなど、子供たちから遠ざけられたという。
別居して10ヵ月あまりが過ぎたある日、その関係に突然変化が訪れる。
「妻は離婚について弁護士に相談していました。ある日、妻側の弁護士から夫婦関係調整調停の申立書というものが届いたのです。そこには調停の日時や場所が記されていました。要は、家から荷物を全部移して、離婚をしてくれ、ということです。私は弁護士を雇い、指定された裁判所へ出向いて、こう主張しました。
『子供たち二人がまだ小さい。だから別れる気はありません。住んでいる家から荷物を移す必要も感じません』と。
するとその場にいた妻側の女性弁護士が突然怒りだし、私や私の担当弁護士に『あんた民法知ってんの? こうなったら訴訟だ!』と叫んで、話し合いが行われていた調停室から、調停委員会の許可なく退出してしまったのです。唖然とするほかありませんでした」
その後、妻側の弁護士は離婚等を求める訴訟の書面を出してきた。その文面を確認したAさんは目を疑った。
「一審の家庭裁判所での妻側の離婚訴訟の書面には、私が妻や子に振るったとする、DVの事例がいくつも記されていました。
例えば、離婚訴訟中に子供を連れて結婚式に行ったとき、前泊したホテルで子供がベッドから落ちたんですが、それを私のDVが原因だと主張されたんです。こうした事例が家庭裁判所にDVとして認められてしまい、その結果、私はDV夫と見なされ、親権を妻に取られてしまったんです。
納得できるはずもなく、私はすぐに東京高等裁判所に控訴しました。ところが審理は一度も行われず、なぜか裁判官から『裁判所に来るように』と呼び出されました。それを受け、私が裁判所の和解室に出向くと、裁判官が私に和解を勧めてきたんです」
以下は、その裁判官との和解室での会話を再現したものだ。
裁判官「旦那さん、あなたがDVするから奥さんが浮気したんでしょ。慰謝料、大幅減額してあげるから和解しなさいよ。いくらなら払えますか?」
Aさん「大幅減額って、(DV)やってないんですから減額も何もないじゃないですか。慰謝料なんて払う気はありません」
裁判官「家庭裁判所でそう決まりましたよ」
Aさん「だから控訴してるんじゃないですか。(裁判中の)今現在でさえ、私が子供に会いに行っても妻は子供に会わせないんですから、(離婚したら)ますます会わせなくしますよ」
裁判官「あ~あ、じゃあ、判決書くしかないかな……。旦那さん、お子さんに会えてないんでしょ。じゃあ会えるように(和解調書に)書いてあげるから、(和解に応じるかどうか)1週間考えてくださいよ」
Aさん「裁判官がそう仰るのでしたら考えます」
1週間後、Aさんは裁判所に再び向かう。そして同じ裁判官と和解室で、再び対峙する。裁判官はAさんに向かって、作成した和解調書を読み上げた。
そこには「(子供との面会交流は)1ヵ月に2回実施、ただし、熱が37℃以上あったり、子供が望まなかったりした場合は実施しない。また(子供に会えなかった場合)代替日は求めない」という条項が列挙されていた。月2回の面会を認めてはいるものの、これでは妻の気持ちひとつで、子どもに会えない可能性がある。この条件はとても飲めない、とAさんは思った。
以下はそのAさんと裁判官との2度目のやりとりである。
Aさん「こんな条項を入れていたら、これを理由に子供に会わせない事ができるじゃないですか。これ(熱があったり、子供が望まなかったりした場合は実施せず、代替日もない、という条項)は外してください」
裁判官「この条項の意味は、例えばお子さんだって、2週間に1度会っていても、たまには気分が乗らない事とか、友達と遊びたいという時だってあるでしょ。そういう意味で、普通、和解調書に入れるんですよ。これでお子さんに会えますよ」
Aさん「(裁判官がそういうのなら)そうですか。わかりました」
以上のやりとりを経て、結局Aさんは和解に応じた。早くわが子に会いたい、という気持ちが日増しに強くなっていたからだ。わが子に会えるなら、それ以上のことはない。だからこらえようと、Aさんは思ったという。

■子供とは会えないままで
その後の状況について、Aさんに詳しく話を聞いた。
――その後、お子さんとは会えたんですか。
「最初の6ヵ月は飛び飛びで面会できていました。しかしその後は『子供が熱を出した』『予定を入れた』『お腹が痛い』『会いたくない』などの理由で毎回キャンセルされるようになりました。
そこで私は、妻側の弁護士に抗議しました。『毎回、面会を休むのはヘンです。診断書を出してください』と。しかし、その提案は無視されてしまいました。私は『これでお子さんに会えますよ』という裁判官の甘言に釣られてしまいました。子供たちとはもう10年もの間会っていません」
――それで和解した後はどうされたのですか。
「『あんた民法知ってんの?』という暴言を吐いたりするなど、妻側の弁護士の言動に承服しがたいものがあった。そこでその弁護士が所属する弁護士会に懲戒請求(※)をかけたんです。しかし、その弁護士会に却下されてしまいました」
(※懲戒請求――弁護士法によると「何人も、弁護士又は弁護士法人について懲戒の事由があると思料するときは、その事由の説明を添えて、その弁護士又は弁護士法人の所属弁護士会にこれを懲戒することを求めることができる」(第58条)とある。)
Aさんはその却下を不服とし、日本弁護士連合会(日弁連)に異議を申し出た。それを受け、後日、日弁連の懲戒委員会で審査が行われた。
「日弁連が、調停中の妻側弁護士の『民法知ってるの』などといった暴言を問題視したようです。その結果、懲戒請求が元の弁護士会に差し戻されまして、懲戒委員会が開かれました。それがこの議事録です」
そこには次のようなことが記されていた。括弧内に原文を要約してみよう。これは、妻側の弁護士が、懲戒委員会で発言したものだ。
「どうしても子供とAさんとの面会交流をさせたくないという強い希望が(依頼者であるAさんの妻から)ありました。和解の中で、面会の条項を定めることも彼女は嫌がっていた。当日、話し合いの場に彼女がいなかったので、裁判官が私の携帯電話を通じて、長い時間をかけて説得をし、『こういう条項を入れるからどうですか』みたいなご提案をされて、それでようやく決まった条項なのだと認識しています」
これをかみ砕いて、第三者の目で書くと次のように解釈できる。
「どうすればAさんと子供を会わせないで済むか、裁判所の和解室で妻側の弁護士と裁判官が協議した。その結果、『形式的には面会交流を認めるものの、条項を設けておくことで、Aさんと子供を会わせなくて済むようにする』という内容で話がまとまった。
妻側の弁護士は確認のため、自分の携帯電話を使い、依頼人であるAさんの妻に電話。ところが、面会交流自体を認めたくない妻を説得しきれなかった。
そこで、その妻側の弁護士は、裁判官に自分の携帯電話を渡し、Aさんの妻を直接説得してもらった。『面会交流は認めるものの、但し書き条項を入れることで、それを理由に会わせなくて済むんですよ』という言葉を裁判官から聞いたAさんの妻はようやく納得し、電話を切った。そうやって決まった条項だった」
その後、Aさんは、裁判官の和解提案に応じた。もちろんそのとき、Aさんは知らなかった。妻側弁護士と裁判官がこんな話し合いをしていたことを。
結局、Aさんは10年もの間、子供たちと会えないままだという。

■時間が経てば経つほど
日本では離婚した後に、片方の親が親権を持つという、単独親権制度がとられている。別居した後、親同士がもめてしまい、法廷での紛争(調停、審判、裁判)に持ち込まれた場合、子供と一緒に暮らしている親が引き続き、一緒に暮らしたり、親権をとることが通例となっている(継続性の原則)。
そのためなのだろう。子供の親権を持ち、子供と一緒に暮らしたい親が、片方の親を追い出したり、子供を連れて別居したり、という手段に出ることがよくある。紛争(調停や審判、裁判)で双方に弁護士がついたことから、状況が複雑化、あることないことがごちゃ混ぜの“泥沼の戦い”に突入してしまったりすることが珍しくない。
そうした現状を疑問視する弁護士もいる。その一人が、"離婚と親子の相談室らぽーる"でADR(裁判外紛争解決手続)に関わっており、離婚紛争において発生する親権問題に詳しい、横粂勝仁弁護士だ。
横粂弁護士に、諸々の問題について訊ねてみた。
――調停や裁判といった紛争の中で、親権獲得を有利にするために、弁護士が親と子供を引き離したり、連れ去ったりするという手法を示唆することは、実際にある話なのですか?
「引き離し罪や連れ去り罪といったものはありませんし、Aさんのケースのように、夫と子供が引き離されることも、それ自体は犯罪ではありません。弁護士は依頼者を勝たせることが何より大事ですから、よくあると言えるかは分かりませんが、そうした手法が採られることは、現実的にあります。
長く監護した親のほうに親権や監護権を認めるという『継続性の原則』がありまして、離婚時に、親権や監護権を得たいと依頼してきた方に、積極的に『連れ去れ』とは言わなくても、
『相手は子育てに積極的、しかも実家は近くですので、相手が子供の監護をすることが十分可能ですね。これはあくまで一般論ですが、連れ去っちゃった人が親権や監護権を認められるというケースはたくさんありますよ』
というふうに一般論として説明して、『先に連れ去ったほうが有利』ということをほのめかすことはあるかもしれません」
拙著『わが子に会えない』にも記したが、離婚紛争の途中で、相手側から身に覚えのない暴力を主張された、と話す人が実に多い。罰則がないので、虚偽だと判明しても、それを主張した側にはなんのお咎めもない。そうした“嘘”について反論しているうちに、別居状態がさらに長引くことになる。いわゆる、「虚偽DV」と呼ばれている問題だ。
もちろん、子供や配偶者に対するDVは許されるものではない。本人が否定していも、実際にはDVを行っているケースもあるだろう。しかし、現実に「虚偽DV」という問題は存在すると横粂弁護士は指摘する。
「まず、DVの問題は非常にセンシティブです。深刻なDVに悩んでいる方が多くいることは認識していますし、絶対に許されない行為です。また、おっしゃる通りDVを行ったにもかかわらず、加害者がそれを否定するというケースもあるので、とても難しい問題です。その判断は慎重になされるべきです。
しかしながら、恒常的な暴力はなかったにもかかわらず、裁判で『DVがあった』と認定されるケースも一部存在していることもまた事実です。
弁護士は依頼者の要望通りに事を進めるために、相談の中で、どういったことを主張すればいいのか提案していくわけですが、離婚がテーマの場合、特に重要となるのが、『相手が不利となるような証拠』です。つまり、浮気やDVの『証拠』があれば、依頼者に有利な形で離婚裁判を進めることができます。
しかし、証拠がないとなかなか認められない。そこで、
『暴言を吐いた様子の録音などといった証拠を集めてから、離婚を申し立てるのがいいんじゃないですか』
と弁護士が依頼者に伝えることもあるでしょう。その『助言』を受けて、依頼者が、それならわざと相手を怒らせて、その声を録音して証拠にしよう……と考えても不思議ではありません」
たった一度でも暴言や怒鳴り声をあげてしまい、それが証拠として提出された場合、裁判官の心証は大変悪くなる、という。
「どんなに温厚な人でも、罵倒され続けると腹が立ちますよね。罵倒を続けて、堪忍袋の緒が切れて『いいかげんにしろ』と怒鳴ったところを録音される。
そしてそれを証拠に、『DVを受けた』と主張されてしまったりすることがあります。こうした手法は法律で禁止されている訳ではないのです」
違法でなければ、テクニックとして、そうした方法を使うことも辞さない――そうした手法が採られることもある、ということを横粂弁護士は暗にほのめかした。
――親権を取られたとしても、子供と定期的に会い、育児に関わることが出来れば、まだ納得がいきます。しかし別居親の中には、育てることどころか、会うことすら出来ていない人が多くいる。これはなぜでしょうか。
「子供を連れ去られた、と主張する側が面会交流や離婚の調停中に定期的な面会を求めたとしても、言い分はほとんど却下されます。面会が決まったとしても、それは月に1回か2回、2時間ずつといった短時間が相場です。
また、面会がうまくいくとは限りません。相手に『お父さん(お母さん)が悪い』『お父さん(お母さん)はひどい人』などと吹き込まれた子供が、敵意や警戒心を持ってしまったり、それがなくても空白を埋めるのが大変だったり、会う時間が短すぎてうまくコミュニケーションがとれなかったりするからです。
それを受けて『親として不適格』ということで面会がどんどん減らされたり、あるいは『子供が会いたがらない』『病気になった』『時間が合わない』という理由で面会がキャンセルされ、再会が先延ばしになったりすることも少なくありません。
母親が会わせたくないばかりに、毎回何かと理由をつけて会わせない等々、時間が経つにつれて、親子関係が断絶してしまうということが多々あるのです」

■よりよい解決法は…?
――現在の調停や裁判のやり方は、ケースによっては家族関係を破壊している側面もあるようにも見えるが。
「同じ裁判でも、たとえばおカネをめぐる訴訟とか、企業間の訴訟とかであれば、いわゆる弁護技術として、先に相手が不利になるような『既成事実』を作った上で戦ったり、相手を陥れたり、といったことはあるかもしれません。もちろん法律違反はしてはいけませんが、そういった戦略自体は、『弁護技術』ということで、なかば社会に認められていることでもあります。
しかし、家族を巡る問題で、そのような弁護技術を使ってまでして、弁護士が一方に加担するのはいかがなものか、と私は思っています。いろいろな形がある家族を、一つの方程式に投げ込むだけでは、おかしな答えが出てきてしまうからです。
そのような裁判の過程で、離婚を決意した時よりも夫婦の『溝』が深まってしまい、なおさら『この人には子供を会わせたくない』という気持ちが強くなってしまうこともある。結果、家族の間に拭いがたい傷をもたらします。
子供はすぐに成長します。ですから、裁判で形だけでも会わせるような合意をさせて、実際はほとんど会わせない……といった手法は、人としてやってはいけないことだと思います。相手をどれだけ憎んでもいいですが、相手に子供を会わせるかどうかは、一方だけで決めていい問題ではないでしょう」
――こうした現状を変えていくことはできないのか。
「子供を連れ去った方が有利だという現状や、DVについては被害を訴える側に最大限配慮したうえで、しっかりと証拠を確認するなど、そういうことを取り決めた、弁護士界全体の紳士協定のようなものが必要ではないか、と思います。
たとえば諸外国では、子供の連れ去りが犯罪とされていたり、離婚した後にも両親には共同親権が認められていたりします。今後、日本でも諸外国同様のシステムへと法改正していく必要があると思います。
もちろん、本当に配偶者や子供がDVの被害を受けている場合もあるので、慎重な議論が必要です。被害者の安全は十分に確保しながら、プロが入って、当事者同士の関係の折り合いをつけていったり、DVの実態を調査したり、面会交流の仕組みを決めていったり……といった細やかな配慮が必要でしょう。
実際、そういった仕組みを作っている国もありますし、双方の親が年の半分ずつ子供の面倒を見るのが当たり前という国もあります。日本はまだそうした国に比べると、法が実態に追いついていないというのが現状です」
横粂弁護士の話からも、弁護士が「連れ去り」を「示唆」したり、あるいは離婚裁判を依頼者の有利なように進めるために具体的な指示を出すケースが、一部では存在することが分かった。しかし、これはともすると夫婦の仲を決定的に悪化させることにもつながっているのではないだろうか。
私はこれまで、数多くの離婚問題を取材してきた。話を聞いてきた人の中には、相手方の弁護士を強く恨んだり、裁判所へ失望したという感情をあらわにする人が珍しくなかった。その中には「弁護士が夫婦の仲を引き裂いた」と思っている人もいるだろう。
ひどく痛ましい話だが、実際、離婚訴訟において、相手方の弁護士を殺害する事件も過去には起こっている(「弁護士殺害で無期懲役判決、横浜地裁 (日本経済新聞2011年3月1日)」)。
今後、弁護士は夫婦間の憎しみを増幅させるような手法を慎み、円満離婚を手がける文字通りの"別れさせ屋"として活路を開いていくべきではないか。可能であれば、離婚前に弁護士が入って共同養育計画書を作らせ、そこに弁護士が関わることを義務化するなど、離婚のプロセスを変革していくべきだろう。
昨今、共同親権についての議論が活発化しているが、実は、弁護士が円満離婚を手がける取り組みは、横粂弁護士がすでにその一端を拓いている。ひと言でいえば、それは「裁判に寄らない、夫婦間の紛争解決の新しい形」を目指したものだという。
「私が関わっている"離婚と親子の相談室らぽーる"では、裁判所のように離婚問題に勝ち負けをつけるのではなく、子供にとって一番良いと思える解決案を作ろうという、ADR(裁判外紛争解決手続)を行なっています。
そこでは弁護士資格を持った仲裁人と、離婚問題に携わった経験のある相談員が、中立的な態度で夫婦間の話し合いの場に立ち会い、別れた後、どうやって面会交流をしていくのか、など、なるべく細かい条件まで詰めていきます。そうして出来上がった共同養育計画合意書は、公正証書化します。
裁判所のような強制力がない分、夫婦二人ともが話し合いの場に出席するとは限りません。しかし、強制ではない分、自発的なやりとりが期待できますし、合意した内容にも満足してもらっています」
現状の裁判の制度では、必ずしも「幸せな離婚」ができるというわけではなさそうだ。特に子供のいる場合、その問題点が顕在化する。横粂弁護士が提示したような、新たな仕組みや枠組みが必要とされているのではないか。
また、離婚を考えている既婚者は、まずは子供の将来のことを考えて行動してほしいと切に思う。一番の被害者は夫でも妻でもなく、子供なのだ、と考えると、離婚は避けられなかったとしても、また別の、よりよい解決方法が浮かんでくるのではないだろうか。

離婚後も双方に責任を…「共同親権」新制度検討

出典:平成30年7月15日 読売新聞

離婚後も双方に責任を…「共同親権」新制度検討

 政府が、離婚後に父母のいずれか一方が親権を持つ「単独親権」制度の見直しを検討していることがわかった。離婚後も双方に親権が残る「共同親権」を選べる制度の導入が浮上している。父母とも子育てに責任を持ち、親子の面会交流を促すことで、子どもの健全な育成を目指す。

 法務省は親権制度を見直す民法改正について、2019年にも法制審議会(法相の諮問機関)に諮問する見通しだ。

 1896年(明治29年)制定の民法は、家制度を色濃く反映している。親権が子どもに対する支配権のように誤解され、児童虐待につながっているとの指摘もある。親権は2012年施行の改正民法で「子の利益のため」と明記されており、政府はこの観点から更なる法改正に着手する方向だ。

突然子どもに会えなくなる「虚偽DV」の悲劇

出典:平成30年7月12日 東洋経済ONLINE

突然子どもに会えなくなる「虚偽DV」の悲劇

名古屋地方裁判所は4月、「DV加害者」と不当に認定された夫側の主張を認め、妻と県に55万円の賠償を命じる判決を下した。
これまで、離婚して子どもを引き取った側がDV等支援措置を使って面会交流を妨害することがあっても、被害者の申し立ての真偽や、身の危険が本当に及ぶのかという緊急性についてはほとんど考慮されてこなかった。その意味では画期的な判決である。
本裁判の経緯を当事者の夫と妻側の弁護士に話を聞いた。

 仕事から帰ってくると、妻と子がいない。突然のことに呆然としているうちに、離婚調停を求める書類が届く。妻と子の消息をたどるために役所に行くと、住所がブロックされ消息がわからなくなっていた――。

 結婚したカップルのうち3分の1が離婚する現代。こうした話は珍しくない。典型的なのが、住民基本台帳事務におけるDV等支援措置(以下、DV等支援措置)を使っての親子引き離しである。

 この措置は本来、DV加害者がDV被害者の居所を探索することを防止し、被害者保護を図るためのもの。いったんこの措置が取られると、管轄の市区町村が“被害者”の住民票や戸籍をブロックする。そのため加害者は被害者の消息を追えなくなる。
 被害者の申し立ての真偽や、身の危険が本当に及ぶのかという緊急性についてはほとんど考慮されない。加害者による異議の申し立てを受け付けることもない。虚偽であったとしても“被害者”として虚偽申告した者に対して何の罰則もない。

 離婚紛争においてこうした制度の欠陥を“悪用”し、面会交流を妨害するケースが後を絶たず、減る兆しはこれまでまるでなかった。

 そうした中、今年4月、名古屋地方裁判所でこれまでになかった判決が下された。
 「虚偽DV見逃しは違法 妻と愛知県に異例の賠償命令 名古屋地裁 支援悪用、父子関係絶つ」(5月8日付産経新聞)

 記事の内容は次のとおり。

 DVの話を警察官が鵜呑みにした結果、不当にDV加害者と認定され子どもに会えなくなってしまったと夫側は主張、妻と県に損害賠償を求めた。名古屋地裁は夫の主張を認め、妻と県に55万円の賠償を命じる判決を下した。

 ニュースを知って私は驚いた。措置によって子どもと会えなくなったという話は当事者の口から何度も聞いてきた。しかし、こんな形で「DV加害者」の主張が認められる判決は一度も聞いたことがなかったからだ。

 詳細を知りたいと思った私は、名古屋へ行き、双方の代理人と父親に話を聞いた。

■帰ってきたら妻と娘がいなかった

 「夜、仕事から帰ってきたら家の中が真っ暗でした。ガランとしていて、妻と娘は家にいない。その日の夜はショックで一睡もできませんでした。仕事に行っても集中することが全然できなくてミスばかり。突然、涙があふれてくることも当時はありました。別居の4日前には、妻の希望で2泊3日の家族旅行を楽しんだ直後のことでした。今考えると、計画的な行動だったのではないかと、妻の行動に恐怖さえ感じています」
 そう話すのは公務員の佐久間利幸さん(40代、仮名)である。

 2006年、利幸さんは広子さん(40代、仮名)と結婚。翌2007年9月には長女の静香ちゃん(10歳、仮名)が誕生する。2012年の年末、3人での共同生活に終止符が打たれる。それは利幸さんが留守をしている間に、広子さんが当時まだ5歳の静香ちゃんを連れて、別の町にある実家に身を寄せたからだ(2013年3月、母子はアパートに移転)。

 「娘の写真を見るのがつらいです。元気ではつらつとした子どもだったのに、広子の弁護士から送られてくる今の娘の表情は虚ろなんです」
 アンパンマンのようにふっくらとして、いかにも優しそうな利幸さんは、そう言って肩を落とした。

 利幸さんの代理人、梅村真紀弁護士に別居後の経緯を聞いた。

 「2013年3月に離婚と面会交流という2つの調停が始まり、同年5月に裁判所で試行面会が実施されました。これは面会室で30分だけ会わせ、その後の面会交流の方針を決めていくというもの。静香ちゃんはすごくお父さん子でしたから再会できてとても喜んでいました」
 裁判所にも関係良好と認められる。7月には「審判で面会が決まる前の段階であっても月に1回は会わせるように」と裁判官は広子さんに約束させた。

 面会の様子について利幸さんは語る。

 「2013年8月からは月1回、娘と会いました。別居する前と同様に祖父母やいとこといった親戚と過ごしたり、プールに行ったり。家に戻ってきたときは、自分の部屋のいすに座ってぐるぐる回ったり、自分のおもちゃで遊んだり、毎回楽しく過ごしました」

 面会交流の実績が評価されたのか、2014年5月末の審判は利幸さんにとってかなり好条件な取り決めとなった。第1週末は宿泊、第3週は日帰りという月2回の面会交流のほか、春夏冬休み期間中の長期宿泊面会、学校行事への参加や手紙や贈り物を送ったりする権利が認められた。

 その後はどうなったのか。梅村弁護士は続ける。

■娘を「精神的に不安定」として通院させ始めた

 「審判確定の3日後、広子さんは『娘は精神的に不安定』として静香ちゃんを通院させ始めました。主治医に面会交流に関する意見を書いてもらおうとしたんです。それから1週間後の6月第1週、宿泊面会が実施されました。ところが面会はそれっきり。『子どもが精神的に不安定』『主治医の許可が下りるまで面会は不可』といった理由で拒絶されてしまったんです。
 そこで翌7月、間接強制を申し立てました。これは面会交流を不履行するごとに間接強制金という“罰金”を支払うというもの。9月に申し立てが裁判所に認められ、広子さんは1回の拒絶につき1万円の“罰金”が科せられることになりました(額はその後1回につき4万円と増額)」(梅村弁護士)

 10月に入ると突然、児童相談所から電話がかかってくる。利幸さんは話す。

 「“夫の性的虐待の疑い”で静香を一時保護したとのこと。期間は2カ月。それまでの面会交流審判や間接強制決定の際、広子からそういった主張は一切ありませんでしたし、もちろん僕には身に覚えがありません。そもそも別れて暮らしているのにどうやって性的虐待を働くのでしょうか。まるでタヌキに化かされたような気分でした。
 静香がどこに保護されているのか、児童相談所は教えてくれません。『妻が娘を通院させている病院と関係あるんですか』と聞くと、『通院させている病院は一切かかわっていません』と説明されました」(利幸さん)

 一時保護は2カ月超、実施された。「お父さんのところに帰りたい」と訴えた静香ちゃんの意思は尊重されず、広子さんのところへ戻された。当然ながら、利幸さんからの性的虐待は確認されなかった。

 静香ちゃんの一時保護先は、広子さんが通院させていた病院であった。児童相談所は虚偽の説明を行っていたのだ。

 2015年1月、利幸さんは静香ちゃんの授業参観に駆けつける。

 「休み時間に『今度いつパパのところにお泊まりができるの?』と娘に聞かれました。『お母さんが認めてくれたらね』と答えると、娘は、さっそく妻のところへ聞きに行きました。しばらくして泣きじゃくる娘の声が廊下から聞こえきました。『どうしたの?』と聞くと、娘は『ママが……ママがお家に泊まるの……だめって言うの……』としゃくり上げていました」(利幸さん)
 静香ちゃんは荒れた。

■児相に一時保護を要請し、抗精神病薬も飲ませる

 手を焼いた広子さんは、反抗して暴れるようになった静香ちゃんの一時保護を児童相談所に要請したり、抗精神病薬を飲ませたりするようになった。小学校には行けたとしても遅れて登校したり、保健室にずっといたりという状態だった。

 記事に記された損害賠償請求訴訟は2016年8月、名古屋地裁で始まっている。梅村弁護士は話す。

 「審判で決まった面会交流や間接強制。広子さんはこれらから免れる目的で動きました。2016年3月末、広子さんはDV等支援措置の申し出を行い、静香ちゃんとともに転居してしまいます。これにより利幸さんは住民票などの閲覧をブロックされるようになりました。私たちが損害賠償請求を起こしたのは、制度を悪用して利幸さんと静香ちゃんの面会交流を妨害し、名誉を毀損した広子さんの行為に対してです」(梅村弁護士)
 県も訴えている。

 「広子さんが支援措置を受けるための要件を満たしていないことを認識しえたはずなのに、県警は『要件を満たす』との意見を安易に付しました。学校行事参加や手紙などの送付という、審判で確定した権利が利幸さんにあることを知ってもなお『住所秘匿』を認める支援措置の意見を撤回せず名誉を毀損し続けたんです。だからこそ県も訴えることにしたんです」(梅村弁護士)

 2018年4月、名古屋地裁の福田千恵子裁判長は利幸さん側の損害賠償請求に対し、広子さんによるDV等支援措置の目的外使用を認定した。また愛知県に対してもDV支援措置の要件を満たすか否かの通常尽くすべき調査義務を尽くしていないとして違法性を認め、広子さんと県に対し請求した金額330万円のうち55万円の支払いを命じたのだった。

■妻とその代理人の主張

 妻の広子さんやその代理人は、どのようなことを主張しているのだろうか。2012年から広子さんの代理人を務める可児(かに)康則弁護士に話を聞いた。損害賠償を求められたとき、何を主張したのか。

 「まず申し上げたいのは、広子さんが支援措置の申し立てを行ったことは違法ではない、ということです。同居中に彼女は身体的暴力を複数回、暴言は日常的に受けていました(被害者要件)。そのことから別居後3年経っても、利幸さんに対する恐怖や不安感をぬぐえずにいました(危険性要件)。DV等支援措置が取られる要件(被害者・危険性要件)はどちらとも満たしていたんです」(可児弁護士)
 2014年5月、宿泊付きの面会を含む月2回の面会や学校行事への参加などという条件で取り決めが行われた。しかし2016年2月、静香ちゃんの主治医から『当面、面会(直接)交流は控えるべき』という意見書が出た。「3月に広子さんがDV等支援措置を申し立てた時点で、利幸さんの面会交流や学校行事への参加は子の福祉の観点から認められない状況にあったと考えます。広子さんは住民票を移していません。だから支援措置がかかっているかどうかは別として母子の住所を利幸さんが知ることはできません」(可児弁護士)。
 行方不明者届の不受理届を出すため広子さんは警察署に行った。理由は、静香ちゃんの学校行事に夫の利幸さんが参加することに静香ちゃんが拒否的な反応を示したこと、夫に知られた住所で暮らすことに母子ともに限界を感じ、引っ越すことにしたからだという。

 「警察に転居のことなどを話し、行方不明者届の不受理届の提出をお願いしたところ、担当の警察官から『支援措置を使ったほうがいいですよ』と親身なアドバイスをもらいました。それを受け、彼女は警察に備え付けてあった支援措置の申出書をもらって、必要事項を書き、警察に意見をもらったうえで、市役所に提出しました。このとき警察のアドバイスがなければ広子さんが支援措置を申し立てることはなかったと考えています」(可児弁護士)

 支援措置に加害者の主張が考慮されていない現状について、可児弁護士はどう考えるのか。

 「この依頼者に限らず、一般的にDV被害者は、恐怖や不安を感じているということを理解していただきたいと思っています。第三者からすると『それほどでもないんじゃないか』と思うことはあるかもしれませんが、本人は、言い知れぬ恐怖や不安を抱いているのです。

 今後、被害者が支援措置を申し出るとき、『危ないかどうかは自分できちっと判断しないと後で責任を問われる可能性が出てきます』と言われたり、今回のように後で損害賠償が普通に認められたりしたら、ただでさえ恐怖や不安を持つ被害者は、怖くて、誰も、支援措置の申し出ができなくなってしまいます」(可児弁護士)
 論理的で理路整然としている可児弁護士の話を聞くと、なぜこんな判決になったのかわからなくなってしまう。そこで梅村弁護士に再び質問をした。警察のアドバイスがあったからこそ広子さんは支援措置を申し立てたのではないのだろうか。

 梅村弁護士によると、別居して以来、彼女は何度か警察に相談に行っていた。その相談時期はいずれも、裁判などで自分の言い分が通らず不利益な取り扱いを受けた後だった。2013年7月に『同居中に暴力を受けた』と警察に相談に行っているが、その直前、警察から、彼女自身が静香ちゃんへの虐待の疑いで質問をされていた。
 「2015年6月には『夫に住所がばれた』『夫が学校行事に参加する』ということを彼女は警察に相談しています。その直前、面会交流審判の不履行1回につき4万円の間接強制金を払えとの裁判所の決定が出ています。

 2016年3月末、警察を訪れたことで、支援措置が取られました。実はその前の1月末、利幸さんが授業参観に参加し途中で帰った後、静香ちゃんは学校内で広子さんに攻撃的な態度を取ったそうなんです」(梅村弁護士)

■これ以上学校に来てほしくないと考えて取った措置

 不利益を打開するために警察に行ったということなのだろうか。しかしそれだけでは、警察からアドバイスされて支援措置を取ったという説を覆せないのではないか。そんな私の疑問に梅村弁護士は続ける。

 「2015年の訪問時、広子さんは警察官から『110番すればすぐに警察が訪問するようにできます。あと保護命令という制度もあります』と提案されています。そのとき彼女は『何か具体的な行動を彼が取ってくるわけでもない。だから結構です』と言って提案の実施を断っています。

 2016年3月に警察に相談へ行ったときは態度が一変、結果的に支援措置を申請しています。1月末の授業参観で利幸さんが途中で帰った後、静香ちゃんは広子さんに攻撃的な状態になったから、広子さんは、これ以上、利幸さんに学校に来てほしくないと考えました。そのために実行したのが転居と支援措置の申請だったのです。そして実際、学校や教育委員会は措置を受け、利幸さんに静香ちゃんの学校情報を秘匿するようになりました」(梅村弁護士)
 なるほど、住民票を移動させないなら、住民票で転居先がバレないので支援措置の必要はない。学校行事への参加等を妨害する目的があったと考えるのが普通だろう。

 学校行事へ参加したときを含め、これまでに、利幸さんによるDVは本当になかったのだろうか。

 「審判のとき、妻側は面会を拒絶する理由として同居中のDV被害を主張していました。しかし、利幸さんが詳細に反論したところ、同主張を主たる争点とするのをやめてしまいました。でも支援措置では利幸さんに反論の機会はありませんし、この時点で別居して4年経っています。万一、同居中の暴力があったとしても、それをもって『現在もDV被害を受ける危険性がある』と考えるのは無理があります」(梅村弁護士)
 広子さんが警察を2度目に訪れた2015年6月から3度目の2016年3月まで、その間に差し迫った暴力の危険はまったくなかったのか。それについて梅村弁護士はこう説明する。

 「2016年3月の県警の相談票には『引っ越します』とだけ記載されていました。実際、DV被害について広子さんから警察に説明することも、逆に警察から広子さんに聞くこともなかったそうです。県警は過去にDV相談の実績が存在すればどれだけ時間が経過しようとも『現在もDV被害を受ける危険性あり』という意見書を出してしまうのです」(梅村弁護士)
 そういう意味でも今回の判決は画期的と言えるだろう。今後、支援措置の目的外使用というのはなくなっていくのではないだろうか。

 判決を出した福田千恵子裁判長は『支援措置はDV被害防止目的のために用いられるべきもの』『支援措置の不正目的使用は社会問題。それは県もわかっているはず』と発言したという。つまりこの紛争を利幸さんだけの特別な事案ではなく一般化できる問題だと判断したということだ。

 「これは地味だけれど現在支援措置の目的外使用により被害を受けている人すべてに適用できる画期的な判決。絶対維持しなきゃいけない判決だと思っています」(梅村弁護士)

2016年3月に警察に相談へ行ったときは態度が一変、結果的に支援措置を申請しています。1月末の授業参観で利幸さんが途中で帰った後、静香ちゃんは広子さんに攻撃的な状態になったから、広子さんは、これ以上、利幸さんに学校に来てほしくないと考えました。そのために実行したのが転居と支援措置の申請だったのです。そして実際、学校や教育委員会は措置を受け、利幸さんに静香ちゃんの学校情報を秘匿するようになりました」(梅村弁護士)
 なるほど、住民票を移動させないなら、住民票で転居先がバレないので支援措置の必要はない。学校行事への参加等を妨害する目的があったと考えるのが普通だろう。

 学校行事へ参加したときを含め、これまでに、利幸さんによるDVは本当になかったのだろうか。

 「審判のとき、妻側は面会を拒絶する理由として同居中のDV被害を主張していました。しかし、利幸さんが詳細に反論したところ、同主張を主たる争点とするのをやめてしまいました。でも支援措置では利幸さんに反論の機会はありませんし、この時点で別居して4年経っています。万一、同居中の暴力があったとしても、それをもって『現在もDV被害を受ける危険性がある』と考えるのは無理があります」(梅村弁護士)
 広子さんが警察を2度目に訪れた2015年6月から3度目の2016年3月まで、その間に差し迫った暴力の危険はまったくなかったのか。それについて梅村弁護士はこう説明する。

 「2016年3月の県警の相談票には『引っ越します』とだけ記載されていました。実際、DV被害について広子さんから警察に説明することも、逆に警察から広子さんに聞くこともなかったそうです。県警は過去にDV相談の実績が存在すればどれだけ時間が経過しようとも『現在もDV被害を受ける危険性あり』という意見書を出してしまうのです」(梅村弁護士)
 そういう意味でも今回の判決は画期的と言えるだろう。今後、支援措置の目的外使用というのはなくなっていくのではないだろうか。

 判決を出した福田千恵子裁判長は『支援措置はDV被害防止目的のために用いられるべきもの』『支援措置の不正目的使用は社会問題。それは県もわかっているはず』と発言したという。つまりこの紛争を利幸さんだけの特別な事案ではなく一般化できる問題だと判断したということだ。

 「これは地味だけれど現在支援措置の目的外使用により被害を受けている人すべてに適用できる画期的な判決。絶対維持しなきゃいけない判決だと思っています」(梅村弁護士)

■相談内容の真偽にかかわらず支援措置が受けられる現状

 ただし、この判決だけで警察が大きく変わるとは梅村弁護士は考えていないという。

 「警察はDVの訴えが虚偽か否かを調査することよりも、コストや手間を優先するでしょう。門前払いした相談者がその後、被害に遭った場合、安くても数千万円以上という損害賠償請求を県は受けるかもしれません。そうなるぐらいなら、利幸さんのような支援措置悪用による被害者を作り続けたほうが55万円程度と安上がりですし、調査の手間もかかりません」(梅村弁護士)
 仮に警察が支援措置の要件をしっかり吟味するようになったとしてもあまり期待はできない。被害者が配偶者暴力相談支援センターに相談するという別の方法があるからだ。ここに相談に行けば『相談証明書』という書類を必ずもらえ、これさえあれば、相談内容の真偽にかかわらず支援措置が受けられるという。

 どう転んでも虚偽DVはなくならないのだろうか――。だが、梅村弁護士は光も見出している。

 「救いだったのは福田裁判長が『加害者とされた者に反論する機会を与えるなどDV防止法の制度の根本を見直したほうがいい』ということを判決に書いてくれたことです。本来、男性女性関係なく、DV被害者は保護されるべきですし、制度を悪用する者はそれが女性であっても厳しく対応されるべきです」(梅村弁護士)
 最後に当事者の利幸さんに、今後この問題をどのように解決していきたいかを聞いた。

 「判決にもあるとおり、法制度を変えてほしいと思います。これは僕だけの問題じゃない、誰にも起こりうる問題なんですから。娘にとっては母親だけでなく、父親やほかの親族も大事な存在ですし、大切な財産です。制度を悪用してでも子どもを支配下に置いた者が優先される世の中ではなく、父母に祖父母、いとこたちという、静香が大好きな親族たちにいつでも会える環境をつくってやりたいです。それが親としての子どもに対する本当の責任・義務だと思っています。養育費を支払うことだけが父親の義務ではありません」(利幸さん)
 4月末に判決が出たのと同じ月に、実は支援措置が延長されていた。そう考えると、利幸さんが損害賠償に勝訴したからといって、自動的に会えるようになるというわけではないのだ。利幸さんと静香ちゃん、そして広子さん。3人が納得し、円満な形で会えるようになることを私は祈っている。

西牟田 靖 :ノンフィクション作家・フリーライター

ハーグ条約の執行を円滑に

出典:平成30年7月6日 日本経済新聞

ハーグ条約の執行を円滑に

 国境を越えた子どもの連れ去りを解決するための国際ルール「ハーグ条約」について、国内の実施法を見直す議論が始まった。
 法制審議会の部会がこのほど、改正の試案をまとめた。子どもの負担にならないよう十分に配慮しながら、円滑に執行できるような改正をしてほしい。
 国際結婚の破綻などで、片方の親が無断で子どもを自分の母国などに連れていくケースは少なくない。原則として子どもをもとの居住国に戻すのが、ハーグ条約のルールだ。日本では2014年に条約が発効した。
 住み慣れた居住国にいるのが子の利益になる、という考え方が基本にある。もとの居住国で虐待の危険などがある場合には、返還はされない。最終的には、裁判所が返還の可否を判断する。
 問題は、返還が確定したのに、実現しないケースが相次いでいることだ。例えば、裁判所の執行官が連れ去った親のもとに子どもを引き取りにいく強制執行の仕組みがある。その際、親と子が一緒にいなければ強制執行は認めない。その場で親が子どもを抱え込む場合は、引き離すことはできない。
 試案では、連れ帰った親がその場にいなくても、もう一方の親が立ち会えばよい、などの見直しを盛り込んだ。国内の夫婦同士の離婚でも、親権を失った親が親権者に子どもを引き渡さないことがある。法制審ではこれについても同様の法整備を行う方向だ。
 ハーグ条約をめぐっては、米国務省が日本を「不履行国」と認定するなど、国際的な批判が起きていた。執行力を高め、実効性を確保するのは妥当だろう。
 一方、何より大事なのは、親の間で板挟みになっている子どもの負担をできる限り軽減することだ。強制執行にあたっては、子どもの心情に十分配慮し、丁寧な対応を徹底してほしい。
 強制執行に至る前に、早期に問題が解決できるよう、条約に基づく父母の話し合いの支援なども充実させたい。

39歳「離婚」の親権争いに敗れた男が見た真実

出典:平成30年7月6日 東洋経済ONLINE

39歳「離婚」の親権争いに敗れた男が見た真実

単純計算すると3組に1組の夫婦が離婚している日本。そこにいたるまでの理由は多種多様だ。そもそも1組の男女が、どこでどうすれ違い、離婚という選択肢を選んだのか。それを選択した一人ひとりの人生をピックアップする本連載の第2回。現代社会が抱える家族観や結婚観の揺らぎを追う。

■「お父さんに挨拶してほしい」がすべての始まり

 「離婚してから、8年間、子どもに会わせてもらえなかったんです。本当に会えたのはつい最近なんですよ」
 大地さんは、関東地方の某ファミレスで、おもむろにそう切り出した。

 鈴木大地さん(39歳、仮名)は、8年前に2歳下の妻と離婚。短髪の黒髪でがっちり体形だが、元保育士という職業柄なのか、つねに穏やかでおっとりした話し方で、優しいオーラを醸し出している男性だ。誰からも好かれそうな好感が持てる雰囲気がある。

 なぜ、大地さんが、妻である里美さん(当時24歳、仮名)と離婚することになったのか、その壮絶な軌跡を追った。
 小さい頃から、子どもが大好きだった大地さんは、大学を卒業後、公営施設の保育士という職に就いた。当時、男性保育士は、まだまだ珍しいという時代。働き始めて、2年後に友人の紹介で出会ったのが、同業者の里美さんだった。

 里美さんは、かわいかったが、とにかく押しが強い女性だった。勢いに押されて付き合い、1年が経ったころ、里美さんから「お父さんに挨拶してほしい」と切り出された。いつの間にか、あれよあれという間に、結婚まで話が進んでいた。
 「結婚まで何回か、ちょっと急ぎすぎじゃないかと感じたんですけど、指輪がどうとか、式がどうとか、その流れを自分で止められないんですよ。妻は別れるか、結婚するかと、2択を突きつけてくれるんですよね。自分から主体的に結婚したいというよりは、向こうに乗っかっちゃったという感じですね。『勢いで結婚』ってこういうことなのかと思ってました」

 大々的に結婚式を行った後、あまり間を置かずに、第1子の息子が生まれた。その1年間は、いちばん幸せな時間だったと大地さんは振り返る。当時は、イクメンという言葉が世の中に出始めた走りでもあった。保育士という職業は、ある意味、子育てのプロである。大地さんは、平日でも帰宅すると息子を寝かしつけ、休日も家事に育児にと奔走した。

 大地さんは、まさに世間がイメージする、イクメン像そのものであった。フルタイムの共働きということもあり、家事も育児も完全に妻と分担して行い、そこには男女の差などないと思っていた。大地さんは公務員で、経済的にも安定しており、特に不満もなく幸せの絶頂だった。今の時代、はたから見たら、誰もが羨む勝ち組夫婦に見えただろう。

 そんな夫婦生活に綻びが見え始めたのは、里美さんが、「仕事を辞めたい」と言い出したことだった。里美さんは、第1子を抱えながらも、数カ月後には職場復帰を果たしていたが、子育てと仕事の両立に悩んでいた。息子のために、少しでも早く帰宅しようとする里美さんを職場の上司は、事あるごとに責め立てた。いわゆる、パワハラだ。
 精神的に病んでしまった里美さんは、大地さんとも話し合い、職場を退職することにした。くじけずに、また新しい職場で働けばいい、そう思っていた。しかし、一度職を辞めてしまうと里美さんは、なかなか職を探そうとはしなかった。

 日中は子どもと一緒にいてダラダラとしているだけで、時間を持て余してボーッとしている。さらに、ネットゲームに夢中になり、何時間もパソコンの前に陣取っていた。

■マルチ商法にハマり、食事は何種類ものサプリ
 そのうち、まるで空虚な心のすき間を埋めるかのように、健康食品のマルチ商法にのめり込むようになった。気がつくと、家中、高額なサプリやフライパンなどの調理器具で埋め尽くされていた。

 「退職してから、妻の交友関係がガラリと変わったんです。健康食品のボス格の人の怪しげなセミナーとか、『女の幸せは家族の健康のために生きることなのよ』というセミナーに、すごく楽しそうに出るようになったんです。これはヤバイと思って、それはおかしいよと説得しようとしたんです。
 でも元妻も理論武装して、『これは、普通の空気清浄機とは違って、良いものが発生して子どものためにもいいんだよ』と言って、絶対に聞かない。いくら言ってもまるで洗脳されているようで、まったく聞き入れてくれないんです」

 いつの間にか、家庭の食事は、何種類もののサプリに変化していた。息子が生まれた直後は、毎日離乳食を作っていたが、そのうち息子の食事も毎食数粒のサプリと特製ドリンクで代用させるようになった。

 「2歳とか、3歳の子どものご飯が、皿に何粒かのサプリですよ。さすがにマズイと思って、『こういうものを子どもに食べさせてるのは、俺はいいと思わないよ』と言ったんです。だけど、彼女の理論は、これでビタミンとかミネラルとか、人間に必要なすべての栄養がまかなえるんだから、これほどいいものはないと力説するんです。やはりそれだけではお腹が空いたのか、子どもたちはお菓子を食べていましたね」

 こんなものは、毎日は食べられない――、何度も夫婦で話し合ったが、体に良い、と一点張り。それどころか、サプリを食べようとしない大地さんに怒り狂った里美さんは、突然目の前の皿をつかんでたたきつけたこともある。
 「なんでわかってくれないの!」

 大地さんは、かろうじて皿が当たるのを避けることができたが、頭にでも当たっていれば大ケガになるところだった。

 入所時は手取り約20万円だった大地さんの給料は、公務員でしかも管理職まで順調に上り詰めたということもあり、数年後には約35万円まで昇給していた。しかし、その財布を握っているのは、里美さんだった。大地さんには、月3万円の小遣いが渡されるだけで、ほかの支出にはいっさい手をつけることができなかった。
 新築で購入した分譲マンションのローン返済は8万円。しかし、それ以外の収入のほとんどが、高額なマルチ商法の商品に費やされていった。夏と冬のボーナスも、空気清浄機や鍋セットなどの高額商品に、おカネが湯水のように消えていく。大地さんは何度もそのおカネの使い道に異議を唱えた。

 「値段を聞くと、10万円のフライパンとか当たり前のように買ってるんです。ありえないってなるじゃないですか。『なんでこんな高いもの買ってきてんの?』と言い合いになるんです。でも妻も強い思いをぶつけてくるので、どっちかが折れるしかないんですよ。
 おかしいと言えば『責めてる』となじられるし、でも言わなきゃ自分の好きなようにおカネを使われて、それこそ貯金もなくなる。ただ、自分から積極的に別れたかったわけじゃないので、向こうの機嫌を損ねたくなかったんですよ。でも、改善はしてほしいから、なんて言っていいのかわからなかったんです。本当に、どうしようもなかった」

 そう言って、大地さんはうなだれた。何とか夫婦の関係を修復させようとしている矢先に第2子の妊娠がわかった。

■第2子出産に立ち会わなかったことを根に持つ妻

 第2子の出産には、大地さんももちろん立ち会う予定だった。しかし、運の悪いことに大地さんは胃腸風邪にかかってしまい、医師に、立ち会いは断られた。そのため、泣く泣く出産に立ち会うことができなかった。

 「勤務先の保育園でうつされたのか、下痢と嘔吐がひどかったんです。妻にも、本当に悪いと思ったんですが、行けなかったことを、すごく根に持っていましたね。『私が大変なときに、どうしてあなたは病気になったの!  ほかのパパは、毎日仕事帰りに寄ってくれたのに、私だけ誰も来なかったからすごく寂しい思いをしたんだから!』と怒り狂ってました。よりによって、なんでこんなタイミングで病気になったのか、確かに僕自身も反省するところもありましたけど、しょうがないですよね」
 里美さんは一種の被害妄想のごとく、当時のことを蒸し返しては、大地さんをことあるごとに責め立てた。待望の第2子は、男の子だったが、生まれてから、溝が埋まるどころか、2人の間は、ますます冷めきっていくばかりだった。その頃からすでにセックスレスとなっていた。

 第2子出産を境に、里美さんのマルチ商法の波がいったん収まると、まるで埋め合わせるかのように、今度は狂ったような夜遊びが始まった。

 大地さんが仕事から帰ってくると、里美さんが入れ代わりに出ていって朝方まで帰ってこない、そんな日が週5日くらい続く。そのうち、土日も大地さんに子どもを預けて、日中は独身の友達と遊びに行くようになる。
 当時、里美さんは20代後半、地元の同級生たちは独身生活を謳歌していた。そんな生活が無性に羨ましく感じていたのかもしれない。

 「それこそ、学生みたいに夜中に海に遊びに行ったりしてましたね。あとは、飲み会や、クラブとかに行っていたみたいです。百歩譲って、子育ての息抜きにもそういう時間は必要かもしれないと僕は思ったんです。

 ただ、子どもが夜起きると、『ママがいないよぉ』と泣きだすんですよ。いい加減にしてほしいって思いましたね。俺は保育士だから子どもの面倒は見られるけど、この子たちは、起きたときにママがいない、寂しいって泣いてるから、せめて夜は出ていかないでくれと、何度も話したんです。だけど、それをいくら言っても構わず出ていってしまうんです」

 里美さんの夜遊びはとどまることを知らなかった。まるでそれは遅れて咲いた青春の徒花ようだった。「私は、昼間、子どもの面倒を見てるんだから、あなたは夜見ればいいじゃない――」。そう言い放って、子どもが泣いていても、構わず家を飛び出していった。もうそれを止めることはできなかった。

 ある夜、大地さんは、見知らぬ男の車に乗っている里美さんを偶然に家の近くで発見した。里美さんは、大地さんに見せたこともないような笑顔を振りまき、男の車に乗り込んでいった。あっという間に、車は都会の喧騒の中に消え去っていく。まさか、と思ったが、どうしても信じたくなかった。
 ある日、日課の掃除をしていると1枚のプリクラが落ちているのが目に入った。男とピースサインをしている無邪気な顔の妻がそこには写っていた。その頃から、妻の浮気は疑惑から確信へと変わっていった。

 休日はよく、親戚の法事で出かけると言って出ていった。数日後、義母から電話がかかってきて、「この前は法事で大変でしたね」と言うと、「ええ?  法事なんか、ここ数年1度もないわよ」と驚かれた。

 「これまでの話は、全部うそだったのか、と思ったんです。今思うと、その頃にはすでに男ができていたんだと思います」
■シングルマザー支援団体との出会い

 里美さんは、二人姉妹の長女として育った。親は厳格で、特に母親には厳しく門限も決められていた。女たるもの、家事も育児も完璧にこなしてこそ一人前、そういう教えをたたきこまれた。里美さんは、そんな家庭環境で育ったため、結婚は、異様に厳格な母親から逃れるための唯一の逃避だったのかもしれない。

 実家暮らしだった里美さんは、母親から逃れるためには、結婚して、家を出るしかなかった。
 「私は、あんな母親にはなりたくない!」

 それが里美さんの口癖だった。自由に生きたいし、自由に子どもたちを育てたい――。里美さんが長年背負っていたのは、重い母の幻影であった。

 その幻影を、里美さんは大地さんにふと、見たのかもしれない、あるいは、結婚制度そのものに見たのかもしれない。母から逃れるための結婚が、皮肉にも今度は、里美さんをがんじがらめに追い詰めていた。

 「子どものために、そばにいてほしい」という大地さんの言葉は、まさに里美さんの自由を奪う憎むべきものだった。そうまるで、あのときの母のように、また私を縛ろうとしている――。

 里美さんは、いつしか、ことあるごとにうつろな目で「離婚したい、別れたい」という言葉を口にするようになった。もちろん、浮気相手の男性がいたということもあった。しかし、それは一過性のものだった。決定的だったのは離婚を後押しする支援者がいたことだ。

 その頃から、里美さんは、過激な思想を持つシングルマザーの支援団体の活動にのめり込むようになっていったのではないかと、大地さんは考えている。それは、かつて里美さんがマルチ商法にハマったときとそっくりの熱を帯びていたからだ。
 「彼女にとってマルチ商法に代わるものが、シングルマザーの支援団体だったんですよ。我慢して結婚生活を続けるよりも、一人で自分らしく生きたほうがいいという思想のおばさんたちにつかまっちゃったんです。『子どものためにも、離婚しないでほしい』とお願いすると、『私を束縛するのか』『自由を奪う憎いやつ』と言って、僕を敵視して、にらみつけるようになったんです。

 僕は、『自分がやりたいことがあればやればいいよ、それは応援する。でも、もし俺のことが嫌いじゃなかったら別れなくてもやれるはず』と、彼女を何度も説得したんです。でも、『ここにいて私は幸せじゃない。自分が幸せなら、子どもたちも幸せになれるから、だから別れなきゃいけない』と、まるで洗脳されたかのように同じことを繰り返すだけなんですよ」
 結婚は、自分を縛るもの――、それから解き放たれないと自由になれない。そんな里美さんの強い思いは、いくら大地さんが説得してもまったく揺るぎようがなかった。

 お互いの両親を挟んでの話し合いの機会が幾度となく繰り返された。しかし、両親を交えての話し合いは、皮肉にも逆に泥沼と化して、火に油を注ぐこととなる。

 「妻の言い分としては、『子育てのはけ口として遊んでいただけで、浮気なんかしてない』という主張の一点張りでした。実の娘がそう言うので、親心としては信じたかったんでしょうね。

 義理の両親はむしろ俺の親に対して、『お宅の息子さんは、うちの娘を大切にしてない』と責めるんです。そうすると、うちの親もいい気はしない。結果的に、親同士も険悪な雰囲気になって、離婚ムードが加速していったんです」

■モラハラ夫の烙印

 この段階で、ようやく大地さんの中で、離婚という二文字が現実味を帯びてきた。親同士も激しくののしり合っているし、離婚はもはや避けようがない。

 しかし、せめて、1歳と3歳の子どもたちは絶対に自分が引き取って育てたい――。そう思うようになった。
 親権には、「監護継続性」、つまり、現在子どもと同居している親の現状を尊重するという原則がある。

 里美さんはそれを察知してか、離婚調停が始まる矢先に、何の予兆もなく、実家に子ども2人を連れ去った。明らかにシングルマザーの支援団体の入れ知恵によるものだと、大地さんは直感した。

 大地さんが親権を取るには、何とかして妻の不貞やこれまでの子どもへのかかわり方を証明する必要がある。その頃から、何か証拠になるものはないだろうかと大地さんは、身の回りを気にし始めた。お互いの予定を書き込んだカレンダーは、妻が毎日遊び歩いていた証拠になるはずだった。
 さらに、床に無造作に置かれた里美さんの携帯電話――。そこには、不倫相手とのメールのやり取りがつぶさに残っているはずだった。しかし、里美さんは、大地さんより何枚も上手だった。

 「これは、調停で争いになるなと思ったときには、カレンダーが突然家から消えていたんです。彼女の携帯電話も、中身は全部データが消去されていた。僕が気づいたときには、彼女の不倫の証拠になりそうなものは、すべてなくなっていた。男とのプリクラは、日付がなかったので、証拠としてはまったく扱ってもらえなかったんです。
 メールのやり取りも、深夜に何度も『子どもが泣いてるから帰ってこい』というメールが僕の携帯には入ってるのに、それは僕の携帯だから、証拠にはならなかったんです。やられた感は、半端なかったですよ」

 それどころか、子どもたちを実家に連れ去られた後に、何度も里美さんに電話をかけたことを逆手に取られ、大地さんはモラハラ夫の烙印を押されてしまった。

 担当の調停委員は、60代と思しき、頭が固そうな男女だった。子どもたちの親権を取るつもりだった大地さんだが、調停委員は旧態依然とした考え方で、男性の子育てに関してはまったく理解がなかった。

 「調停委員は最初から『え?  あなたに子どもが育てられるの?』という態度なんです。幼少期は母が育てるものだと当たり前のように言われましたね。60歳くらいのじいさんがそう頭ごなしに言ってくるんですよ。そりゃあ、あなたの時代は、男が外で働いて母が家庭と子育てという家族モデルかもしれませんが、僕らは核家族で共働きで、僕は保育士だし、バリバリ子育てしている。でも、いくら訴えても、まったく通じないんです。法律界はそんな古い社会常識が規範になっているので、本当に、悔しい思いをしましたね」
 もし子どもたちの親権を取れたら、昼間大地さんが仕事している日中は、両親が全面的にバックアップして、面倒を見ると両親は快諾してくれていた。しかし、調停員たちは、大地さんが「男」というだけで、全然納得しなかった。

 「調停委員に、『日中も自分で子どもの面倒は見るべきでしょ』と言われるんです。昼は、仕事をしているからどう考えても無理ですよね。収入はむしろ、僕のほうが多いんですが、妻は経済的には、義父の援助があり、日中も育てられるというとその主張がそのまま通ってしまった。それまで彼女は、結婚期間は子育てをあまりしなかったと言っても、改心したと言ってますよ、となる。結局、彼らにとって母親が親権を取るのは、出来レースなんですよ」
 結局、調停でも妻の言い分が認められ、裁判官は、事務的に親権は母親だと告げた。なぜ、男親というだけで認められないのか――。逆差別ではないのか。あまりに理不尽で非情な裁判所の判断に、大地さんは大きなショックを受けて、崩れ落ちた。親権を争って、さらに裁判まで持ち込むこともできたが、もはや精神的にも肉体的にも、限界が近づいていた。これ以上はもはや争えない――、そう絶望して結果を受け入れるしかなかった。

■子どもとは8年間会えず
 離婚してからも大地さんの苦難は続いた。

 調停では、子どもたちとは、定期的な面会交流の約束があったが、結果としてそれが守られることはなかった。大地さんは何度も何度も、せめて子どもに会わせてほしいと里美さんに懇願したが、次第に音信不通になることが多くなり、しまいには、住所も変わってしまい、どこに住んでいるかもわからなくなった。そのため、大地さんは、この約8年間つい最近まで子どもと一度も会えなかった。

 それでも、大地さんは毎月養育費を支払い続けてきた。毎月1人当たり3万円で、計6万円。これまで一度も滞ったことはない。そして、片時も子どもたちのことを忘れたことはなかった。

 「子どもの成長はFecebookにあげるから、そこで見ればいいんじゃない?」

 数年ぶりに、気まぐれで連絡があった里美さんから一方的にそう告げられると、大地さんは、毎日、スマホの画面越しに子どもの成長を食い入るように見つめる日々が続いた。里美さんのFecebookページには、子どもたちのことだけでなく、里美さんのプライベートな男性関係が書かれていることもあった。里美さんは、大地さんと離婚後、別の男と結婚と離婚を繰り返していた。もしかしたら経済的にも困っているかもしれない、逆にここがチャンスだと思った。
 「お願いだから、子どもに会わせてほしい。何かあったら、子どもたちに経済的にも援助してあげられるから!!」

 そう懇願すると、里美さんはあっけなく要求に応じた。8年ぶりに飲食店に現れた子どもたちは、離れ離れになったときの乳飲み子ではなく、しっかりとした子どもに成長して、キラキラして、まぶしかった。

 上の子は小学6年生で、思春期に入ったばかりでやんちゃさが目立っている。大きくなったなぁ、ちゃんと育ててくれたんだと、大地さんは、素直にそう思うと感極まった。
 「子どもたちは僕にすごく自然に接してくれましたね。本当に、普通に家族みたいな感じ。というか、家族だったんです。それを思うと、この8年間は本当になんだったんだろう、不毛な時間を過ごしていたと思わざるをえませんでした」

 そう言って、大地さんは、あふれ出る涙をぬぐった。

■離婚調停の9割以上が親権は母親

 大地さんは、保育士を辞め、現在は司法書士として、事務所を立ち上げて活動している。

 司法書士の資格を取ったのは、自分自身が、法的な知識に耳を傾けてもらえる地位にないと、何を言うにも説得力がないと感じたからだ。離婚に関しても、あまりにも無知で悔しい思いをした。保育士を辞めて3年間、死に物狂いで勉強をして、資格を取った。大地さんは、これまでの経験を通じて、子どもと自由に面会ができなかったというつらい思いが根底にある。

 「今となっては、元妻が悪かったとは思わないです。彼女は彼女で自分を守ろうとしたんだと思いますね。だから、恨みとかそういう感情はないんです。ただ、子どもとの面会が自由にできなかったのは、ずっと、トラウマとして僕の心に影を落としているんです。子どもには、一生会えないんじゃないかと思っていた。それを考えると、やっぱり社会もおかしいと思います。

 ママが子どもを取り上げられる悲しみは耐えがたいと思うんですが、パパもそれは一緒なんですよ。なのに、公的機関のジャッジは偏っていると思うんです。男女平等にみてくれない。それには、本当に今でも、憤りを感じているんです。ただ、そんな社会は少しでも変えていければと思っています」
 離婚問題に詳しい元裁判官の男性によると、「母親の親権がデフォルトで、父親については問題点をあげつらうのが慣例となっている」という。「建前では、子どもの親権は性別ではなく、どちらが適切に養育できるかだが、明確にそこには男女差別がある」と断言する。今もなお、母親が子どもを虐待しているなど、よほどのことが明らかにならないかぎり、父親が親権を取れる望みは少ないのが実態だそうだ。

 裁判所の統計によると、離婚調停(またはそれに代わる審判事件)で子ども親権が母親に渡るのがほとんど。父親に親権が渡るのは1割以下だ。
 保育士でもあり、イクメン世代の走りである大地さんが離婚で感じた憤りと理不尽は、現代社会の家族のあり方が大きく変化している中で、個別のケースに真摯に対応できていないずさんな離婚調停の結果でもある。これも離婚というドラマの過酷な現実の1つなのだ。
菅野 久美子 :フリーライター

ハーグ条約の執行を円滑に

出典:平成30年6月30日 日本経済新聞

子の引き渡し 意思尊重が課題 ハーグ条約対応へ法制審議論

 国際結婚の破綻などによる夫婦間の子どもの引き渡しを迅速にするため、法制審議会(法相の諮問機関)は29日、民事執行法部会で議論を開始した。国境を越えた子どもの引き渡しを定めるハーグ条約に沿い、裁判所に引き渡しを命じられた親の立ち会いがなくても、申し立てをした親がその場にいれば保護を可能にする。子どもの意思をどう尊重するかが課題となる。

 1983年に発効したハーグ条約は子どもをめぐる国境を越えた争いを解決するルールを定める。2018年6月21日時点で98カ国・地域が加盟している。一方の親が他方の親の同意なく、国をまたいで子どもを母国に連れ帰った場合、元の居住国に戻す「強制執行」の手続きを定める。慣れ親しんだ国にまず戻し、子の育つ環境を裁判や当事者間の協議で決める。
 法制審が29日に示した新たなルールのたたき台は、子どもの心情に配慮し、執行官が無理やり子どもを引き離せない規定は維持した。返還を拒む親の説得や自宅の捜索は可能となるものの、子どもを力ずくで連れ出すなど「威力の行使」は認めない。米国や英国と比べると強制力が弱いとの批判もあるが、子どもの精神面への影響を防ぐことを最優先する。
 両親の関係が破綻する中で、子どもの意思をどう酌み取るかは大きな課題だ。国際結婚が破綻した場合、実際の親権や子どもが育つ環境については元の居住国へ帰国後、決める。もう一方の親の同意なく連れ帰った親が裁判で「子どもの意思だった」と主張することもある。強制力を高めた結果、子どもの意向が度外視されないよう、生育環境には最大限配慮する。
 上川陽子法相は29日の閣議後の記者会見で「子どもが混乱しないよう、心身の負担に最大限配慮する」と強調した。執行官などが「子の心身に有害な影響を及ぼさないよう配慮しなければならない」との規定を盛り込む方向だ。
 政府は早ければ19年の通常国会に、国内の夫婦について明文化する民事執行法と、国際事案についてのハーグ条約実施法の改正案を提出する。

子供の連れ戻し親不在でも 法務省、ハーグ条約に対応

出典:平成30年6月27日 日本経済新聞

子供の連れ戻し親不在でも 法務省、ハーグ条約に対応

法務省は国際結婚の破綻などで一方の親が母国に連れ帰った子どもを元の国に連れ戻すための関連法改正を検討する。虐待などの危険があってもすぐに保護できないとの日本への国際的な批判に対応する。2019年にも国境を越えた子の引き渡しを定めるハーグ条約に沿った国内の関連法改正をめざす。

上川陽子法相は26日の閣議後の記者会見で「国際的な子の引き渡しについて、必要な規律の見直しを検討する」と明らかにした。連れ帰った親がその場にいなくても連れ戻せるようにする。

秋にも要綱案を取りまとめる法制審議会(法相の諮問機関)の民事執行法部会で改正案の細部を詰める。国境を越えた子の引き渡しに関するハーグ条約実施法と、国内の夫婦間の引き渡しに同様の規定を設ける民事執行法を改正する。

迅速保護可能に

ハーグ条約には一方の親がもう一方の親の同意なく国をまたいで母国に連れ帰った子どもを、元の居住国に戻す強制執行の手続きがある。もう一方の親の申し立てで家庭裁判所の執行官が代わりに子を保護し、元の国に連れ戻す。日本は14年に加盟した。
現在の日本のルールは連れ帰った親がその場にいなければ、家庭裁判所の執行官は子を保護できない。強制執行による子の保護は、引き渡しに応じない親に制裁金を科した上で一定期間が経過した時に限っている。こうした日本独自のルールは引き渡しまでに時間がかかる。
厚生労働省の人口動態調査によると、夫妻のいずれかが外国人の国際結婚は1989年以降、2016年まで2万件以上で推移している。グローバル化で多様な家族が増え、国境を越えた紛争も生じやすくなるとみて、法整備を急ぐ。

虐待など条件

法務省が検討する新たなルールは(1)連れ帰った親が経済的に裕福または極端に困窮しているなど、制裁金を科しても引き渡しに応じないとみられる(2)虐待や育児放棄など、子どもへの急迫の危険を防止する必要がある――場合にも強制執行を可能にする内容だ。
執行官は申し立てをした親がその場にいれば子どもを保護できるようにする。従来は虐待や十分な教育を受けさせていないようなケースでも、連れ帰った親が故意に隠れてしまえば保護はできなかった。申し立てた親が病気や経済的事情で来られなくても、裁判所の判断で子の親族などが代理人になれる。
連れ帰った親が自分以外の住居に子をかくまい、連れ戻しに同意しないよう頼んでいても、もう一方の親の申し立てがあれば連れ戻しをできるようにする。
子どもの意思を尊重するため、従来と同様、一定の年齢に達した子どもが連れ戻しを拒否すれば、強制執行できない。連れ戻しで子どもに重大な危険が及んだり、申し立てた親が元の国で子どもの世話や教育などをしていなかったりすれば、強制執行は認められない。
米国務省は迅速な引き渡しができないとして5月に日本を「条約の不履行国」と認定。国際的な非難が高まっていた。

国連人権理事会(第38会期) 「子供の連れ去り問題」に関する藤木俊一氏によるスピーチ

出典:平成30年6月26日公開 テキサス親父日本事務局

【動画解説】

第38会期国連人権理事会で、初めて「子供の連れ去り問題」に関するスピーチを行いました。
この問題は、複雑で、法律を悪用する悪徳弁護士たちの稼ぎ口になっており、その影では、親と引き離された子供の多くが泣いており、これが原因で悲惨な結末を迎える子供達も絶えない。

普段は、人権が~!と言っている人権屋弁護士達、人権擁護を銘打っているNPOも、この子供の連れ去り事件に関してはダンマリを決め込んでいる。

その理由は、彼等の連れ去りビジネス、離婚ビジネスの種だからだ。

他人を不幸に陥れて金を稼ぐ弁護士やNPOを許す事はできない。

これは、法の抜け目を利用したものであり、日本政府は、これらの被害者に目を向けて、早急な対応をすべきである。

弁護士が増えすぎたことの弊害でもあるが、プロ意識のない弁護士や食えない弁護士が増えたことも、これらの問題が発生する原因であり、根本的な法体系の見直しが急がれる問題である。

日本は、共同親権を認める様にすべきであり、さらに、ハーグ条約の履行をいち早く行うべきである。

離婚夫婦、子供引き渡し迅速に ハーグ条約実施法改正へ 法制審部会が試案取りまとめ

出典:平成30年6月26日 産経新聞

離婚夫婦、子供引き渡し迅速に ハーグ条約実施法改正へ 法制審部会が試案取りまとめ
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 海外での結婚生活が破綻するなどした親が日本に子供に連れ帰る事例が国際問題化する中、法制審(法相の諮問機関)の部会が、引き渡し(返還)が確定した子供を、連れ帰られた親に渡す実効性を高めるための試案をまとめる方針を固めたことが25日、分かった。連れ帰った親本人がいなくても、裁判所の執行官が子供を連れ出せるようにすることなどを盛り込み、今夏にも民事執行法・ハーグ条約実施法改正の要綱案をまとめる。
 現状では手続きの煩雑さのため、引き渡し確定後も子供がそのまま日本で暮らすことが多く、国際社会から制度の見直しが求められていた。
 ハーグ条約は国際的な子供の連れ帰りに関する国際条約で、日本は平成26年に締結。だが、実効性が不十分だとして、今年5月に公表された米国務省の年次報告書では、日本は「条約不履行国」に分類されている。
 法制審民事執行法部会は国内の連れ帰り事案を対象に、引き渡しの実効性を高めるために民事執行法の改正を検討。国境を越えた連れ帰り事案はハーグ条約実施法が適用されるが、問題点に類似性があることから、一括して要綱案を取りまとめる。
 一方の親が子供を日本に連れ帰った場合、現行制度では引き渡しまでに、(1)連れ帰られた親が引き渡しを申し立てる(2)引き渡し命令が確定する(3)連れ帰った親に、引き渡すまで制裁金を支払わせる「間接強制」を申し立てる(4)間接強制が確定する(5)相手が従わない場合、裁判所に引き渡しの「代替執行」を申し立てる(6)裁判所の執行官が(代替)執行する-という複雑な手続きが必要だ。
 間接強制の手続きが必要となるために時間がかかる上、代替執行の際には子供と連れ帰った親が一緒にいることが引き渡しの必須条件になっていることから、親が子供を隠すなどして抵抗した場合は執行ができなかった。
 法制審の改正試案では、間接強制の手続きを原則不要とする▽連れ帰った側の親と子供が一緒にいなくても代替執行できるようにする▽代替執行の際は原則、連れ帰られた親側を立ち会わせる-が柱で、一連の手続きに際しては子供の利益に配慮することを求めている。 
      ◇
 現状では、子供の引き渡しの代替執行が確定した例のうち、半数以上のケースでは引き渡されていない。こうした状況になった場合、現状では全く異なる裁判手続きが必要となるが、ハーグ条約実施法の改正により、手続きはスムーズに進むことになりそうだ。
ハーグ条約は、「16歳未満の子供を一方の親が無断で連れ帰った場合、加盟国は子供を捜し、元の居住国に戻す義務を負う」などと定めている。
 しかし、日本は条約にのっとっていないのが現状だ。外務省によると、ハーグ条約が発効した平成26年4月から今年6月までに、裁判で引き渡しの命令が確定したのは23件。このうち7件で代替執行が認められたが、7件のうち4件では引き渡しに至っていない。
 現行制度では、代替執行を申し立てる前に「間接強制」の手続きを取ることが必須で、引き渡しの足かせになっている。この手続きが前提なのは、「いきなり代替執行をすると、子供に負担を与える恐れがあるから」(法務省幹部)だが、裁判の終了までには相当の時間を要することもある。
 加えて、代替執行の際は子供と連れ帰った親が一緒にいることが条件で、一緒にいても親が抵抗すると「子供に悪影響を与える」などとして執行ができず、連れ帰った側の“抵抗得”になっている。
 抵抗などで代替執行がうまくいかない場合は、不当に拘束された人の釈放を求める「人身保護請求」という全く別の裁判を起こすことが一般的となっている。
 最高裁は今年3月、人身保護請求の上告審判決で、「確定した引き渡しの命令に従わないのは原則違法」との判断を示した。引き渡しを求める側にとっては追い風とみられるが、国外にいる親が、日本で新たな裁判を起こす負担は依然として大きい。
 一方、連れ帰った親にしてみれば、「子供のため」という思いが強い。最高裁判決の事案でも、連れ帰った母親は「子供の意思で日本にいる」「無理に連れ帰ろうとしているのはむしろ父親だ」と主張していた。
 夫婦間には他人が立ち入れない難しさがある。手続きの迅速化だけでなく、引き渡しには子供の利益への配慮が求められる。(半田泰)

離婚夫婦間、親権ない親不在でも子引き渡し明記 法制審部会 要綱案

出典:平成30年6月23日 読売新聞

離婚夫婦間、親権ない親不在でも子引き渡し明記 法制審部会 要綱案
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 法制審議会(法相の諮問機関)の民事執行法部会は、離婚した夫婦間で子供を引き渡す際のルールを明確化する要綱案をまとめる方針を固めた。現状では裁判所の執行官が、親権を失った状態で子供と同居する親に拒まれ引き渡しに至らないケースが大半だが、要綱案には、親権のない親の自宅不在時でも執行官が親権を持つ親に子供を引き渡せることなどが明記される見通し。法務省は来年中の同法改正を目指す。
 離婚を巡る家裁の審判や調停の結果、親権を失った親から、親権を認められた親に子供をどう引き渡すのかを定めた規定は現行法にはない。裁判所が子供を引き渡すよう命じても、同居の親が従わない場合、執行官が自宅などに出向くが、親が不在だったり拒んだりした場合は断念する運用を続けてきた。

※以下、記事PDF参照

「パパ、ママいらん」でも「帰りたい」 亡くなった5歳児が、児相で語っていたこと

出典:平成30年6月7日 HUFFPOST

「パパ、ママいらん」でも「帰りたい」 亡くなった5歳児が、児相で語っていたこと

東京都目黒区で3月、船戸結愛ちゃん(5)が死亡した。虐待をしていた疑いで、父・ 雄大容疑者(33)と母・ 優里容疑者(25)が警視庁に逮捕された。

結愛ちゃんは、2018年1月に東京に来るまで、一家で香川県善通寺市に住んでいた。

県や児童相談所は、どのように対応してきたのか。

県の記録からは、一家のいびつな関係が浮かび上がってきた。

「子どもの泣き声がひどい」

県西部子ども相談センター(児童相談所)が、初めて虐待の疑いを認知したのは、2016年の夏だった。

この年、優里容疑者は雄大容疑者と再婚。

雄大容疑者は4月に隣の三豊市の会社で働き始めたという。

8月25日、近所の人が「子どもの泣き声がひどい」と児相に通報した。

優里容疑者は、19歳で結愛ちゃんを妊娠したとき「若年妊婦」として善通寺市の保健師がケアしていた。児相は市の保健師に問い合わせたが、出産当時の記録では、虐待をする兆候や育児に困っているような相談歴もなかった。

児相は、結愛ちゃんが通う幼稚園に問い合わせたが、園の回答は「特に問題はない」。家を訪ねたが不在だった。

これらの情報から、児相は保護ではなく「簡易相談事案」として様子を見ることにした。

クリスマス、結愛ちゃんを一時保護

翌9月には、弟が生まれた。

9月5日の記録には「第2子出産のため、検診などで結愛ちゃんのフォローを」などと記された。

その後は通報なども無かったが、12月25日のクリスマスの日に、結愛ちゃんが一人で外に出されているところを、近所の人が目撃。通報から香川県警が結愛ちゃんを保護し、児相が対応することになった。

この時、病院では「下唇が切れ、まぶたの上にはたんこぶがあった」と診断された。担当した医師は「日常的な虐待の傾向がある」と診断書に記した。

結愛ちゃんは軽度の傷ではあったが、虐待ケースとして児相に一時保護された。

一時保護施設では、担当の職員にとてもなついており、楽しそうに過ごしていたという。

担当職員は結愛ちゃんについて「かわいらしく、よく甘えてくる子だった。そして明るく、とても人懐っこい子どもだった」という印象を持っていた。

結愛ちゃん「うまく言えない」と父に手紙

年が明けた2017年の1月29日、親子面談があった。お父さんへ言いたいことはないか、と問われた結愛ちゃんは「気持ちを口でうまく言えない」と言った。

雄大容疑者は結愛ちゃんに手を挙げたことを認め、「悪かった」「もうしない。できるだけ優しくするから、いい子にしててくれ」などと謝った。

結愛ちゃんは、久しぶりに会った両親を「バイバイ」と、元気に見送った。言えない気持ちは「手紙にする」と話し、覚えたての文字ですらすらと手紙を書いていたという。

この親子面談の様子、そして幼稚園での見守りで毎日様子を確認できるという判断で、2月1日、一時保護が解除された。結愛ちゃんは自宅に戻った。

雄大容疑者は、香川県警に傷害容疑で書類送検されたが、のちに不起訴になった。

初めての一時保護だったので、指導措置は付かなかった。この措置が付くと、保護者は児童福祉司の指導を受けることになり、従わない場合は子どもが一時保護されたり、強制入所させられたりする。

「措置がないからと言って、何も無いわけではありません。常に様子を見て、とにかく本人確認ができる体制を整えるため、家庭訪問をつづけ、民間との連携を進めていた」と県の職員は話す。「この頃は、行政の呼び出しや指導にも、拒否することなく応じていた」という。

2月23日、幼稚園からの聞き取りでは「元気で変わりないが、食べすぎる傾向があった」と報告されている。

父親は、普段は仕事で忙しく、帰宅は深夜に及ぶことが多かった。そのため、子どもたちと話す時間はほとんどなかった。

その後、3月14日の家庭訪問では「徐々に父子関係に改善が見えてきていた」という。

パトロール中の警官が見つけ、2回目の保護

児相から一家を注視するよう伝えられていた地元の丸亀署では、警官が頻繁に見回りにまわっていたという。

3月19日、一人で外にいた結愛ちゃんを警官が目撃した。

母は「一緒に遊んでいて、私だけちょっと家に戻っていただけだった」と話した。

しかし、結愛ちゃんはけがをしている様子で、署で身柄を保護し、病院での診察をすることになった。

舌が切れて唇に赤い傷があり、両膝には擦り傷、お腹には5cm程度のアザがみられた。

傷について問われた結愛ちゃんは、病院の医師に「お父さんに叩かれた」と訴えた。

だが、両親は「転んだだけ」「叩いたわけでない」と否定した。

この件を受けて、2回目の一時保護が決定した。

このころ、結愛ちゃんは「パパ、ママいらん」「前のパパが良かった」と言うようになっていた。

だが、5月14日の親子面談では、一時保護所の心理士に「おもちゃもあるし、お家に帰りたい」と話すこともあった。

児相は、育児支援対策室やこどもメンタルヘルス科のある善通寺市の四国こどもとおとなの医療センターに協力をあおぎ、結愛ちゃんが病院のセラピーを受けることや、祖父母の家に定期的に預けること、叩かないことなど五つの約束を両親ととりつけた。

雄大容疑者は5月にも傷害容疑で書類送検されていたが、再び不起訴になっていた。

そして児相は、7月31日に、指導措置付きで保護を解除した。

5歳児に対し過大な期待「モデル体型を維持」

父親は、児相の聞き取りに対し「きちんとしつけないといけないから」と繰り返し説明していた。

県の職員は「5歳児に対して、父親が過大な期待をしていた。とにかく養育や作法について、強いこだわりが見えた」という。

細かなこだわりは、結愛ちゃんの言動からも推し量られた。結愛ちゃんは職員に対し「勉強しないと怒られるから」と伝えていた。

人に会うときは、しっかりおじぎをして、あいさつをしないといけない。

ひらがなの練習をしないといけない。

はみがきは自分でやり、怠ってはいけない。

太りすぎてはいけない。

また、雄大容疑者は体重に対しても異常に気にするそぶりがあり、優里容疑者に「子どもはモデル体型でないと許さない。おやつのお菓子は、市販のものはダメだ。手作りしろ。野菜中心の食事を作れ」と言っていたという。

また、一時保護を解除したときにした「祖父母の家に定期的に預ける」という約束も、「祖父母は子どもを甘やかす。歯磨きすら一人でできなくなる。だからもう行かせたくない」などと言い、だんだんと預けることがなくなったという。

虐待の兆候が見分けにくかった

結愛ちゃんは、家に戻されてからも、週に1~2回程度、善通寺市の子ども課(児童センター)か四国こどもとおとなの医療センターに通うようになった。

一時保護が解除されて一週間ほど経った8月8日、児童センターに結愛ちゃんと優里容疑者が来なかったことを不審に思った職員は、児相に連絡を入れた。

だが、特に虐待の兆候が見られたわけではなく、8月中も結愛ちゃんは4回児童センターへ来た。

その後「児童センターは遠くて通いにくい」という優里容疑者の申し出から、家に近い医療センターへ通うことになった。

8月30日、医療センターに訪れた結愛ちゃんを、医師が診察したところ、けがをしていることが分かった。

医療センターは児相へ報告。「こめかみにアザがあり、太ももにもアザがある」と伝えた。

優里容疑者は、けがを特に隠す様子はなく「気が付かなかった。私は見ていないので、分からない」と返答。

しかし、結愛ちゃんは「お父さんが叩いたの。お母さんもいたんだ」と訴えた。

これに対し、優里容疑者は「最近、結愛はよく嘘をつく。家ではしつけも厳しいし、一時保護所の居心地が良かったので、そこに行きたいがためにそういうことを言っている」と説明をした。

アザは数cmであったことと説明などから、児相は虐待と判断するかどうか見極めが厳しかったという。

なにより、一時保護をしたくても、2カ月以内の短期的な親子分離はできるが、長期的な分離を考えたとき「家庭裁判所の許可が下りないレベル」(記事末尾の【補足追記】を参照)と判断。

親との関係性を築き始めたなかで、無理やり一時的に親子を引き離す「介入的関わり方」をした場合、対立的関係になり、かえって親の児相に対する反発を強めて、児相が関われなくなる恐れがある。

寄り添って親のケアを含めて関係を切らないことが安全だとし、引き続き、医療センターなどを通じて見守りをしていくことに決めた。

引き続き、医療センターなどを通じて見守りをしていくことに決めた。

この騒動後、児相は9月8日に家庭訪問をしている。

このとき、優里容疑者は結愛ちゃんの最近の様子について職員に「父親が怖い、という気持ちはあると思う。だけど、父親は遅くに帰ってくるので、接する時間が少ない。なので、ぎこちないけれど話をすることもある」「土日には祖父母のところに行っている」と言った。

父親の雄大容疑者についても「できないと、すぐ怒って手を上げてしまっていた以前とは、違うように接している」と説明した。この日、結愛ちゃんにアザは見られなかった。

ただ、9月13日に様子を確認した際に、太ももにまたアザが見られた。しかし、この日結愛ちゃんは、父親に殴られたとは言わなかった。8月末と同じように、一時保護ができるレベルではなかったという。

幼稚園を辞め、日々の確認も難しくなったので、警察署や病院、市の子ども課と連携をし、定期的に結愛ちゃんの様子を直接確認できるように体制を強化した。

これ以降、結愛ちゃんにアザなどのけがは確認されなかった。

週2回ほどのアートセラピーが好きだった

このころ、結愛ちゃんは医療センターで行われていたアートセラピーが好きで、週に2回ほどの頻度で通っていたという。

このセラピーは、言葉でうまく気持ちを表現できない子どもや、自己主張が苦手な大人でも利用される手法のひとつだ。

アート(芸術)とサイコセラピー(精神療法)の二つの要素を併せ持ち、絵を描いたり話したりしながら、自分の思いを表現していく。

結愛ちゃんの生活にも、改善の兆しが見えていた。

10月23日の家庭訪問では、ニコニコと笑顔を見せて会話をし、月末に訪問した時は、「どうぞ」と元気よく玄関を開け、職員を迎え入れてくれたという。

アートセラピーについては「いろいろ話を聞いてもらえる」ととても気に入った様子だったという。

だが、優里容疑者は「もうすぐ仕事の都合で、東京へ引っ越すことになっている」と話すようになっていた。

優里容疑者は「引っ越しても、同じような病院を紹介してもらう」と職員へ伝えていた。しかし、「もうすぐ小学生にあがるので、期間が短いし、幼稚園や保育園には預けるつもりはない」とも言っていた。

転居によりケアが途切れることを恐れた児相職員は「社会的なつながりが途絶えてしまう」と懸念し、園に入るよう強く勧めた。

雄大容疑者が先に東京へ、体重も増えてきた

11月末の家庭訪問では、少し陰った表情をしていたという結愛ちゃん。しかし12月に入り、雄大容疑者は先に東京へ引っ越した。

週1回ほどのペースで体重を量っており、だんだんと体重は増え、2018年1月上旬には16kgを超えていた。

結愛ちゃんにけがもなく、健康的な生活ができていたため、検診をした1月4日、児相は所内協議をして指導措置を解除した。「父親がいなくなったからもう大丈夫、などという安易な判断ではなかった。親子としての改善ができてきたように見えていた」という。

児相は解除の理由について「指導ではなく、ケアや支援が必要なケースだった」と話す。

緊急性が高いケースとして移管

結愛ちゃんたちは後追いで「1月8日に引っ越す」と優里容疑者は伝えていたが、転居先についてはかたくなに言わなかった。

1月中旬に結愛ちゃんと弟を連れ、優里容疑者は東京へ行った。それを受け、児相は1月18日に市を経由して転居先を調べた。

1月23日に転居先が分かり、すぐに管轄である品川児童相談所へ連絡をした。

1月29日には「緊急性の高い案件」としてケース移管することになった。担当者は「すぐにでも本人に会って確認をしてほしい。指導措置は4日に解除になっているが、指導を積極的に続けてほしい」と伝え、数百ページあった2016年8月からの全記録を送付した。

弟の健診もあるため、引継ぎの際には「健診の時に結愛ちゃんの確認をして」とも頼んでいた。

品川児相は「転居で環境も変化している。どこまでできるか分からないが、対応は考える」と答えた。品川児相では緊急受理会議が開かれ、ケース移管の受理が決定した。

しかし、その後2回ほど「ケース移管でしたか?情報提供でしたか?」と問い合わせがあるなど、すれ違いが見られた。

県はそのたびに、「ケース移管であり、緊急性が高い。終結したケースではない。早く会って本人確認を」と伝え、2月5、6日には母親に電話を入れた。

しかし、優里容疑者が電話に出ないため、7日に雄大容疑者へ電話をした。

雄大容疑者は児相を拒否

品川児相に引き続きケアをお願いしている旨を伝えると、雄大容疑者は「それはなんなんだ。強制なのか?任意なのか?」と憤りを見せた。「あいさつもしており、地域の行事にも参加している。近所とのかかわりもあるのに、児相の職員が訪ねてくるなんて、周りから変な目で見られるので嫌だ」と受け入れる余地がなかった。

県は「引っ越したばかりで落ち着かないだろうから、香川県の児相もまだ関りを持たせてもらいます」と伝え、品川児相についての紹介をした。

しかし、2月9日に品川児相が家庭訪問をした際、結愛ちゃんには会えなかった。訪問の連絡をしていなかったこともあり、対応した優里容疑者は「弟はいるが、結愛は出かけていていない」と答えた。

連休が明けた2月13日、県が品川児相へ確認の連絡を入れると「信頼を築くにはまだ時間がかかる。警戒されてしまった部分がある」と伝えられた。

県の職員は焦りを募らせていた。この職員は取材に「指導措置があるから対応する、措置がないから安全というわけではないのは、分かっていると思っていた。香川にいたときは少なくとも週に1~2回は本人に会えていたので、かなり心配な状態だった」と話した。

一方で、医療センターも「母親と連絡が取れない」と心配し、品川児相にいままでのアートセラピーの情報やあちらの医療機関について伝えるため、資料提供を申し出ていた。

姿を見せない結愛ちゃん

すでに結愛ちゃんが東京へ引っ越してから、1か月が経とうとしていた。

幼稚園や保育園にも通わされず、ほとんど周囲とのつながりを断たれていたとみられる結愛ちゃんは、弟の健診にも、そして2月20日にあった小学校の説明会にも、現れることはなかった。

この間、品川児相が本人の姿を確認することは一度もなかった。

そして、3月2日、結愛ちゃんは12キロまで痩せた状態で亡くなった。

品川児相は3月に事件が発覚した際、取材に対し「香川県から援助を引き継いだものがなかった。そのため品川児相の援助方針が決まってないなかった」などと回答していた。

なぜこのような痛ましい事件を防げなかったのか。現在、香川県と東京都で、検証が進んでいる。

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【補足追記】

厚生労働省によると、長期にわたって親子分離をしようとするには、施設へ入所させるなどの措置をとるが、その場合、原則として親権者の同意が必要だ。

一時保護は児相の判断で実行できるが、児童福祉法に基づき、原則2カ月以内と定められている。

その期間内に子どもを家に戻すかどうかを、児相は判断しなければいけない。

親権者などが長期の分離に同意しない場合、児童相談所の所長が、家庭裁判所に「児童福祉法28条1項の承認の審判」(28条審判)を申し立て、そこで承諾を得る必要がある。

家庭裁判所が審判で承認を出す条件は、「児童を虐待し、著しく監護を怠り、保護者に監護させることが著しく児童の福祉を害する場合」。

今回のケースで、香川県の児相(西部子どもセンター)が、「家庭裁判所の許可が下りない」としたのは、結愛ちゃんの虐待について把握した事実では、「28条審判」を申し立てても、家裁の審判で長期分離が認められる条件を満たさないだろう、と判断したことを指す。

5歳児「おねがい、ゆるして」 遺棄致死疑いで両親逮捕

出典:平成30年6月6日 日本経済新聞

5歳児「おねがい、ゆるして」 遺棄致死疑いで両親逮捕

 東京都目黒区で娘の船戸結愛ちゃん(5)を虐待して父親が起訴された事件で、警視庁捜査1課は6日、結愛ちゃんを放置して死亡させたとして、無職、雄大容疑者(33)と母親の無職、優里容疑者(25)を保護責任者遺棄致死の疑いで逮捕した。2人は容疑を認めている。
 逮捕容疑は、1月下旬ごろから、結愛ちゃんに十分な食事を与えずに栄養失調状態に陥らせたうえ、雄大容疑者が殴るなど虐待。発覚を恐れ、妻と共謀して医師の診察を受けさせずに放置し、肺炎に基づく敗血症で結愛ちゃんを死亡させた疑い。
 同課によると、結愛ちゃんは1月下旬から1日1回しか食事が与えられない日もあり、死亡時の体重は5歳児の平均を約7キロ下回る約12キロだった。
 雄大容疑者は結愛ちゃんを毎日午前4時ごろに起床させ、ノートに文字の書き取りをさせていた。ノートには「きょうよりかもっともっとあしたはできるようになるから。もうおねがい、ゆるして、おねがいします」などと書き残されていた。
 同課によると、香川県から転居した後、結愛ちゃんを太ったと思った雄大容疑者がダイエットさせるためにノートに体重を記録させるなどしていたという。
 雄大容疑者は2月に結愛ちゃんを殴って負傷させたとして、傷害容疑で逮捕、起訴されていた。

 死亡した結愛ちゃんが大学ノートにつづっていた文章は次の通り。
 もうパパとママにいわれなくても しっかりとじぶんから もっともっときょうよりかあしたはできるようにするから もうおねがい ゆるして ゆるしてください おねがいします
 ほんとうにもうおなじことはしません ゆるして きのうぜんぜんできなかったこと これまでまいにちやってきたことをなおす
 これまでどんだけあほみたいにあそんだか あそぶってあほみたいだからやめるので もうぜったいぜったいやらないからね ぜったいぜったいやくそくします

死亡の5歳、ノートに「おねがいゆるして」両親虐待容疑

出典:平成30年6月6日 朝日新聞

死亡の5歳、ノートに「おねがいゆるして」両親虐待容疑

 東京都目黒区で虐待を受けたとされる船戸結愛(ゆあ)ちゃん(5)が3月に死亡した事件で、警視庁は6日、すでに傷害罪で起訴されている父親の無職船戸雄大容疑者(33)を、保護責任者遺棄致死の疑いで再逮捕し、母親の優里容疑者(25)も同容疑で新たに逮捕した。同日発表した。2人とも容疑を認めているという。
 捜査1課によると、2人は1月下旬ごろから結愛ちゃんに十分な食事を与えずに栄養失調状態に陥らせ、2月下旬ごろには結愛ちゃんが衰弱して嘔吐(おうと)するなどしたにもかかわらず、虐待の発覚を恐れて病院を受診させることをせずに放置。3月2日に低栄養状態などで起きた肺炎による敗血症で死亡させた疑いがある。
 雄大容疑者は2月末ごろに結愛ちゃんを殴ってけがをさせたとして傷害容疑で逮捕、起訴されていた。
 結愛ちゃんの体重は死亡時、同年代の平均の約20キロを下回る12・2キロだった。部屋からは、「もっとあしたはできるようにするからもうおねがいゆるして」などと結愛ちゃんが書いたノートが見つかっていた。毎朝4時ごろに起床し、平仮名の練習をさせられていたという。
 都や一家が以前住んでいた香川県などによると、結愛ちゃんは同県で2016年と17年に計2回、県の児童相談所で一時保護された。2回目の保護が解除された後の同年8月末には、病院から「こめかみ付近と太ももにあざがある」と児相に通報があり、結愛ちゃんは「パパに蹴られた」と話したが、県は一時保護の必要はないと判断していた。
 一家は今年1月に目黒区に転居。県の児相から引き継ぎを受けた品川児相が2月9日に家庭訪問していたが、優里容疑者とは会えたものの、結愛ちゃんには会えなかったという。
 雄大容疑者については、結愛ちゃんに暴行を加えてけがをさせたとして香川県警が昨年2月と5月に傷害容疑で書類送検していたが、いずれも不起訴になっている。

衰弱させた状態で放置、5歳虐待死で両親逮捕

出典:平成30年6月6日 読売新聞

衰弱させた状態で放置、5歳虐待死で両親逮捕

 東京都目黒区で今年3月、虐待を受けた女児(当時5歳)が死亡した事件で、警視庁は6日、父親で無職の船戸雄大被告(33)(傷害罪で起訴)と、母親の優里容疑者(25)を保護責任者遺棄致死の疑いで逮捕した。

 直接の死因は暴行によるものではなかったが、衰弱させて放置したことで死亡したと判断した。女児はネグレクト(育児放棄)も受け、ノートには謝罪の言葉が並んでいたという。

 発表によると、両親は今年1月下旬以降、長女の結愛(ゆあ)ちゃんに十分な食事を与えず、2月下旬には船戸被告から暴力を受けた結愛ちゃんが極度に衰弱し、嘔吐(おうと)するなどしたのに病院に連れて行かずに放置した疑い。結愛ちゃんは3月2日に死亡。死因は、低栄養状態や免疫力低下で引き起こされた肺炎による敗血症だった。

子供連れ去り巡るハーグ条約 日本を「不履行国」認定 米国務省

【ワシントン=時事】米国務省は16日、国際結婚破綻時の子供連れ去りに関する年次報告を公表し、日本を連れ去り問題の解決手続きを定めた「ハーグ条約」に基づく義務の「不履行国」に認定した。
 日本が認定されるのは、同条約に加盟した2014年以降で初めて。条約順守を求める圧力が高まる可能性がある。
 年次報告は日本に関し、連れ去りが報告された子供の数が14年以降で44%減少するなど「重要な前進があった」と指摘。連れ去り防止や当事者間の仲介で、日米両政府の「強力かつ生産的な関係が、問題解決を後押ししてきた」と一定の評価を示した。
 一方で、子供の返還を命じる司法判断が出ても「命令を執行する効果的手段がない」ことを問題視。その結果、連れ去り事案のうち22%は解決に1年超を要し「執行プロセスが過度に長期化している」と記した。
 今年の報告では、中国、インド、ブラジル、アルゼンチンなど、日本を含め計12カ国が義務不履行国として記載されている。
 日本にいる息子の返還を求めるジェフリー・モアハウスさんは年次報告を受け、取材に「日本政府が自国の司法判断を執行できない現状の改革に取り組む機会になる」と期待を示した。娘との再会を願うポール・トーランドさんは「日本は家族に関する法制度を見直す必要があるし、子供が、離婚した親の両方を知り愛する権利についても、見方を改めてほしい」と語った。

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※以下、Youtube掲載の米議会の動画です。
米国務省はショーン・アンド・デイビッド・ゴールドマン国際児童虐待防止・帰還法に違反して日本を非合法と認めた。議会は日本に対する制裁措置を求めている。

日本、ハーグ条約「不履行国」に=加盟後初、子供連れ去り年次報告―米国務省

出典:平成30年5月17日 時事通信

日本、ハーグ条約「不履行国」に=加盟後初、子供連れ去り年次報告―米国務省

 【ワシントン時事】米国務省は16日、国際結婚破綻時の子供連れ去りに関する年次報告を公表し、日本を連れ去り問題の解決手続きを定めた「ハーグ条約」に基づく義務の「不履行国」に認定した。

 日本が認定されるのは、同条約に加盟した2014年以降で初めて。条約順守を求める圧力が高まる可能性がある。

 年次報告は日本に関し、連れ去りが報告された子供の数が14年以降で44%減少するなど「重要な前進があった」と指摘。連れ去り防止や当事者間の仲介で、日米両政府の「強力かつ生産的な関係が、問題解決を後押ししてきた」と一定の評価を示した。

 一方で、子供の返還を命じる司法判断が出ても「命令を執行する効果的手段がない」ことを問題視。その結果、連れ去り事案のうち22%は解決に1年超を要し「執行プロセスが過度に長期化している」と記した。

ハーグ条約「日本は取り組み不十分」米認定

出典:平成30年5月17日 日本テレビ

ハーグ条約「日本は取り組み不十分」米認定

アメリカ政府は16日、国境を越えて連れ出された子どもの返還を定める「ハーグ条約」に関する報告書を公表し、日本を初めて「取り組みが不十分な国」に認定した。

ハーグ条約」は国際結婚の破綻などで配偶者の了解を得ずに子どもを国外に連れ出した場合、子どもを元の国に戻すことを定めたもので、日本も加盟している。アメリカ国務省は16日、各国の対応状況に関する報告書を公表し、日本や中国など12か国を「取り組みが不十分」と認定した。

日本の認定は初めてで、政府の取り組みに「進展がみられる」とする一方、「子どもを連れ去った親が返還命令に従わない場合、強制執行する方法がない」と問題視している。その結果、返還命令の22%が、1年以上、未解決のままになっており、去年は5人の子どもが「日本に連れ去られた」としている。

離婚・再婚 分野横断的な新学会を設立 11月に研究大会

出典:平成30年5月16日 毎日新聞

離婚・再婚 分野横断的な新学会を設立 11月に研究大会

離婚・再婚に伴う親権や養育費などの法律問題から、子どもへの精神的な影響や支援の在り方まで、分野横断的に研究する新しい学会「日本離婚・再婚家族と子ども研究学会」が先月設立された。11月には、茨城大水戸キャンパス(水戸市)で研究大会を開催する予定だ。学会の発起人で代表理事を務める茨城大の野口康彦教授(臨床心理学)に、日本における離婚・再婚家族の問題や学会が目指す方向性を聞いた。【聞き手・吉田卓矢】

--学会を作ることになった社会的背景を教えてほしい
 日本は、離婚後も両親が親権を持つ選択的共同親権制度を採用している米国などと違い、どちらか一方が親権を持つ単独親権制度だ。しかし、子どもの権利である面会交流の実施や養育費の支払いなどがきちんとされないケースも多い。離婚が貧困に直結したり、子どもの発達への影響なども考えられる。
--なぜ養育費の支払いや面会交流がきちんとされないケースが多いのか
 日本では離婚の約9割が司法や行政が介入しない協議離婚だ。民法766条では、協議離婚の際、面会交流や養育費などについて、子どもの利益を最優先に考慮しなければならないと定めているが、紙1枚で離婚でき、罰則規定なども無いため、事実上、口約束になっている。
--離婚・再婚にまつわるさまざまな問題を議論する場として学会を作ったのか
 さまざまな問題がある一方で、この分野の研究自体が少なく、心理学、社会学、法学、医学などの研究者と家裁調査官などの実務者、離婚家族の支援者などが一堂に会して議論する場も無かった。法律・制度の在り方と支援の在り方が共有されず、議論の材料さえ十分に無い状態だった。学会を作ることで議論の素地となる調査・研究を蓄積させたい。
--11月の大会はどんな内容になるのか
 11月3、4日に行う予定で、現在、発起人6人で議論しているが、研究発表と、当事者支援団体などのワークショップ、シンポジウムの3本立てになるだろう。メインのシンポジウムでは、おそらく面会交流の実情と課題がテーマになる。海外のシステムや制度と比較して日本では何が足りず、何が課題になっているのかを研究者らに発表してもらい議論するような形になると思う。
--学会の入会募集はいつから始めるのか
 募集は6月ごろから始める。入会金は2000円で、年度会費は5000円(学生2000円)。多くの研究者や学生、実務家らに参加してもらいたい。
     ◇
 学会の問い合わせ先は、野口教授(yasuhiko.noguchi.8215@vc.ibaraki.ac.jp)。

ハーグ条約違反! 日本が「国際的な子の奪取」を看過する理由

出典:平成30年5月13日 COURRiER

ハーグ条約違反! 日本が「国際的な子の奪取」を看過する理由

ハーグ条約と日本の民法のギャップ

クックなどの「子供を連れ去られた親たち」によると、問題の核心は、日本が、ほかのハーグ条約締結国とは異なり、条約の規定を履行する手段を持たないことにあるという。

「絆・チャイルド・ペアレント・リユニオン」という団体の代表としてクックの活動を支援している米国人ジョン・ゴメスは言う。

「強制力が重要な問題のひとつです。どの国も、命令を実行させるための条約実施法を作らなければなりません。しかし、日本の場合、命令に強制力がないのが実状です」

日本政府がハーグ条約締結のために作った条約実施法では、実力行使は禁止されており、子供の引き渡しは、「同居親」の家ですることになっている。「同居親」の同席も必要だ。

裁判所の執行官は、洗濯機の差し押さえには慣れているが、関係者が感情的になりがちな子供の引き渡しには不慣れな人が少なくない。

つまり、強制力といっても、子供と「同居親」がいる家の門前から、子供に出てくるよう執行官が呼びかける程度なのだ。

日本の親権法に詳しい同志社大学法科大学院教授のコリン・ジョーンズは言う。

「すべて予測できたことです。強制執行の手段をなんとかしないかぎり、クック家のような事案が出てくるのは時間の問題でした」

米国政府は、日本政府のハーグ条約の履行に関して懸念を表明している。「国際的な子の連れ去り」に関する2017年の米国務省の年次報告書にはこう記されている。

「返還命令を迅速かつ一貫して執行する日本の能力について、(米国の)国務省は憂慮している」

一方、日本政府によると、状況はいい方向に進んでいるという。日本の外務省でハーグ条約室長を務める上田肇は言う。

「日本がハーグ条約に加盟してからまだ3年です。時間がかかってしまうのは、どの事案にも固有の事情があるからです。その点から見れば、日本はいい仕事をしています」

上田の話によると、日本のハーグ条約加盟後、すでに5件の事案について8人の子供たちが米国に返還されたという。

日本国内ではハーグ条約加盟前に条約締結に反対する声がかなりあり、条約加盟は大きな政治的問題だった。そのため、日本では2014年に条約に加盟したことだけでも大業だった。

専門家によると、ほかのハーグ条約締結国でも、条約の規定を履行するための国内法の改正に時間がかかった事例がある。ドイツの場合は5年かかったという。

日米で異なる「親権」観

現在、在日米国大使館が取り扱っている子供の連れ去りの事案は約70件だ。そのうちの42件は、日本がハーグ条約に加盟してから申し立てがあったものだ。米国に子供を返還するように要求している事案は10件だ。

そのほかの事案は、単に子供との面会交流を求めるものだ。だが、日本では共同親権の概念が浸透しておらず、子供との面会交流も一筋縄ではいかない。

日本では結婚が破綻したあと、子供が両方の親と会い続けるのは、子供の心をかき乱し、精神的混乱をもたらす、という考え方が主流だ。そのため片親(母親である場合がほとんど)が、単独で親権者となる。親権を失ったもう一方の親は、毎月2時間ほど面会交流することが多い。

前出のコリン・ジョーンズは言う。

「日本の最大の問題は面会交流です。返還命令の多くは、実は面会交流を求めているものなのです。非親権者の親が、親子関係をなんとか維持したいと願っているわけです」

前出のジョン・ゴメスの調査によると、日本では、両親の離婚後に片親と交流がなくなった子供がこの20年で約300万人いるとのこと。1年当たり約15万人の計算である。

現行制度では、子供が16歳を過ぎると、返還申請は却下される。親権争いの当事者たちに話を聞くと、この期限も子供を連れ去った親の側に有利に働くという。

専門家によると、日本国内の制度が単独親権制から変わらないかぎり、国際離婚の際の親権問題の解消は期待できないとのことだ。

しかし、日本国内の単独親権制を変えるのは簡単ではない。日本には戸籍制度があり、それが各種証明書類の基礎となっているからだ。ひとりの人間は、ひとつの戸籍にしか入れない。日本では両親が離婚すると、子供は父親の戸籍から除かれ、母親の戸籍に移される場合が多い。

「非親権者は親としての権利をすべて失い、子供に対して実質上、他人同然になってしまいます」

こう語るのはブルース・ガーベッティだ。彼は前出の「絆・チャイルド・ペアレント・チャイルド・レユニオン」を通して、現状を変えるために活動を続けている「子供を連れ去られた親」のひとりだ。

ガーベッティによると、日本国内で共同親権が当たり前にならないかぎり、国際離婚の場で共同親権の適用は期待できないとのことだ。

そのため、冒頭のジェームズ・クックは、医療装置の会社で仕事を見つけたにもかかわらず、いまもミネソタの自宅で、子供といっさい面会できない暮らしを続けている。クックは言う。

「こんなゴタゴタになってしまって悲しいです。子供たちのことが心配でなりません。これが子供を連れ去られた親の悲痛な思いです」

調査せず県警がDV認定 地裁、愛知県と妻に賠償命令

出典:平成30年5月8日 日本経済新聞

調査せず県警がDV認定 地裁、愛知県と妻に賠償命令

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 妻が申し出たドメスティックバイオレンス(DV)被害を愛知県警が調査せずに認めたのは不当だとして、夫が妻と県に計330万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が8日までに、名古屋地裁であった。福田千恵子裁判長(鈴木尚久裁判長代読)は「警察が事実確認を怠ってDVと認め、夫の名誉が傷つけられた」として妻と県に計55万円の支払いを命じた。

 判決は4月25日付。妻と県は控訴した。

 福田裁判長は「DVの主張が事実無根とは言えないが、診断書がなく誇張した可能性がある」と述べ、妻が子供と夫との面会を阻むためにDV被害を訴えたと判断。県警が必要な調査を怠ってDVと判断したのは違法だと結論づけた。

 福田裁判長はさらに「別居する親と子供の面会を妨害するためのDV支援制度の悪用が問題になっている」と言及。「加害者とされる側にも配慮した制度が期待される」と見直しを求めた。

 判決によると、2012年に妻は子供を連れて別居した。夫の申し立てを受けて家裁が夫と子供の面会交流を命じたが、16年に妻がDV防止法に基づく支援を求め、県警は「支援の要件を満たす」との意見書を作成。これを受けて自治体が妻の住民基本台帳の閲覧を制限したため、夫は子供と会えなくなった。

 妻側は訴訟で「DVがあったことは事実だ」と主張し、県側も「被害者保護のためにDVと判断したことに問題はなかった」と反論していた。

DV面会禁止、愛知県に賠償命令 名古屋地裁

出典:平成30年5月8日 中日新聞

DV面会禁止、愛知県に賠償命令 名古屋地裁

別居中の妻が申告した家庭内暴力(DV)について、警察が十分確認しないまま認めたため娘に会えなくなったなどとして、愛知県岡崎市に住む40代の夫が40代の妻と同県に330万円の損害賠償を求めた訴訟の判決があり、名古屋地裁は55万円の支払いを命じた。判決は4月25日。

 福田千恵子裁判長は判決理由で「夫の暴力が誇張されている可能性は否定できない。妻は娘の面会を阻止する目的で申し出た」とした。

 判決によると、妻が娘を連れて別居した2年後の2014年、夫の申し立てで名古屋家裁半田支部が、夫と娘に面会交流をさせるよう妻に命じていた。

 だが、妻は16年に転居し、DV防止法に基づき、住所を知られない措置を県警に申請して認められた。警察の意見を基に自治体は対応するため、夫は娘に会えなくなった。

 判決は、県警が「妻の申告をうのみにし、必要な調査を尽くさなかった」と指摘。一方で「(悪用を防ぐため)被害者の安全を確保しつつ加害者にも配慮し、警察署員に過大な負担をかけない制度設計があるはず」と言及した。

 妻と県は既に控訴した。県警は「係争中のためコメントは差し控える」とした。

夫側「子との面会の不当な阻止、誰でも起こりえる」

出典:平成30年5月8日 産経新聞

夫側「子との面会の不当な阻止、誰でも起こりえる」

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 誇張された申告でドメスティックバイオレンス(DV)加害者と認定され、子供と面会できなくなったなどとして愛知県と妻に慰謝料を求め訴えた県内の40代男性と代理人が8日、名古屋市内で記者会見し「制度の不備が原因で面会を不当に阻止されることは、誰にでも起こり得る」と述べ、制度の改善を訴えた。

 梅村真紀弁護士によると、DV防止法に基づく住所秘匿などの支援措置は被害者保護を目的とし、相手側への聞き取りは必要とされないため、一方的な訴えだけで面会が遮断される恐れがあるという。

 名古屋地裁判決は「DV被害は誇張された可能性があり、妻が面会を阻止する目的で警察に支援を申請したと認められる」と判断、計55万円の賠償を命じた。

 梅村弁護士は「離婚を巡る裁判では支援を申請しているケースが多い。本当の被害者は保護する必要があるが、他にも制度を悪用したケースがあるのではないか」と指摘した。

<名古屋地裁>「誇張のDV被害、妻が面会阻止目的で申告」

出典:平成30年5月8日 毎日新聞

<名古屋地裁>「誇張のDV被害、妻が面会阻止目的で申告」

◇妻と愛知県に55万円の支払い命令

 別居中の妻が虚偽のドメスティックバイオレンス(DV)被害を申告し、愛知県警の不十分な調査で加害者と認定され娘に会えなくなったとして、愛知県の40代の夫が妻と県に慰謝料など計330万円を求めた訴訟の判決で、名古屋地裁(福田千恵子裁判長)は計55万円の支払いを命じた。夫側弁護士が8日、明らかにした。妻は控訴している。

 4月25日付の判決によると、妻が長女を連れて別居後、夫の申し立てで名古屋家裁半田支部が2014年、長女と夫の面会などをさせるよう妻に命じた。妻は16年、夫に住所などを知られないようにする支援を申請し、県警の意見を基に自治体が住民基本台帳の閲覧を制限した。

 判決は「DV被害は事実無根と言えないが誇張された可能性はあり、妻が面会阻止目的で申告した」と認定した。県警については、被害者の安全確保が最優先で多角的な調査を常に行う義務はないとしつつ「支援制度の目的外利用も念頭に置くべきなのに、事実確認を全くしなかった」と賠償責任を認めた。

 さらに「支援制度悪用が社会問題化している。加害者とされる者にも配慮する制度設計があるはずで、検討が期待される」とした。夫側弁護士は「支援制度の不備に踏み込んだ画期的な判決」と話した。【野村阿悠子】

「妻が虚偽のDV申告」名古屋地裁で異例の判決 「制度見直し」への言及も

出典:平成30年5月8日 名古屋テレビ

「妻が虚偽のDV申告」名古屋地裁で異例の判決 「制度見直し」への言及も

妻の虚偽の申告により、不当にDV(家庭内暴力)の加害者とされ、子どもに会えなくなったなどとして愛知県内の40代の夫が妻と県に慰謝料などを求めた裁判で、名古屋地裁が55万円の賠償を命じていたことが分かりました。

この裁判は、夫には別居中の子どもと面会する権利などがあったにもかかわらず、妻が虚偽のDVの申告をして愛知県警が鵜呑みにしたことで、子どもとの交流が絶たれたなどとして妻と愛知県に対し、約330万円の損害賠償を求めていたものです。4月25日に言い渡された判決で、名古屋地裁は妻に対し「DVの申告は夫からの暴力を避けるためではなく、夫が子どもと面会することを阻止するためであった」と指摘。また、県に対しては「愛知県警は不審・疑問な点がないか確認する義務があった」などと県警の過失を認定し、妻と県に対し、55万円の損害賠償を命じました。さらに判決の中で名古屋地裁は、「現在のDV防止法に基づく措置では、加害者とされる人の手続き保障がなく、事実誤認があった際の簡易迅速な救済制度もない」として、制度の見直しが必要とする異例の言及をしました。今回の判決を受け、訴えを起こした夫は、「法律の欠点の改善や親子関係を最優先にした運用に変わっていってほしい」と話しています。

虚偽DV見逃しは違法 妻と愛知県に異例の賠償命令 名古屋地裁 支援悪用、父子関係絶つ

出典:平成30年5月8日 産経新聞

虚偽DV見逃しは違法 妻と愛知県に異例の賠償命令 名古屋地裁 支援悪用、父子関係絶つ

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 子供を連れて別居中の妻が捏造(ねつぞう)した家庭内暴力(DV)の話を警察官がうのみにした結果、不当にDV加害者と認定され、子供と会えなくなったとして、愛知県に住む40代の夫が、40代の妻と県に慰謝料など計330万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、名古屋地裁(福田千恵子裁判長、小林健留裁判官代読)が夫側の主張を認め、妻と県に計55万円の賠償を命じていたことが7日、分かった。判決は4月25日付。社会問題化している“虚偽DV”をめぐり、相手親と行政側の賠償責任を認定した判決は極めて異例とみられる。

 福田裁判長は「DV被害者の支援制度が、相手親と子供の関係を絶つための手段として悪用される事例が問題化している。弊害の多い現行制度は改善されるべきだ」と言及。この訴訟は個別事例ではないと指摘し、制度見直しを求めた。

 判決によると、夫妻は平成18年に結婚。翌年に子供が生まれたが、24年に妻が子供を連れて別居した。夫の申し立てを受けた名古屋家裁半田支部は26年、妻に夫と子供を定期的に交流(面会・手紙のやり取りなど)させるよう命じた。

 しかし28年、妻は愛知県警を訪れ、DV防止法に基づき夫に住所などを知られないようにする支援を申請。対応した警察官は「妻はDV被害者で、今後もDVを受ける危険がある。支援の要件を満たしている」との意見書を作成した。

 意見書に基づき自治体が支援を開始した結果、夫は妻の住所が記載された住民基本台帳の閲覧などができなくなり、子供との交流が絶たれた。

 夫は「妻のDV主張は虚偽なのに警察は調査せず事実だと認定した。名誉を毀損(きそん)された上、子供と会えなくなった」として妻と県を提訴。妻側は「過去のDVや今後もDVの危険があることは事実だ」、県側も「県警の認定に問題はなかった」と反論していた。

 福田裁判長は「妻側の主張するDVは診断書などがなく、誇張された可能性がある。妻は子供と夫の交流を絶つ意図で支援を申請したと認められ、制度の目的外使用だ」と認定した。

 県警の対応についても「虚偽DVが社会問題化している以上、制度の目的外使用の可能性も念頭に、妻の説明の不審点や疑問点を確認する義務があった」と指摘。「現在もDVの危険があるかどうかは客観的な時系列や事実関係から判断できる。しかし今回、県警は事実確認を一切行わなかった」と過失を認定した。

 ■DV防止法による支援

 被害者から支援申請を受けた警察や婦人相談所などの相談機関は、支援要件(過去のDV歴・緊急性の高さ・今後のDVの恐れなど)を満たすかどうかを判断し、意見書を作成する。意見書を基に、自治体はシェルター(避難所)の提供や、加害者による住民基本台帳の閲覧申請の却下などを行う。ただ、意見書作成の実務では被害者の主張が重視される一方、加害者とされる側の権利保護が考慮されないことが多いとされ、「虚偽DV」「冤罪(えんざい)DV」の温床となっているとの指摘が出ている。

虚偽DV訴訟、親権のための法的テクニック 社会問題化「制度見直すべきだ」

 「より良い制度に向けた検討が期待される」。今回の判決で、福田千恵子裁判長はそう踏み込んだ。この提言は(1)DV(家庭内暴力)被害者の支援制度が、子供と相手親を引き離す手段として悪用されている(2)加害者とされる側の権利を守る手続きがなく、虚偽DVの温床となっている-などの問題意識を反映したものだ。この判決は今後、制度の在り方をめぐる議論につながる可能性もある。

 子供をめぐる夫婦間トラブルで多い類型は、一方の親が相手親に無断で子供を連れ去り、その理由として「DVを受けていた」と主張する-というものだ。

 従来は、たとえ連れ去りの結果であっても、現在の子供の成育環境の維持を考慮する考え方(継続性の原則)などが重視され、連れ去られた側が不利となる事例が多かった。さらに相手からDVを主張された場合、子供との交流の頻度や方法を決める際にも不利に扱われやすいとされる。

 DV主張は覆すのが困難で、実務上、証拠が乏しくてもDVが認定されることが多い。実際、裁判記録などによると、DV認定を抗議した夫に警察官は「女性がDVを訴えたら認定する」と発言。法廷でも「支援申請を却下したことは一度もない」と証言した。

 この問題に詳しい上野晃弁護士は「こうした運用は愛知県警だけでなく、全国的に同様だ。警察は申請を却下した後に事件などが起き、責任追及されるのを恐れるためだ」と分析する。

 一方で近年では、「親権や慰謝料を勝ち取る法的テクニックとして、DVの捏造(ねつぞう)が横行している」「連れ去りをした側が有利な現状はおかしい」との指摘も出ていた。

 国会でも平成27年4月、ニュースキャスター出身の真山勇一参院議員が、現行制度下で子供の連れ去りや虚偽DVが横行している問題を指摘した。

 福田裁判長は「いったんDV加害者と認定されれば容易に覆らない現行制度は見直すべきだ。まず被害者を迅速に保護して支援を開始した上で、加害者とされた側の意見もよく聞き、その結果に応じて支援の在り方を見直していく制度にすれば、社会問題化している制度悪用の弊害を防げる」と指摘。司法府が立法府に注文をつけるのは異例だ。

 原告側代理人の梅村真紀弁護士は「(判決が)子供第一の協議が行われるきっかけになってほしい」と話す。

 妻側は既に控訴しており、上級審の判断が注目される。(小野田雄一)

更新 2019-07-15 (月) 11:55:40
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